碧Ao誕生までの記録

vol5

デザインで挑む『新しい時代のメッセージ』

味わいもさることながら、そのデザインもこれまでのウイスキーと一線を画す『碧Ao』。
新しい個性の誕生にデザインの領域から関わった二人に、意匠に込めた想いを聞いた。

碧Ao TASTING NOTES
碧Ao TASTING NOTES

個性を見つめ続けた
約2年の歳月

約2年。『碧Ao』のデザインに費やされた月日は、他のそれを圧倒する。サントリーデザイン部からプロジェクトに参加したのが、クリエイティブディレクター古庄章子とシニアデザインディレクター片岡啓介の二人だ。

プロジェクト発足時から『碧Ao』を見つめ続けてきた二人は、その個性をどのように捉え、そしてどのように表現へと昇華させていったのだろうか。

覚悟と責任
10年後も
愛されるデザインを

古庄:ウイスキーの仕事は私たちにとって特別。非常に大きな責任も伴うため、そこにかける強い想いが必要になります。私たちは『碧Ao』のプロジェクトスタート当初よりチームに参加し、コンセプトやネーミングといった根幹部分から携わりました。想いを一つにするために、この過程が絶対に必要だと考えていました。

片岡:ウイスキーの仕事に関われることはとても貴重なことです。この会社にいてもみんながやれるわけじゃない。ましてウイスキーの新商品なんてデザイナー人生で何回できるか分からないこと。それだけ強い覚悟と責任を持って臨みました。

ウイスキーは一度世に出したら何年も残る。10年後も愛されるデザインをつくらなければいけないのです。

「伝統と革新」
「世界と日本」
相反する
要素を一つに

片岡:最も苦慮したのは二つの軸のバランス。一つはウイスキーらしさを守りながら挑戦の姿勢を感じさせる「伝統と革新」という軸。もう一つは世界の原酒と日本の技の融合を感じさせる「世界と日本」という軸。この二つの軸のどこが着地点として適しているのか、正解を探してとにかくアウトプットを試していきました。デザインスケッチは100枚以上描いたと思います。

古庄:「世界と日本」という点で言うと、海外のデザインは左右対称のシンメトリーなものが多い。一方で日本人は床の間の一輪挿しのような、空間の間を美として感じ取るものだと思っています。だからこそシングルモルトウイスキー『山崎』のラベルは、左右非対称のアシンメトリーなデザインによって最も日本らしい表現をしているのだと思います。このような考え方を取り入れながら、『碧Ao』の個性をあらわす表現を追求していきました。

ラベルデザインの変遷。最終デザインに辿り着くまでに数多くの試作があった。

守ること、挑むこと
どちらにも妥協しない

片岡:ラベルのデザインレイアウトでは「伝統」を意識しました。左に英語を配置して、右に墨文字がくるレイアウト。これは『山崎』や『響』から続く伝統を継承したものです。

「革新」を象徴的に表しているのがAoの墨文字。英文字を書で表現したことは、私たちにとって大きな挑戦でした。この書体にたどり着くまでに数え切れないほどのパターンを試し、『碧Ao』らしさとは何かを考え抜きました。この墨文字によって「世界と日本」というテーマも同時に表現することができたと感じています。

五角形の頂点が
世界と日本をつなぐ

片岡:世界5大ウイスキーを象徴するモチーフとして、五角形というアイデアは早い時期から温めていました。しかし、正五角形ではウイスキーらしい重厚感が感じられなかった。堂々とした風格を感じさせること、ラベルデザインの印象を引き立てること、この二点にポイントを置き、何度も形状の見直しを行いました。そうして試行錯誤の末にたどり着いたのが、五つの面でサイズに差をつけた変形の五角形なのです。

さらに、五角形の頂点をボトルの正面に向けるという新しい表現にも挑みました。頂点を正面にして左側を見ると、英語が並んだ「世界」を感じる面。反対に右側を見ると、墨文字が佇む「日本」を感じる面。この「世界」と「日本」が頂点で合わさり一つになる。このボトルにはそんなストーリーを込めているのです。

右が最終版のボトルデザイン。左から順に試作が重ねられていった。

「世界を旅する」
ずっと
頭の中にあったイメージ

片岡:『碧Ao』のブランドカラーである碧(あお)色は海をモチーフにしています。ただし、表層の明るい海ではなく世界をつなぐ深い海。比喩的にウイスキーの味わい深さを感じさせたいとも考えていました。

ブランドカラーをどこに配置するかも吟味したポイント。初期の試作ボトルではラベル紙に白、墨文字にブランドカラーを配色していました。その次に試したのはボトル自体をブランドカラーにするというアイデア。しかし、これでは深さが感じられなかった。検証を重ねたどり着いたのが、ラベル紙に碧(あお)色を使い、墨文字に金を使うという配色。この色使いによって高貴な風格がぐっと高まりました。

古庄:色を決定する際には、実際にBarにボトルを置いてみてお客さんの目線での見え方も確かめます。実際、Barの薄暗い環境に置いたとき墨文字の金色が光を反射しすぎて見えづらかった。そこで光沢の強さを細かく調整し、最終的にややマット調の金色を採用しました。

片岡:デザインを考えはじめたときから、僕の頭の中に「世界を旅する」というイメージがずっとありました。世界の原酒が海をわたり長い旅を経て集まった、そんなストーリーを想い描いてボトルネックには羅針盤のモチーフを添えています。

この挑戦がウイスキーの
歴史に
刻まれるはず

古庄:歴史を振り返ると、角瓶やオールドのデザインはどこか洋風な雰囲気を持っています。これはウイスキーという西洋のお酒でありながら日本的形状をほどこす、和魂洋才の文化を取り入れていたから。

それから時代が変わりウイスキーが日本に定着し始めると、墨文字をあしらった日本らしいデザインが登場します。ジャパニーズウイスキーという存在を主張することにデザインの役割が変わったのです。このようにウイスキーのデザインは時代によってそれぞれ果たすべき役割を担ってきました。

SUNTORY WORLD WHISKYという、新しい時代のメッセージを背負った『碧Ao』。それに相応しい姿を追い求め、挑戦し続けた。その到達点がこのデザインなのです。