SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2013年5月 1日

#327 成田 秀悦 『スピードがあって力強い走りが出来るように』

セブンズ日本代表として2大会を戦った成田秀悦選手。代表チームの中心選手としての責任感溢れるインタビューとなりました。また入部以来、初めてのトップリーグ不出場だった昨シーズン。厳しい状況を振り返りながら、新シーズンへ懸ける意気込みを語ってくれました。

◆最初にトライを獲ること

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—— セブンズお疲れ様でした。今回のセブンズでの手応えは?

これまで何回か香港セブンズに出場してきましたが、今回の香港セブンズは良くなかったと思います。個人としてもチームとしても、あまり良い思い出が出来ずに終わってしまいました。準々決勝でグルジアに負けてしまったことが、この思いに繋がっている原因かもしれません。

—— 香港セブンズでは、準々決勝でグルジアに負けたことで、コアチーム昇格のチャンスを掴めませんでしたね

僕はこれでコアチーム昇格のチャンスで2度失敗しているんです。1度目が2012年に仲宗根と一緒に参加したアジアセブンズシリーズで、第1戦がマレーシアで行われたボルネオセブンズ、第2戦が中国の国内情勢で日本代表が不参加となった上海セブンズ、第3戦がインドでのムンバイセブンズ、そして第4戦がシンガポールセブンズとある中で、第3戦までが総合ランキング対象大会となっていて、総合優勝を果たせば今年の香港セブンズにコアチームとして参加出来ることになっていたんです。

第1戦のボルネオセブンズでは優勝し、上海セブンズは不参加でしたが、不参加の理由を考慮してもらい、第1戦と第3戦での獲得ポイントの平均ポイントを上海セブンズのポイントとして与えられることになっていたので、ムンバイセブンズで優勝していれば、上海セブンズでも優勝と同じポイントが与えられることになっていたんです。だからムンバイセブンズで優勝すれば、総合優勝となっていたんです。

ですが、ムンバイセブンズでは香港に負けて準優勝で、香港が総合優勝を果たしました。今年の香港セブンズでは、僕らはコアチーム昇格に向けた予選大会への出場でしたが、香港はコアチームと試合をしていました。そして、今年の香港セブンズでの予選大会の準々決勝でグルジアに負けて、昇格のチャンスを潰してしまったので、香港セブンズは本当に悔しい思い出となりました。

—— 昇格のチャンスを逃した原因は何だと思いますか?

香港セブンズで、勝利したプール戦のグルジア戦には出場していませんが、負けた準々決勝のグルジア戦には出場しました。準々決勝では先手を取れず、前半のうちに2つトライを獲られてしまい、そういう状況の中でチームがパニックになってしまった気がします。

準々決勝のグルジア戦は、唯一トライを獲れなかった試合でした。試合を通じて、全く自分たちの流れに持って行けずに終わってしまいました。そういうところがセブンズの面白さでもあるとは思います。セブンズは試合時間が短いので先手を取ることが大事で、試合の流れを掴むためには、最初にトライを獲ることが大事だと思います。

◆悔しさを晴らしに行きたい

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—— 東京セブンズにはどんな意気込みで臨んだんですか?

東京開催で、ホームということもありましたし、日本でセブンズという競技を盛り上げるためには、いちばん良い大会だと思っています。そういった意味で、今回の東京セブンズで挙げた2勝は大きかったと思います。去年は1勝も挙げられなかったからという理由ではなくて、あれだけお客さんがいる中で勝利する事が出来たことが大きいと思います。

—— 今回の東京セブンズの結果が、来シーズンに繋がると思いますか?

今回の東京セブンズで、「また来年も見に行きたい」と思ってくれる人が増えたり、「セブンズは面白い」と思ってくれる人がいてくれたら、来年にも繋がっていくと思います。

—— セブンズはリオデジャネイロオリンピック(2016年)か正式種目となりますが、オリンピック出場は見えてきましたか?

僕はまだ見えていないですね。その前に、まずは6月にロシアで行われるワールドカップです。

—— ワールドカップでの目標は?

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僕は2009年にドバイで行われたワールドカップに出場しましたが、その時は1勝も出来ずに終わってしまいました。あれだけ多くの人に送り出してもらったのに、結果を残せなかったという悔しさがあるので、今年のワールドカップメンバーに選ばれて、あの時の悔しさを晴らしに行きたいと思っています。

ワールドカップで勝つということは、今後のセブンズの強化にも繋がってくると思いますし、良い結果を残さない限り、日本のセブンズは先に進めないと思います。

—— セブンズのどこが自分に合っていると思いますか?

15人制と比べて、スペースが広い分、相手選手との1対1の回数が多いんです。僕は1対1が得意で、僕が1対1で抜けられれば相手チームは2人でマークしてくる状況になります。そうすると、周りを活かせるので、セブンズのそういうところが僕には合っていると思います。

あと、セブンズはすごく走ります。15人制では、なかなか1対1になることがないんですが、セブンズは1対1の状況になればすぐに勝負をかけられて、7分間の間に何回も勝負出来るんです。

—— 15人制のシーズンが終わってから、すぐにセブンズでしたね

日本選手権決勝が終わって、すぐにセブンズの合宿に参加して、1カ月間練習をしてから香港セブンズ、東京セブンズと続きました。

—— オフがありませんでしたね

サンゴリアスに戻ってきて、チームの練習で1km走のタイムを計りましたが、僕と大島はタイムが良かったんです。日本選手権が終わってからもずっとトレーニングをしていたので、「まぁそうでしょ~」という思いでした。なので、15人制に対して前向きに取り組めています。

◆ブレイクダウンを増やして、どんどん走る

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—— 日本代表として、セブンズの戦い方のコツは掴みましたか?

東京セブンズは、良いイメージが持てたと思います。今の日本代表は、ブレイクダウンを増やして、どんどん走るスタイルです。ブレイクダウンが増えることは、相手チームにとっても嫌なことなんです。合宿中には、ブレイクダウンの練習を数多くしましたし、ニュージーランドからターンオーバーすることも出来ました。

以前は全く違うスタイルでしたが、今のスタイルで強豪国に対して、手応えを掴めたということは、日本代表が向かっている方向は合っていると思います。

—— 以前の日本代表はどういうスタイルでしたか?

日本人は体格が小さいので、ブレイクダウンをあまり作らず、トライと獲るスタイルでした。やはり体格が小さいと、ブレイクダウンになった時に不利なんです。

—— 今回の東京セブンズで、強豪国相手にブレイクダウンとなっても不利にならなかった理由は何ですか?

本当にブレイクダウンの練習は時間をかけてやりました。強いチームであっても、セブンズではブレイクダウンからのターンオーバーは難しいんですよ。サポートする選手が速くブレイクダウンに入ってくると、ターンオーバーはほぼ難しいと思います。

セブンズでのブレイクダウンは、サポートに1人入るくらいで、あまり人数もかけられません。日本代表がブレイクダウンで勝つために、合宿の1カ月間は本当に走りました。

—— サントリーの中で、セブンズに合っていると思う選手はいますか?

大島は、今回の2大会で、チームの中心選手になったと思います。サントリーはセブンズ経験者が多いので、合っている選手は多いと思いますよ。大島や仲宗根がそうだったように、ブレイクダウンスキルに関しては、他のチームの選手よりも飛び抜けたものがあるかもしれません。

◆苦しいシーズン

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—— サントリーでの昨シーズンを振り返ると、どういう想いがありますか?

初めて公式戦に1試合も出場せずに終わってしまったシーズンで、苦しいシーズンでした。僕がまだ1年目や2年目の選手であれば、焦ることもないと思いますが、後輩に示さなければいけない年齢になっている中で、1試合にも出場出来なかったので、焦りしかありませんでした。

—— ここを改善すれば試合に出られるようになるというポイントはありましたか?

コーチ陣からは、ずっとフィジカルについて言われてきたので、そこを改善しようという目標はありました。すぐには結果が出ないので、気持ちの持ちようが難しかったんですが、2シーズン前よりは確実にフィジカルは上がっていると思います。

—— 2シーズン前はトップリーグのトライランキング2位でした。試合に出場すれば、更にトライが獲れる状態ですか?

それはどうですかね(笑)。フィジカルを強くしたことでスピードが落ちていたんですが、徐々にスピードが上がってきましたし、結果として試合には出られませんでしたが、それがセブンズには繋がっていたと思います。

—— 新シーズンで試合に出るためのポイントは?

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自分の持ち味を出さないことにはチャンスをもらえないと思うので、まずは自分の得意とするスピードでアピールしていきたいと思います。あとはフィジカルです。体を大きくするために、新田さん(博昭/ストレングスコーチ)と細かい数値目標を立てて、強化していきたいですね。相手を吹き飛ばすようなパワーは必要なくて、スピードがあって力強い走りが出来るようになれば、相手にとっても脅威になると思います。

—— 今の時期に気をつけていることは何ですか?

怪我です。どんなに良い選手でも、怪我をしてしまったらダメだと思います。

—— 新シーズンでの目標は何ですか?

試合に出ることだけですね。今まではトライ王とか言いましたけど(笑)、まずは試合に出ないことには、その先はないと思います。もう1年1年が勝負の年齢です。

試合に出ることは、セブンズでも一緒ですね。セブンズと15人制をどちらも頑張るということは、難しいことなんですが、今のセブンズは15人制のスキルを活かせるスタイルですし、逆にセブンズのスキルを15人制にも活かせると思うので、良い連動が出来ていると思います。僕はセブンズと15人制のどちらもやらせてもらっているので、充実しています。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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