Liqueur & Cocktail

カクテルレシピ

シャンゼリゼ

クルボアジェV.S.O.P. 3/5
シャルトリューズ
ジョーヌ
1/5
レモンジュース 1/5
アンゴスチュラ
ビターズ
1dash
シェーク/カクテルグラス

ビジュー

ビーフィーター
ジン 47度
1/3
スイート
ベルモット
1/3
シャルトリューズ
ヴェール
1/3
オレンジビターズ 1dash
ステア/カクテルグラス
ステアしてグラスに注ぎ、マラスキーノ・チェリーを飾る。レモンピールを擦る

飲めば極楽浄土

パリにシャンゼリゼという大きな通りがあることを知ったのは『オー・シャンゼリゼ』という曲からだった。軽快なフレンチポップスで、ダニエル・ビダルという可愛らしい女性が歌い、日本では1971年に大ヒットした。

それから日本語の歌詞がついていろんな歌手がカバーする。中学生になっていたわたしは、あまりにもこの曲が世の中に流れ出るものだから拒絶反応を起こしてしまったほどである。

しかしながら、大人になって飲んだカクテル「シャンゼリゼ」はとても好ましい味わいだった。聴き飽きた感のあったあの曲も、まあ、いいか、となったのだから味覚ってのは凄い。

コニャック、ハーブ系リキュール「シャルトリューズ ジョーヌ」というフランスの酒にレモンジュース、少量のビターズをシェークというレシピだ。

ベースは「クルボアジェV.S.O.P.」。コニャックがジョーヌの甘みのあるハーブのスパイシーさやレモンの酸味を柔らかく包み込んでいて、コクというか厚みがありながらすっきりとした後口に仕上がる。「シャルトリューズ」の風味がふんわりとそよぐのがいい。

色調はカクテル「サイドカー」と似ている。レシピも「サイドカー」のアレンジ的な感覚といえるだろう。まだ飲んだことのないという方には是非にとおすすめする。甘酸のバランスがよく、太陽の光が注ぐシャンゼリゼ大通りのマロニエの並木を散策したくなる、ような気になったりするかもしれない。

実は、わたしはシャンゼリゼ通りを心地よく歩いたことがない。パリには何度か出かけたが、すべて真冬か真夏の極端な季節であったため、ゆったりと歩くなんていう気分になれなかった。ちょっとは歩いたけれども、寒さや暑さに嫌気がさしてしまい、すぐさまカフェやレストランに入った。あるいはタクシーに乗ってどこかへ移動した。記憶に残っている絵は車窓からの景色である。

女性ならば気温なんぞに負けることなく、ファッションブランドの旗艦店を覗いてみようとするだろう。

凱旋門からコンコルド広場まで約3㎞。初夏とか初秋に訪れて、一度はマロニエ並木の下をゆっくりと歩いてみてもいいかな、と。でも、わたしのことだから結局は歩かないんだろうな。カクテル「シャンゼリゼ」で十分満足している。


シャンゼリゼ通りをフランス語で綴ると L'Avenue des Champs Élyséesとなる。Champsはフィールド、Élyséesはギリシャ神話においての極楽浄土を意味するエリュシオンという言葉に由来するらしい。

つまり“極楽浄土通り”ってことなのだ。そこを歩こうとしないわたしは、死後どうなるのだろうかと想ったけれど、カクテルを飲んでいるからきっと大丈夫、間違いない、と言いつつ、何が大丈夫なのかは自分でもわからない。ちなみにフランス大統領官邸のエリゼ宮殿も同じ意味であり、極楽浄土宮殿なのだ。

この通りは世界中の人が知っている華やかで美しい通りというだけでなく、フランス人の誇りの道でもある。

毎年7月14日のパリ祭では、ヨーロッパ最大ともいわれている軍隊パレードがおこなわれる。他にも大人気のスポーツ、自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」最終ステージのコースでもあり、ゴールにもなっている。

シャンゼリには輝くビジューが似合う

ではフランスのリキュール「シャルトリューズ」つながりでカクテルをもう一杯紹介しよう。シャンゼリゼ通りには高級ブティックやジュエリー、アクセサリーのショップがあるから、輝きのあるカクテルがふさわしい。

宝石はフランス語でBijou(ビジュー)。カクテル「ビジュー」は煌めきあふれる素敵な一杯で、切れ味のよさがある。「グリーン・アラスカ」的な気配に「マンハッタン」的な風味もあり、わたしは大好きだ。

使用するのは「ビーフィータージン47度」に「スイートベルモット」、そして「シャルトリューズ ヴェール」。これらはすべて同量であり、ビターズを加えてステアする。ジンとベルモットにエキゾチックなハーブ系リキュールのヴェールが溶け込むと、コスモポリタンな感覚となる。「グリーン・アラスカ」よりもこちらを好むという人もいるかもしれない。

カクテル「ビジュー」はいろんな呼び方をされている。その色調から「アンバー・ドリーム」(Amber Dream)、そして「エメラルド」(Emerald)。他には「ゴールデン・グロー」(Golden Glow)、「ジュエル」(Jewel)とも呼ばれる。すべてレシピは同じなのに、これだけいろいろな名を持つカクテルも珍しい。魅力的な味わいがそうさせたのかもしれない。


さて、「オー・シャンゼリゼ」という曲だが、原曲はなんとイギリスで1968年に発表されている。サイケデリック・バンド、ジェイソン・クレストの『ウォータールー・ロード』という曲だった。いまいちだったのを、フランスの当時の人気作詞家ピエール・ドラノエがフランス語の詩に変えたのである。

原曲の詩の舞台はロンドンのウォータールー通りなのだが、パリのシャンゼリゼ通りになっちゃって、またそれをロンドン在住アメリカ人歌手のジョー・ダッサンがシャンソン風のフレンチポップスにアレンジしてしまったのである。

ダニエル・ビダルに行き着くまでにはいろいろあったんだね。まあ、わたしはカクテルが美味しいのであれば、なんだっていいんだけれど。

「シャルトリューズ」に関するエッセイはこちら

第1回「春を謳うテイスト」ハーブ系リキュール

第33回「沈黙が生むひかり」アラスカ

「サイドカー」に関するエッセイはこちら

第28回「貴婦人のお散歩」サイドカー

イラスト・題字 大崎吉之
撮影 川田雅宏
カクテル 新橋清(サンルーカル・バー/東京・神楽坂)

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