SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2017年6月 2日

#537 流 大 『言うからには自分がやらなければいけない』

沢木敬介監督からキャプテンに指名された2年目の流大選手。悩みながらもチームをリードし、自らも大きく成長したこの1年。そのキャプテンシップを振り返ってもらいました。(取材日:2017年2月3日)

◆パニックにならなかった

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---- スクラムハーフとしてトップリーグのベストフィフティーンに選出されましたね

ベストフィフティーンのことを考えていなかったので、選ばれて意外でした。もちろん光栄なことで嬉しく思ったんですが、全ての試合で良いパフォーマンスが出せていたかと言えば、そうではなかったので、もっと貪欲にパフォーマンスを上げていかなければいけなかったと思いました。

---- その課題は何ですか?

試合を重ねていくことで良くはなっていきましたが、経験不足の部分はあったと思います。昨シーズンよりも試合中に落ち着いてプレー出来たところは成長した部分で、今シーズンはパニックになることはありませんでした。

ただその中で、上手くいかない時にフォワードをもっと前に出す戦い方を、前半戦は出来ていなかったので、そこは反省すべきポイントだと思っています。

---- 試合中にパニックにならなかった要因は?

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やるべきことが明確だったからです。毎試合前に、敬介さん(沢木監督)と話して、僕がやらなければいけないキーポイントを共有して試合に臨んでいたんですが、そのおかげでイメージがクリアになっていたので、パニックにならなかったと思います。

---- 日本選手権決勝でキックチャージされた時はどうでしたか?

そうですね(笑)。あれは完全に僕のミスで、僕のキックで全てを組み立てていたので、チャージされることをもっと予測しておかなければいけなかったと思いますし、蹴るべき状態ではない状態で蹴ってしまったことを反省しています。

トライを取られた後に、「やってしまった」という思いにはなりましたが、インゴールでハドルを組んだ時に、全員が次のことしか話していなかったことと、そこでマツ(松島幸太朗)が「これはみんなで取られたミスだから、チームで取り返そう」と言ってくれて、それで凄く助けられました。

そこでしっかりと切り替えられて、「もう一度敵陣でプレーすることと、我慢してアタックし続ければペナルティーなどで得点できるチャンスが来る」ということを、改めてみんなに伝えて、その通りのプレーが出来たと思います。

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---- スクラムハーフとして強みと課題はどこですか?

僕のストロングポイントは、パスとラン、そして僕の強みであるキックを使って、スペースにボールを運べることだと思っています。そこが強みでもあり、今シーズン一番成長したところだと思っています。

課題の部分は、ディフェンスでもっとみんなを動かして組織化させるところが、僕の中でもっと出来ると思っているので、そこをこれから伸ばしたいと思っています。

◆チームに必要なことを言い続けた

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---- キャプテンになったことも成長を促したポイントかと思いますが、キャプテンとしてはどうでしたか?

キャプテンになり色々と悩み、上手くいかなかったことの方が多かったと思うんですが、途中からはキャプテンという形を僕の中である意味捨てて、自分が言いたいことをしっかりと伝え、やりたいことをやり、パフォーマンスが一番大事ということを頭に置いてからはスッキリしたというか、自分のプレーに集中できましたし、頭の中もクリアになったことで、落ち着いてプレーできるようになったと思います。

---- 中学、高校、大学、社会人とキャプテンをやってきた流選手でも、キャプテンを意識しすぎると上手くいかないんですね

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今シーズンは特にそうでした。ただ、サンゴリアスには経験ある選手とリーダーが他にもいるので、僕だけがリーダーシップを取ろうとするよりも、その人たちに上手く協力してもらいながら一緒にやった方が明らかに良かったので、切り替えられてからは良くなっていったと思います。

経験ある選手やリーダーたちは、僕のことを尊重してくれていて、僕が上手く発言したり、行動するような雰囲気を作ってくれていました。

---- そこで切り替えたことによって、リーダーシップのどこが変わったと思いますか?

以前は、練習などでも全てをポジティブに持っていこうとしていた時がありました。あまり上手くいっていない練習でも「良かった良かった、次はもっと良くできる」と言ったりしていましたが、ある日、敬介さんに呼ばれて、「それではダメだ。ダメなことはしっかりとダメと言わなければいけないし、仲良し集団じゃ絶対に勝てない。本当のことを言い合わなければチームは強くならない」と言われて、それで悩んだ時期がありました。

僕の中では、みんなのモチベーションを上げたり、チームの雰囲気を良くすることも大事だと思っていたんですが、敬介さんに指摘をされましたし、僕自身も「勝つためには厳しいことを言わなければいけない」と感じたので、それからは下手に雰囲気を作ろうとせず、雰囲気を壊してでもチームに必要なことを言い続けてきました。

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---- その手応えはどうでしたか?

みんなが居心地よく練習を終わることは、かなり少なくなったと思います。練習終わりに僕が良かったと言えば、言われた選手は「良かったんだな」と思ってしまうと思いましたし、敬介さんや僕が、嫌な終わり方になったとしても、それをやることによって、選手たちは「ダメだったんだな。次はもっとやらなければいけない」という気持ちになったと思います。

◆意思を持ってトレーニングする

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---- その自分の中での新しいキャプテンのスタイルが上手くいき始めたのはいつ頃ですか?

第4節のパナソニック戦くらいからは良くなっていったと思います。僕の中であまりスタイルを意識することはありませんが、本当に"ブレない"ということを一番大事にしたのが、パナソニック戦あたりからですね。

---- ブレないということは、物事を深く追求しなければ出来ないことですよね

どんな時でも常にチームのことを考えて、「どうすれば強くなるか」、「どうすれば良い練習が出来て、上手くいくのか」ということを考えて取り組んでいました。最終的にはチームが勝つためにやっていましたし、チャンピオンになりたいという思いがあり、そのために必要なことに対して、僕が"ブレない"ことが大事だと思っていました。

---- そこでチームとしては何が大切になりますか?

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意思を持ってトレーニングすることだと思います。コーチたちが準備したプログラムを、ただ単に練習したり、何となく動くということが、今シーズンは無くなりましたし、「これは何のためにやるのか、これをやることによって試合に勝てる」という明確なことがあったので、その意思を持ってトレーニングできたこと、そして意欲や態度、「上手くなりたい」「勝ちたい」「優勝したい」という本当に大事な、ラグビーの原点であるような気持ちの部分を、より強く持つことが出来たと思います。

---- 今シーズンを経験して、キャプテンとしての心構えが変わりましたか?

変わったというよりも、新たに加わったという感じだと思います。今までやってきたキャプテンとは全く違って、チームが勝つことだけを考えて取り組むようになりました。今までは学校という組織の中で、下の学年がたくさんいて、チーム全体のことを考えなければいけませんでした。サンゴリアスでは選手会長がいますし、チーム全体のところは上手く連携を取りながら選手会長にやってもらっていたので、僕はラグビーやチームの文化に対しての責任を強く感じていました。

---- キャプテンの面白さはどこですか?

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シーズンが終わってみれば、色々な経験ができ、成長していけたと思うので面白かったんですが、やっている最中は充実感を味わいながらも、キツくて悩んだことの方が多かったです(笑)。

これからもチームがいつも良い状態でいることは難しいと思いますし、その時その時で適切なことを考え、適切なことを伝えることが大事になると思っています。

---- いま学生でキャプテンをやっている人にアドバイスを送るならば、どういう言葉を送りますか?

キャプテンだからと言って、言葉で上手く伝えられない選手もいると思いますが、まずは自分がハードにトレーニングし全力を出すことが一番大事だと思います。そして、発言しなければいけない時には、自分が思っていることを偽りなく、そしてチームが強くなるために必要なことを、必ずみんなに伝えて、それで嫌われたとしてもチームは強くなると思うので、それが大事だと思います。

◆日本代表に選ばれるように頑張る

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---- キャプテンは監督と選手の間にいると思いますが、それについてはどう考えていますか?

敬介さんからは、いつも「監督とキャプテンはいつも同じ方向を向いていなければいけない」と言われていて、やはり監督と選手との中では色々な衝突であったり、思い違いがあったりしましたが、僕はそのどちらの意見も聞くことが必要だと考えていましたし、選手の意見を聞いて僕も大事だと思えば、その意見を監督に伝えなければいけないと思っていました。

敬介さんの中にも絶対にブレない部分があるので、それは僕にはっきりと言ってくれますし、選手側の意見も尊重してくれていました。両方の意見を聞きながら、選手側の意見が甘いと感じた時には、敬介さんに伝える前に「それは違う」と言うこともありました。

---- 自分にキャプテンは合っていると思いますか?

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キャプテンが合っているとは思えませんが(笑)、チームの方向性を決めたり、リードするということはやりたいと思いますし、合っているかもしれません。

---- キャプテンをやったことで、プレーヤーとしても成長したんじゃないですか?

プレーヤーとして凄く成長できたシーズンでした。僕のストロングポイントを前面に出しつつ、一戦一戦パフォーマンスが伸びていったと思っています。

---- 日本代表については?

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日本代表に選ばれるように頑張ることが、トップリーグにいる選手としての責任だと思いますし、僕自身の最大の目標もそこにあるので、サンウルブズや日本代表のスタッフの目に留まるような活躍をしていきたいと思います。




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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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