SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2007年8月 1日

#99 ジャパン壮行試合対戦チームメンバー 『アジア・バーバリアンズをちゃんとしたチームに仕上げる』

◆触っちゃった

—— アジア・バーバリアンズ合宿の話の前に、中村(直人)コーチから、以前に掲載された坂田選手の「スピリッツ・オブ・サンゴリアス」の内容に異議申し立てがありました。SPIRITS OF SUNGOLIATH #86坂田正彰 トップリーグ唯一のフロントロー1ゲーム3トライ 『その時、坂田正彰に何が起こったのか?』の記事中に、『「坂田-永友-清宮-吉野-尾関という展開でパスを回してトライ」という話が出てきますが、これは「坂田-中村-永友-清宮-吉野-尾関でトライ」が正しく、「坂田の後に中村が入って、永友」これが一番大事なところです(笑)。忘れちゃいけません』と

触っちゃった、ちょっと(笑)。「あ、いけねぇ、俺触っちゃった」と思ってパッとすぐボールを放してだから、1秒から1.5秒ぐらいですね。

—— 中村コーチは「不細工なパスだったけど、一応、間には入っていたのでそこが重要です」と言っていました

自分で「一応」って言うなって感じですね。

◆突然3試合

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—— アジア・バーバリアンズの合宿に参加しましたね。どうでしたか?

先週木曜日(7/19)に出て月曜日(7/23)の朝帰ってきました。マレーシアのコタキナバルというところで、クアラルンプールから1時間くらい行ったところ、30℃くらいの熱帯の地域です。サバ州とういうところのサバーというクラブチームのグラウンドで合宿をしてきました。サバ州のボスのような人がラグビーがとても好きな人で、その人が街のほとんどのビルを持っているようなオーナーさんで、その社長が自分の会社にフィジーとかサモアの選手を入れてクラブチームを作っているという感じでした。

結構力入っているチームなんですが、僕らは行って3日間で2試合すると言われていました。木曜日に出て木曜日の夜について翌日試合し、中1日でまた試合し、その夜に出て翌朝日本へ帰ってくるというスケジュールだったんですが、行ったら突然3試合すると言われました。サインプレーも何も決まっていない中で初日の午前中を迎えて、いろんなトラブルがあって試合して、またトラブルがあって試合してという感じの合宿でした。

—— 向こうには国内リーグとかあるんですか?

どうでしょうね。あるんでしょうけど、ちょっと分からないですね。設備やスタジアムはある程度しっかりしていました。おそらくクアラルンプールの方にも同じようなレベルのスタジアムがあるんじゃないかなという感じがしました。グラウンドは硬かったですね。芝生ではなく、雑草の生えた感じのアジア特有のグラウンドです。

—— なぜ、マレーシアに行くことになったんですか?

真下さん(昇/日本ラグビーフットボール協会副会長・専務理事)が、アジアラグビーフットボール協会の会長になった影響です。これまでは壮行試合というとスペインが来たりロシアが来たりしてたんですが、「今回はアジアでバーバリアンズ作ろう」ということだと聞いています。

◆英語か中国語

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—— 集まった国がカザフサタン、韓国、中国、アラビアンガルフ、香港、インド、チャイニーズタイペイ、スリランカですか?

アラビアンガルフとスリランカは来ませんでした。代わりにシンガポールが来ました。ラグビーのレベル自体は日本がいちばん上です。個人個人のキックのテクニックとかは別ですけど、国内リーグで競った試合をしているわけではないので、マレーシアタイムの中でのんびりとラグビーをしたような感じでした。

けど、僕らは日本人というのもあって、ジャパン相手に100-0の試合なんてされても困ると思っていて、日本人としてこの合宿に行ったのが僕と神戸(製鋼)の伊藤剛臣とヤマハ(発動機)の村田亙さんの3人だけだったんですが、フォーメーションや戦術についてコーチから指示があったわけでもないんです。

何が厳しかったかっていうとコミュニケーションが取りづらかったことですね。中国人には英語も通じないですし、カザフスタン人にはロシア語も通じないですし、通訳が英語か中国語だけだったんで厳しかったですね。中国語を英語にして、それをロシア語にするようなこともありました。

—— 合宿に参加した選手でレベルをつけると各国どういう感じですか?

韓国が比較的上の方だと思いますが、やはり自分のチームでの合宿ではないので、「どこどこが痛い」だの言ってあまり無理しないでやっているような感じがありました。あとは中国はまだ全然レベルは高くなくて、足が速いとか背が高いとかそういう選手を選んでいるという感じでしょう。各国、今回の合宿に参加してない選手もいました。実際の話このメンバーで現地のチームと試合しましたが、このままだったらジャパンにかなり点を取られるなという感じでした。

—— 3試合してどうでした?

一応勝つには勝ちましたけど、でも、という感じです。3日とも地元のチームと20分ハーフを4回やって2トライ差とか3トライ差でした。ディフェンスのシステムも何もないですし、多少の決め事をしてもコミュニケーションが何もとれないんで難しいですね。

逆に向こうのチームはテストマッチと称して、プレジデントが試合前に握手しに来てたりもしてました。僕らはニュージーランド方式で、1試合目はグラウンドに着くとアップもしないで「はい、並んで」という感じですぐ試合で、2試合目はちゃんとアップしようということでやりましたが、トロフィーとかも用意されていました。現地の人たちはアジア・バーバリアンズが来るということでしっかり歓迎してました。

—— そのスコアだと向こうの観客としてはとても面白かったんじゃないですか?

そうですね。相手もそれなりに点を取りましたからね。

◆簡単なサインは作りました

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—— 言葉の問題以外で大変だったのはなんですか?

やはり、最初は文化的なこととか習慣ですね。チャイニーズタイペイの選手とかチャイニーズの選手とかと同じ部屋でした。日本人同士じゃないんです。

月曜日に合宿から帰ってきて火曜からチーム(サントリー)に合流しましたが、帰ってくるとサントリーのみんなに「楽しかった?」とか聞かれるので、火曜日の練習前のミーティングで言おうと思っていて、ミーティングで清宮監督が「坂田帰ってきました」と言った瞬間に溜まっていたものを全部しゃべりました(笑)。あまりにも喋り続けたので、そんなに喋り続けていると何かを弁解しているみたいで、「何か隠してるな?変だぞ?」とまで言われました(笑)。それくらいいろいろ言いたかったんです。

朝飯6時集合と言われてレストランに行ったらレストランが空いてなくて準備も何もしていなくて、30~40分待っても何にも動きがないので隣のホテルまで行って中華食べたりということもありました。これは初日の話です。また、「バス9時ね」ということでバスを待っていたら結局10時まで来なかったり、駐車場で「どいてどいて」と言われながらラインアウトの練習をしたりしたこともありました。

最初は3人で部屋に入ったんです。香港の選手と中国の選手でした。最初は「日本人同士じゃないんだ」と思いましたけど、「交流も考えてのことだろうし仕方ないか、部屋は結構広いしまぁいいな」と思っていたんです。そしたらそのあと5、6人の選手が入ってきて、結局7人部屋を8人で使うような感じになって、エキストラベッドを入れたりしてたんですが、何人かは勝手に別の部屋に移ったりして、結局中国人の中に僕だけ1人でいました。

彼らは洗濯もしないし、テレビは中国語流れてるし、コミュニケーションは英語でも十分にとれないし。ただ、中国でラグビーをしている人はエリートが多いので、礼儀とかはしっかりしていたんですが、そういった習慣の部分で違いがありました。ロシアの選手には英語で話してもなんて言っているか分らない返事が返ってくるし、全然コミュニケーションはとれませんでした。

そういうレベルからスタートして次の日試合しろと言われたって、「ラインアウトをどこに投げるんだ」、「誰が飛ぶんだ」という感じです。その辺のコミュニケーションが全くなく、コーチが引っ張ってくれる訳でもなく、お前らに任せたという感じだったのでどうしようもなかったので、2試合目の時にはAとかBとかで本当に簡単なサインだけは作ってやりました。

特にキャプテンとかも決まっていませんでしたが、1試合目の試合前に突然「お前キャプテン」とヘッドコーチに言われて、1試合目と2試合目はキャプテンを務めました。一応の名前だけのキャプテンでした。タケちゃん(伊藤剛臣)とはサインの話をしたり、「ラインアウトのここはこうしよう」とか話したりしました。

—— 仲良くなった選手はいますか?

みんな最後は自分たちで話し合ってサイン作って話すようになりました。このままではまずいというのはみんな途中で感じて、練習後とか夜とかにミーティングをするようになりました。剛臣さんとかもうまくリーダーシップとってくれて、最初は全然喋らなくって怖かったロシアの選手も、終わりの頃はまとまってきました。食事中にお酒も少し飲んだりして盛り上がったり、最後別れる時は空港まで送っていこうかというくらい仲良くなりました。

◆ジャパンにとっても大事な試合

—— アジア・バーバリアンズの日本人メンバーの選出基準は?

元日本代表で現役の選手ということらしいです。言わば、"クラシック・ジャパン"という感じですね。

—— 他に何か楽しかったことや悲しかったことはありますか?

短い間でしたが、すごく長く感じました。朝っぱらからそういうことに振り回されたり(笑)。けどやっぱり、小学生にラグビーを教えに行ったのはすごく面白かったですし、これがアジアの差だなということもすごく感じました。サバーの選手と一緒に子どもにラグビーを教えたことが、とくに楽しかったですね。

—— マレーシアでの1日のスケジュールを教えてください

朝は6時半から飯で、そのあと7時半にスタートして、8時から9時が午前の練習でした。その後ホテルに戻って昼食をとって12時半~13時半は敷地内でラインアウトなどの練習でした。それから15時半に再びホテルを出発して16時半から試合でした。その後プールに入る選手は入ったりして19時半から夕食で夜にミーティングがありました。フリーになるのは22時頃でしたね。

—— 今後の予定は?

8月7日に東京で再集合して、8日に東芝でアタックディフェンスの練習、9日は試合前の軽い練習をして、10日試合して壮行会、解散という流れです。

マレーシア合宿に参加できなかった日本の選手も直前練習には来ますが、いかんせん日にちが足りないですね。今年から初めての"バーバリアンズ"ということで難しいですが、ジャパンにとっても大事な試合になると思うんでやることはやらないといけませんね。

◆失うものなんてありません

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—— 元ジャパンとして、これまでの壮行試合について思い出はありますか?

やはり最終的に代表になって、ワールドカップ前の試合って限られているので、コンディショニングの最終調整だったりターゲットとなる試合です。全力で戦わなければならない大事な試合です。

—— サントリーからは代表に4人選ばれました

もっと選ばれて欲しかったですよね。でもメンバー選考は代表の監督とスタッフが考えた上でのことですからね。自分と同じチームの選手を贔屓にして比べちゃったりもしますけど、それはそれですね。やはり4人入って、小野澤(宏時)は2回目のワールドカップ、隆道(佐々木)と剛(有賀)と平(浩二)は初めてですから、ワクワクするでしょうね。それに合わせてまずは頑張ってほしいと思います。

若い3人はまだ次のワールドカップも狙える年齢ですし、まだ社会人2年目3年目で失うものなんてありませんから、思い切り頑張ってほしいですね。大畑(大介/神戸製鋼)が31歳で出るのとはわけが違いますからね。最後のワールドカップだという気持ちと、さぁ初めてのワールドカップという差ですね。思い切ってやってほしいです。

青さん(青木佑輔)もね、頑張ってやっていたんですが、残念ですね。青木が坊主にしてきたから「何お前、気合い入れて坊主にしたの?」って聞いたら「発表前に坊主にしてました。けどみんなからそういう風に言われるんです」って言ってました。僕も選ばれたみんなにはチームに帰ってきたときに「頑張ってこいよ」と言いましたが、青木には「悔しいけどしょうがないよね」と声を掛けました。「けど次も狙えるしね」と言いました。

でもやはり、ワールドカップは最終的に選ばれたもん勝ちなんで、仲間が出てくれたらめちゃくちゃ嬉しいし、応援したくなりますね。4年に1度、選ばれた人しか経験できないですから、選ばれた人は本当に"めでたい"ですよ。頑張ってほしいですね。そのためにもアジア・バーバリアンズをちゃんとしたチームに仕上げて試合をしたいと思います。

 

リポビタンDチャレンジ2007
日本代表 vs アジア・バーバリアンズ
ラグビーワールドカップ2007日本代表壮行試合

8月10日(金)19:30キックオフ/秩父宮ラグビー場(東京都港区)

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)

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