SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2025年5月30日

#959 青木 佑輔 Vol.1『対面に負けるな』

フォワード担当の青木アシスタントコーチ。現役引退後からコーチングに専念してきた今、何を大切にし、どんなことを目指しているのでしょうか? 今シーズンの振り返りも含めて聞きました。

(シーズン中にファンクラブサイトのコーナー「FOR THE WIN」に掲載したインタビュー=①に、シーズン後のインタビュー=②を加えて、SPIRITS OF SUNGOLIATH としてお届けします)

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①シーズン中インタビュー (取材:2025年3月)

◆自分のことは自分でやれ

――現役引退後からコーチをやって何年ですか?

もう7年ですね。もう少しで7年目が終わるんじゃないですかね。

――最初はコーチになることを望んだんですか?

厳密に言えば先生になりたかったんですよ。先生になりたくて教職の単位も取らせてもらっていました。けれどサンゴリアスからも声をかけていただいて、その時には「絶対にサンゴリアスでコーチをやった方が良い」と思いました。

――教えると言うことに関しては一緒ですね

そうですね。先生になるよりも勉強になると思いました。

――先生になりたいと思ったのはなぜですか?

やっぱり自分が学生時代に出会った先生たちの言葉を今でも覚えていて、何かを決断する時とか、今でもその言葉を信じて行動したりしています。

――例えば、どういう言葉なんですか?

僕が直接言われたわけではありませんが、高校1年生の時に先輩たちに当時の監督が「自分のことは自分でやれ」と言ったんです。先輩たちが後輩たちに自分のご飯を買わせに行かせていたんです。「自分のことは自分でやれ」なんて小さい頃から親に言われていたと思いますし、当たり前のことですよね。ただちょうどそれが前日の試合で負けていて、「自分のことは自分でやれ」と言った後に、「自分のことも自分でも出来ないやつは、だからタックルも出来ないんだよ」と言ったんです。それで「確かにそうだな」と思いましたね。

「自分でタックルも出来ないから、そうやって誰かのお世話になろうとしているんだ」ということを言っていて、その言葉がとても印象的で、「自分のことが出来ないやつはタックルが出来ないんだ」とその時に思いましたね。だから自分のことは自分でやろうと思っていますし、学生時代も後輩にお願いとかしませんでしたし、それが普通なんですけれど、洗濯なども含めて自分でやっていました。だから今は何でも自分で出来ます。

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◆チャンスは一度しかない

――他に印象に残っている言葉はありますか?

いっぱいあるんですけれど、「チャンスは一度しかないんだよ」という言葉ですね。この言葉も人が言われていたんですけれど、僕が高校3年生の時に、ミスした後に「もう一度お願いします。もう一回やらせてください」と言っている人がいました。その時に監督がブチ切れて、「もう一度なんてないんだよ。チャンスがあったんだから、そのチャンスをものにしろ!」と言っていて、それがとても印象的でした。何のために努力をするのか。チャンスがいつ回ってくるか分からないから、その時のためにしっかりと準備しておこうとその時に思いました。

僕は1年生の早明戦に出られなかったんですよ。メンバーには入っていてリザーブだったんですけれど、試合に出られないまま終わってしまいました。その時に仲間からは「1年生でメンバーに入ったんだから良いじゃん」と言われたんですけれど、自分にとって1年生の早明戦は一生に一度しかないですし、試合に出る準備もしていましたし、どうしても出たかったんです。僕は早明戦が好きで早稲田大学に入ったので、「1年でメンバーに入ったから良いじゃん」と言われた時にカチンときて、「一度しかないんだよ」と怒ったことを覚えています。

――コーチとしても今、チャンスを与えられた選手は、そこで結果を出して欲しいと思いますか?

そうですね。一回のチャンスをものにして欲しいですね。選手に対して「本当にそのパフォーマンスで満足しているのか?」と思ったり感じた時には、それを伝えるようにしています。

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◆気の利くプレーヤーになれ

――他に覚えている言葉は?

清宮さん(克幸/現日本ラグビーフットボール協会副会長)によく言われていたのは「気の利くプレーヤーになれ」という言葉ですね。人がやらないことをやったり、人の手が届かないようなことをやったり、人がやりたがらないようなプレーをするということを、意識していました。

確かに人がやらないことをやることによって差別化できますし、どちらかと言うと僕はプレーヤーとしては、めちゃくちゃパフォーマンスを発揮してトライをバンバン取るとか、どんどんゲインするとか、そういうことはないと思うんですけれど、人がやらないようなことや嫌がるようなことを率先してやっていたら、試合で使っていただけるようになりました。

――「これは誰もやっていない」と思うことを、自分で見つけるんですか?

誰もやっていないと思うこともありますし、チームでは「今週はこれにフォーカスする。今シーズンはこれにフォーカスしている」と言っているんですけれど、結構選手って自分がやりたいことをやってしまうんですよ。例えばボールを持って走るとか、タックルでビッグインパクトを残したいとか、それってやってくれたら嬉しいとは思うんですけれど、そこはあまり求められていませんし、自分が出来ることをやって、言われていることをしっかりやる、変なことをしない、ということが自分の中にありました。

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◆自分の対面に負けない、常にポジティブでいる

――それらをコーチと言う立場で選手に伝えたり、いろいろな言葉を発したりしているんですか?

プレーのことはもちろんそうなんですけれど、「チャンスでしっかりと力を発揮する」とか、「そのパフォーマンスで満足できていないんだったらしっかりと準備しよう」とか、そういう自分が教わったことは結構言っていますし、自分が感じていた、例えば「監督やコーチが求めていることは、まずしっかりやった方が良い」ということを話します。自分にはいろいろな人のいろいろな教えがあったんですけれど、一貫して言うことは、まず自分が選手の時にいちばん意識していたことで、「自分の対面に負けない」ということです。選手の時には気持でも負けないようにしていました。

あとは「常にポジティブでいる」ということです。そもそも自分はポジティブなマインドですけれど、自分がミスをしてふさぎ込んでいても仕方ないんですよ。よく周りがサポートして、へこんでいる選手を励ましたりすると思うんですけれど、ハッキリ言ってそれは無駄な労力だと思います。そこは「自分で復活しろ」と思うんですよ。特に試合中は「いつまでもへこんでるんじゃない」って思うわけですよ。だから、そういう姿を見せない、人に迷惑をかけるような態度を取らない、イライラして他の人に気を遣わせるようなことをしないということで、そういうことをすると周りの雰囲気も悪くなりますよね。誰かがその選手をなだめなければいけなくなってしまうので、それは「自分で何とかしろ」と思うわけですよ。だから選手にもそういう態度は取って欲しくないですね。

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◆サポートプレーヤーになれ

――対面に負けないということは、相手の同じ番号の選手にすべてのプレーで負けないということですよね

そうです。清宮さんに「気の利くプレーヤーになれ」と言われたのは、まずは味方に対してだと思うんですよ。「味方に対して気の利くプレーヤーになれ」ということだと思います。あとエディーさん(ジョーンズ/現ラグビー日本代表ヘッドコーチ)に「サポートプレーヤーになれ」と言われたことは、何度もブレイクダウンに入るとか、「周りとリンクするようなプレーヤーになれ」という意味だと解釈しているので、サポートプレーヤーを目指して頑張っていました。

そこはチームのためにやっていたんですけれど、とは言え自分も相手に勝たなければいけないので、言われたことプラスαで、味方のサポートはするけれど、自分としての役割は更に「自分の対面に必ず勝つ」ということを考えていました。だからフッカーとしてスクラムは絶対に負けないですし、そしてミスをしないということを意識していました。

――自分の現役時代と同じ2番の選手に対して、それを教えようと取り組んでいるんですか?

基本的に「対面に負けるな」と言っています。やっぱり勝負って、毎日続くと苦しいんですよ。チーム内での勝負もありますし、試合での勝負もあります。あと以前あったフィットネステストでは、自分のターゲットをクリアしなければいけないという自分との勝負もあります。だから勝負に疲れてしまうんですよ。

でも自分の性格上、「今日はいいや」とか思えないんですよ。勝負が目の前にあると絶対に勝ちたくなったりするので、勝負事からは逃げられないので、疲れちゃうんですよ。疲れちゃうんですけれど、やるしかないんです。だからオフの過ごし方は大事ですね。

――青木コーチのオフは何をしているんですか?

のんびりバーベキューをしたり、棚とか何か物を作ったり、部屋を片付けたり、妻とどこかに出かけたり、やっぱりのんびりしたいですね。

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◆選手に勝って欲しい

――コーチとしても自分に負けないように過ごしているかと思いますが、シーズン中はどのように過ごしているんですか?

シーズン中は相手チームに負けたくないので、相手チームに負けないということは、選手に良いパフォーマンスを出させてあげれば良いわけです。だから自分が勝つというよりも選手に勝って欲しいので、そのサポートと、試合に出られない選手を引き上げたいと思っています。通常の練習以外も、とくに選手から「ミーティングしましょう」とか「練習しましょう」とか言ってくれば、絶対にやります。

――一生懸命やっている選手に勝たせたいという思いで、例えばどういうことをやっているんですか?

例えばスクラムで上手くいっていなければ、「じゃあこうしよう」と作戦を立てたり、「今のレフリーの傾向はこうだから、こうしてみよう」とか、あとは昔の良いイメージの映像を見せたり、海外の良い選手の映像を探して見せたりしています。あといちばん難しいのは、レギュラーから外れてベンチになったり、ベンチから外れてノンメンバーになったりした選手って、そういう選手って絶対にもう一回チャンスがあるので、そういう選手に対しては丁寧にミーティングをしたり、逆にノンメンバーからメンバーに入った選手に対しても、「何にフォーカスするか」とか話すようにしています。

――試合に出ている選手となかなかポジションを取れない選手の違いはなんだと思いますか?

マインドが違うと思います。誰かが何とかしてくれると思っていたら、絶対にレギュラーにはなれないと思います。いつでも言い訳を探して「ああだったから出来なかった」とか。そうではなくて、自分からチャンスを掴みに行くような準備をしているかなと、いつも感じています。あとはムラがあったりとか、ですね。

サンゴリアスに来る選手って、試合に出られなかった、あるいは挫けた経験がない選手が多いですよね。サンゴリアスに入ってそういう経験をした時に人間の本性が出ます。苦しい状況でどういう態度を取るかで、人間の本性ってわかると思います。やっぱり自分が調子良い時は、人に対しても優しくなれると思います。自分が試合に出られなくなった時の態度が、本当に本性だと思います。

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◆責任を持ってやっているスクラム、ブレイクダウン

――コーチとしての難しさは?

もともと勝負事は好きじゃないので、毎日勝負ですよね。選手に対するプレゼンも勝負ですし、練習が上手くいったかも勝負ですし、結構苦しい時はありますよ。そういう時には、オフでのリフレッシュしかないです。

――コーチとしての嬉しさは?

嬉しさは、試合に勝った時。試合に勝って選手の笑顔を見るといちばん嬉しいですよね。

――一生懸命教えた選手がレギュラーになった時は?

それはそんなに嬉しいという感じではないですよ。それはその選手の頑張りなので。ただサポート出来て良かったとは思いますし、選手が日本代表に選ばれたりすると嬉しいですね。若手の選手たちが日本代表に選ばれたら、とても嬉しいと思います。

――アシスタントコーチとしてはフォワード全員を見ているのでしょうか?

フォワード担当としてマーフ(ローリー・マーフィー)アシスタントコーチもいるので、外国人選手はマーフ、日本人選手は僕というようにしていて、その方がニュアンスなども伝わりやすいと思っています。事前にはある程度ミーティングをして「こういうことを話すよ」と話しておいたり、例えばスクラムのことについては通訳を介して外国人選手にも話をします。あとは「もう少しこうして欲しい」とマーフに伝えて、外国人選手にマーフから言ってもらうこともあります。

――スクラムについてはすべてやっているのでしょうか?

そうです。スクラムは僕が責任を持ってやっています。後はブレイクダウンも責任を持ってやっているので、バックスに対しても「ここをこうして欲しい」とリクエストしたり、選手をピックアップして「もう少しこうしよう」と話したりしながら練習しています。ラインアウトはサポートで、だいたい試合メンバーなどの2チームはマーフが見ていて、3チーム目を僕が見ているという感じです。モールはラインアウトのことなのでマーフですが、昨シーズンまではスクラムもラインアウトもすべて僕がやっていて内容が分かっているので良かったと思います。

<つづく>

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(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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