SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2012年7月25日

#288 竹本 隼太郎 キャプテン会議代表『ラグビーが社会にとって必要なスポーツになること』

大畑大介(神戸製鋼アンバサダー)、廣瀬俊朗(東芝)に続く、3人目のキャプテン会議代表に就任。サンゴリアスでの2シーズンのキャプテンを終え、今度は各チームのリーダーをとりまとめるリーダー中のリーダーという大役を担うことになった竹本隼太郎選手。ラグビー界のリーダーの1人としての意気込みを聞きました。

◆選手がまとまってやっていこう

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—— キャプテン会議の代表に就任しました

大畑さん、廣瀬さん、僕という順で来たので、3代目の代表です。大久保監督も、キャプテン会議を設立する時に関わっていました。

—— キャプテン会議はどういう役割があると考えていますか?

「選手側から何か出来ることはないか?」という考えのもと、トップリーグに所属している14チームのメンバーが集まり、オールスター戦を企画したり、ブログでの発信を行っています。いきなり大きな目標を達成するために動くのではなく、コアなファンに向けて発信していこうと動いています。選手としては、まずはプレーすることがいちばん大切になるので、参加する選手に強制することはなく、協調性を持って、各チームで取り組んでいくことを考えています。

野球やサッカーでは、他のチームの選手同士がまとまって何かをするということはあまりないと思うので、「ラグビーは選手がまとまって何かをやっていこう」という思いからキャプテン会議が設立されました。

—— 各チームのキャプテンが集まっているんですか?

設立時は各チームのキャプテンと、そのキャプテンのサポート役がキャプテン会議のメンバーとなっていました。今も基本的に各チームのキャプテンがメンバーとなっていますが、キャプテンは各チームで仕事もあり忙しいので、まずはプレーすることを第一に考えてもらい、キャプテン会議の活動に賛同してくれる選手が参加してくれる組織になっていければいいと思っています。

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—— キャプテン会議の代表になった経緯は?

昨シーズン、僕はキャプテン会議の副代表を任されており、代表になることはすんなり決まりました。代表を決める時に、前代表の廣瀬さんから、「今のキャプテン会議のメンバーで考えると、次はタケじゃないかな」という話をされました。

サンゴリアスではキャプテンの任期が終わり、その分キャプテン会議に力を注ぐことが出来るようになりましたし、昨シーズンは副代表として廣瀬さんの活動をサポートしていて、やることが分かっていました。副代表として活動している中で、改善点なども見えてきていたので、誰かがやらねばという気持ちで、代表を引き受けました。

—— 新しい副代表は?

昨シーズンは僕1人が副代表でしたが、今シーズンはより多くの選手に関わってもらいたいという思いがあったので、3人に増やして、関東、関西、九州エリアにそれぞれ1人ずつ副代表を置くことにしました。

関東エリアはNTTコミュニケーションズのキャプテンをやっている友井川拓選手です。法政大学出身で、1つ年下なので、ナリ(成田)と同期です。熱い気持ちを持った選手だと思います。関西エリアはNTTドコモのキャプテンの平瀬健志選手で、同じく1つ下の選手ですが、ラグビー愛を持っていて、プレーに責任を感じますし、ミスが少ない選手です。九州エリアは九州電力の松本允選手です。松本選手は早稲田大学出身の同い年で、小学校の時から知っている選手です。松本選手は僕の実家にホームステイをしたこともあります。

—— 副代表は代表が選ぶんですか?

僕が候補者を選出して、キャプテン会議での話し合いで決めました。

◆ラグビー感謝の日

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—— 改善点とは具体的にどういうところですか?

今、当たり前のようにオールスター戦を行っていますが、もともとは"ラグビー感謝の日"を作って、ファンの皆さんに感謝を伝えることを目的としていました。その感謝を伝える方法として、今はオールスター戦を開催しています。昨年で言えば、オールスター戦でチャリティー活動を行い、被災地への支援活動も行いました。

そういう目的でオールスター戦を開催したんですが、他の選手との交流を目的として参加している選手が多く見られました。僕が初めてオールスター戦に選出された時には、本当に嬉しかったです。最初はサントリーでも試合に出られなかったのに、徐々に試合に出られるようになってきて、バックローの先発としてオールスターに選ばれて、喜んでオールスター戦に参加したんですが、他の選手は目的が違っていたので、あまり良い試合が出来ずにショックを受けました。

ラグビーは一生懸命100%でプレーしてこそ、見ている人に感動が伝わると考えています。ザワさん(小野澤)はそういう選手がいる中、トレーニングを行いしっかりと準備をして、オールスター戦でMVPを獲得し、大きなテレビをもらっていました。そういう面で、意識の差は凄く感じます。

オールスター戦をお祭りと捉えることは良いと思いますが、お祭りと捉えながらも、一生懸命やることやしっかりと準備をすること、真剣勝負をすることが必要だと思います。僕が代表になったので、そこを変えていこうと考えています。

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—— 他に改善点はありますか?

14チームもいるので、なかなかまとめることは難しいと思います。しかも年に1回や2回くらいしか顔を合わせない選手もいるわけなので、キャプテン会議の一部のメンバーで何かを決めていくことが多くなってしまいます。14チームで足並みを揃えるために、もっとコミュニケーションが必要だと思います。

今、各チームの選手との連絡方法はメールでのやり取りになっていますが、多くの選手が頻繁にはメールを見られなかったり、すぐに話し合いたいことが話し合えない状況になっていました。副代表を3人にしたこともその改善策で、エリアによって合同練習や練習試合で顔を合わせる数が多くなり、エリアごとにコミュニケーションが密に取れるので、副代表に各エリアの意見を集約してもらおうと思っています。

—— 何か新しく始めようと考えていることはありますか?

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新しく何かやりたいとは考えていますが、まずは今あるものを変えていきたいと考えています。オールスター戦もそうですが、キャプテン会議のウェブサイトに関しても、アクセス数が極めて少ない状況です。ウェブサイトにコラムを書くことも強制はしていませんが、ウェブサイトを統括する担当者を置いて、運営していこうと考えています。

例えば、スーパーラグビーやトップリーグのプレーオフトーナメント、日本選手権では、選手はどういうところに注目しているかという記事を書いたりして、ラグビーファンに向けて発信するのも面白いと思います。

あと各チームの良い文化を共有して、真似出来ることは真似をして、ラグビー全体のレベルを上げていってもらいたいと思いますし、各チームで急成長している選手に注目したり、その他にも色々なアイディアがあると思います。そういう活動を14チームが足並みを揃えてやっていきたいと考えています。まずは短期目標として、日本ラグビー協会のウェブサイトのアクセス数を超えたいと思います。

◆ラグビー観の共有

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—— 日本ラグビー協会やトップリーグとのコミュニケーションについてはどう考えていますか?

もっと密にコミュニケーションを取らなければいけないと思います。例えば、オールスター戦の会場を決めようとした時に、僕らには決める基準が分からないんです。東北で試合を行いたいと思っていても、雪やその他のリスクを取り除いた形で会場が決められ、その決められた会場で試合をすることを受け入れるしかありませんでした。今後は、会場を決めるところから、積極的に話し合いに参加していきたいと思います。

—— キャプテン会議の目標は何ですか?

ラグビー観の共有です。古くからある日本のラグビー文化を良い方向に持って行きたいと考えています。試合で頑張るのは当たり前のことなので、そのための準備を頑張ることが大事です。2019年のラグビーワールドカップに向けて、危機感を持っている選手もいますが、まずは自分たちのレベルアップが重要だと思います。

多くのラグビー選手はアマチュアですが、その中でもラグビーに対する姿勢は、プロ選手よりもプロフェッショナルでなくてはならないと思います。そういうことを情報発信していきたいと思います。考えを押し付けるつもりはありませんが、そういう考え方を良いと思ってくれたら、各チームで広げていってくれればと思います。

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究極の目標は、ラグビーが社会にとって必要なスポーツになることです。イギリスでは、「何のスポーツが好きか」という質問に「ラグビー」と答えると、「分かってらっしゃる」という雰囲気になるそうです。日本でもそうなって欲しいと思います。ラグビーは考えることが多いですし、体を張らなければいけないですし、コミュニケーションも取らなければいけません。ラグビーは色々なことが必要なスポーツなので、社会にとって必要なスポーツになっていって欲しいと思います。

一般的にラグビーのイメージは、ドラマの影響かどうかは分かりませんが、不良がやる激しいスポーツだから、親も子供にラグビーをやらせたくないと考えているのかもしれません。ラグビーを通じて得るものは、コミュニケーション能力や人間関係、考える癖、勝利へのプロセスを学んで、私生活に活かせることだと思います。ラグビーに怪我はつきものですが、タフになることが出来ます。

そういう意識を持つことが出来れば、子供が怪我をするというリスクよりも、ラグビーをやらせた方がメリットはあると感じてくれると思います。今はその魅力が多くの人に伝わっていないと思うので、ラグビーの魅力を伝えていきたいと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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