SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2025年5月 9日

#956 森谷 圭介 『喋ること』

久々に2試合連続先発出場した森谷選手。その大事な試合で連勝し、その後チームのプレーオフ出場が決定。好プレーでチームを引っ張るひとりとなった森谷選手に、現状と展望を聞きました。

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◆自分としては出来ている

――2ヶ月ぶりに出場した第16節トヨタ戦、そして第17節リコー戦にチームは2連勝しましたね

公式戦に出場出来ない時間が長かったですが、公式戦に出られなくても練習試合での調子は良かったです。公式戦に出られないメンバーのアティチュード(態度・姿勢)がめちゃくちゃ良かったので、自分もそのまま出したという感じです。

――試合に出られない時は、やはり悔しいですか?

昨シーズンもその前もそうですけれど、そういう思いは少なくなってきましたね。

――それはどういう心境で?

相性などもあると思いますし、それまで自分がプレーしてきたことを見てもらって、メンバー選考をしていると思います。すぐに評価がひっくり返ることもないと思うので、地道に自分の力をつけて、評価してもらえれば良いなという感じでした。

――今シーズンの調子はどうですか?

最初に同じ個所の怪我を結構していたので、身体自体はそんなに良くはなかったんですけれど、シーズン中盤にメンバーに入れてもらったあたりからは怪我なく出来ていて、プレー自体は自分としては出来ていると感じていましたし、それを続けるだけだと思っていました。

――トヨタ戦では特にキックが良かったですよね

やって欲しいことを明確に伝えてもらいましたし、それをやるだけでした。

――そのやって欲しいこととは何ですか?

サントリーのアタッキング・ラグビーを、どこでするか、どのタイミングでするか、そのコントロールが出来ればというところです。僕自身がめちゃくちゃ強いキャリーをしたり足が速いということはなくて、周りに良い選手がたくさんいるので、その選手をどこで戦わせるかということだけ考えてやっています。

――課題と言っていたコミュニケーションはどうですか?

コーチとのコミュニケーションもこの2試合は良かったですし、プランがハマったということもあります。ケイノ(サム・ケイン)もユタカさん(流大)もマツさん(松島幸太朗)も晟也(尾﨑)もそうですが、僕よりもいっぱい試合に出ているメンバーがたくさんいて、経験値がたくさんある選手がいっぱいいるので、試合中にその人たちとプランに沿いながら、どういうところでプレーするべきか、どういうプレーを選択するべきか、そういうことを結構喋れていると思います。

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◆出られない人たちの分も

――リコー戦はどうでしたか?

基本的には準備してきたプランを遂行すること、やっている中で「ここはこうしよう」とか、「ここは止めておこう」とか、そういう話が出来ていたので、縦のラインが大事とよく言われますが、サンゴリアスはそこが日本人ばかりなので、コントロールはしやすいですね。

――試合に出られて自分のプレーも出来ているとなると、今はかなり楽しいんじゃないですか?

試合に出られていない時も、ノンメンバーで明るく、自分たちが上手くなるためにという形で出来ていたので、その時期も楽しくなかったわけではありません。もちろん試合に出て違う楽しみはありますけれど、ただ出られていない時間が長かったので、試合に出られない人たちの分も、ちゃんと役割を果たさないとと思ってやっています。

――試合に出られないメンバーに対してアドバイスしたりしているんですか?

メンタルというか、どういう気持ちでプレーしているかはひとりひとり違うと思うので、ただチャレンジし続けること、諦めないように空気を作ったりすること、それはひとりでは出来ませんが、周りにいる年齢の近い人は分かっている人が多いので、そういう空気を作り続けることは、今シーズンにとても大事だなと何となくわかりましたね。僕も分かっていませんでしたが(笑)。

――そういう空気が出来たんですね

出来ていれば良いなと思いますね(笑)。

――みんなが明るく前向きということは、そういう結果なのではないでしょうか

やっている感じは、ポジティブにやってくれていると、今シーズンを通してずっとあります。そこでそれぞれがどう思っているかは分かりませんが、グラウンドの上でそういう空気が出ていると感じているので、それは良いことかなと思います。

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◆良いプレーをしている時を繰り返す

――チャレンジし続けていて、今シーズン良くなったところは?

喋ること。今までコントロールするとか、ゲームを理解してチームを動かしていくというよりも、その中のひとつでしかない動きをしていたので、そこはプレースタイルも含めて変わったところかなと思います。

――それは大きな違いだと思いますが、変わったきっかけは何ですか?

今シーズンは10番に専念してやるということをプレシーズンから言われていたので、どういう10番になれるかなと自分で考えながら、コーチと話しながらやっていました。正解がどれかは分かりませんが、迷わずプレー出来るところくらいまではクリアになっています。

――10番の周りを活かすプレーは、自分がやりたかったラグビーなのでは?

自分で仕掛けて抜けることも好きです(笑)。12番や15番をやっていた時は、基本的にチャンスのところに顔を出したり、10番のサポートをしたりすることもあり、そっちの方が強かったですね。

――更に良くなっていくために、今の課題は何ですか?

良いプレーをしている時を繰り返すこと。迷ったり、判断が遅れた時に、チームに悪い流れを来させるようなミスをする可能性があるので、それを出来るだけしないようにすること。そのためにコミュニケーションや試合前の準備、試合中の準備、そういうことを繰り返して、悪い流れにならないようにすることですね。

――精神的な部分としては、ミスを引きずらないことも大切ですか?

ミスは仕方ないので、もともと考えないようにしています。

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◆置かれた場所で良い結果を出し続ける

――プレーオフトーナメント進出が決まりましたが、今シーズンのチームはどうですか?

出られない時間の方が長かったので、まずそこで、先輩とも後輩ともサポートし合いながらここまで来られたのは、とても嬉しいことです。リーグ全体のこととかは考えても仕方ないので、僕は自分が置かれた場所で良い結果を出し続けることしか考えていませんでした。練習試合でも負けていないので、出たところ、任されたところで、そのチームが良い状態になるようにすることを心がけてやってきました。

――ここ数年、森谷選手が出ている試合は勝率が良いと思いますが、先ほど言っていたことが出来ているということですね

タイミングとかもあると思いますけどね(笑)。

――第16節トヨタ戦、第17節リコー戦はプレーオフ進出に向けて勝負の2試合だったと思いますが、試合に臨むにあたって考えたことは?

あまり考えないようにしています。僕ひとりの力で勝つこともありませんし、僕ひとりの結果で負けることもそうそうないので、目の前のプレーを出来るだけ良い方向に持って行けるように。もちろんずっと幹也(髙本)が出ていて、幹也が良いドライブしていました。この2試合では僕の後ろに幹也がいたので、全くとは言いませんが違うタイプなので、変化もつけられますし、もし劣勢でいても幹也が出て流れを変えてくれるだろうという思いがあって、言い方が正しいか分からないですけれど、比較的楽な気持ちで出来ています。

――この後に向けての目標は?

ぜんぶ勝ちたいという思いは、もちろんありますけれど、毎週試合があること、試合に出られることは幸せなことなので、それに対して準備すること。やっぱりサントリーのラグビーはアタックのところで違いを出せると思うので、それを多く出せるように、面白いラグビー、見ていてワクワクするようなラグビーを、ひとつでも多く出せるようにしたいと思っています。それは僕ひとりで出来るものではないので、コミュニケーションを取りながら、お互いに良いプレーを出せるように準備したいと思っています。

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◆コーチもやりたい

――もう少し長いスパンで見た時、やりたいことは?

聞こえ方がどうか分かりませんが、ラグビーしか打込んでやってこなかったので、ラグビーに携われれば良いなと思っていて、コーチもやりたいですし、あとは何か一緒に仕事が出来ることがあれば良いなと思っています。

――コーチについては、大人でも子でも、どちらでも良いですか?

そうですね。でも、トップとかではなくても、大学生だったり高校生だったり、ある程度、ちょっと戦略、戦術があるようなところで勉強してみたいと思いますね。

――タイプとして指導者やコーチは向いていると思いますか?

分からないです(笑)。後輩などからどう見えているか分かりませんが、一緒に何かしていることが好きなので、歳が下でも一緒に喋りながら考えて、何かしたりするのは楽しいなと思いますね。

――一緒に動きながらもありますか?

身体が動くうちは出来たら良いなと思いますね。僕もコーチに見せてもらったりしたら楽しいので、今シーズンはチームにマット・ギタウが来てくれたり、フーリー・デュプレアが来てくれたりして、それでとても刺激をもらうことがありました。

――どの辺が良かったですか?

デュプレアとは戦ったことがありませんが、そのプレーは見ていたので、画面の上で素晴らしいと思っていたことを生で見て、本当に素晴らしかったです。言っていることはシンプルでしたけれど。

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――ふたりとも動けていたんですね

現役の時ほどはなかったですけれど(笑)、スキルや考え方のところは、僕はちょっとしか関われなかったですけれど、良かったですね。

――その経験を得られて良かったですね

見せられるうちは見せた方が良いんだろうなと思いますね。

――何歳くらいまで動けそうですか?

怪我が多いので分からないですけれど(笑)。でも、言うだけよりは一緒に動いてくれる方が、僕は好きなので、パナソニックの時からバンジー(ベリック・バーンズ)も、今は現役を引退していろんなところでコーチをしていて、何回かそこにいたことがあるんですけれど、彼も一緒に動きながらやっているので、出来るうちはやりたいですね。

――トレーニングは続けた方が良いですね

疲れない程度に(笑)。

(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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