2025年4月18日
#953 宮﨑 達也 『スキルやテクニック』
シーズン中盤から出場を重ねる宮﨑選手。自らのプレーのどこに手応えを感じ、いま何を課題にしているのでしょうか?(取材日:2025年4月中旬)
◆やってきたことを自信を持って試合で出す
――負けられない試合が続いている中、クボタスピアーズ戦の敗戦は?
シーズンも残りの試合が少ない中で、プレーオフに進むためには1試合も落とせない試合が続く中での負けは痛いですね。シーズン開幕してすぐは、なかなか勝てなくて勢いがないところからスタートして、やっていく中で勝ち始めた時は、みんなどこか練習中も明るい雰囲気でした。「サントリーは勝たなければ意味がない」といつもよく言われますけれど、負けている時はみんなどこかでちょっと暗かったりするところもあったかと思います。やっぱり勝ち始めたら流れに乗れて、良い練習が出来ていました。
――勝ったり負けたりの今の状況はどうですか?
松島さん(幸太朗)が試合のあとに言ってくださったんですけれど、相手をターゲットにして1週間練習するわけですが、そこでやってみたことが試合に全く出なかったら勝てないですし、上手くいかない、その1週間が無駄になるという話でした。みんなも「本当にそうだな」という感じで、リザーブとして試合を見ていても、やってきたことがぜんぜん出来ていませんでしたし、雨ということもありましたし、相手は大きくてフォワードのチームで、その強さを前面に出されたので、こっちは良いところをひとつも出せないという感じでした。
――リーグ戦残り3試合、そこは改善していけそうですか?
そうですね。逆に言ったら、練習でやってきたことを出せた試合はやっぱり良い試合というか、勝っていることが多いと思いますし、やってきたことを自信を持って試合で出すだけなので、僕自身は難しいことではないかなと思います。
――やってきたことが出せないのはなぜなんですか?
見ている感じでは、1週間やってきたけれど、練習と違った相手からのプレッシャーなどを感じて、思い通りにやれなかったと思います。相手のプレッシャーがキツかったのと、雨で滑りやすかったということもあって、それらがやってきたことが出せなかった要因だと思います。
◆今シーズンの中でもいちばん良いモール
――1年前の前回のインタビューは初トライを取った後、今回もトライの後になりましたが、あのトライについては?
あれはモールのトライだったので、フォワード全員のトライですね。後から見返したら、今シーズンの中でもいちばん良いモールの形で取れたのかなと思いました。あのシーンでは良いモールが組めたと思います。
――昨シーズンのトライの時も「ナイス・フォワード!」と言っていましたね
初トライの時は少し僕の判断で行ったところもありましたけれど、今回のトライの方がフォワードの力ですね。
――スクラムでも負けていませんし、フォワードは頑張っていると思いますが、現状のフォワードはどうですか?
雰囲気も良いと思いますし、スクラム、ラインアウト、モールとみんなやることが分かりやすくなっていますし、良い感じにはなっていると思います。
◆コミュニケーションの中でやっているプレー
――今シーズン、途中から出る時に気をつけていることは何ですか?
フィニッシャー、リザーブというところでいちばん大事なのは、やはりインパクトを出すことなので、例え10分しか出られなかったとしても、何かインパクトを残せるプレーを常に意識しています。コスさん(小野晃征ヘッドコーチ)やアオさん(青木佑輔アシスタントコーチ)とミーティングして、そこは言われているところでもあるので、どんなプレーにしてもひとつひとつのプレーでインパクトを残すということを意識しています。
――今シーズン8試合出場、これまでの試合ではインパクトを残せたと思いますか?
残せた試合もありますし、逆に「アカンかったな」という試合もあるので、まだまだという感じですね。
――インパクトが残せた試合では、これが良かったというところはどこですか?
難しい質問ですね(笑)。
――逆にインパクトが残せなかった試合、やろうと思ったけれど出来なかったのは?
身体のサイズがない分、ボールキャリーのところは気をつけています。ただ相手に当たりに行ってもゲイン出来ないのですが、リザーブで出てそれが全く出来なかった試合もありましたし、後からプレーを見返しても「アカンな」と思うところが結構ありました。
――前回「フォワードの中のスクラムハーフになる」という話もありました。比較的ボールをもらってすぐにパスするシーンをよく見ますが、もっとボールを持ってのプレーもあり得ますか?
それが出来る時はしますが、プランの中で早めにパスするというケースもありますし、あと選手によっては先にボールが欲しくてスペースが欲しいという選手も多いので、先に渡してあげて、僕が早くサポートするということもあります。人によっては、僕がボールを持って相手に接近してからパスする方が好きな選手もいますし、そこはコミュニケーションの中でやっているプレーではあります。
――「スクラムハーフ」であれば、もっと長いパスを放っても良いのでは?
それが14節のホンダ戦で、僕から晟也君(尾﨑)にパスしたプレーは、久しぶりにロングパスを放りました。練習にはない試合の流れの中で、上手く形が出来ない時もあるので、そういう時にはもっとあぁいうプレーにチャレンジしていければ良いかなと思います。
◆どんどん狙っていきたい
――尾﨑選手とは子供の頃から一緒にラグビーしていたんですよね?
小・中・高と一緒にやっていました。僕は中学からフォワードになったんですが、小学校のスクールの時にはあぁいうプレーが良くありましたよ。
――小学校から高校まで一緒にプレーして、その後離れて、また一緒にプレーするということはどんな感覚ですか?
最初は率直に嬉しかったですし、大学、社会人では離れましたけれど、また一緒にプレー出来るようになって嬉しかったですね。そんな人は他になかなかいないですよね。だから特別な感情がありますね。
――同い年ですか?
晟也君がひとつ上です。
――だとすると、尾﨑選手は威張っているんですか?
そうですね(笑)。優しいですよ(笑)。
――ホンダ戦のようにプレーで絡んだり、同じ時間帯に出場しているという時には、2人で何かやろうとしているんですか?
そういうことはあまり言わないですけれど、あのような僕からもパスも晟也君だったら「タツだったらここにパスしてくるかも」と分かってくれますし、逆に晟也君の動きとかプレーを知っているつもりなので、そういうところで昔から一緒にやっていることが大きいと思います。これからもどんどん狙っていきたいと思います(笑)。
◆喋ってフォワードを動かす
――フォワードの中のスクラムハーフという役割は出来ていますか?
まだ課題もありますし、出来ているところで言えば、昨シーズンよりも余裕を持ってコミュニケーションが取れるようになっています。
――それは慣れですか?
慣れという部分と、あとは自分の中の意識を変えたりしています。練習中あるいは試合中で、特にリザーブで入ったら体力的にしんどい選手も多いので、僕が出来ることとして喋ってフォワードをしっかりと動かすということを心がけています。そこが昨シーズンよりも今シーズンの方が、かなり出来ていると思います。
――そういう中で、課題は?
今のプレーのひとつひとつの精度、もっと質の良いプレーにすることが大事かなと思います。
――例えば、精度を上げたいプレーはどんなプレーですか?
セットプレーで言えば、ラインアウトのスローイングもそうですし、スクラムもそうです。フィールドプレーで言えば、ボールキャリー、タックル、ひとつひとつ精度、質の良いプレーが一貫して出来るようになったら、もっと良い選手になれると思っています。
――一貫したプレーはどのくらい出来ていますか?
それこそさっき言ったみたいに、試合によって良い時とか悪い時とか、まだ波があると思っているので、そういう意味ではもっと精度を上げていかなければいけないと思います。
◆練習でどれだけ試合に近づけて出来るか
――どうやれば精度が上がると思いますか?
やはり準備の部分で練習中から試合を想定して、試合のプレッシャーと練習のプレッシャーは実際に違ったりするので、練習でどれだけ試合に近づけて出来るかだ思います。
――それはひとりでは出来ない練習ですよね
僕としては想定する、イメージすることが大事で、例えば僕が練習でボールキャリーしたとして、練習なのでタックルが来るとかではありませんが、後で練習を見返したときに、「このボールキャリーだったら、試合では返されていたな」とか、そういうことをイメージしながら映像を見ています。練習中にタックルには行かないけれど、「今のプレーだったら相手にずらされていたかも」と、想定しながらやっています。
――そうやって練習から考えてプレーしていくと、自分の力が上がっている感覚が掴めていくんですか?
そうですね。それはあると思います。結局はそういうプレーを連続してやっていくことが、質を上げることに繋がると思います。
――今はリザーブで出場することが多いですが、プレー時間は足りていますか?
プレータイムはもっと欲しいですね。けれど、そこでも普段の練習から、もっと信頼を勝ち取っていかなければいけないと思っています。
――「80分頑張れ」と言われたらいけそうですか?
はい、そこはぜんぜん大丈夫です(笑)。
◆試合の動きを読みながらプレー
――ここをもっと強化していきたいと思っていることはどこですか?
やっぱりいちばんは、フィジカルのところですね。相手はほぼ外国人選手になるので、そこでちょっとでも前に出られる、タックルでも一発で倒せる、というところは、もっとレベルアップしないといけないと思います。
――そのためには何がキーポイントになりますか?
タックルひとつとっても、スキルは大事ですね。よくディフェンスコーチとも話しますが、ただガムシャラに行くだけではダメで、タイミングもありますし、自分の立ち位置もありますし、そういうスキルやテクニックは大事になってくると思います。
――そういうスキル面を突き詰めているんですね
それこそチーム練習中ではなかなか流れの中でタックルに行くことがないので、チーム練習後の個人トレーニングで誰かにつき合ってもらってやっています。
――パワーをつける、スピードをつける、身体を大きくするというよりも、スキルですか?
そうですね。パワーもつけていきたいですが、それは今すぐに改善できることではないと思うので、今はスキルやテクニックの方が重要かなと思います。
――サンゴリアスに加入してまだ3年目ですが、年齢的には中堅になりますよね
年齢が下の人たちの方が多くなってきているので、伝えられることは伝えていきたいと思っていますし、僕もそうやって先輩に教えてもらってきたので。あとは迷っていそうな選手がいたら、話しかけたりしていかなければいけない年齢になってきたと思います。
――それはもう始めていますか?
ちょくちょく。
――体力面はまったく問題ありませんか?
全く問題ないですね。逆にあまり疲れることもなくなったかもしれません。試合の流れがあるので、以前よりも試合の動きを読みながらプレー出来るようになってきたと思います。今までだったら無駄に疲れる動きをしていたと思いますが、そういうところが無くなってきたかなと思います。
◆遂行力
――ここの目標は何ですか?
プレーオフに進むこと、優勝することは絶対なんですけれど、先を見るようなチームではないと思うので、いつもホリさん(堀越康介)や流さん(大)が言っていますが、1試合1試合、その1週間を大事にしなければいけないので、それの積み重ねが最後に優勝ということになると思います。
――個人的な目標としては何ですか?
選手である以上、2番で出たい、スタートで出たいということは絶対にありますし、シーズンも残り少なくなっていますが、今の立ち位置にぜんぜん満足していません。もっと練習からハングリーさを出して、やっていければ良いかなと思います。
――準備してきた1週間を大事にすると分かっていながらも、それが出せないというところの改善は?
そこの遂行力ですよね。ゲームドライバーと言って、各ポジションから数人でミーティングをしている中で、僕もそこに入るので、やはりそういうポジションの選手たちが、そこの遂行力をもっと試合の中で話して、試合の中で改善していかなければいけない場面も多いと思います。
――試合に出た時はどんなプレーをしたいですか?
先ほどは、フィニッシャーでインパクトということを言いましたが、僕自身サイズがないので、逆にインパクトあるプレーをしたら人よりも目立てると思うので、どういうプレーにしても「やっぱり人と違うな」というところを見せたいですね。
――第7節神戸製鋼戦では、ラストワンプレーで相手からボールを奪って試合終了にしましたよね
あれは良かったですね(笑)。出場時間としては10分くらいで、試合の展開的にもディフェンスばかりだったので、ボールをもらうこともあまりありませんでした。あの短時間でもあぁいうプレーをすることは難しいと思いますからね。
――あのプレーはどういう意識で生まれたんですか?
あの時は自分でもビックリしたんですけれど(笑)、ディフェンスが続いていて、ラストワンプレーでしたよね。アタックのチームなので、継続されたらどんどん勢いに乗せてしまうという思いがあったので、どこかでターンオーバーしなければいけないと思っていました。あの一瞬でターンオーバー出来ました。あれは良かったですね(笑)。
――これからもそういうインパクトを期待していいですか?
はい、お願いします。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]