ロングインタビュー

Sunbirds Column

20250825日(月)

Vol.1 関田 誠大

Vol.1 関田 誠大

「勝ち続けている理由は何なのか」を知りたい

ー まだチーム練習に合流してまもないと思いますが、スパイカーとのコンビはかなり合っていますね。
めちゃめちゃ合わせにいっています(笑)。それは僕の仕事なので。僕ももう32歳になるので、ある程度『こうすればいい』というのがあるんです。でもまだまだここから。コンビはセッター次第なので、必死です。

昨季まではジェイテクトSTINGS愛知に所属し、昨季はレギュラーシーズン4位から勝ち上がり、ファイナルでサンバーズと対戦しました。関田選手にとって昨季はどんなシーズンでしたか。
昨季は怪我人が多かったこともあり、全員揃って6対6の練習がなかなかできず、難しいシーズンでした。それでもチームを作っていかなきゃいけないし、もちろん結果も出さなければいけないので、苦しい時期もありましたが、その中でとにかく目の前の試合に集中するようにしていました。その週に対戦する相手を意識して練習しながら。

ファイナルの時には「僕のプレーが試合を分けると思っている」と話していました。
セッターはそういう仕事なので。やっぱりチームを作る上で非常に重要なポジションだと思っているので、国内でも、国際大会でも、その責任感を持ちながらやっています。それはジェイテクトでも、サンバーズでも、日本代表でも、どこでも変わらないですね。

今季、サンバーズへの移籍を決めた理由は。
まずは『優勝したい』という思いが一番です。それに、自分がもっともっと成長したいので、その環境を求めたという部分もあります。いい選手もたくさんいますし。

関田選手にとって成長できる環境とは?
いろいろありますけど、選手目線で言うと、いいコンディションで試合に臨める環境だったり。例えばトレーニングや食事など、全部がつながっていると思います。そこは正直入ってみないとわからないところもありましたが。サンバーズは常に勝ち続けているチームなので、『その理由は何なのか』を知りたいなという好奇心もありました。(チームに合流して)環境はいいと感じています。でも結局は自分次第なので、ここから頑張りたいなと思います。

特に一緒にプレーするのが楽しみな選手は?
ムセルスキーです。ディマ(ムセルスキーの愛称)。彼はめちゃくちゃすごいじゃないですか。なので、そこはものすごく楽しみです。他にも、代表で一緒にやってきた選手もいますし。今は若い選手たちと練習していますけど、いい選手がいっぱいいますよね。みんな黙々とやるべきことをやって、頑張っている。初めてやるメンバーも多いので楽しいです。

昨季まで対戦していたサンバーズはどんな印象でしたか。
攻撃力が高いチームだと思っていました。ジェイテクトも攻撃力は高いと思いますが、また違った攻撃力というか。どちらかというとジェイテクトは速くて、コンビバレーという感じでしたが、サンバーズは、もちろん速い攻撃もあるんですけど、やっぱり高さがある。どうしてもディマの印象が強いので、そこに引っ張られちゃうというか。もちろん他にもいい選手がいるんですけど、彼はちょっと存在感が違うので。


対戦相手から見たムセルスキー選手はどんな存在でしたか。
嫌でしたよ。ものすごい"圧"ですから。攻撃の軸になるし、ブロックもいいし。特に僕はセッターなので、彼のブロックは意識しました。サンバーズはムセルスキーありきのブロックシフトを組んでいるので、そこはまた他のチームとは違うものになりますし、すごく嫌でしたね。


そのムセルスキー選手のブロックともう対戦しなくてもよくなりますね。
確かに、それは一つ安心できるところですね(笑)


ムセルスキー選手や日本代表選手が数多くいて、昨季までリーグ2連覇しているチームの司令塔を務めることについては?
まあプレッシャーはなくはないですけど、それも含めてガムシャラにやれたらなと思います。一生懸命、自分のできることをやって、楽しみたいです。

手術は、長く現役生活を続けるための決断

今年5月に「右足関節後方インピンジメント症候群」「右足関節外側側靱帯損傷」の手術を受けたそうですね。
はい。内視鏡の手術で骨を削ったり、靱帯を再建したり。結構厄介だったんです。痛みがあって、その痛みを避ける動きになっていたこともよくなかったので、尖っている骨をキレイに取りました。もう何年も前からで、一番痛かったのは2019年のワールドカップ。最初アキレス腱が痛かったんですけど、調べたらアキレス腱じゃなく、骨が邪魔をしてしまっていた。最近はそれほど痛みはなかったんですけど、うまくハマらなかったり、疲労がたまると何もしなくても痛みが出ていました。

このタイミングで手術に踏み切ったのはなぜですか?
昨年のパリ五輪が、僕の中で集大成というか、メインのところだったので、一区切りという意味でも今が一番タイミングがいいんじゃないかと。(東京五輪から)パリまでは期間が3年しかなくて、なかなか抜けられませんでしたから。現役生活はできるだけ長くやりたいので、ちょっとでも悩みを取り除いておきたいという思いもあって、決断しました。

手術からの経過を教えていただけますか。
5月末に手術をして、2週間ちょっとはギプス生活で、その後リハビリを始めました。チームに合流したのは7月2日。それから1週間ほど経ってから少しずつボールを触り始めました。最初はその場でパスするところから、少しずつ。今はもうほぼ動けています。

術後1ヶ月以上ボールを触っていなかったんですね。
そうですね。SVリーグのファイナルが(5月5日に)終わってから、5、6月はまったく触っていなかったですね。いつぶりだろう? いや、バレー人生で初めてですね。2ヶ月触らなかったことなんてないので。

病室でボールを触ったりは?
なかったですね。そんなん嫌ですよ(笑)。逆に触りたくなかったです。あんまりこういう機会もなかったので、触らないようにしていましたね。6月にネーションズリーグが始まりましたけど、そういうのを見ても、触ろうとは思わなかった。意外とそういうもんでしたね(笑)。もうずっと触ってたんで、触んなくてもいいや、みたいな。

不安もなかったですか?
どうせ触ることになるんで、全然不安はなかったです。

約2ヶ月ぶりにボールを触った時の感触は?
意外といけるな、と思いました。ちょっとなまっている感じはありましたけど、思ったよりひどくなかったですね。

日本代表への思いと、セッターとして目指す境地

手術で痛みを取り除き、来年以降はまた日本代表でロサンゼルス五輪を目指す、という気持ちは見えてきましたか?
そこは変わらず五分五分ですね。でもマイナスではないですよ。もちろん前向きに考えていますし、ネーションズリーグの千葉大会を現地で見て、やっぱりあそこの舞台っていいなーと思ったので、いい刺激になりました。あとは自分のコンディションと、今シーズンのSVリーグをやってみてどうかということ。今の(代表)選手たちもすごく頑張っているので。


日本代表を外から見るのは2017年以来ですよね。
そうですね。一観客として見ていましたよ。『頑張れー!』って。もちろんセッター目線になる時もありましたけど。相手がこうだったらこうだなとか、自チームの、例えば永露(元稀)や大宅(真樹)がこの場面だったらここに上げるだろうなとか、そういう見方になることもありましたけど、基本的には観客と一緒で、試合全体を見ている感じでしたね。


今年の日本代表はどんな印象ですか。
若い選手が頑張っていますよね。ミドルブロッカーだったら、(佐藤)駿一郎とか、西本(圭吾)とか。オポジットの宮浦(健人)も、こんなにずっと試合に出ることはなかなかなかったので、いい経験ができる場が増えていいことだなと。リベロの小川(智大)もそうですし。今まで固定されていたメンバーだけじゃなく、いろんな選手が出ているのは非常にいいなと思います。それはレベルアップにつながると思うので。
ただ、スパイカー陣が固定されていない分、セッターは難しいと思います。3週目で(石川)祐希や(髙橋)藍たちが入ってきて、そこもまた難しい。チームをどう回していくかというのは、セッターは本当に大変だと思います。やっている選手が一番大変ですからね。見ている人はいろいろ言いたくなると思いますが、そんな簡単じゃないよって。

大宅選手、永露選手とはこれまでSVリーグで対戦し、代表で共に過ごしたこともありますが、どんなセッターだと見ていますか?
永露に関しては、結構シンプルなバレーをするのかなという印象ですね。いろんなことをするというよりは、エースに託していく系なんじゃないかと。大宅はずっと、所属チームがムセルスキーのいるところだったので、いかにそこに回さず、いかに他のところで点を取っていくかを考えてやっている選手だなと思っていました。勝負どころはどうしてもエースに頼ることもありますが、クイックやパイプを混ぜながら、いろいろなところを使っていく、そういうタイプなんじゃないかと思います。


さて、新天地でのリーグが始まりますが、サンバーズ1年目の目標は?
『優勝に貢献したい』というのがまず一つあります。あとは個人的に、もっと上手くなりたいというのもあります。特にトスについてはもっと追求して、頑張っていきたいなと思っているところです。


さらに上手く......。関田選手が目指すイメージとは。
わかりやすく言うと、昔のブラジル代表のリカルド(・ガルシア)とか、今のアメリカ代表の(マイカ・)クリステンソンとか。ああいう選手がやっているようなバレーって、見ていて面白いなと思うので。彼らは難しいシチュエーションでもいろんな攻撃を使うので、本当に面白い。そういうバレーがしたいんです。


リカルド選手がいたブラジルは「高速立体コンビバレー」と言われたりしましたが、見ている人も相手も、どこから攻撃が繰り出されるかわからないというようなバレーですか。
そうです。あれはすごかったし、めちゃくちゃ上手かった。ああいうバレーはやっぱり面白いですよね。僕は身長がちっちゃいんで、余計に技術を追求していかないといけない。まだ足りない。デカかったら、高いところでパッと上げて、なんとかなる部分もあると思うんですけど、そうじゃないので、小さいなりのものを身につけないと。(攻撃の)選択肢を一つにさせないのが大事かなと思いますし、相手に読まれたとしても、しっかり決めさせる。(相手に)わかりやすいからダメだというんじゃなく、わかっていても対応しづらいとか、"その先"を行くことが大事かなと思うので、これからもそこを目指していきたいと思います。

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