SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2019年6月14日

#640 垣永 真之介 『新しいサンゴリアスに変わる時がきた』

トップリーグカップ2019に向けてキャプテンを任命された垣永真之介選手。リーダーとしての意識、そして選手としての目標はどこにあるのでしょうか?意気込みと展望を訊きました。(取材日:2019年5月中旬)

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◆自分たちで結果を残す

――カップ戦のキャプテンになって、自分ではどんなキャプテンだと認識していますか?

難しいですね。あまり「俺がキャプテンだ」というのはなくて、今のメンバーで優勝しに行くというモチベーションなので、誰が代表ということがないチームになってきていると思います。

――まだ監督が合流していない中、「自分たちでやる」というみんなの自覚が出てきた感じですか?

そうですね。今までは「何をするか」という大枠を与えられてきたのですが、こうやって自分たちでクリエイトしなければいけないという状況になって、選手たちも絶対に分かっていますし、それをやることで新しいサンゴリアスを作れるということもみんな分かっているので、確実に1つ1つ進歩しているなと思います。それが結果としてまだ見えてはいないですが。

――そういう中でのキャプテンは重責じゃないですか?

あんまりそんなにやることはないですけどね。別に僕がチームを作るわけではないですし、みんなで作るものですから。みんなで新しいサンゴリアスを作る時に、キャプテンがどうこうというのはあまりないと、選手たちみんなも思っているはずです。

――新しいサンゴリアスとは?

結果に見えていないので何とも言えないですし、本当に抽象的なことではあると思うんですけど、「与えられることに対してやる」ということは誰でもできると思うんですよ。新しいというのは「自分たちで何かを作り出して、自分たちで結果を残す」。それは選手だけではなくて、スタッフも一緒なんですけど、そういう新しいサンゴリアスの形に変わる時がきたのかなと思います。

――自分たちで何かを作る、その「何か」とは?

チームのカルチャーであり、結果であり、組織であります。

――僕1人ではないということですが、役割分担は明快なんですか?

各リーダーがいます。その分リーダー陣は多いですが、各所にリーダーを据えて、密にコミュニケーションがとれるようになっています。選手が思っていることはしっかりスタッフ陣とも共有しますし、スタッフが思っていることも選手と共有するし、選手とスタッフは別ではなくて、一緒にチームを作り上げていくんです。

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◆みんながみんなを持ち上げていく

――強力なヒエラルキーがあったチームからフラットなチームになるという理想は素晴らしいと思います。ただかなり難しいですよね

難しいですね。ずっと勝ち続けるためには、「良い監督が来たから勝てる」という組織ではダメだと思うんですよ。そこには絶対的な土台があって、サンゴリアスはその土台がめちゃくちゃあると思うんですけど、さらにもっとその土台というかカルチャーを大きくしてチームを作り上げていくことで、チームとしては初の3連覇の挑戦は叶いませんでしたが、そこを超えていけるような気がします。

どうなるか分からないですけど、本当にそれが正しいのか正しくないのか?それをチャレンジする期間だと思いますし、チャレンジしやすい期間だと思います。間違っていたらやり直せば良いし、正しかったと思えばそれにどんどん肉付けしていけば良い。

――そういう意識でチームが始まって、いま見えている課題は何ですか?

人間ってやっぱり居心地の良いところに居ようとするじゃないですか。ただそれを矯正してくれる監督がいたら居心地の良いところには居続けられないし、居心地の良いところにいたら成長はできないと思うんです。そこを自分たちから抜け出していくことが、まず1つのチャレンジだと思っています。

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――個人的に出来ても、他のメンバーも出来なければいけないことだと思いますが、どうですか?

チームを作る上で、個人が居心地の良いところにいようがいまいが、というところは置いておいて、チームとしてのスタンダードをどう持っていくかが、それに直結していると思っています。今まで沢木さんやエディーさんという厳しい方がいて、選手たちがそこに強制的にいた訳ですが、自分たちで自らそこに持っていくことが出来たら、もっと効果が上がると思うんですよ。

――相当自分に厳しくしないと難しいですね

そうですね。簡単ではないですよね。簡単ではないですけど、それが一番のチャレンジで、一番サンゴリアスに足りないことだと思います。

――明らかに楽な方に行っている選手がいたら、選手同士で声を掛けるんですか?

そういうところから始まるんでしょうね。そこはリーダー陣の仕事だと思うんですが、リーダーとか関係なく、みんながそれを言い合えるようになる、みんなでみんなを持ち上げていくということができれば、ずっと強いサンゴリアスを作れると思います。

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◆このチームに全てを捧げたい

――そのために大切なことは何ですか?

ラグビーが好きであるということと、サンゴリアスを好きということ。僕はオフ中に考えたことがあって、この5年間は僕も満足にスタートから出られた訳ではなくて、怪我もあったし色々な試練はあったんですけど、ひねくれているから「出られないならこのチームなんて出てってやるわ」と思った時期もあったんです(笑)。

ただ昨シーズンが終わって振り返ってみた時に「俺はサンゴリアスがめちゃくちゃ好きだな」と思って、このチームに全てを捧げたいという気持ちになったんです。昨シーズン優勝できなかったけど、5年間を思い返して、本当にサンゴリアスが好きだなと思ったんです。

――それはどこで気づいたんですか?

分かんないです。今シーズンがスタートする前にはゆっくりする時間も多かったので、ふと考えていました。

――一番好きなところはどこですか?

それは言葉では表せないんですけど、「好きだな」と思いました。昨シーズンは流がキャプテンをやっていて、相当辛かったと思ういます。これまでは自分の仕事だけすれば良いという考えを持っていて、それがチームに繋がるのは間違いないですが、それだけじゃなくてプラス1で何か出来たんじゃないかなと、後悔というか申し訳なさというか、それがあったんです。入部してから6年目になって、ラグビー選手なのでプレーをすることももちろんなんですけど、もっとチームのために出来ることがある、と思ったんです。

――それはカップ戦のキャプテンという経験をしてみて感じることですか?

それもあると思いますけど、そこだけではなくて5年間をゆっくり考えてだと思います。

――カップ戦のキャプテンは自分でそういう経験だったんですか?

チームをよく見ることが出来ました。それも自分を振り返るきっかけになったと思うんですが、やっぱりサンゴリアスらしさ、サントリーらしさ、ですよね。優勝という目標は絶対に大事で、なくてはならないし、それを達成しないと意味がないと思うんですが、根底にはサンゴリアスのラグビーが好きで、サンゴリアスを体現したいというような感覚が大切なんだと思ったんです。

抽象的ですけど、昨シーズンは勝っても喜べなくて、そういう失いかけたものがカップ戦では見えかけた気がします。俺たちはサンゴリアスの一員で、誇れるものを作っていきたいです。そういうチームだし、先輩たちが作ってくれた素晴らしいチームでプレーできるという自信を、みんなで取り戻したい。

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◆サンゴリアスのキャプテンはとても光栄なこと

――これまでのキャプテン歴は?

学生時代もキャプテンでしたけど、ちょっと感覚が違うんですよね。学生って結構同期のためなんです。それはサンゴリアスでも変わらないですけど、今はサンゴアリスという存在と仲間とファミリーと、もっと尽くしたいと思うレベルが大きくなっています。

――大学生の前はキャプテンやっていましたか?

高校と大学だけですね。

――自分としてキャプテンはどういう役割だと思いますか?

あんまり気にしたことがないので、分からないです。キャプテンだから何かしようとしても出来ないじゃないですか。キャプテンは名前だけで、コイントスをするくらいだと思うんですよ。ラグビーは1人で勝てるものではないですし。

――それでも、社会人になってカップ戦のキャプテンをやって大切にしていたことは?

リーダーとして間違いなくやらなければいけないことは、自分のパフォーマンスだと思うんですよ。それプラスαで何ができるかということ、それがリーダーだと思います。

――プラスαで何をやってきたんですか?声を出すことは確実に目立っていましたよ

そのレベルですよね。できることは限られているので。

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――キャプテンということをあまり意識していないんですね

ラグビーをやっている時はあんまりそんなこと考えられないです。でも多少、責任感はあります。さっきも言いましたけど、今シーズンは色々なチャレンジがあって、もっと大きくするというチャレンジができる年だと思っているので、そういう役割をグラウンドの中でもやらなければいけないと思っています。それはキャプテンだからとかじゃなくて、みんなができるようになるように、まず僕からやっていくという感じです。

――先頭をきってやっていくということですね

そうですね。

――キャプテンはそんなに好きじゃないんですか?

別に好きではないですよ(笑)。

――でも、苦ではないですよね

苦というか、サンゴリアスのキャプテンをやれるということはとても光栄なことじゃないですか。そうやって必要とされたということはとても嬉しいことで、それに応えたいなと思います。あとは、プレーが一番ですけど、プレー以外で自分がどれだけチームの力になれるか。僕には強力なライバルがいっぱいいますし、試合に出られるか出られないかも分からないし、出る努力は絶対にしますけど、まず一番は試合に出ることが大事です。

この前、コスさん(小野晃征)と話したんですけど、「チームのためにプライドを捨て去る時も間違いなく必要になる」と。それもサンゴリアスの1つのカルチャーだと思うんです。ノンメンバーも「メンバーのために」というところができていくかどうかだと思うんです。

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◆一番大きいプライドを捨ててチームのために身を削る

――チームのためにプライドを捨てるとは?

例えば、めちゃくちゃ練習を頑張っていても試合に出られない時もあるじゃないですか。出られないから、そこでやる気をなくして適当に練習をするのか。ここまできた、ということは絶対にプライドがあると思うんですよ。今まで試合に出てきた人間しかサンゴリアスに入れないし、そこの一番大きいプライドを捨ててチームのために身を削るというところが、僕は全くできなかったんです。試合に出ることが一番でもちろん諦めませんけど、これから年次も上がっていくにつれて、この時期にそういうチャレンジもしていきたいなと思います。

――サンゴリアスにはカップ戦で良いパフォーマンスをして日本代表に選ばれたいと思っている選手がたくさんいると思いますが、そこはどうですか?

僕も諦めていないですし、僕も絶対に這い上がりますし、今回はそういう大会だと思うんです。ラグビー選手として、今みんなが一番欲しいものを手に入れられるチャンスという意味のカップ戦でもあると思います。チームとしても一番手に入れたい新しいカルチャー、新しいチームを作るにあたって一番手に入れたいものが、このカップ戦にあると思います。そういうこともみんな個人的に思っていると思います。

――そこをクローズアップしたら相当熱いですよね

熱いと思いますよ。チームのためにプライドを捨てるって、絶対に悔しいはずなのにみんな表面にあまり出さないんですよ。全員とてもムカついていると思うけど、やっぱり出さないんですよ。それを今回は絶対に変えられるチャンスがあるので、思いっきり前面に出して取りに行く価値があると思っています。

――スローガンはなんですか?

"NO MAGIC"です。

――そこに込めた意味は?

「近道はない」ということです。日々ちゃんと練習をして、それを見返して1つずつ成長できているか。急に強くなる魔法はない。

――改めて、今シーズンの目標は?

まずは結果で、優勝です。優勝してから全てが始まります。基本的には優勝です。ただ優勝を目指しながら、優勝以外の部分も優勝したことによって、さらに価値が高まって、サンゴリアスというチームがもっと大きくなって最高のチームになれることが僕の理想です。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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