SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2014年5月28日

#379 田原 太一 『ラグビーをする上で、そして人が生きていく上で、反則をしてはいけない』

いつの間にかチーム2番目の年長者となった田原太一選手。今シーズンからサンゴリアスの選手会長を務めます。その意気込みを訊いてみました。

◆また新しく1年がスタート

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—— 今シーズンは選手会長に就任しましたが、何代目ですか?

7代目になるみたいです。初代がで、坂田さん(正彰/前GM)、カツオさん(大久保尚哉/採用兼広報)、耕太郎さん(田原/主務)、ヤマさん(山岡俊/2011年度勇退)、元さん(申騎/前アシスタントコーチ)、ノム(野村直矢/副務)で、僕になります。

—— これまで選手会長になった選手が引退、という流れがありましたが、そういう中で選手会長になるというのはどういう気持ちですか?

僕としたら、結果がそうなっているだけなのかなと思っています。誰1人として引退を考えてラグビーをしている人はいないと思います。僕の場合、ここ何年かは、ずっと引退と向き合いながらやってきているので、引退はいつ来てもおかしくはないと思っています。 毎年、1年1年が勝負の年だと思ってやってきている中で、選手として残れている状況だと思っています。今シーズンは選手会長になりましたが、自分の中では、また新しく1年がスタートしたという気持ちです。

—— 選手会長の話は、いつ頃ありましたか?

最初は、ノムから「次の選手会長は太一さんだよ」って冗談っぽく言われていて、「ないないない」とふざけて流していたんですが、後日直弥さん(大久保/監督)から呼ばれて、「選手会長をやってもらう」と言われ、その時は「分かりました」と返事をしました。

—— 選手会長を任されるということは考えていましたか?

選手をまとめたりするキャラクターではないと思っていたので、選手会長の話が来るとは思っていませんでした。

◆言い合える関係

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—— 選手会長を任され、どういうことをしていこうという考えはありますか?

具体的にはありませんが、選手の中にはラグビーや仕事でのストレスなどがあると思うので、そういうストレスを緩和していきながら、選手1人1人がグラウンドで100%の力を出せる環境を、スタッフと一緒に作っていければと考えています。スタッフからの要望もあると思うので、お互いに言い合える関係になり、折り合いをつけながら、良い環境を作っていければと思います。

—— ラグビーと仕事を両立しなければいけないので、若い選手は特に大変だと思いますが、どのようにケアをしていこうと考えていますか?

慣れるまでが大変で、慣れてしまえば自分のスタイルが出来ると思うので、それまでの間は、色々と愚痴を聞いたり出来ればと考えています。愚痴を聞いてあげるだけでも違うと思います。ストレスの捌け口が全くない状況で取り組むよりも、自分の中に溜め込みすぎないような捌け口があれば、良い循環が出来ていけると思うので、そういう部分でのサポートをしてあげていければと考えています。

人によって、愚痴を言ってくる人もいれば、自分の中で溜め込んでしまう人もいると思います。僕はまだ独身寮に住んでいるので(笑)、自分の中に溜め込んでしまう人にも目を配っていければと思います。 逆に、寮に住んでいるからこそ出来ることもあると思っています。試合が終わった後に、寮に帰ってきてから、寮に住んでいる若手選手のみんなで集まることも出来ると思いますし、そういうことが出来れば、自分の中に溜めていることも話しやすくなると思います。

—— グラウンド外でのサポートがメインになるかと思いますが、グラウンド内でのサポートはどういうことをしていこうと考えていますか?

グラウンドの中ではキャプテンがしっかりとまとめて、方向性を示していけるようにすることが大事だと思います。ただし、キャプテンなどに任せきりじゃ、これまでと何も変わらないので、若い選手がキャプテンをサポートするためには何が出来るかを考えさせるために、グラウンド外での過ごし方を変化させられればと思っています。

—— クラブハウスのロッカーについても対象になりますか?

極論を言えば、ロッカーは個人で管理するものなので、僕らが関与しないことがベストなんです。もしロッカーが汚かったり、整理が出来ていない選手がいれば、綺麗な選手を見本にさせたり、選手同士で指摘し合える環境が作れればいいと思います。 ロッカーグループについても、毎年同じでは変化がないと思うので、リーダーの選手たちと話をして、良い方向に進むために少しずつでも変えていこうという話をしています。上手くいくかはやってみないと分からない部分ではありますが、実際にやってみて、必要な部分と不必要な部分を判断して、選手で作るチームにしていければと考えています。

◆サンゴリアスに関わるすべての人のためのチーム

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—— 色々と変化をさせていこうというアイデアのもとは何ですか?

リーダーたちと「昨シーズン負けた理由は何だろう」と話をしている中で出てくるものもありますし、良い環境を与えてもらっていて、その環境に甘えてしまっている部分もあると思います。サンゴリアスに関わるすべての人のためのチームだと思っているので、1人1人のチームに関与する割合を高めていくことが大事だと思います。

チームに関わる割合をどれだけ大きくしていけるかを、選手1人1人が考えていかないと、昨シーズンのチームとは変わらないと思います。昨シーズン、パナソニックに負けたのは、その部分だと思います。直弥さんからは、「グラウンドの外でのディシプリンはナンバー1だけど、サントリーはグラウンドの中でのペナルティーが多かった。パナソニックのグラウンド外のことは分からないけど、グラウンドの中ではパナソニックが、一番ペナルティーが少なかった」と言われました。 サントリーの選手は、グラウンド外でやらなければいけないことは出来ても、グラウンドの中に入った時に、指示を出せる選手がいないとパニックを起こして、修正が出来なくなってしまっていたと思います。サントリーらしさを残しながら、その部分を少しでも変えていけるようにすることが必要だと思います。

—— 2年連続2冠を獲得していた時には、その部分は出来ていたんですか?

その時も課題だったと思いますが、勝ち続けていると見えない部分もあって、ペナルティーが多くても試合に勝っていれば、気づけない部分ですよね。アタッキング・ラグビーを追及していくことが答えだとは思いますが、昨シーズンのプレーオフファイナルで、8本ものペナルティーゴールを決められていて、ペナルティーの数を少なく出来れば、点数もあれだけ広がらず、また違った展開になっていたかもしれません。 ラグビーをする上で、そして人が生きていく上で、反則をしてはいけないんです。反則をしていてはチャンピオンチームに相応しくないと思いますし、グラウンドの内外で凄いと思われることで、応援してもらえるチームになっていくんじゃないかと思います。

—— そこがリーダーの役割を担う選手たちと密に話し合う中で気づいた部分ですか?

リーダーだけじゃなくて、スタッフとも話をして感じた部分です。ただし、リーダーやスタッフが思っていても、若い選手たちがそこに気づかなければ、与えられたことだけをやるだけになってしまうので、若い選手も巻き込んで変えていきたいですね。そして、若い選手から「チームを良くするために、こう変えていきたいんです」という話が出てくれば良いと思います。

—— いつ頃、若い選手からそういう話が出てきそうですか?

少しずつは出てきているので、そういう話をリーダーたちで話し合い、良い部分はスタッフなどに話をしていければと思います。 僕もリーダーグループに入るのが初めてで、他にもリーダーグループに入るのが初めての選手もいるので、話し合いながら、良い部分を残して、不要な部分は変えて、チームにプラスになるようにしていければと考えています。

今回は若い選手もリーダーグループに入っているので、そういう部分で、同世代の選手が意識してくれたり、中堅の選手が若い選手に言われて変わらないといけないと感じてくれるか、という部分に期待しています。リーダーグループは作っていますが、リーダーがすべてではなくて、グループの1人1人がリーダーだと思ってくれるようになってくれると、良いチームになっていくと思います。

◆寮に住んでいる分、サポートしていければ

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—— 昨シーズンは久しぶりに負けましたが、やはり負けたことは悔しかったですか?

もちろん悔しさはありますが、結果を見ると、負けるべくして負けたと思います。ラグビーに関してというよりも、意識の部分で負けたんだと思います。

—— 選手会長になりましたが、いち選手としても頑張らなければいけませんね

選手会長になりましたが、選手としては何も変わらないと思います。選手会長が偉いわけではないですし、他の選手が下に位置するわけではなくて、グラウンドの中で優勝を目指して頑張りつつ、出来ることをやっていければと思っています。 グラウンド外のことは、寮に住んでいる分、若い選手と一緒にいられる時間は長いので、そういうところでサポートしていければと考えています。結婚している選手とは、クラブハウス内でちゃんとコミュニケーションを取っていきたいと思います。

—— リーダーシップを取らなければいけない立場だと思いますが、これまでの仕事などの経験で活かせている部分はありますか?

仕事ではリーダーの立場まではいっていませんが、上司や他の社員の方の仕事の仕方などを見て、学ぶ部分があると思います。ただし、それがすべてではないと思うので、色々と学びながら、自分なりのやり方でやっていこうと思っています。

—— 自分らしさとは何だと思いますか?

選手会長の時に寮で生活をしていたのは、耕太郎さんと僕だけなんですよ。若い選手がグラウンドで100%の力を出せるような状況を作ってあげられるかという部分が、メインになってくるのかなと思います。僕が寮にいることが、良いのか悪いのかは、これからの結果になってくると思いますが、2年前くらいまでは、試合が終わった後に、寮にいる若い選手で集まることもなかったんですが、そういうところでチームワークが生まれたりすると思います。

—— 結婚をして寮を出る予定は?

全くありません(笑)。

—— では、自分らしさを出した選手会長を、2年も3年も続けられそうですね

続けられるだけやろうと思いますが、選手会長をやると引退するという変なジンクスを破ろうとは思っていません。ジンクスを破るためにラグビーをやるわけではなくて、選手としては1年ずつ努力をしている中で、今シーズンは選手会長を務めるということです。

—— いち選手としての頑張りに加え、今シーズンは選手会長を務めるということで、やりがいのあるシーズンになるんじゃないですか?

若い選手がどれだけ元気にグラウンドに出ていけるかがキーになると思っています。チームの中で30歳以上の選手が増えてきている中で、僕が20代の選手の活性剤となり、若い選手がチームに火をつけてくれるような存在になっていって欲しいですね。話していて、なんだか上からものを言っているみたいで嫌なんですけど(笑)、そういう想いがあります。まあ、若い選手がグラウンドに来ることが楽しくなればいいなと思います。

—— 田原選手はグラウンドに来ることが楽しそうですよね

僕は楽しいですよ(笑)。僕がベテラン扱いされてしまうと、逆に心配になりますね。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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