SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2021年4月 9日

#741 中村 駿太 『いつもピークを目指しています』

やんちゃなイメージがあった選手が落ち着いてくると、その理由は何なのか聞きたくなります。中村駿太選手にその理由を聞くのは2度目ですが、落ち着きを増した雰囲気を感じさせる一方で、プレーでは相変わらず中村選手らしいやんちゃさを発揮しています。その両立について聞きました。(取材日:2021年4月上旬)

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◆良いライバルがチーム内にいる

――セットプレーの調子がとても良いですね

とても良い状態だと思います。ハリー(ホッキングス)という大きい選手が加入したということもありますが、シンプルにベーシックなスキルが、どんな状況でも安定して発揮できるようになってきたことが、良くなってきた要因かなと思います。

――チーム全体として良くなった部分だと思いますが、何かやり方や意識を変えた部分はありますか?

春シーズン、プレシーズンでやり込んだということもありますし、ラインアウトを見ているタイ(マクアイザック/アシスタントコーチ)がサンゴリアスに来て2シーズン目で、タイのやりたいことも分かってきています。その積み重ねが、今シーズン出ているのかなと思います。

――自分自身のセットプレーについてはどうですか?

すごく調子良いですよ。スクラムもラインアウトも自信あります。しっかりと試合に出て、セットプレーで結果を出せていることが自信に繋がっていると思います。あとは、良いライバルがチーム内にいるので、本当に毎日の練習で、試合と同じような良いコンペティションが出来ていて、それが自分の成長に繋がり、試合に出た時に良いパフォーマンスが出せていると思います。

――毎日、試合と同じような良い練習が出来ているということは、身体への負担も大きくそのケアが大事だと思いますが

自分で出来ることはやりますし、メディカルスタッフの力を借りてケアをしてもらったりしています。元々、腰に疲れが出やすいタイプなので、そこは毎日のようにケアしてもらっています。

――腰に疲れが出るというのは、スクラムが原因ですか?

スクラムもありますが、今シーズンから下半身のトレーニングメニューを変えたんです。それによって、腰痛は出なくなってきたので、これまでのトレーニング方法が腰に負担をかけていたのかなと思います。

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◆ジャッカルしてボールを取ってくることがポイント

――クボタ戦では素晴らしいジャッカルを連発しましたね?

もちろんジャッカルを意識していましたし、同じポジションの北出さん(卓也)や康介(堀越)との差を出すという意味で言うと、ブレイクダウンでジャッカルしてボールを取ってくるということがポイントになるかなと思っているので、今シーズンだけじゃないですけど、ずっと狙っていました。それが今シーズン、目に見える形で出せているのかなと思います。

――自分の中での変化はあったんですか?

身体を絞ったので、リアクションスピードと、単純にワークレートが上がったのかなと思います。あとは、判断も的確に出来るようになってきたのかなと思います。

――ジャッカルが出来るチャンスは、どう判断しているんですか?

ファーストタックラーがバチっと相手を倒した時や、相手の倒れ方が悪くなりそうだなと思った時に入るようにしています。クボタ戦では、相手の倒れ方でチャンスだと思ったので、入りましたね。

――そういう時には見た瞬間に身体が動いている感じですか?

そうですね。ディフェンスをしていての目標は、相手のボールを奪い返すことなので、その目標を達成することが出来たプレーだったので、良かったですね。これからもチャンスがあれば狙いますし、そのための準備をしっかりしたいと思います。

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◆使える筋肉に

――調子が良いとのことですが、そんな中で今の課題は何ですか?

全部じゃないですかね。毎回、インタビューで「全部」って言っているような気がしますけど(笑)。

――調子が良いと自ら言うことがあまりなかったので、本当に順調なんだなと感じます

本当に順調に来ていると思います。今シーズンは、準備期間が長かったこともあるかもしれないですね。昨シーズンが不完全燃焼で終わってしまいましたし、ポジティブに言うと、昨シーズンが終わってからの期間って、今までラグビーをしてきた中で、いちばん身体を休められた期間、リコンディショニング出来た期間でした。リフレッシュした中で、もう一度自分の身体を作り直して、準備する時間が長く取れたのはプラスだったと思います。

――身体を作り直す機会があれば、こうしたいというイメージを持っていたんですか?

元々、もう少し身体を絞っても良いかなとは思っていて、そこを上手く絞れたかなと。正直、少し絞り過ぎた部分はあったんですが、シーズンに入る直前にイメージする身体に近づけられました。

イメージする身体に近づけるため、平松S&Cコーチとずっと一緒にトレーニングして、フィットネスであったり、パワーのところだったり、色んなことを一緒に取り組みました。必要な筋肉をつけて、それでしっかりと動けるように、使える筋肉にしていきました。

――今の体重は何キロですか?

99キロです。元々は102キロくらいがベストかなと思っていたんですが、今の99キロや100キロが自分には合っているのかなと思っています。

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――パワーとスピードのバランスはどうですか?

正直、あまり変わらないかなと思います。逆に、見ていてどうですか?

――動きが鋭くなったような気がします

パワーのところはもっとつけなければいけないと思っているので、継続的にそういうトレーニングをして、更にパワーアップ出来るように、ファイナルまで取り組んでいきたいと思います。

――スクラムについてはどうですか?

体重を落としたから弱くなったとは感じていません。ただ、もっと良くなりたいですね。パワーのところはもっとつけていかなければいけない部分だと思いますし、康介と1対1をやったらどっちが強いかと言えば、パワーの部分で言えば康介の方が強いような気がします。そこでも負けないように、もっとパワーをつけていかなければいけないと思います。

――パワーがプレーに影響するところは、具体的にはどこになりますか?

スクラムやタックル、あとはボールキャリーの部分かなと思います。そこを更に良くしていきたい、しなければいけないですね。

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◆パパ、カッコいいな

――前回のインタビューで、落ち着いたのは結婚したからという話がありましたが、更に落ち着いた感じがありますね

子どもが生まれたからですかね(笑)。12月16日に女の子が生まれました。もう本当に可愛いです(笑)。だから、練習が終わってクラブハウスでやることが終わったら、すぐに家に帰ります。毎日、子どもをお風呂に入れています。

――子どもが生まれたことで、意識の面で変わったところはありますか?

まだ3~4ヶ月くらいなので、試合に見に来ても記憶にはないと思うんですよ。だから、子どもがちゃんと覚えてられるようになった時もまだラグビーを続けていて、「パパ、カッコいいな」って思ってもらいたいので、まだまだ頑張らないとなって思いますね。だから、あと5~6年かなと思っています。

――その時にピークを迎えるような計画ですか?

いやいや、いつもピークを目指していますよ(笑)。先を見てピークを持っていくということは無いですけど、子どもの記憶が残るようになった時にもプレーして、「カッコいいな」って思ってもらうのって、良いですよね。

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◆体格も年齢も全然違う人たちがやり合う

――今のチームの雰囲気はどうですか?

良い雰囲気ですよ。練習をしていて、その週のノンゲームメンバーがとても強いですし、チームの中でとても良いコンペティションが出来ているからこそ、今の結果に繋がっていると思います。とても良い状態でチームが出来てきていて、良い方向に向かっているんじゃないかなと思います。

――良い状態になっている要因は何だと思いますか?

みんなが同じ方向を向いているということもあると思いますし、みんなが向上心を持って取り組んでいるということもあると思います。あと、何よりもベテランの選手、大志さん(村田)やジョーディー(ジョーダン・スマイラー)、小澤さん、ニシさん(西川征克)などが、すごいハードワークをしている姿を見ているので、それに続かなければいけないと思いますし、あの人たちがハードワークしているから自分たちもハードワークしなければいけないという想いを、若手含めて、みんなが思っていると思います。

――ハードワークして競い合った先に、夢というかとても輝いているものがあって、みんながそこに向かっているようなイメージです

優勝したらどんないいことが待っているかって、ベテラン選手や優勝を経験したことがある人は全員が分かっていると思うんですよ。だから、試合に出ている出ていない関わらず、全員がそこに向かって行っていると思います。チームとしての目標を達成するために、自己犠牲の精神じゃないですけど、そういう想いがあると思います。

――そんな状況で、改めていま感じるラグビーの面白さって何ですか?

やっぱり体格も年齢も全然違う人たちが集まって、それをひとつのルールの中でやり合う。1番だろうが15番だろうが関係なくやり合うということは、他にないと思うんですよ。それがラグビーの魅力だと思います。30歳後半の人が、20代前半の人と、本気で身体をぶつけ合うって、素晴らしいじゃないですか。そこがラグビーにしかない魅力なんじゃないかなと思います。

――そういう30代後半の選手に、自分もなりたいですか?

なりたいですね。僕は社員なので、会社から引退と言われたらラグビーが出来なくなってしまうので、出来ることなら、そこまでラグビーをやりたいですね。

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◆会社に対して、同じ部署の人たちに対して

――社員選手としてのプライドはありますか?

ありますけど、グラウンドに出れば、社員だろうがプロだろうが関係ないので、社員選手ということを深くは思いません。ただ、会社の同じ部署の人や仕事をサポートしてくれている人たちがいて、僕らはラグビーで席を空けている期間が長くて、迷惑をかけている部分があります。たくさんサポートしてもらっていることがあるので、その恩返しをどこでするかと考えた時に、ラグビーでしかその恩返しは出来ないと思っています。試合に出て勝って、優勝して、みんなに笑顔や勇気を持ってもらえたら、それが唯一の恩返しなんじゃないかなと思いますね。

そこは自分の中で、大きなモチベーションになっています。シーズン中は、他の社員の人と比べると半分も仕事が出来ていなくて、ラグビーにこれだけの時間を使わせてもらっているので、会社に対して、同じ部署の人たちに対して、ラグビーで結果を出さなければいけないと強く思います。あとは家族ですよね。これだけラグビーに集中できる環境を作ってもらっているので、家族に対してもラグビーで恩返しをしたいと思っています。

――今は3人家族ですか?

3人と、犬が2匹です。犬も可愛いんですよ(笑)。ただ、まだ子どもが小さいので、僕が遠征などで家を空ける時は、実家で預かってもらったりしています。親や妻のサポートがなければ、良いパフォーマンスは出せていないと思うので、本当に感謝しています。

――シーズン終盤に入ってきますが、今シーズンの目標をお願いします

まずは、ファイナルにスタメンで出ること。尚且つ、そこで優勝することです。それがいちばんの目標です。もちろんトップのレベルでラグビーをやらせてもらっているので、その先の日本代表を目指しますけれど、まずはサントリーで結果を出すこと、試合に出ることが大事だと思うので、先を見すぎずに、自分らしく一歩一歩楽しんで、前進していければいいかなと思います。

――それをやり切る自信はありますか?

ありますね。ただ、そこは選ぶ側の人が決めることで、自分はコントロール出来ないので、自分に出来ることをしっかりと一歩一歩やって、その結果を待ちたいと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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