SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2013年12月18日

#359 野村 直矢 『チームの規律やルールにはとことんこだわってやっています』

どんな状態でも常に存在感溢れる野村直矢選手。それは選手会長だからという理由ではなく、彼が持つポジティブな精神力から生み出されるものだと感じさせられます。そんな野村選手がトップリーグのフィールドに還ってきました。グラウンド内外で益々存在感を発揮してくれるだろう野村選手に、現在の心境を聞きました。

◆この場所に戻って来れた

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—— 復帰おめでとうございます

ありがとうございます。今の気持ちは、本当に気持ちいいですね。毎日ラグビーが出来て、モヤモヤが晴れました。

—— トップリーグでの試合に「出場出来る」と思い始めたのはいつ頃ですか?

怪我が完治してチームに合流する前に、2ndステージの神戸製鋼戦をターゲットにトレーニングをして、予定通り神戸製鋼戦に出場することが出来ました。11月に練習試合が2試合あり、その試合で結果を残すことが出来れば、トップリーグに出場出来ると思っていました。

11月は日本代表選手がチームにいない期間でもありましたし、晃征(小野)とトゥシ(ピシ)がコンディション的にどういう状態でチームに戻ってくるか分からなかったので、そのタイミングで体調を万全にしておくことが、チームに貢献出来ることだと思っていました。

—— 2ndステージ第2節NEC戦はメンバーに入れませんでしたが、それについてはどうですか?

晃征もトゥシも国を代表する選手ですし、それは想定内です(笑)。ただポジション争いに加われることは、チームにとって良いことだと思っています。

—— 神戸製鋼戦での出来はどうでしたか?

出来は良かったと思いますが、これから更に良くなると思います。ウインドマンス中にどこにボールを運ぶかを意識して練習をしてきて、神戸製鋼戦ではそれを出すことが出来たと思います。試合が終わった時はそういう想いでしたが、後日試合の映像をじっくり見直した時に、チームとしてあと2~3本はトライが出来たんじゃないかと思いました。そこは反省点ですね。

—— 自身でトライを獲った時の心境はどうでしたか?

トライを獲ったから良いプレーということではありませんが、「この場所に戻って来れた」という想いだったと思います。

僕のトライは、僕が良いプレーをしたんじゃなくて、チームとして良いプレーをしたんだと思います。相手チームがディフェンスを絞れないアタック、誰がボールを持つかが分からないプレーをしていたから、たまたま僕の前が空いたんです。

その前に、1本目のタケ(竹本隼太郎)のトライがイメージ通り過ぎたので、「今日はイケる」と思いましたね。トライの前の過程で、攻撃の形を作れている中、内にボールを運ぶのか、外にボールを運ぶのかという選択が、しっかりと出来ていたと思います。

◆もっと試合に出たいという欲

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—— 公式戦では1年振りの試合となりましたが、ギャップなどはありませんでしたか?

特にありませんでしたね。1年振りなのにメンバーに選んでもらえて、「絶対にここで期待に応えなきゃいけない」と強く思っていて、そういうプレッシャーの中でしっかりとプレー出来たので、僕にとってもプラスだと思います。

今シーズンの11月までは、まったくみんなと練習が出来ていませんでしたが、チームがどういうことをしているかは常に理解していました。みんなが練習をしている時にはグラウンドにいましたし、みんながやっている練習の映像を見るようにしていました。そのおかげで、11月にチームに戻った時に、そこからチームが何をやっているかを理解しようというゼロからのスタートではなかったので、問題なくチームの練習にも入れました。

—— 外からチームの練習を見ていて、ラグビーがやりたいという気持ちにはなりませんでしたか?

ずっと思っていましたよ(笑)。昨シーズン後半から怪我でチームの練習には参加出来なくて、今シーズンはしっかり治そうと思ってリハビリに取り組んできたんですが、それでも完治までには時間がかかってしまいました。今年の夏に、見切り発車的にチーム練習に参加したんですが、5割程度の状態じゃ他の人と一緒のメニューは出来ないんですよ。

だから、みんなが夏合宿に行っている時も、僕は府中に残ってリハビリに専念しましたし、色んな人から「急ぐな」と助言をして頂きました。「ちゃんと治せば、どれだけのプレーが出来るようになるかをスタッフは分かっている」と言ってもらえたので、しっかりとリハビリに時間をかけることが出来ました。

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—— どの選手に聞いてもリハビリは大変と言いますが、野村選手はどうでしたか?

大変ですよ。時間が長いですし、やりたいラグビーが出来ないのに、力をちゃんと出さなきゃいけないんです。ラグビーが出来ているなかであれば、ウエイトなどの大変なトレーニングも我慢出来ると思うんですが、ラグビーが出来ないのに大変なトレーニングをするのは、すごくストレスが溜まります。

リハビリ中は、「もう一度、みんなでラグビーが出来るようになりたい」とか、「トップリーグの試合で、もう一度グラウンドに立ちたい」という想いだけでした。

—— 途中でくじけそうになることはありませんでしたか?

リハビリの途中でくじけそうになることはありませんでしたが、怪我をした直後は腕立て伏せも出来ない状態だったので、その時は「ヤバい」と思いましたね。その状態からリハビリへのモチベーションは、今までサントリーで試合に出てきて、「もう一度トップリーグの試合に出たい」、「トップリーグの試合で活躍したい」という想いだけですね。

—— 無事リハビリを終えて復帰しましたが、次のモチベーションは何になりますか?

欲が出るんですよ(笑)。1試合出たことで、次の試合も出られると思っていましたし、トップリーグの試合に出ても結果を残せることが分かったので、またチャンスはあると思っています。

次に出た時は、もっと上手く出来ると思いますし、もっと試合に出たいという欲が出てきています。次のチャンスがいつ来るかは分かりませんが、いつチャンスが来てもいいように準備をしていきます。

◆試合に出たいという気持ちをどれだけ持ち続けられるか

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—— 今シーズンから選手会長としても活動されていますが、選手会長としてはどうですか?

チームが良い方向に進むように、色々と考えてやっています。選手会長という役職には就いていますが、その役職に就いていなくても変わらないと思います。具体的にどういう活動がチームに良い影響を与えたかは分かりませんが、今のチームは若い選手が多いので、サントリーが成長していけるようにグラウンドの外でも新しいことにチャレンジしていこうと思っています。

チームにとって良いことは残していきながらも、変えた方が良いことは変えて、チームの規律やルールにはトコトンこだわってやっています。そういうトコトンこだわったことに、他のみんながやりがいや達成感を感じてくれて、チームのプライドを持ってくれているんじゃないかなと思います。

—— 今シーズンは特に若手選手の出場が目立ちますが、今の状況をどう考えていますか?

若手選手はものすごくハードトレーニングをしていますし、ベテランの座を脅かす若手選手がいっぱい出てきたので、ベテランにも良い影響を与えていると思います。ベテランには試合に出てきた経験やサントリーで長くラグビーをしている経験がありますし、若手はあまり余計なことを考えずに、どんどんチャレンジしてくるので、チームにとって良い状況だと思います。

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—— まだ試合に出られていない若手選手や、怪我などで試合に出られていない選手がいますが、そういう選手へアドバイスはありますか?

1年間怪我をせずに、自分の体をケアしてトレーニングが出来ていれば、1回もチャンスがないということはほぼありません。本当に試合に出たいと思っているのであれば、自分の体のケアをして、常にチャレンジするしかありません。強い気持ちを常に持ち続けることが大事だと思います。自分が試合に出たいという気持ちを、シーズンを通して1年間、どれだけ持ち続けられるかによって、試合に出られるかが決まると思います。

例えば、怪我をして試合に出られていない選手は、自分のスケジュールを立てなければいけません。僕は怪我をした時には、常に「この練習試合で復帰して、トップリーグのこの試合に出ることを目指す」というスケジュールをすぐに立てます。今回の怪我は予想以上に長引きましたが、自分のターゲットを1つ1つクリアしていき、復帰出来たならば、常にチャレンジして維持していければ、絶対にチャンスは来ます。そして、チャンスが来た時に良い準備が出来ていれば、良い結果を残すことが出来ますし、それを繰り返していければ、ベテランの座を脅かすことも出来ると思います。

—— ポジションへのこだわりはありますか?

今シーズンは10番以外のポジションの練習をしていないので、10番でチャレンジしています。

—— 今シーズンの目標は?

数多くの試合に出ることです。あとは毎試合、試合に出る準備をしっかりとして、いつ試合に出ても結果を残せる、チームに貢献出来るようにしておくことです。そして、優勝する時には試合に出ていたいですね。ただ、いちばん大事なのはチームに貢献することです。

チームに貢献するということは、試合に出るだけじゃないんです。試合に出てチームに貢献出来ればいちばん良いんですが、試合に出るために自分のことしか考えないのは違うと思います。チームが上手くまとまるように、規律やサントリーのルール、そして誰もがチームのことを考えて行動出来るように導いていきたいですね。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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