2025年8月 8日
#970 宮尾 昌典 『カッコええなー』
昨シーズン不出場ながらも注目の新人・宮尾選手。数々の名選手を生んでいるサンゴリアスの9番を引き継いでいくことができるでしょうか。(取材日:2025年7月中旬)
◆いろいろなコミュニケーション
――3歳からラグビーをやっているにもかかわらず、個性的でどちらかと言うとラグビーっぽくないと感じますが、自分ではどう思っていますか?
最初にだいたい言われるのは「サーフィンやってそう」とか。「ラグビーをやってそう」とも言われるのは言われるんですけれど、喋らなかったり遠目から見ていたりすると、身体もそんなに大きくないので、サッカーとか思われるかもしれません。別にそういう雰囲気を出そうと思っているわけではないですし(笑)、ラグビーに染まらないでおこうとか、染まろうとかという考えはないです。
――見るからに個性が溢れているように思いますが
そうなんですかね。自分ではあまり分かりませんが、割とその場に馴染めると思います。サンゴリアスにはシーズン終盤の2月に合流したんですけれど、アットホームな環境でみんなが迎え入れてくれましたし、早稲田大学の先輩も多いですし、元から知っている選手もしますし、僕の中でも馴染みやすい環境でありました。ただ、キャラクターが立っているという認識はないですね(笑)。
――馴染むためには自分から飛び込んでいくのも大切だと思いますが、性格的にオープンですか?
僕は結構、オープンだと思っています。最初に監督とミーティングをした時に、「やっぱりスクラムハーフというポジションは、流さんを見たら分かると思うけれど、コミュニケーションが大切だろ?」と言われました。そして「ラグビーだけのコミュニケーションも大切だけれど、ラグビー以外のプライベート、練習が終わって夜にご飯に行ったり、そういうグラウンド外で話をするコミュニケーションも、ラグビーに関わってくるぞ」とも言われたんですが、もとから人と喋ることが好きなタイプなので、そこに関しては「どうしよう」ということはありませんでした。ずっと仲の良い人と一緒にいるということではなく、割と僕はみんなと仲良くさせてもらっていて、先輩の中で喋らない人がいないくらい仲良くさせてもらっているので、そういうところでいろいろなポジションの先輩といろいろなコミュニケーションをするということは、これまで以上に心掛けています。
――コミュニケーションを取ることは面白いですか?
面白いですね。皆さん、もう大人なので、それぞれの生活があると思います。「ラグビー以外にこの人は何をしているんだろう」とか、最初はそういう疑問もありましたし、「プロ選手はどんな生活をしているのかな」とか。いざ初めて自分がプロになった時に、正直、最初は時間がありすぎて、やることがないくらいだったんですけれど、先輩の真似と言うか、先輩がやっていることに連れて行ってもらったりして少しずつ生活のリズムを掴んで、そういうところからコミュニケーションが生まれてきているので、割と良いのかなと思っています。
◆準備とリカバリー
――実際にプロ選手に聞いてみて、自分がやっていなかったことや足りなかったこと、知らなかったことなど、発見はありましたか?
まず練習前の準備の部分と練習後のリカバリーが、ぜんぜん意識が違いました。みんなは「やらなきゃ」という感じではなくて、割と当たり前のように朝早く来て、シャワーを浴びて準備をして、ストレッチして、ジムして、栄養を摂って、それが習慣になっているのかもしれませんが、習慣にすることって難しいことですよね。その習慣のところを最初は観察しました。この時間帯に来て、ストレッチはだいたいこのくらいして、ジムをやる。メニューも人によって違うので、早くジムを終えてフィールドでのトレーニングのボリュームを上げる人もいれば、ジムをガッツリやってフィールドでの練習は全体練習だけで終わる人もいたりします。
そういうところを見て、僕にはどっちが合っているのかと考えると、サンゴリアスに入ってまだ半年しか経っていませんが、「もうちょい経っているかな」という感覚ですが、僕はまだまだ足りないので、どちらもやるべきだと思います。ここからが勝負なので、シーズンオフ中のトレーニングや日々のトレーニングをしっかりと積み重ねて、先輩の真似をして、いろいろなところから吸収できたら良いかなと思っています。
――真似しながら実際に自分に合ったやり方をやってみて、明らかに良くなった、変わったというところは?
プレーのところは、正直、練習試合に何試合かしか出ていませんが、そんなに悪いこともないと思います。大学の時に膝を怪我したんですけれど、その怪我をする前くらいにちゃんと動けているかなと。早稲田で先輩の小林賢太さんにも「お前、怪我する前くらい動けてきているな」と言われていました。やっている時は自分では正直、どこが良くなったかは分からないですけれど、周りで一緒にプレーしている人って分かると思うんですよね。そういうことを言ってもらったので、何かしら変わっているのかなと思います。
膝に注力したトレーニングとバランス、コアなど、やってきていなかったトレーニングがあるので、それをやることで膝の安定感であったり、走り方とか、そういうところがレベルアップしているんじゃないかなと思っています。膝だけをトレーニングするというよりは、膝の周りとかもトレーニングしないと不安定であったり、また怪我をしたりするので、「周りの筋肉から固めていくことも大切」と言われていたので、膝は良い感じになっています。
◆真剣にやろう
――3歳からラグビーを始めて、ずっとゲームをコントロールする側をやっていたんですか?
ずっと小さかったんですけれど、小学生とかだとあまり身長差がないので、小学校から段々学年が上がっていく毎に、センターからスタンドに行って、小学校ではずっとセンターとスタンドをやっていて、小学5年生くらいからスクラムハーフになりました。中学ではずっとスクラムハーフをやりながらたまにフルバック、スタンドオフなどをやっていました。高校からはずっとスクラムハーフで、たまにスタンドオフとかでした。
――お父さんの影響でラグビーをやられたそうですが、なぜラグビーを?
父親もラグビーをやっていました。すぐに辞めちゃったんですけれど、兄もラグビーをやっていました。僕は最初は水泳もやっていて、小学校とか土日が暇なので、その時に何かスポーツをとなった時に、スクールとかに知り合いなどもいて、いろいろな繋がりがあって、日和佐さん(コベルコ神戸スティーラーズ/サンゴリアスOB)と、世代は違いますけれど小学校と中学校が同じで、そういうところで「同じスクールに行ってみて」と言われたんだと思います。
僕も、正直、何でそこに行き始めたか分かりませんが、父親のラグビーの繋がりでスクールに連れて行ってもらって、鬼ごっこみたいにボールを持って人から逃げて、ボールを置いたら点数が入ると言われて、「逃げれば良いんだ」と思って面白くて、それでハマったんですかね。
――足は速かったんですか?
速かったです。チョコチョコチョコチョコしていました(笑)。「うわー、楽しい。ラグビーやりてー」というよりは、毎週、「無」でやっていたと思います。中学3年生くらいまで、先のことは何も考えずに、ただラグビーを楽しんでいましたね。「高校はどこに行きたい」ということもなくて、毎週「今日はラグビーか」みたいな感じで、中学校でラグビーしていましたね。中学2年くらいまではそんな感じでやっていて、ある時に「真剣にやろう」と思いましたね。
――それはなぜですか?
それは、たぶん兵庫県スクール選抜というものがあって、僕が1年生の時に、3年生の李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)がスクール選抜のキャプテンをやっていました。それで日本一になって、李承信とはスクールも一緒で「承信くん、カッコええなー」と思いましたし、結構、仲良くさせてもらっていて、男前でカッコ良くて、ラグビーが上手くて、日本一のキャプテンで、「カッコええなー」と思って、そういう人になってみたいと思って、ラグビーを真剣にやるようになりました。それがきっかけだと思います。
――そこでラグビーを選ぶということは、無心でやっていてもラグビーの面白さは感じでいたということですよね
中学の時は、12人制ですしスペースがめちゃくちゃありますし、どのポジションをやっても抜けますし、それが面白かったと思います。ラグビースタイルを見たら「京都成章が面白い」と思って、成章に行ってちゃんとやろうと思いました。
◆考え始めた
――足が速かったり抜けるのが面白かったところから、コントロールする側に回って、その面白さはどこにありますか?
それは高校に入ってからしか実感が無かったですけれど、高校に入っていろいろな先生に叩き込まれて、考えることを教わって、最初の頃は「分からん」って思っていましたね。15人制になってゲームタイムも長くなって、ずっと同じ攻め方していても無理ですし、「何なんやろな」と考え始めましたね。
――考えることも面白かったということですか?
面白いというか、湯浅先生(泰正)って、ヒントはちょっと出すんですよ。けれど答えは言わないんですよ。「ヒントは出すから、どういうプレーが正解かは自分で考えろ」と言われて、「これって正解で合っていますか?」と聞いても、答えは言ってくれないんですよ。だから正解かも分からないですけれど、「やってみろ」と言われて、やってみて結果が出れば「それが正解だ」と。まあ、「正解だ」とも言ってくれないですけれど、それで「この教え方、良いなー」と思って。なので成章出身の人たちって、考えることが出来ると思います。
――それが重荷になるのではなく、出来たことが面白かったということですか?
面白かったですね。基本的にライバルがいるところに入ってきたので、その人とかのプレーを見ていました。1年生の時は、片岡祐二という帝京大学に行った選手がいて、その人はめちゃくちゃ上手くて、「お前は祐二を見ていろんなことを学べ」と言われて、試合などを見ていて、キックのタイミングとかどのくらいの位置で蹴るのか、そういうプレーを見て、「言っていたことは、これが正解なのかな」と思っていました。それでそこから少しずつそういうプレーを真似してやってみて、コンテストキックとか裏へのキックの使い方が、少しずつ分かってきてという感じです。
◆日本でいちばん上手い人
――大学や社会人チームの選び方も、自分がより成長できる場所を選んだんですか?
そうですね。僕もアタックが好きなので、早稲田大学に行った時は、齋藤直人さん(スタッド・トゥールーザン/サンゴリアスOB)とは被っていないですけれど、「この人はスクラムハーフでキャプテンで、カッコええなー」と思っていました。早稲田っていろいろなバックグラウンドを持った人が来るので、正直、高校代表から入学する人の割合で言うと、帝京大学、明治大学が多くて、1人か2人が早稲田大学に入るというような感じでした。それ以外は早稲田実業とかラサールとか、頭が良い人が入ってきて、花園に出たことがないような子たちが集う中で、直人さんがキャプテンで引っ張って優勝して、「カッコええなー」と。あと普通に「早稲田ってカッコええなー」「早稲田に入ってラグビーしたらかっこええやろなー」って思って、早稲田に行きたいと思っていました。
――実際にカッコ良かったですか?
カッコ良かったですよ。僕が早稲田に入った時に小西泰聖さん(浦安D-Rocks)がいて、小西さんは直人さんと被っていたので、いろいろなことを教えてもらいました。あと河村謙尚さん(花園近鉄ライナーズ)もいて、僕が試合に出られるかは分かりませんでしたが、他の大学に行ってそこで試合に出られたとしても、早稲田で試合に出るのがいちばんカッコ良いと思いました。
――カッコ良さで選んだんですね
カッコ良さで早稲田を選びました(笑)。
――サンゴリアスについてはどうですか?
サンゴリアスは直人さんがいるし、流さんがいるし、サンゴリアスのスクラムハーフで試合に出る人は、いちばん上手いと言われる人として日本代表にも出ていると思います。僕からしたらチームと言うよりも、スクラムハーフだけを見た場合、サンゴリアスのスクラムハーフって、日本でいちばん上手い人という印象があって、正直、サンゴリアスに行くことを決めた時には試合に出られるとは思っていませんでした。けれど、試合に出られるチームに行くよりも出られないチームを選びたくて、サンゴリアスで試合に出ることは本当に難しくて、サンゴリアスで試合に出ることに価値があると思っています。
――それは自分の力を高めるためですか?
はい、そうです。僕は流さんがトップだと思っています。ちょうど僕がサンゴリアスに行くかどうかを悩んでいる時に、流さん、直人さんの2人が日本代表にいてワールドカップに行ったので、「この人たちのところに行って、この人たちを抜いたら、自分がいちばんだろ」と思いました。それがいちばん手っ取り早い方法だと思いましたし、スタイルがアグレッシブ・アタッキング・ラグビーで面白いですよね。どんなプレーをするのか分かりませんし、サンゴリアスってカッコ良いですよね(笑)。
――実際にサンゴリアスに入って流選手と一緒にプレーしてみてどうですか?
いろいろなことを教えてくれます。昨シーズン中にも、試合メンバーとゲーム形式の練習をしている時に、流さんのプレーを見て「こんなプレーをするんだ」と思った時に、その場で「あれは何でやったんですか?」と聞いても答えてくれます。流さんはこれまでのスクラムハーフの先輩よりもいろいろな選手と世界で戦って、いろいろなスクラムハーフを見てきて、いろいろな人と喋って、いろいろな知識を持っているので、それを僕は流さんから「ぜんぶ取ったろ」と思っています。だから、一緒に練習してとても楽しいです。
――早く吸収したいですね
そうですし、流さんが引退してから試合に出るのは嫌なんですよ。試合には出たいですけれど、流さんが現役の内に試合に出ることがカッコ良いかなと思っています(笑)。
◆いちばん価値のある9番を着たい
――今の課題は何ですか?
やっぱりゲームコントロールだと思います。大学とリーグワンを比べたらぜんぜん違いますし、流さんのゲームコントロールの仕方が素晴らしすぎるというか、プレーの精度も違いますし、ずっと落ち着いていますし、周りが見えていますし、正直、そこは教えてもらっても無理だと思います。それは試合を積み重ねて生まれてくる部分だと思うので、「ゲームコントロールはこういうイメージを持ってやるよ」という大まかなことを教えてもらえれば良くて、細かいところまで言われても、それは人それぞれ違うと思うので、僕になくて流さんにあるものをたくさん欲しいと思っています。
――今ある自分の特徴は何ですか?
特徴は抜けた後のランとか、ラックサイドを走り回ること、あとキックは割と出来る方かなと思います。パスについては、あまり上手いとは言えないというか、パスは課題ですね。
――更に自分のものにしたいと思っていることは?
キックの精度。あとキックの種類をもうちょっと増やしたいですね。それとパス。あとはディフェンスですかね。
――ディフェンスについてはどうですか?
出来る方だと思います。
――半年やってみて、体力的には?
特に問題はないと思います。サンゴリアスのディフェンスは割とスクラムハーフが参加した方が厚みが増しますし、スクラムハーフがタックルしなければ14人でディフェンスすることになるので、そこはフォワードにもバックスにもタックルしていきたいと思います。
――今の時点では出来ている方ですか?
サンゴリアスに合流してからは割とディフェンスはやったつもりです。
――次のシーズンの目標は?
試合に出ます。まずは先発で9番を背負うためにどういうことが必要なのかということを考えながら、流さんに教えてもらいながらやっています。教えてもらっていてもライバルではあるので、チームに合ったスクラムハーフ、チームを勝たせられるようなスクラムハーフになりたいですね。
確か小林賢太さんが1年目の時に怪我したけれど、10試合に出場しました。だからそれを超えたいと思っています。半分以上の試合に出るということと、先発で出たいと思っています。いま試合に出ている流さんと福田健太さんを抜いて、いちばん価値のある9番を着たいです。
――その思いの強さはどのくらいですか?
次のシーズンでは絶対ですね。「よっしゃー、やったれー」という気持ちではありますけれど、それを特に表現したりはしません(笑)。そして、いつかは日本代表になって、試合に出たいと思っていますが、まず今はサンゴリアスの9番で出たいという思いが強いです。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]