2025.12.15
サントリーをデジタルで変える。若手社員が挑むD2CビジネスとAI活用


サントリーのデジタル&テクノロジー部門で活躍する社員を特集する本シリーズ。第5回は、D2Cビジネスモデルの構築やAI活用推進に携わっている、サントリーホールディングス株式会社 デジタル本部デジタル推進部の赤川沙也香さんにお話を伺いました。
D2CとAIが拓く、サントリーの新しい挑戦
赤川さんが所属するデジタル推進部は、サントリーの「やってみなはれ」をデジタル領域で体現し、事業全体の変革をリードしていくことを目指しています。
赤川さん:サントリーホールディングス株式会社のデジタル推進部は、グループ全体のDXを横断的に支える新しい組織です。部署のミッションは、デジタルの力でビジネス構造を変え、グループ全体の売り上げや利益を最大化することです。
D2C(※)による新しい販売モデルの構築や、AIを活用した業務改革、さらには生活者とのコミュニケーション設計まで…サントリーが大事にしてきた「人を想う」姿勢をデジタルの力で再構築し、企業とお客様の関係をより深くしていく。それがデジタル推進部の挑戦です。
とくにD2Cは、サントリーにとって従来の「流通ビジネス」「自販機ビジネス」に続く、「第三の柱」になり得るビジネスモデルです。今はお客様と企業が直接つながることによって、まったく新しい購買体験や企業価値をつくり出す挑戦の真っ只中にいると感じています。
※D2C:Direct to Consumerの略。メーカーやブランドが自社の商品を、卸売業者や小売業者を介さずに、自社ECサイトなどを通じて直接消費者に販売するビジネスモデル。
赤川さんは2018年に新卒として入社以降、デジタル領域で活躍。データ分析やUI/UXの構築など、デジタル一筋でキャリアを積んできた。
サントリーのD2Cでは、これまでのマスビジネスだけでは拾いきれなかった、個々の想いに寄り添う、さまざまな可能性を模索しています。
赤川さん:たとえば、人には言いづらい心身の悩みをサポートするセルフケアドリンク「menphys(メンフィス)」は、若者のデリケートな悩みに応えるために生まれたブランドです。D2Cビジネスとも相性がいいと感じています。
ほかにも、「BOSS」の製造工程で生まれる高品質なコーヒー豆など、店頭には並べきれない商品も、ECサイトなら物理的なスペースという制約なく取り扱うことが可能です。マスビジネスにおいてはすぐに廃番になってしまうような商品のなかにも誰かが必要としている商品があり、D2Cではその活路を見出すことができると感じています。
D2Cビジネスは単なるEC販売にとどまりません。サントリーウエルネスが「セサミン」や「ロコモア」で新たな健康食品市場を切り拓いてきたように、D2Cビジネスはこれまでにない価値観や文化を社会に根づかせる手段にもなり得ると思っています。
「menphys」をはじめサントリーブランドの商品を販売している「サントリー食品オンラインサイト」。
そしてもうひとつ、赤川さんが注力しているのが「AI活用の推進」です。社員がAIを安心して活用できるよう、活用マニュアルの作成や勉強会を開催しています。
赤川さん:将来的には、AIを活かした新しい顧客体験の創出を目指しています。AIの活用を通じて、お客様の「本当の悩み」を可視化することができれば、これまでになかったサービスがきっと生まれるはずです。
たとえば、飲料や食の好みをAIとの会話から導き出したり、健康の変化を予測して生活改善を提案したり――AI活用の可能性は無限大ですが、AIだけではなく「AIと人が協働する時代」をサントリーらしく描いていくことも、デジタル推進部の使命だと思っています。
データから「心の体験」へ。進化を続けるデジタルマーケターの軌跡
2018年に入社した赤川さん。これまで一貫してデジタルを担当する部署に携わってきました。就職活動をしていたころから、「これからはデジタルの時代だ」と強く感じ、入社当初からデジタルマーケティングができる部署を希望していたそうです。
赤川さん:入社当初から社内では、SNSなどの活用が進みつつあり、社内全体がデジタルをどう活かしていくのかを模索している時期でした。
初期配属先はサントリーシステムテクノロジー株式会社で、グループ全体のシステムを担う会社でした。そこではPOSデータを活用し、キャンペーンの効果測定といったデータ分析を担当していました。ただ、当時はまだデジタル部門は「裏方仕事」のようなイメージがあったように思います。
赤川さんは、新卒でサントリーグループのIT戦略立案・実行を担うIT機能会社、サントリーシステムテクノロジー株式会社に配属。同社は2025年に新設されたサントリーホールディングス株式会社情報システム部に移管。
2023年には、サントリーホールディングスのデジタルマーケティング部に異動。そこで最初に携わったのが、あるブランドの会員プログラムの新規機能開発でした。
赤川さん:ドリンクを購入してQRコードを読み込むとポイントが貯まり、オンライン上で称号を得られるという機能設計に携わりました。商品に対する愛着形成のための仕掛けでしたが、ユーザーの特性を分析し、そこに見合った体験設計を考える作業がとても楽しかったんです。
「ワクワク」という感覚的なものをデータで論理的に検証し、UI/UXの観点からリアルな体験として落とし込んでいくーー数字の分析だけに留まらず、人の心を動かせるデジタルマーケティングの可能性とおもしろさに気づけた貴重な経験でした。
そして現在、赤川さんはデジタル推進部で「サントリー食品オンラインストア」や「D2C studio」を担当。D2Cビジネスモデルの構築を進めています。
2024年に立ち上がった「サントリー食品オンラインストア」では、「menphys」や「サントリーコーヒーロースタリー」などサントリーの各ブランドの商品だけでなく、オンラインストア限定商品なども数量限定で販売。
赤川さん:「サントリー食品オンラインストア」では、実際にサイトを運営しながら、どんな商品が売れやすいか、どんなUI/UXが最適かを検証しています。そこで蓄積された知見はサントリーのD2Cのノウハウとして、グループ全体に共有されていくという仕組みです。
一方、「D2C studio」とは、ECサイト構築のプラットフォームであるShopifyを活用しながら、社内のD2Cサイト立ち上げや運用に携わるプロジェクトチーム。各事業部にノウハウを提供しながら支援を行う「D2Cの伴走者」のような存在です。
サイト運営のために、関連する部署やブランドを取材するのもデジタル推進室業務。
現在、サントリーグループでは、「サントリースポーツオンラインショップ」や「サントリーホールオンラインショップ」など11のECサイトを運営しています。
赤川さん:ECサイトはお客様とブランドが直接つながる「接客の場」です。サイトを訪れて購入し、商品が届くまでの一連の流れを、心地よい体験としてお届けできるよう、チームで何度も議論を重ねながら、最適な設計を模索しています。
たとえば、ログイン方法やクーポンコードの利用方法。こうした細かい操作は、UI設計次第で離れてしまうお客様も多いです。そういった不親切な部分を検証・改善することで、問い合わせ件数が大幅に減少しました。ユーザーメリットに即したUI設計には、まだまだ磨くべき余地があると感じています。
「サントリーサンバーズ」のECサイト。サントリーでは、カテゴリに応じてさまざまなサイトを運営している。
デジタルで人と響きあう。「デジタルサントリアン」の野望
データ分析に始まり、UX設計、D2Cビジネスの構築、AI活用と、デジタル領域でのキャリアの幅を広げてきた赤川さん。そんなサントリーのデジタル事業には「温かさ」があると感じています。
赤川さん:デジタル部門におけるサントリーらしさとは何かを考えたときに、「人」を中心に捉える姿勢があると思います。デジタルの世界では効率やスピードが重視されがちですが、サントリーのデジタル領域は、少し異なる文化を持っています。
それは、「人に寄り添う最適解」を大事にしているということ。数字よりも、その裏にある人の気持ちを大切にする。そこに、サントリーのデジタルの「温かさ」があるんです。デジタルの世界でも「人を想う温度」が感じられるのは、サントリーならではだと思っています。
また、サントリーが持つスケールメリットも強みのひとつ。流通、倉庫、商品開発、宣伝広告にいたるまで、いろいろなマーケティング手法を大胆に試すことが可能です。さらに、前例主義にとらわれずに新しい挑戦をどんどん進められる点も「やってみなはれ」精神の表れだと思います。
デジタル領域に関わらず、サントリーの社員には「どうすればもっとワクワクできる仕事になるか」を常に考えている仲間が多い、と赤川さん。
多種多様な人材が集まるデジタル推進部。活躍しているメンバーの共通点はどのようなものでしょうか。
赤川さん:デジタル領域においては、誰かの成功モデルをトレースするのではなく、自分たちの手で新しい価値を創造する時代が来ていると思います。社員一人ひとりがAIという新しい武器と人への想いを持ち、自分たちの手で進化を促していく――サントリーのデジタル部門はまさにその最前線です。
サントリーには、どんな立場でも自分の想いをまっすぐ話せる人が多く、「やってみたい!」と声を上げれば、周りが本気で応援してくれる文化があります。私自身も、データ分析からUI/UX、そしてAI活用へとキャリアを広げるなかで、たくさんの人に支えられてきました。
「デジタルを通じて、人の心を動かしたい」「人間らしさのあるテクノロジーを形にしたい」――そんな想いを持っている人にとって、サントリーのデジタル部門はきっと最高の舞台になるはずです。
社内のデジタル関連の部署が一堂に会して行われた忘年会。ベテランから若手まで多彩な人材がそろう。
急速に進化を続けるデジタルの最前線で、赤川さんはさらなる展望を抱いています。
赤川さん:生成AIを効率化の手段としてだけではなく、「人を理解するためのパートナー」として使いたいですね。サントリーの理念である「人と自然と響きあう」をデジタルで実現するならば、AIは「人と響きあうための道具」であってほしいと願っています。
また、D2Cを通して「文化をつくる」ことも、サントリーらしい挑戦なのかもしれません。これまでになかった価値観を、デジタルを通じて社会に広めていく――それが私のサントリアンとしての使命だと考えています。
※社員の所属・役職、内容は取材当時のものです。
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社歴や知識よりスタンスが大事。「デジタル」で体現する"やってみなはれ"の精神

赤川沙也香Sayaka Akagawa
サントリーホールディングス株式会社
デジタル本部デジタル推進部
2018年、サントリーシステムテクノロジー株式会社に入社。デジタルマーケティング部に配属され、各ブランドのデータ分析に従事。2023年1月にサントリーホールディングス株式会社デジタルマーケティング部に異動し、「プレモルメンバーズ」などを担当。2025年4月より同デジタル推進部にて、「サントリー食品オンラインストア」や「D2C studio」に携わる。