バーボンウイスキー・エッセイ アメリカの歌が聴こえる

パルプマガジン

細い澄んだ音と太い丸みのある音が重なる。バードは64小節の主題を息つくことなく吹く。建物が震えているような感覚につつまれる。客が歓喜の声を上げる。彼はそれを受け止め、曲の第2コーラスのダクテイルのリズムで下降する速い旋律の中に溶け込ませる。

アル・ヘイグがコードチェンジのキューを出し、レヴィはふたつの違うリズムを同時に叩いている。ガレスピーが加わり、バードと8小節のフレーズのやりとりをする。ガレスピーはバードと同じように速く吹き、完璧な演奏をし、バンドがひとつになっていく。

ジャズ・ミュージックの革命のひとつがここに存在する。それまでのジャズ界の大勢にはまったく理解されてはいなかったが、観客の中にいる若手ミュージシャンたちにとってはこの演奏が、この音楽が、権威をもって語られているように感じられた。


バードは有名になればなるほど奇行が目立つようになる。伝説上の人物であるからこそ逸話も多くあって当然ともいえるが、自分の創造する音楽、ビバップの世界に入り込むほどに激しくなっていく。

ハリウッドのビリー・バーグのステージに40分以上遅れて登場したのは、まだまともなほうだった。コミーダ・コンキスタドールと呼ばれるメキシカンディナーを2人前たいらげるために費やされた時間だった。

ニューヨークのミントンズ・プレイハウスで1942年からバードとプレイしたディジー・ガレスピーは我慢強く付き合った。ほんとうに面倒をよくみている。

大食漢であり、しかも睡眠をあまり取らなかったといわれているバードは、いい曲が浮かぶと夜中であろうと時間に関係なくガレスピーの家にやってくる。朝3時頃にベルを押す音がしてガレスピーが玄関に出てみるとアルト・サックスを抱えたバードがいる。「困る」と怒るガレスピーに、「夜が開けると忘れちまうよ」とバードは言い返す。ドアを無理矢理締めると、バードはアタマに浮かんだばかりの曲を玄関先で吹きはじめるのだった。

ガレスピーは紙と鉛筆を探し、慌ててそのメロディをメモする。バードのほうは譜面にしてくれるのを承知で訪ねていた。


さて、次回もバードのつづきを語ろう。ジムビーム プレミアムを味わい、ジャズを聴きながらお待ちいただきたい。

インプロヴァイゼーションの世界を満喫するには、魂を自由に遊ばせてくれるプレミアムなバーボンウイスキーこそがふさわしい。

(第18回了)

for Bourbon Whisky Lovers