SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2023年3月17日

#840 松島 幸太朗 『小さなチャンスを逃さない』

フランスで一段と成長し、リーグワンでも進化し続けている松島選手。自分自身の課題、そしてファイナルへ向けてのチームの展望を聞きました。 (取材日:2023年3月中旬)


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◆人を活かす

――先日の試合ではピンチで何回も素晴らしいタックルがありましたね

1対1のところは、前よりは強くなってきていることを感じています。

――全体的にレベルアップしていると思いますが、自分では特にどこが良くなっていると感じていますか?

1対1のフィジカルのところです。フランスの2シーズン目は肩を怪我して調子を落としてしまいましたが、サンゴリアスに戻ってきてフィジカルの部分を取り戻すことにトライしてきて、いまだんだんと体に浸透してきている感じです。

――フランスでつかんで、継続的に積み重ねてきた成果ですか?

はい、試合に出て強化される部分もあると思いますが、基本的には自分で積み重ねてきたものです。

――視野が広がったのではないかと思いますがどうですか?

そうですね。フランスに行って、"人を活かす"というところをかなり意識してやりました。フランスへ行く前は自分でガムシャラにキャリーしてというプレーが多かったのですが、今はパスの方が多くなってきました。そこをもう少しバランス良くやりたいです。自分で行ける時はしっかりキャリーをして、外が空いていればスペースにボールを持って行けるようにしたいです。視野が広くなったのは、意識的なところが良くなったからだと思います。

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◆1対1

――"人を活かす"ことはフランスでプレーする上でのテーマとして意識していたんですね?

やはり自分で行くとなると体格差もあるので、人を使いながら、人を活かしながらやらないと、タックルを受けてしまいます。生き残るためと言うか、長いシーズン怪我なくやっていくためにも、そういったところも考えないといけないなと思ってやってきました。

――いちばんフランスから持って帰ってきたと言えるものは何ですか?

まずは、フィジカル面です。1対1の怖さも今はないですし、あとは、どこでキックを使うかなど、チームの流れの理解度が上がりました。

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――1対1の怖さはどんなところですか。

体の大きなフォワードがいると、以前は迷いがあったり、なるべく避けたりしていましたが、今はそこを怖がらず、しっかり強くボールキャリーすることが出来るようになりました。

――相手がいたとしても絶対抜いてやるぞという感じぶつかって行く時がありますね

トライを取るというより、チャンスメイクしたいという気持ちが今はあります。ディフェンスラインの幅が少しあったり相手の凸凹があれば、行けるという感覚はあるので、綺麗に揃っていても行ける場合もありますが、そういう小さなチャンスを見逃さずにやる、というところです。

――やはりフランスへ行って良かったと思いますか?

そうですね。フランスではキックが多かったので、自分がキックするシチュエーションも多くなっていましたし、キックの技術も良くなってきたと思います。

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◆ハングリー精神

――人を使うという意味では、尾﨑晟也選手と良いコンビを発揮していますね?

晟也も自分で行きますし、ボールを預けても晟也なら行けるだろうと、僕もみんなも思っていて、そういう安心感があります。自分の前が空いていなければ、晟也の前にスペースが出来るといことが多くなってくると思いますし、2人ともランが武器なので、相手の脅威になっているんじゃないかなと思います。

――サンゴリアスに帰ってきて、やはりこのチームは良いなと思うところはどこですか?

ハングリー精神が1人1人あるというところ、みんなが向上心を持ってやっているところです。そういうサンゴリアスのスピリッツは、ハードワークをするところから来ていると思います。そこが自分のプレースタイルに合っていると思いますし、それが以前と変わらずにあるので、やりやすさがあります。

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――そのサンゴリアスがなかなか勝てないのが埼玉パナソニックワイルドナイツですが、対戦してどうでしたか?

先週は負けましたが、そんなにネガティブな感じではなくて、相手の鉄壁なディフェンスに対して自分たちはトライも出来ていましたし、そこにはみんなが自信を持っているという感覚があります。あとはそれを80分間どう続けてやっていくかです。外にスペースが空いている時に攻めきれなかったケースが結構あったので、いかに小さなチャンスを逃さないかというところが、リーグワンで優勝出来るか出来ないかに響いてくると思います。その小さいチャンスを、しっかりみんなで攻めていきたいです。

――その小さいチャンスを攻められるようになるには、サンゴリアスにはどんなことが必要ですか?

自分たちは走らないといけないアタッキングシステムなので、走っている中にも、ただ走るのではなくて、どこにスペースが空いているかをしっかり内側に伝えるとか、その内側の選手がそれを聞いてしっかり遂行出来るかというところだと思います。

トヨタヴェルブリッツ戦ではそこが出来なかったし、メンタルやフィジカル的にも良くないところがぜんぶ出てしまいました。それらを修正しようと、埼玉パナソニックワイルドナイツ戦では攻め続けました。この2試合を経験して、戦術のスムーズさがだんだんと出てくると思うので、そうなればこのチームはかなりの脅威になるのではないかなと思います。

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◆意図のあるアタック

―最後に勝てるという自信はどうですか?

ぜんぜんあります!埼玉パナソニックワイルドナイツ相手にちゃんと攻めることが出来ましたし、自分たちがやりたいことも出来ました。あとはやはりトップ4のチームに対して、どのようなラグビーをしていくかです。クボタスピアーズ船橋・東京ベイのディフェンスに対してどう攻めるかとか、全チームが違うディフェンスをしてくるので、そのディフェンスに対する対応力を上げていかないと、ずるずるとただアタックをしているだけになってしまいます。意図のあるアタックをしていく、というところです。

――そのためにはいちばん後ろにいる自分の役割が大きいのでは?

そうですね、最近は10番と15番がファーストレシーブに入って、どんどんボールを動かすのがトレンドになってきています。でも、その中でもただパスをするのではなくて、行ける時にはしっかり自分で行くというプレーも必要で、そのバランスが取れれば、もっとチームの勢いを生み出すことが出来ると思います。

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――試合を重ねる毎に松島選手のプレーが良くなってきていると思いますが、今の課題は何ですか?

もう少し自分がボールを欲しい時に、ちゃんとボールをもらえるというところと、逆に自分が欲しくない時には、キャリーをするようコミュニケーションを取るとか、それらを上手くやれば、もっとスムーズにプレー出来ると思います。

――自分が欲しい時にボールをもらう方法は?

早めにしゃべって伝える、そこのコミュニケーションがすべてで、そこだけですね。基本的に今でもコミュニケーションは取れているので、もうちょっと明確に、内側の選手が何をするにしても、自信を持ってプレー出来るようなコールをするというところです。

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◆安定性あるキック

――松島選手も30歳になりましたが、スピードはさらに速くなっていますか?

どうでしょうか。走る距離によって速さも変わっていると思いますが、その一瞬一瞬、抜きに行った時に、スピードの部分をなくしてしまうと僕的には良くないので、出来るだけそこを維持していきたいなと思いっています。

――そのためにずっと続けているトレーニングはあるんですか?

今はそんなにやっていません。身体的な実感はないのですが、年齢的にも一般的には終わりが近づいているので、実感が出てくる前に早めに手を打って、新しいトレーニングを取り入れながら、新鮮な気持ちでやっていきたいなと思っています。

――キックも良くなっていると思いますが、感触はどうですか?

だいぶ成長はしていると思います。その良くなったところを試合の中でも安定して出さないといけないので、この試合は良くてこの試合は良くないとか、そういった状態はなく、安定性のあるキックをやりたいと考えています。

――もうタッチは蹴らないんですか?

そんなことはないです。タイミングがくればやります。

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◆80分間アタッキングラグビー

――今やっているラグビーがとても楽しそうに見えますが、どの辺が面白いですか?

今やっているラグビーは、アタッキングラグビーの象徴だと思いますし、あれだけアタックするというのは他のチームにとっても嫌だと思います。さらに強度の高いアタックが出来れば、相手の心理にも影響が出てくると思うので、本当に嫌だなって思わせるラグビーをしたいです。

――自分自身はアタックとディフェンスだったら、やはりアタックが好きですか?

もちろんアタックです。

――シーズンも後半に入ってきましたが、現時点での目標をお願いします。

もちろん優勝することです。しかし自分たちの小さいミスや、繰り返しやってきているペナルティーをなくしていかないと、今のままでは最後の最後で1点差、2点差で負けてしまうと思います。それは決して大きな問題はなく意識的な問題で、そこを良くしていけば全く変わると思います。そのポテンシャルをこのチームは秘めているので、普段の練習でやっているアタッキングラグビーを80分間の試合で出すことが出来るようになれば、とても良いチームになると思います。

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――ファンに向けて、そういうためにも自分のこんなプレーを見ていて欲しい、というところはありますか?

昔と比べて、今はすべてのプレーのスタンダートを上げてやっているので、ぜんぶ見てもらいたいです。

(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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