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Music Explorer Concert Project 事務局「MECPの音楽ワークショップ&Heart to Heart Concert」

  • 実施日時
    2021年12月4,12,17,23,26日、
    2022年2月26,27、3月23,26日、9月1,17,30日、10月24,31日
  • 実施場所
    狛江市中央公民館、国立学園小学校、丸森町立耕野小学校
    しばさき彩ステーション、Gallery&Cafe Warehouse Garden
    調布市総合福祉センター、仙台東教会、潟上市立天王南中学校、梅の湯
  • プログラム

    ワークショップ
    コンサート

  • 出演

    細川奈津子、水谷ヒカル、松井陽菜代・井上綾子、佐藤麻里
    井上 葵、柏原悠、奈良原裕子、鈴木真衣、千葉展子、青嶋祥代
    千田浩太、廣田真理衣、加藤星南・高見秀太朗

主催者からのレポートをお届けします。
 言葉以外の手段で伝えられる思いに心を寄せ、多様な感覚への気づきから「心をつなぐ」こと、音楽を通じたコミュニケーションが、私たちのワークショップ&コンサートです。コロナ禍では、医者の代わりにはなれなくとも、心に寄り添って音楽の感動を共有することから、笑顔の輪を広げていこうと身近な活動を継続しました。音楽の場をご一緒した皆さまとは、ゆるやかなつながりを実感しています。ここからあたたかく優しい社会が少しずつ生まれるのだと信じています。

 陸前高田市や石巻市など、津波の被害の大きかった沿岸の各地では、高台移転や祈念公園の整備が進んでいます。津波で多くの児童の命が失われ、裁判により学校と行政の過失が認められた石巻・大川小学校も、展示施設や周辺整備を行い「震災遺構」として公開されました。そして、2021 年 12 月に訪れた宮城県丸森町は、震災と原発事故からの復興の矢先、2019 年に台風 19号の多大な被害を受け、市内のあちこちに爪痕を残しています。群読の伝統のあった耕野小学校も、2021年度での閉校が決まりました。各地で人口流出や高齢化などの新たな課題は切迫し、ハード面による支援だけでは太刀打ちできないことは明らかです。むしろ思いをつなぐ取り組み、ソフト面での新たな防災の取り組みを継続しなければ、歴史は繰り返すと証明しています。

 仙台で継続していた地域向けのコンサートも、新たなフェーズに入りました。「心をつなぐ」として、復興の過程にあるコミュニティの再生を大きな目標としていましたが、さらにその先、日々の地域における取り組みと連動し、音楽を通じて社会や子どもを支援する活動を、異なる角度からのアプローチにより活性化するための「協働」を意識した取り組みを実施しました。地域の少年少女合唱団と連携し、子どもたちに向けた体験会とコンサートを同時開催。豊かで継続的な体験のきっかけとなりました。

 音楽による社会貢献活動を継続するには、担い手となる次世代の育成や、多様な場での演奏機会の創出も急務です。そこで現役の音大生も再度巻き込み、多世代の「第三の居場所」しばさき彩ステーション、Cafe&Gallery Warehouse Garden、調布市総合福祉センター・デイサービス アイビーの3 カ所では、特に演奏家育成の目的をもって開催しています。さまざまな思いをもって活動している方々の声にふれ、実際につながる経験から、私たちが音楽でできることを考えます。

 2022 年10 月には不思議なコンサートが実現しました。なんと会場は「銭湯」。定休日に開放頂いた大浴場で、お湯ではなく音楽を全身で浴びます。街の銭湯はコミュニティの拠点。この日は男女も年齢の垣根もなく、地域のみんなであたたかくつながる時間となりました。お越しくださった方には、銭湯の招待券をプレゼント。日常の支え合いにつなぎます。控室はお湯のない浴槽の湯船でした。

 長引くコロナ禍で、子どもたちの体験の機会が減少していることのみならず、表情が見えないコミュニケーションを継続していたことの影響は甚大です。小中学生と接している実感から、日常生活において自然と身につけていたはずの、自己を表現する力、そして他者の思いに寄り添う力も低下していることを実感します。このあと数年かけて、間接的に社会に影響を与えてくるでしょう。私たちが東日本大震災からの心の復興において開発してきたプログラムは、音楽で他者に寄り添うことを大きなテーマにしてきました。内なる殻を破るプロセスにも長い時間がかかりましたが、コロナ禍で外的に殻をかぶってしまった子どもたちに、手遅れとならないよう、のびのびとした心の成長を取り戻すことができるのか、今求められる音楽による活動は非常に重要であると考えています。
 これまで活動を行ってきた宮城県七ヶ浜町に加えて、秋田県潟上市でも、自治体・教育委員会とも連携し、多くの小中学校にてワークショップを展開しています。他団体とも連携しつつ、今年度MECP としては天王南中学校にて、学年ごと3回に分けて実施しました。