SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2014年3月12日

#370 有賀 剛 『もっと高い要求』

キャプテンは変われど、バイスキャプテンは変わらず。5年連続でバイスキャプテンとしてチームを引っ張ってきた有賀剛選手に、今シーズンのサントリー、そして来シーズンに向けての課題と抱負を聞きました。

◆まだまだ受け身な部分がある

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—— バイスキャプテンという立場から振り返って、これまでのサンゴリアスはどうでしたか?

「サントリーも成長していた」と言いたいんですが、プレーオフで優勝したパナソニックがすごく力をつけたということだと思います。だから勝てなかったのかなと思います。

—— 他のチームも全体的に力をつけてきたと思いますか?

サントリーは2年連続2冠を獲得していたチームですし、対戦相手はサントリーと試合をする時には目の色を変えてくるということもあったと思いますが、リーグ全体のレベルも上がっていると感じます。

—— サンゴリアスもより強くなったと思いますか?

正直、それは分からない部分もありますね。プレーオフファイナルでは、プレッシャーがかかった状況の上、グラウンドコンディションも良くない状況で、アグレッシブ・アタッキング・ラグビーをするには難しい状況だったとは思いますが、ファイナルの試合を振り返ってみると、アグレッシブ・アタッキング・ラグビーが出来ていなかったと思います。それは見ていたファンの方も感じたかもしれません。

—— ファイナルの前半はリードして折り返しましたが、後半はサンゴリアスらしいラグビーが出来ませんでした。その要因は何だと思いますか?

ディフェンスに関しては、正直「昨シーズンと比べて落ちている」と感じています。サントリーのラグビーはアタッキングラグビーですが、ディフェンスも同じくらい大事で、昨シーズンを振り返ると、ディフェンスで粘って、我慢して勝っているゲームがいくつもあって、それで優勝したという印象が僕の中にあります。

今はどこのチームもキックして簡単にボールを相手に渡さないようにしているので、ディフェンス力を向上出来なかった部分が、負けた理由の1つだと思います。

対戦相手の攻撃力も上がっていて、サントリーに攻撃させないために自分たちが攻めて、サントリーのディフェンスの時間を長くさせようという考えがあったと思いますし、それに対して僕らは自分たちのディフェンスが出来ずに、ファイナルの後半はあのような形になってしまったと思います。

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—— 昨シーズンやその前のシーズンでは、体力の面でも圧倒的に勝っていたように見えましたが、今シーズンはその差がなくなってきたように感じます

そう言われると、確かにその部分もあるかもしれませんが、コーチ陣が「これをやる」と言ったことに対して、やり切れていない部分もあって、それは僕らリーダーの責任だと思いますし、選手同士がより厳しく言い合ってやるということに関しては、まだまだ受け身な部分があると思います。

—— その反省点は改善されましたか?

プレーオフで負けた後は、決してブレちゃいけないという想いで取り組みました。正直負けた時は問題点がいっぱい出がちで、色んなところに矢印が向きがちなんです。プレーオフ後は、ブレちゃいけないと思うことと、ディフェンスを中心に取り組みました。

やるべきことはいっぱいありましたが、「ペナルティを犯さない」ということと、「良いディフェンスでターンオーバーする」という2つにフォーカスしてやりました。

—— 日本選手権準決勝の東芝戦は、プレーオフトーナメント後に改めて取り組んできたことを発揮出来ましたか?

東芝は何度も試合をしてきたチームですし、お互いにスタイルを持っているチームです。ポイントはディフェンスになると思っていました。接点のところで前に出させないで止めることを、チームで意思統一して試合に臨みました。

◆イメージと動きが一致するように

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—— 今シーズンは若手選手も多く出場しましたし、全選手47人中37人という多くの選手が出場しましたが、最後尾から見ていてどう感じますか?

2ndステージに関しては、個人的には、良い傾向だったと思っています。若手も経験していかなければいけない部分だと思いますし、それだけの人数が出場しても2位でプレーオフに進出したことは評価出来ることだと思います。

ただ、プレーオフや日本選手権のようにノックアウト方式になると、勢いだけでは勝てない部分が出てくるので、いつも以上に仕事は増えたと思います。

—— キャプテン2年目の真壁キャプテンはどうでしたか?

器用なタイプではないので、不器用ながらチームに良い影響を与えようと変わったと思う部分もありますし、“まだまだ”と思う部分もあります(笑)。

—— 変わった部分で一番良いと思う部分はどこですか?

練習が終わったら、すぐにその日の練習を振り返られるようにスタッフが映像を準備してくれています。昨シーズンまではその映像を見ることは少なかったんですが、今シーズンの真壁はしっかりと映像を見て練習を振り返っていますし、より成長しようとする姿勢が見えますね。

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—— 真壁キャプテンのキャプテンシーはどうですか?

気持ちが見えるプレーで引っ張ってくれれば、チームの矢印は同じ方向に向けられると思うので、あまり色んなことを話さなくてもいいと言っていましたね。真壁がキャプテンとしてどうにかしようと色んなところを気にしすぎちゃう時は、あまり良くない状況の時なので、真壁がプレーに集中できるように、タイトファイブの部分だけを見てもらって、その他の部分は周りの選手が見るようにしていました。

—— 有賀選手個人としては、今シーズンの調子はどうでしたか?

大きな怪我はしませんでしたが、コンディションを崩すこともありましたし、調子がすごく悪いという時期はありませんでしたが、すごく良いという時期もあまりありませんでした。年齢的な部分もあるかもしれませんが、対処法はあると思うので、来シーズンはその部分も考えたいと思います。

調子が良いと思えないのはストレスが溜まることで、練習でも本当はもっとできるんだけど、やり過ぎると調子を崩してしまうかもしれないという不安を抱えながらやっていたので、イメージと動きが一致するようにしたいと思っています。

—— 食事にも気をつけているんですか?

食事も気をつけていると思っているんですが、まだ気をつけ方が足りないのかなって思ったりしていますね。

◆選手が変わること

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—— 来シーズンにまた2冠を獲得するためには、何が必要だと思いますか?

選手が変わることだと思います。今シーズンはコーチがグラウンドで話をすることが多かったんですが、練習前にコーチから落とし込まれたことを、練習中は選手同士がもっと厳しく話をしていかなければいけなかったと思います。振り返ってみると、選手同士がお互いに厳しいことを言い合いながらやっていくことが大事だったと思います。

グラウンドに入ればプロ選手でも社員選手でも関係はないんですが、色んな選手が色んなことを話すとチームがまとまらないと思うので、もう少し選手同士で解決策が見つけられて、チームが良い方向に動くようにしていかなければいけないですね。“腹を割って話す”じゃないですけど、もっとお互いのことを理解して、高い要求をしながらやっていった方が良いと思います。

僕自身もそういう役割を果たしていかなければ、またタイトルを獲ることも難しくなると思います。若手選手が試合に出てきている中で、やはり上から言われてやるということがあると思うので、素晴らしい外国人選手もいますし、もっと話をして積極的にやっていって欲しいですね。

そこでシニアと若手との間で差が出てしまっているような気もするので、僕らももっと歩み寄らなければいけないと思いますし、若手ももっと積極的にシニアの人たちに話しかけてきて欲しいと思います。

—— 来シーズン以降、その先の目標は何ですか?

先の目標は、やはり2冠を獲りにいくということだと思います。あとはチームとしては、若い選手に経験をさせて層を厚くすることが、優勝するための条件だと思います。コーチ陣はまた春から、新しいことにチャレンジすると考えていると思います。

選手としては、コーチ陣が言ったことに対してやり切ることが大事だと思うので、来シーズンに向けて、コーチ陣がどういうことをテーマに出してくるんだろうと思っています。その目標に向かって個人がすべきことを自分で設定して、それに対して選手同士が厳しく言い合えることが大事になってくると思います。

昨シーズンは、周りから見ていたら「サントリーは強い」と思われていたかもしれませんが、僕らは楽勝だと思った試合はありません。コーチ陣が言ったことをやり切った結果が、2年連続2冠という部分だったと思います。今シーズンはなぜそれが出来なかったかと言われると、様々な意見が出てくると思いますし、1つの理由だけではないと思います。

—— 来シーズンのサンゴリアスの注目ポイントはどこになりますか?

サントリーのスタイルは、5年経っても10年経っても変わらなくて、その中でより前に出られる、よりトライを獲れるラグビーをやっていくので、そのアタックの部分を求め続けていくと思います。そしてアタックの中でオプションを使えるようにしていこうとしているので、そこを見ていて欲しいですね。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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