2025年8月 1日
#969 真壁 伸弥 『何のために勝つのか』
試合会場やイベントの場、そしてSNSでも活躍中の真壁パートナーシップ担当。実際にはどんな役割を担い、どんなことを目指してやっているのでしょうか?
シーズン中にファンクラブサイトのコーナー「FOR THE WIN」に掲載したインタビュー=①に、シーズン後のインタビュー=②を加えて、SPIRITS OF SUNGOLIATH としてお届けします。
① シーズン中インタビュー (取材:2025年3月)
◆サンゴリアスがあり続けるような活動
――2019年、現役を引退した時の涙のインタビュー以来のインタビューですね
いや、泣いたのは覚えていないです(笑)。
――その後いまのパートナーシップ担当になるまでは、どんなことをやってきたのでしょうか?
引退した後はラグビーから離れて、社業に専念していました。私が現役の時にも会社の方々のサポートがあって成り立っているチームでしたし、当時は企業チームでしたのでまだチームにスポンサーが少なく、会社側でサンゴリアスを応援する人がいなければ、サンゴリアスがずっとあり続けることはないと思い、サンゴリアスを応援するOBが会社の中でポジションを得て、サンゴリアスがあり続けるような活動をする、そして選手が引退したら自分たちの部署が受け皿になって、社業に入りやすくする、そういう文化だと思っていたので、頑張ってお酒の勉強もしましたし、そのような活動をしていました。
――部署はどちらですか?
現役の時はデパートを担当していて、外商部隊に対して営業をしていました。引退する時にはホテル課に配属されました。ホテルではいろいろなカクテルやウイスキーなどの高級品を扱いますが、そこの販売、ブランディングをやっていて、PM(プレミアム)営業部というところにいました。そこはお酒を売るだけではなくて、付加価値を付けるという役割があり、誰にウイスキーを売るのかをより考えるなど、それまでの営業とは違う形で仕事をしていました。そしてなぜか昼の職だけではなく夜の職も与えられて、夜は銀座、六本木を営業で回るようなことをしていました。ですので部署がふたつあるような感じで生活していました。
――ウイスキープロフェッショナルという資格を持っていますね
やっぱりそれも仕事には活きていました。ウイスキーを売るだけではなくて、その知識を使ってバーテンダーさんなども相手にやりとりしていました。ウイスキー×ラグビーはキャッチーですからね。数字は良かったですよ。私は"隙間産業"派で、ラグビーもウイスキープロフェッショナルも人気が出る前に手をつけるタイプでしたね(笑)。
◆営業をやっている人材
――サンゴリアスに戻ってきたのはいつですか?
今から約2年前ですね。担当店の居酒屋の女将から「均ちゃん(大野均/東芝ブレイブルーパス東京アンバサダー)がいるバーがあるから一緒に行きましょう」と誘われて行ったんですよ。そしたら、ドアを開けたら均ちゃんではなく、キヨさん(田中澄憲ゼネラルマネージャー)がいました。意味がわからなかった(笑)。私と均ちゃんは飲み友達なので、均ちゃんの名前を出せば来ると。それで実際に行ってみたら、キヨさんがいて「お前は最近仕事頑張っているらしいじゃないか。そういう営業をやっている人材が欲しい。サンゴリアスを一緒に作っていこう」という話をされて、夢を語ってもらったので、その夢に賛同して、「じゃあ戻れるのであれば、私はいつでも戻れる準備をします」と話しました。
――チームにはいつか戻りたいと思っていたんですか?
リーグワンでプロ化するという話を噂で聞いて、そうなってくると話は変わってくるなと思いました。私のキャリアは、もちろんサントリーでのキャリアもあったんですけれど、このチームをサポートしたいという思いの方が強かったんです。サンゴリアスはどういう体制になるか分かりませんでしたが、プロになって事業化していくかもしれないリーグワン発足時には、チームに戻りたいという気持ちがありましたし、チームに戻れなくても、サンゴリアスに関わる何かをした方が良いと思っていました。そして2年前にサンゴリアスに関わることになりました。
――現役時代も再びチームに関わり始めた今も、立場はサントリーの社員ですよね?
そうですね。サントリーのスポーツ事業部が2024年9月に出来たので、今はそこに在籍しています。
――イベントやSNSにかなり登場していると思いますが、それらはどんな活動なんですか?
自分なりにラグビーの良さを人々に伝える機会があったらぜひやりたいと思って、サンゴリアスとしての立場でやっているのと共に、それ以外に様々な仕事をしています。いま個人的にやっていきたいと思っているのは、スポーツプログラムを使った学校を作るお手伝いをしたいと考えています。今はサンゴリアスのイベントとしてやっているんですが、経営者の方々に「なぜ2015年が成功したのか、なぜ2019年が成功したのか」というところを伝えながら、このロジックはビジネスだけじゃなくて教育にも活きるんじゃないかと思っています。今はそういった機会を作ることによって企業の社長さんたちも参加されるので、そのコミュニティを活用してサンゴリアスへのスポンサーシップの話をさせていただいています。
――企業スポーツからプロ選手が増えてきた今のラグビーは、パートナーシップの活動含めて、どういう方向に変わってきているのでしょうか?
ただ勝つだけではなくて、何のために勝つのかということを前面的に出していく必要があるのと思います。もちろん目の前の試合に勝つことがチームの一番なのですが、そこについては、正直まだ答えが見えていません。大きくは"社会のために勝つ"とか、例えば社会貢献や、スタジアム周辺の地域とパートナーシップを組んでの地域貢献、などいろいろとチャレンジしている状況です。
◆何のために勝ちに行くか
――いまの活動をやっていての喜びや楽しみは?
やはりラグビーを知っている人が少ないので、ラグビーの良さを知ってもらい、本当に深いファンを作ることが面白いと思います。実際に初めてパートナーになってくださった企業の従業員さんから、直接手紙をもらったことが何回かあるんですけれど、「ラグビーって本当に素晴らしいスポーツで、こんなに素晴らしいスポーツがあることを知りませんでした。おかげで今は家族全員で見ています」とか「スポーツを見て病気を克服しました」とかのご意見をいただきました。そういう人たちがいるということを知って、とてもやりがいを感じています。
――改めていま思うラグビーの良さ、素晴らしさは?
自分のためだけじゃ絶対に勝てないスポーツであって、チームのためでもあるし、何のために勝ちに行くかというベクトルが外を向いているのが良いなと思いますね。仲間のため、このチームのためということが前提にあるのがスポーツの良さなのかなと思います。あと15人という人数が多いですし、その中に個性豊かな人たちがたくさんいて、ひとつの方向に向かって行くことが出来ることがとても良いスポーツだと思います。
――チームのためにというのは他のスポーツでもありますが、こんなに痛い思いをしてチームのためにやるものは、なかなか他にないですよね
チームのために身体を張れる、ということですよね。そういう気持ちが強い人がどんどん増えれば、社会全体も良くなるんじゃないかなと思いますね。会社に勤めている人は、どれだけ会社のためにと思えるかだと思いますし、ラグビーは企業に似たスポーツだと思います。人生にも似ていると思いますね。
前に進まなければいけないのに、一人で進めば必ず壁にぶつかります。仲間にパスをするとなると、ボールは後ろにしか放れない。キックをすればボールを簡単に前に進められるけれど、相手にボールを渡すというリスクが伴う。そのリスクのための準備が重要で、スーパースターがいても解決策にならない。そういうところが面白いなと思います。あとはこの力も使い方によっては悪い方向にも良い方向にも行くので、人間性が問われると思います。社会と繋がる良いスポーツだと思います。
――ラグビーは人間性が分かりますか
だから面白い。
◆サンゴリアスを愛してくれる人
――今後の目標は?
現状で言うと、地域貢献、どこの地域に根づくかというところが難しい状況だと思っています。ホストエリアは、港区と府中市、調布市、三鷹市になるのですけれど、自前のスタジアムがないんです。例えば、この前、山梨に行きましたが、本当に山梨のお客さんが楽しんでくれました。そういったスタジアム周りのファン、本当に全国からサンゴリアスを愛してくれる人を、さらに生み出していければと思っています。それの仕組みというか仕掛けづくりを頑張っているところです。
昨シーズンの1年は、営業するための社内の仕組みを作ることに全力を尽くして、正直上手くいっていると思っています。やっと結果が見えてきました。パートナーさんと出会う社内の仕組みを作って、その仕組みは上手く出来たので、今度は営業からチームのファンをもっと増やすことや、チームの価値を高められるような仕組みを作ろうと思っています。
――それには時間がかかりますね
まだ圧倒的にリソースが足りていないので、とても時間がかかると思っていますが、やはりスタジアムが鍵になるのではと思っています。そこは皆さんの協力も得て、少しずつ進めていきたいと思います。
――今シーズンのサンゴリアスはどうですか?
とても頑張っていると思います。リーグの質も大きく変わってきて、周りのチームも本当に強くなっています。それでも自分たちのラグビーを100%するために毎試合、全選手、全スタッフが圧倒的な準備をしてほしいですね。爽快な時も、もどかしい時も、どんな時もサンゴリアスの態度が全面に出せるように、チーム全体でコネクションしてほしいと思っています。それにしてもバックスは素晴らしいですよね。昔から松島選手のファンでしたが、最近は仁熊選手や河瀬選手をみて「いいなぁ」って思っています。長い目で見たら、相当強くなるんじゃないかなと思っています。
② シーズン後インタビュー (取材:2025年6月)
◆価値を作っていく
――シーズンが終わりましたが、真壁さんの仕事での今シーズンの成果はどうですか?
昨シーズンから継続的に行っているんですが、前のインタビューで少し形が見えてきたという話をさせてもらったと思います。細かく言うと、形を作りました。それが今、会社の営業のシステムのひとつみたいな形になっています。そうなると、私ひとりの力ではどうにもならないことが多くて、ゼロ・イチは出来たけれど、そのイチを膨らませるために手放した状態です。
――自分の役割は果たしたということでしょうか?
役割というか、会社の役割としては、しっかりと予算を達成するということになります。会社的にも個人的にも予算はもちろん大事だけれども、今のサンゴリアスにとって何が大事かと言うと、そこの順番としては、やっぱりチームの魅力だったり、価値、何をどうするんだというところを作っていく必要があって、そこはスタッフみんなで作っていかなければいけません。そこを達成できるような、そして営業とも関りあるようなことを進めていく、難しい話なんですけれどそこを進めて行きたいと思っています。
――チームの価値を、強いだけじゃないところに作らなければいけないと思いますが、それはどうやって?
そこがとても難しいと思っています。みんながサンゴリアスのことを愛していて、強くしたい、価値を高めたいと思っている中で、その価値は人それぞれだと思うんですよ。チームスポーツだったらリーダーが引っ張り上げて、そこに対してみんながコミットしていくということが、いちばん分かりやすいと思うんですが、実際には会社の組織のひとつですので、なかなか難しいと思っています。
――今はそれを追及しているところですか?
難しいと思っていますが、私は追及したいと思っていますし、広がっていって欲しいと思っています。
――それは"やってみなはれ"の精神に合致しているんじゃないですか?
もちろんそうだと思います。やってみなはれだと思います。

◆知ってもらわなければ意味がない
――来シーズンに向けての目標は?
地域に根づけるような、ファンを拡大することをしたいと思っています。スポンサー、パートナーが、地域の人たちともっと密着できるようなものを作っていきたいですね。せっかくホストエリアとして、府中、調布、三鷹、そして港区、東京都があるので、もっと密接に関わることが出来るようなものを、パートナーを軸として考えていきたいと思っています。
府中では行政と連携を取ってやっていますが、東芝、サントリーというふたつの軸があって、それが表に出ていると思います。そういう中で、もっともっとサントリーがフォーカスされるような活動。「良いチームが2チームあるけれど、サントリーだったらこうだよね」となってくれたら良いなと思います。
――パートナーのインタビューを新たに始めましたね
ひとつはパートナーとより密接な関係を作っていきたいということもありますし、まずは知ることがスタートだと思っています。それはラグビーにも言えることですが、どんなに良いものを作っても、知ってもらわなければ意味がないと思います。どんなにラグビーが楽しくても、見てもらえなければ終わってしまいます。なので、せっかく我々のパートナーになってくださった背景などを知ってもらうことによって、チームのことをもっと知ることが出来ると思いますし、ファンの方にとっても「あの企業は何?」で終わらないと思います。何から始めればいいか分かりませんでしたが、インタビューから始めてみました。「あの記事、面白かったね」と言ってくれる方もいたので、自分の知らないところで、そう思ってくれる人が増えたら良いなと思っています。
――チームについてシーズンが終わってみてどうでししょうか?
アグレッシブ・アタッキング・ラグビーとは何か?私は姿勢、態度だと思っていて、プレーの形ではなく、挑む姿、負けてもへこたれない、やってみなはれ、サントリーのDNA、それがアグレッシブ・アタッキング・ラグビーという言葉に表されていると思っています。今回は6位で終わりましたけれど、もう一度チャレンジして、新しいことを見つける。それを探していく、その姿勢、態度がとても大事だと、より思ったシーズンでしたね。

(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]