SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2011年3月28日

#236 特別編 『冷静な面、熱くなる面、そのバランスが難しい』

ナンバーエイト。ちょうど15人の真ん中に位置する8番。いろいろな意味で大きな選手が多い。サントリーのNo.8はそれほど大きくはないが、存在感は大きい。彼らは何を考え、どの様にプレーして、サンゴリアスの軸になっているのだろうか。

[共通質問]
【Q1】15人の真ん中にいますが意識しますか?
【Q2】No.8は大きいというイメージがありますが自分ではどう思いますか?
【Q3】バックスの理解度はフォワードとしていちばんだと思いますか?
【Q4】両者を繋げる役目はしていますか?
【Q5】プレーしていていちばん楽しい時は?
【Q6】いちばん大変な時は?
【Q7】何が大切だと思いますか?
【Q8】性格的な適性の自己診断は?
【Q9】ここを見てほしいというところは?
【Q10】生まれ変わったら何番になりたい?

『1人目◇竹本 隼太郎』
◆竹本 隼太郎(たけもと じゅんたろう/1983年7月18日/181cm・98kg)

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【Q1】15人の真ん中にいますが意識しますか?

15人の真ん中っていうのは意識していなかったので、いま「ちょうど数字的に真ん中で気持ち良い」というのはありました。プレー的にも真ん中辺りっていうのはありますけど、ど真ん中だとは思っていないですね。ど真ん中は、やっぱりハーフ団です。ハーフ団は心臓部みたいな感じですからね。

【Q2】No.8は大きいというイメージがありますが自分ではどう思いますか?

求められているプレーに対して出来ているかどうか分からないですけれど、ボールを貰う回数は他のチームのNo.8に比べて多い方だと思います。その中でまだビックプレーの数は多くないですけど、そういう球を貰いに行く意識とか仕事量とか、まだ粗削りですけど悪くないと思いますね。試合中に相手のNo.8をよく見るということはなくて、目の前にいる相手がフォワードであれバックスであれ、1対1になった時がその時の敵ですからね。

【Q3】バックスの理解度はフォワードとしていちばんだと思いますか?

バックローの6番、7番、8番がいちばんだとは思います。他のタイトファイブメンバーよりバックスのサインが分かっていて、バックスのラインに入ることもあります。そこでコミュニケーションをとって、バックスの様なトリッキーなプレーは出来ないですけど、フォワードの強みであるフィジカルを活かしたプレーを意識しています。

【Q4】両者を繋げる役目はしていますか?

間違いなくその役目をしていますね。その役目は非常に重要で、今年の僕らには欠かせないポジションだと思っています。No.8はフォワードのフェーズアタックも、バックスのフェーズアタックも両方やります。

【Q5】プレーしていていちばん楽しい時は?

いろいろありますけど、アタックをしていて、スポッと抜けた時は快感ですね。あと8単が好きです。スクラムと連動してプレーしなきゃいけないんですけれど、3番が、サントリーでいうハタケ(畠山)が、スクラムで前に出てくれたら、相手のフランカーの出だしが遅れるので、前に出ることが出来るんです。左に行くとスクラムハーフがいて、ゼロスピードだと止められる確率が高いので、右に行きたいですね。相手のフランカーが届かないところを走るのも面白いです。行けると思ったら、自分で選択して行かせてもらっています。フォワードの責任を背負って前に出ます。今シーズンは4回くらい成功しましたね。あんまり多くないんですけど、NEC戦のゴール前で相手No.8がシンビンでいない時に、相手のディフェンスを確認しながら、8単でそのままトライも出来ました。

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【Q6】いちばん大変な時は?

大変な時は、プレーが連続してなかなか切れない時ですね。みんな大変な中で、フォワードのアタックセットもしなきゃいけないし、バックスのセットもしなきゃいけないので、行ったり来たりの距離が長いと思うんですよ。そのタイミングを合わせるスキルとか、コンタクトスキルとか、パススキルとかが必要で、そのキツい時に正確なプレーが出来るかどうかが難しいところですね。

サントリーはみんな走るので、他の人に比べて特別走行距離が長いわけではないと思います。キックが多い試合になると変わってきますけど、タイトファイブよりNo.8の方が少しは走行距離が長いと思います。ただ真壁とかは良く走りますからね。その部分は他のチームとも比較してみたいところですね。

【Q7】何が大切だと思いますか?

何でも大事ですけど、いちばんはペネトレイトですよね。仕事も大事ですし、ビックプレーも大事ですけど、やっぱり前に出ないとダメだと思います。

【Q8】性格的な適性の自己診断は?

瞬間的に熱くなれるところは合っていると思います。コンタクトの時や前に出る時は熱くならないと出来ないですよ。ただずっと興奮していたら、コミュニケーションとかディフェンスのバランスを整えたりとか出来ないので、冷静な面と瞬間的に熱くなる面とが必要です。そのバランスが難しいんですよ。試合中に冷静すぎることはないですけど、もっと熱くなるべき時もあるかなって思う時はあります。そういう意味では、No.8はキャプテンに向いているかもしれないですね。

あと、最初に「15人の真ん中にいますが意識しますか?」っていう質問がありましたけど、距離的にも真ん中で、フォワードとバックスの間にいるので、声が通りやすい部分もありますね。そういうところでもNo.8はキャプテンには良いポジションだと思います。

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【Q9】ここを見てほしいというところは?

プレーの表と裏があるところを見てほしいです。例えばバックスのラインに入った時のループとか、もちろん自分が当たりに行くこともあるんですけど、スタンドにパスしてループすることもあります。ただ、それは決め打ちでやっているんじゃなくて、相手の動きを見ながらやっているんです。相手がいなかったら自分で行くし、相手がいたらちゃんとパスを繋いで、パスを繋げて前に出て貰うという判断の下プレーしているんです。決め打ちじゃなくて、相手の動きを見て判断している分、プレーの成功率が高いんです。

それはバックスでも、フォワードでも、パスを受ける人は何が来ても大丈夫なように準備しているんです。例えば僕とトゥシ(ピシ)だったら、去年からの流れがあるので、ループの確率が上がっていて、僕の動きに対応してくれています。そういういくつか選択肢がある中で、それを選択するかというところを見て欲しいですね。その中で、ベストな選択をしているということが分かったら、更にサントリーのラグビーが面白いと感じると思いますよ。

しかも、そのプレーは他のチームでは出来ないところだと思っています。先日、東芝のメンバーと豆まきしてきたのですけれど、ヒル(デイビッド/東芝ブレイブルーパス)が「あのプレーは竹本だけだよね」って言ってくれたのが凄く嬉しかったんですよ。意識すれば出来るようになると思うんですけど、すぐには出来ないところなので、そこは見てもらいたいですね。

これからのラグビーは、絶対そこが伸び代で、フィジカルとスキルの両方を伸ばしていかないといけないところなので、大事になってくると思いますよ。体が大きい人がスキルを身につけることがミソで、多くの人はただ苦手意識をもっていることが多いと思うんですよ。出来るって思い込んで、バックスになりきってやれば、出来るところもあると思うんです。急に真壁にやれって言っても無理な話なんですけど、5割くらいのスピードからやり始めれば、誰でも出来るようになると思います。

多くの人は無意識のうちにフォワードだからっていう意識があると思います。フォワードだから別にハンドリングスキルがなくてもいいというのが当たり前になっているんですけど、パスが出来て当たり前っていう空気になれば、誰でも出来るようになると思うんですよね。

【Q10】生まれ変わったら何番になりたい?

...No.8ですよ(笑)。皆さんが予想する通りの答えだと思ったんで、ちょっと溜めてみました。けど、やっぱりNo.8が楽しいですよ。ラグビーの醍醐味である接点の激しさを味わえるし、バックスのプレーにも参加できるし、タイトファイブともバックスとも近い所にいるので、1粒で2度美味しいですよ。けど、スクラムに関しても、いまは8人で組んでいるっていう一体感があるので、スクラムも楽しいですね。

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『2人目◇佐合 佑太』
◆佐合 佑太(さごう ゆうた/1985年3月13日/185cm・95kg)

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【Q1】15人の真ん中にいますが意識しますか?

そういう意識はあまりしたことないですね。自分が真ん中にいるという意識よりも、ポジションごとに役割があって、どのポジションも重要だと思っているので、特別に真ん中にいると思ったことはないですね。

【Q2】No.8は大きいというイメージがありますが自分ではどう思いますか?

突破の要のポジションで、ボールキャリアやブレイクダウンでも強い選手が多いと思いますけど、僕はスピードで抜けるイメージでプレーしています。

【Q3】バックスの理解度はフォワードとしていちばんだと思いますか?

僕は理解度が高い方ではないと思います(笑)。タケさん(竹本)みたいにパスもできる器用な選手もいれば、あまりパスが得意ではない選手もいると思います。チームがその選手に求めることによって違いがあると思いますけど、戦術面でバックスとコミュニケーションを取ったりと、いろいろと重要な面はあります。僕はそこまで理解度が高い方ではないと思います。

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【Q4】両者を繋げる役目はしていますか?

僕はあまりないですね。

【Q5】プレーしていていちばん楽しい時は?

やっぱりボールキャリアの時ですね。ポジション的にもボールもらう機会が多くて、ボールをもらったら突破していくことが仕事だと思っています。

【Q6】いちばん大変な時は?

なかなか突破出来ない時ですね。何回もボールもらっても、なかなか突破出来ないということは、仕事が出来ていないということだと思うので、苦しい時間ですね。相手ディフェンスの穴がない時は、力押しというか、どこかでぶち抜かなければいけない時だと思うんです。そういう時に、力が強い選手が抜け出さないと、チームが流れに乗っていけないと思うんですよ。そこはNo.8として重要な仕事だと思っています。

【Q7】何が大切だと思いますか?

自分がいかにボールを運ぶかだと思います。あとスクラムで言えば、いちばん後ろなので周りとのコミュニケーションが大切ですね。

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【Q8】性格的な適性の自己診断は?

半々ですかね(笑)。さっき言ったように、ボールもらうことは楽しいですし、自分でもどんどんボールをもらいたいと思っているので、その部分はNo.8に適していると思います。たださっき質問にあった、バックスとの繋ぎ役の部分で、もっとラグビーの知識をつけて、コミュニケーションを取っていかなければいけないと思いますね。

【Q9】ここを見てほしいというところは?

やっぱりスピードですね。トマシ(ソンゲタ/元サントリー、現キヤノンイーグルス)みたいにパワーでインパクトのある選手よりも、スピードでディフェンスを揺さぶってスペースを狙って行くプレースタイルの方が自分には合っているので、自分の強みを活かしたプレーを見て欲しいですね。

50m走のタイムは6秒前半くらいで、フォワードに突破されても追いつけないということはあまりないですね。疲れていなければですけど(笑)。バックスが相手だとキツイ部分がありますね。

【Q10】生まれ変わったら何番になりたい?

やってみたいのはウイングですね。やっぱりボールをもらいたいというのはあります。ウイングの人もなかなかボールをもらえない時もありますが、ボールを持って走りたいという思いがあります。ただこれからウイングになるのは難しいと思いますね(笑)。

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『3人目◇西川 征克』
◆西川 征克(にしかわ まさかつ/1987年5月18日/181cm・95kg)

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【Q1】15人の真ん中にいますが意識しますか?

意識はしていないですけど、フォワードとバックスの繋ぎ役でもあるので、ハーフと一緒にコミュニケーションを取っていって、チームを動かすのに大事なポジションだと思っています。

【Q2】No.8は大きいというイメージがありますが自分ではどう思いますか?

大学の時はいちばん強い人がやるポジションというイメージがありました。サントリーに入ってからは体が大きいだけじゃなく、俊敏性であったり仕事量が大事だと感じました。8番だけに限ったことじゃないですけど、フォワードでも走れて、タフさが大事だと感じています。

【Q3】バックスの理解度はフォワードとしていちばんだと思いますか?

6番、7番、8番のバックローが、コミュニケーションを重視しなければいけないポジションだと思いますね。

【Q4】両者を繋げる役目はしていますか?

スクラムであれば、ハーフがパスしやすいようにボールをきっちりキープするとか、キックに備えてしっかりとキャッチするとか、基本的なことなんですけど、そういうスキルが大事だと思います。メンタル面で言えば、スクラムの時はフォワード全員が見える位置にいるので、まだ出来てはいないんですけど、細かいところまでコミュニケーションが出来るようになりたいですね。

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【Q5】プレーしていていちばん楽しい時は?

バックスのラインに入ることもあるので、ボールを持った時は素直に楽しいですね。

【Q6】いちばん大変な時は?

まだまだラグビーを理解しきれていない部分があるので、まだプレーに迷いがあることです。サントリーに入ってきた時よりは、だいぶ成長出来ているんじゃないかとは思っています。

【Q7】何が大切だと思いますか?

フォワードとバックスの繋ぎ目ということで、しっかりコミュニケーションが取れて、チーム15人がまとまって動けることが大切だと思います。タケさんを見ていると、キャプテンということもあるかもしれないですが、フォワードとバックスとの上手くまとめて、お互いががやりたいことが出来る状況を作っていると思いますね。

自分のプレーの特徴としては、自分で前に出ていくことだと思っているので、そこは意識してプレーしています。

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【Q8】性格的な適性の自己診断は?

大学の時は目立ちたいという気持ちがあったので、合っているなって思っていました(笑)。ただ社会人になって、まだまだラグビーの理解度が足りないので、まだまだかなって思います。それにプレーに波があったりするので、練習中でもよく「波を無くせ」ってよく言われています。

あと自分の性格はB型ということもあって、周りの環境に慣れてきたら、結構、自己中なところが出てくるかもしれないです(笑)。

【Q9】ここを見てほしいというところは?

やっぱりボールを持った時に、粘って粘って少しでも前に出るところを見て欲しいです。

【Q10】生まれ変わったら何番になりたい?

一度やってみたいのはフルバックですね。パススキルや足の速さなどを考えると無理なんですけど、ラグビーを後ろから見たらどんな感じかなって思いますね。

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キャプテン1年目で日本一のチームのキャプテンとなった竹本選手。彼のチームリーダーとしての存在感は、このインタビューからもよくわかるのではないかと思う。そういう選手がNo.8をやり、チームの真ん中にいる。No.8だからこそのリーダーシップなのか、竹本選手ならではのリーダーシップなのか?その答えは、彼に続くNo.8たちが示してくれる。若きNo.8たちの成長に期待しよう。

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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