SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2025年5月 2日

#955 平生 翔大 『答えがないから面白い』

リーグワンデビューを果たした平生選手。22歳、期待のフッカーが目指すラグビーは?(取材日:2025年4月下旬)

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◆自分の強みをどう活かしていくか

――あっという間にデビューしたように感じますが、自分ではどうですか?

2月から合流させてもらって、ここ3試合の大阪での試合には帯同させてもらっていたので、あっという間という感じもしますが、長かったという感じもします。

――では、ここのところ「いつかな?」という感じだったんですか?

もちろん常に試合に出られる準備はしていました。合流してから時間はかかりましたが、初めての1人暮らしで生活にも慣れてきていて、ラグビーのコンディションもどんどん上がってきて、練習試合の東芝戦でもパフォーマンスは上がっていたと思います。いつでも出られる準備をしている中で、急遽メンバーに入らせてもらって、早かったと言えば早かったですが、大学の同期の松本壮馬(浦安D-Rocks)など早くから試合に出て活躍していました。そう考えると自分は少し時間がかかったのかなと思うんですが、でも自分としては早かったかなと思います。

――社会人になって、ここが伸びたとか手応えを感じている部分は?

あまり身体が大きい方ではないので、その中で自分がここから上に行くためには、自分の強みをどう活かしていくか、と常に考えながら、フィールドプレーの自主練習などにも取り組んできました。そこは積み重ねてきていて、伸びてきている部分かなと思います。

――自主練習では、例えばどんな練習をしていたんですか?

タックルはずっとコーチに教えていただきながら練習してきました。まだまだ伸ばさなければいけないところではありますが、やっぱりタックルは大事なひとつの要素だと思っています。アタックはもともと好きな方で得意なので、ディフェンスでもチームに貢献できるようにもっと成長していきたいと思っています。

――後半21分からの出場でしたが、セットプレーの出来は?

ラインアウトは一発目でミスしてしまったんですけれど、そこからいつも通りというか、練習でやってきたことにフォーカスして、思い切り出来ました。スクラムは本当に上手くいって、良いマインドセットで、両プロップに助けていただきながらですが、良いスクラムが組めたかなと思います。

――両プロップも若かったですね

年齢が近い分、日頃から可愛がってもらっている2人なので、組みやすいですし、コミュニケーションが取りやすいので、デビューの時に一緒に組めたことが嬉しかったです。

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◆自信を持って投げられる

――ラインアウトもスクラムもフッカーがポイントになるプレーだと思いますが、ラインアウトのスローは得意なんですか?

そんなに苦手な方ではありません。サンゴリアスに入ってから少し苦労した部分もありました。リーグワンは高さもあるし、スピードやサインを覚えることもあります。そこでいつもの自分のフォームでやるということが、あまり上手くいかない時がありました。もちろん相手からのプレッシャーもキツくなった中で、そこでメンタルも含めて、上手くいかないことが続いたんですけれど、ずっと練習したり、いろいろなアドバイスを受けて、今は自信を持って投げられるようになっています。

――メンタルで気をつけていることは何ですか?

どうしても相手が視野に入ってしまうと思うんですが、自分のスローのフォームにフォーカスするということと、練習の時から緊張感を持って1本1本大切にすることが、試合の「ここぞ」という時に繋がると思うので、そこはこれからも大事にしていきたいと思います。

――投げるフォームは決まった型が出来ているんですか?

自分のいちばん良い形がありますね。例えば、ボールの持ち方も決まった持ち方があります。

――それはいつ頃からですか?

フッカーになったのが高校3年生なんですけれど、そこから自分の中で決めていました。もちろんいろいろと変えながら「これが良い」とか、変えてダメだったら元に戻したり、練習で試行錯誤はしました。ラインアウトは、サンゴリアスに入って最初は苦労しましたね。

――今は形が固まりましたか?

そうですね。全体練習後に先輩に跳んでもらって練習したり、脚立に立ってもらって投げ込んだりしています。自分だけじゃなくタイミングの問題もあるので、そこもずっと合わせながらやっています。練習の大切さというか、それを今いちばん感じています。

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◆成長を感じている部分

――スクラムについては、両プロップを活かすのもフッカーの役目だと思いますが、どうですか?

プロップによって背丈も違いますし、組み方もぜんぜん違う中で、サントリーとしてスクラムは武器にしていかなければいけないところだと思います。後ろの選手とコミュニケーションを取るのもフッカーの役目だと思うので、いろいろな組み方がある中で、横のプロップと一緒に映像を見たり、練習での相手のフッカーに練習後のレビューをしてもらったり、日々進歩、少しずつでも成長できるようにやっているので、そこは自分としても成長を感じている部分です。

――練習の相手のフッカーからは、例えばどんなレビューがあるんですか?

バインドバトルのところで、ここのポジショニングにいたら良かったとか、結構コアな話になります。

――それはほんのちょっとした違いですか?

ほんのちょっとの違いです。左右だけじゃなく前後もです。自分は良いポジションにいて相手のフッカーが嫌だと感じていたとしても、横のプロップも嫌だと感じる時もあるので、そこはずっとコミュニケーションを取りながらやっていくしかない部分です。もちろんグラウンドでも話しますが、練習後に映像を見てしっかりレビューをして、次の練習に臨むことが本当に大事だと思っています。

――終わりはありませんね

そうですね。そればかりはフロンローの宿命じゃないですけれど、終わりはないですね。

――モールについてはやっていてどうですか?

モールの安心感というか、全員のマインドがひとつになっているということもありますし、モールでフォワードが前に出られるという自信もあると思うので、それがモールの形に出ているかなと思います。練習でメンバー外の選手が良いプレッシャーをかけてくれるのが、試合で良いモールが組めている要因かなと思います。

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◆食べるのが好き

――フッカーは役割がたくさんあると思いますが、やっていて楽しいですか?

自分は好きな方ですね。

――それでフッカーを選んだんですか?

それで選んだわけではありませんが、もっと小さい時にはバックスをやっていて、その後にナンバーエイトになって、フッカーになりました。どちらかと言えば器用な方だったということで(笑)。

――身体がだんだん横に大きくなっていったという感じですか?

気がついたら(笑)。最初の背番号は10桁でしたが、気がついたら10の位が無くなっていました。

――トレーニングで身体を大きくしたんですか?

トレーニングもそうなんですけれど、食べるのが好きなんです。それで気がついたら大きくなっていました(笑)。

――バックスからナンバーエイト、フッカーへと段々移ってきて、ラグビーの面白さは変わってきましたか?

バックスにはバックスの面白さがあると思いますが、フォワードはやっぱり身体を当てて、走って、スクラム組んで、そういうことが好きな方ですね。フッカー楽しいですね。

――デビュー戦でタックルは?

飛び込んでしまったところもありましたが、タックルしてすぐにセットして、またタックルするというところは良かったかなと思います。身体を当てられていたと思うので、そこは良かったかなと思います。

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◆信頼が大事な要素

――今の時点で自分の課題は何だと思いますか?

フッカーというポジションなので、信頼がひとつの大事な要素になります。チームに対しての声かけなど、そういうところはまだまだ足りないところかなと思っています。そこはフッカーというポジションで大事になってくると思うので、その部分でももっと成長していきたいと思っています。

――高校、大学とキャプテンをやってきて、意識しなくてもリーダーシップは発揮できるんですか?

どちらかと言えばそっちのタイプだと思います。これまでは自分のことで精いっぱいになってしまっていた部分もあったので、ここからもっと試合に出るためには、そういうことが本当に大事になってくると思います。チームにもっと貢献できるように、自分のプレーに自信がないと言うことも出来ないと思うので、まずは自分のプレーを伸ばしながら、チームからの信頼、仲間からの信頼を得られるように頑張っていきたいと思っています。

――あえて言えば、どのプレーを伸ばしていきたいですか?

やっぱりコンタクトのところは、最前列で身体を張るポジションですし、激しくいかなければいけないところだと思うので、そこはもっと伸ばしていきたいと思います。あとはセットプレーですね。フッカーなので、ラインアウトもスクラムも要になるポジションですし、セットプレーでの信頼は、大きな信頼になると思うので、そこはもっと伸ばしていきたいと思っています。

――その信頼度は、自分の理想からするとどのくらいですか?

まだまだ足りないですね。まだまだここからです。

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◆ご飯を土鍋で炊いている

――ひとり暮らしは大変ですか?

同期や先輩も同じマンションに住んでいますが、大変ですね。家事とかも大変ですね。朝ご飯や夜ご飯も自炊しています。

――料理は得意ですか?

好きな方ですね。向上心はある方だと思います(笑)。

――今の得意料理は何ですか?

僕はご飯を土鍋で炊いているんですけれど、土鍋で炊いた米を親子丼にして、たんぱく質も摂れるので、それかなと思います。

――それをたくさん食べているんですね

いや、僕は体重をコントロールしなければいけないので、食べ過ぎないように気をつけています。

――身体を大きくし過ぎるとプレーに影響がありますか?

食べるのが好きと言いましたが、僕は永遠に食べちゃうので、そこはコントロールしながら、やっぱり走れないとダメですからね。

――本当は食べたいのに食べられないのは大変ですね

我慢というか、自分のためにそこはやっています。

――どんな工夫をしているんですか?

ご飯の量を決めたりしています。

――土鍋でご飯を炊いたら余っちゃいますね

余っちゃいますね。それは次の日に食べます(笑)。次の日の朝に食べてちょうど無くなる感じですね。

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◆ラグビーが好きでした

――曾祖父がラグビー日本代表だったそうですが、何か影響を受けていますか?

関係が遠いので会ったことはありません。その影響というよりも、姉がいるんですが、姉の友人家族に誘ってもらいラグビーを始めました。小学校での普及活動があって、あまり人が集まらなかったみたいで「来てみたら」と言われて、その後スクールに呼ばれて、そこから始めました。

――それまでは何かスポーツはやっていたんですか?

何もやっていませんでしたが、スポーツは得意な方でした。

――ラグビーをやってみてどうでしたか?

めちゃくちゃ楽しかったです。何がというポイントは分かりませんが、足が速い方だったので、そういう楽しさもあったと思います。当時は6歳だったので、他はあまり覚えていないですね。

――それでそのままラグビーを続けたんですか?

ずっと続けました。

――小学校、中学校でのラグビーの楽しさはどんなところでしたか?

ラグビーが好きでしたね。どこか分からないくらい好きでしたね(笑)。もちろんやるのが好きでしたし、見ることも好きでした。どこが好きだったんですかね。自分たちの試合の映像をめっちゃ見たり、その当時はトップリーグだったので、トップリーグの試合を見たりしていました。

――いまはラグビーをやっていてどこが面白いですか?

いまは「答えがない」から面白いですかね。それこそスクラムで言えば、めちゃくちゃ上手くいっていても急に上手くいかなくなることもありますし、アタックやディフェンスにしても、全チームが似たようなことをやっていたとしても、同じことはないと思いますし、そこがとても面白いところかなと思います。

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◆ようやくひとつのスタートラインに立てた

――日本代表についてはどうですか?

もちろん日本代表としてワールドカップに出たいという気持ちはありますが、今はサントリーでレギュラーに定着すること、まずはそこがひとつの目標です。今は目の前のことにフォーカスして、頑張っていきたいと思っています。

――デビュー戦がスタートという感じですか?

ようやくひとつのスタートラインに立てたかなと思います。

――大学時代にキャプテンをやっていて得たものは?

難しいですけれど、結果とその過程をどれだけ大事に出来るかじゃないですしょうか。結果を求められますが、その過程も大事になってきます。過程を大切にしつつ絶対に結果を出さなければいけない、ということを感じました。そして3年、4年になるにつれて、ずっと試合に出られているメンバーだけじゃなく試合に出られていないメンバーがいるということを理解した上で、いろいろな人に助けてもらいながらやることが大切と感じました。

特に4年生の時は、メンバー外の選手たちの行動が自分たちのチームを象徴していると思い、"凡事徹底"を大事にしようと話していました。試合に出られてる出られていないに関係なく、4年生がリーダーシップを発揮して「全員でやろう」と出来たことは、本当に自分がキャプテンをやっていてチームに残せたいちばん誇らしいことかなと思います。やっぱりその姿は、これからの関学(関西学院大学)に残り続けるものになったんじゃないかなと思います。

僕らの代として、最後に結果は残せませんでしたが、これからずっと続いていく関学にとって、いちばん大事なものを残せたかなと思います。メンバー外の応援も自分が体験したことがないほど、毎試合声がかれるほど応援してくれて、グラウンドのゴミも終わった後に拾ってくれていて、そういうことを聞いた時には、このチームのキャプテンが出来て本当に幸せだったと思いました。去年の1年間は変革の年だったんですけれど、そこでキツいこともありましたし、厳しいことも言ってきました。けれど、最後に結果を残せなかったということが、本当に申し訳なかったと思っています。

――過程の大切さは学生だけじゃなく、サンゴリアスでも同じことが言えますよね

本当に過程は大事だと思います。サンゴリアスというチームは勝利を求められているチームで、結果が大事になってくると思いますが、その中での過程はより大事になってくるのかなと思います。そこは自分としてもこれからも大事にしていきたいと思っています。

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◆身体を当てることが好き

――今シーズンの残りの試合に向けて、ファンの皆さんに見て欲しいところは?

チームは今のチームの雰囲気が、もう一度原点というか、泥臭さ、ひた向きさというところを、チーム全員がそこをやろうという意識になっているので、良い雰囲気だと思います。その中で、自分についてはひた向きさ、泥臭さを見てもらいたいと思っています。身体がめちゃくちゃ大きいわけでもない中で、倒れてすぐにセットしてまたタックルに行ってとか、全員が平等に出来るプレーの質を上げていけるように頑張っていきたいと思っているので、そのひた向きさ、泥臭さというところに注目していただきたいと思っています。

――外国人選手も多く身体が大きい選手が多い中、そこに向かって行く時はどんな気持ちなんですか?

もう行くしかないですね。やっぱりチームの代表で、覚悟を決めているので、行って当然ですね。

――そういう相手にはどう対抗するんですか?

タックルテクニックもそうですし、身体が大きくないからこそ低さを出せると思うので、そこはいろいろなテクニックをこれから身につけながら、身体を当てることが好きなので、そこにテクニックが加わったら、大きい選手も嫌になると思います。それで対抗していきたいと思います。

――なぜ身体を当てることが好きなんですか?

難しいですね(笑)。だからラグビーをやっているということですかね。身体を当てることが好きです。

(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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