相手に「あいつ嫌だな」と
思われる選手でいたい
過去の財産を総動員してチームを支えた黒鷲旗
- — 今年5月の黒鷲旗では全試合に先発フル出場し、優勝の立役者の一人となりました。リーグでは先発の機会がなかっただけに、黒鷲旗への思いはひとしおだったのでは?
-
そうですね。(高橋賢が怪我のため)リベロは自分しかいなかったですし、そこで怪我を抱えている賢を出させてしまったら、もう自分がいる意味がないと思いましたから。自分の存在をアピールする場でもあったので、結果が出てよかったなと思います。
- — 大会中、印象に残った試合は?
-
自分の中では準々決勝のFC東京戦は少し意識しましたね。僕が2年目だった年の天皇杯の初戦で、当時まだチャレンジリーグだったFC東京に負けたんです。その時は僕も試合に出ていて、よくなかったので、(相手がサーブで)狙ってくるかなと思ったんですが、この前の黒鷲旗は崩れなかったので、そこで自分自身が波に乗っていけて、準決勝の東レアローズ戦にうまくつながりました。
- — 昨シーズン、サンバーズはリーグで東レのフローターサーブに苦しめられましたが、黒鷲旗では崩れませんでした。
-
そうですね。僕自身は、3年前のシーズンに東レ戦に出ていて、苦手なイメージはありませんでした。それに、最近はコートの外から見る機会が多くて、その時にいろんな傾向に気づいていたので、それも今となっては財産になっているなと思います。試合中は、この場面はこれもあるな、あれもあるなといろんなことを想定しながら、思い通りに動くことができました。
- — 優勝の瞬間はどんな気持ちでしたか?
-
勝った瞬間は、「終わった」と、ほっとしたというか…。優勝の瞬間にコートにいたのは初めてのことでしたし、もちろんすごく嬉しかったんですけど、勝った直後より、少し時間が経ってからの方が興奮しましたね。リーグでは、セミファイナル以降自分は試合に出られなくて、チームも負けてしまい、何もできなかったという思いが残りました。その気持ちを抱えながら、黒鷲旗では最後まで戦いきれてよかったです。
- — すでに新シーズンはスタートしていますが、今季レベルアップしたい部分は?
-
全体的に底上げをしないといけないし、自分のプレーだけじゃなく、周りをどれだけカバーできるかも大事です。サイドの選手が攻撃に多く専念できるように、自分の守備範囲を広げることと、その上で数字を上げること。そしてどれだけミスをゼロに近くして、精度を上げられるかが課題だと思っています。
- — 佐別當選手の目指す理想のリベロ像とは?
-
そうですね…ミスがないというのは理想ですし、なおかつ、見ている人が「あいつしつこいな」とか、「あの人諦めないですごい追いかけるな」と、楽しんでもらえるようなプレーヤーですね。そして相手に「あいつ嫌だな」「打っても決まらないな」と嫌がられる選手。「あいつすごかったな」というより、「あいつはほんと嫌だったな」と思われるような選手として終わりたいですね。
サンバーズでの挫折と気づきが、成長の糧に
- — 佐別當選手がバレーを始めたきっかけは?
-
母と姉がバレーをしていて、小さい頃よく体育館について行ってボールで遊んでいました。それで、小学2年の時にソフトバレーを、3年からは普通のバレーボールを始めました。
- — 子供の頃の夢は?
-
野球の選手かバレーの選手になることでした。実は中学からは野球をやろうと思っていたんですが、小学校が終わる頃に、バレーがちょっとうまくなってきたなと感じたので、やめたくなくなって、中学でも続けることにしました。それからは、バレーをやめようと思ったことはないですね。
- — その後、皇學館高校から順天堂大学に進み、サンバーズへ。小学生時代の夢の一つがかなったわけですね。
-
そうですね。今サンバーズでプレーできているのは、これまで出会ったチームメイトや指導して下さった方々のおかげだと思っています。ただ、サンバーズに入って、考え方が甘かったなと思い知らされました。それまでも適当にやってきたつもりはなかったし、高いレベルでやってきていたんですが、それでもまだまだなんだなと。1球や1点の重みが違って、少なくとも「ミスは仕方ない」という感覚ではなく、「ミスをしたら負ける」。試合は生きるか死ぬかの世界ですから。そこに対する執着心がまだまだ足りなかった。プレー面では、例えばパス一つをとっても、ただ自分のタイミングで返すだけじゃなくて、自分が少しためを作ることで、味方のスパイカーが入りやすくなる。そういう本当に細かい部分まで追求しなきゃいけないんだと知りました。
もう毎日のように怒られる日々で、同期の二木(健太)や冨士田(裕大)と慰め合いながら、トボトボと歩いて寮に帰っていました。先輩から厳しい言葉を言われたこともありましたし。それらはみんな、勝つための厳しさだったということは、今はすごく感じるんですが、当時それを感じられなかった自分が、今思えばみじめだったなと思います。そういうことも言えるチームだから勝てる部分もあると思うので、僕らも、言い方は違ったとしても、下の選手たちに伝えていかなきゃいけないと思います。
- — 最初はサンバーズの雰囲気に圧倒されていたんですね。
-
怒られるから、縮こまってしまってよけいうまくいかないという負のサイクルになっていました。たぶん、自分のことを勘違いしていたんでしょうね。サンバーズに入るまでは、もっとできるだろうと思っていましたし、ツマさん(津曲勝利)にも負けないだろうというぐらいの気持ちでした。その時の現状を、自分は理解できていなかった。「自分はこれぐらいしかできない」と認めたくなくて、「こんなはずじゃない」という考え方になってしまっていました。でもしばらくして、「今のままじゃダメだ」と気づきました。
- — そう気づいたきっかけは何だったのですか?
-
1年目だった07/08シーズンのレギュラーラウンドで、連覇を狙っていたサンバーズは断トツで1位通過を決めていて、そのレギュラーラウンドの最終戦に、自分が出させてもらったんです。でも、ボロボロで、試合にも負けてしまった。それでチームの流れを止めてしまったと、ものすごく感じたんです。その後チームはセミファイナルで負けて優勝できなくて、レギュラーで出ていた人たちはもう、この世が終わったかのような表情でした。それを見て自分も、そんなふうにさせてしまったという責任を、微力ながら感じました。その時に、自分のレベルを痛感しましたし、考え方を変えようと強く思いました。
- — それによって行動はどんなふうに変わりましたか?
-
それまでは人の言うことをなかなか素直に聞けなくて、何か言われても、「いや、やってるのに」と思ってしまっていました。そうじゃなくて、周りの意見をしっかり聞き入れられるように変わろうと意識しましたし、自分から人に聞くようにもなりましたね。
- — 今、同じリベロの高橋選手はやはりライバルという意識ですか?
-
うーん、やっぱり自分が試合に出たいですし、負けているとは思っていません。もちろん自分が出て勝つというのが一番です。ただ、自分が試合に出ていない時は、出ていなくてもできることをしようと思うし、気づいたことは賢に伝えます。ライバルといえばライバルなんでしょうけど…。優勝できるなら、ニコイチでもいいと思う。今、リベロを二人で任されているので、二人でそれを完璧にやり遂げなければいけないなと思います。
- — 7年目となる今季はどんなシーズンにしたいですか?
-
やっぱり何としてもリーグで優勝したいです。僕は内定選手だった06/07シーズンにリーグ優勝を経験させてもらって、優勝する良さを教えてもらったので、今度は自分が、試合に出て、チームを勝たせて、リーグ優勝を知らない年下のメンバーにその良さを伝える役割を果たしたいなと思います。そして、リーグ優勝を果たすことが、自分がこれまでお世話になった方々への恩返しにもなると思っています。
- — 最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
-
今年はコートの中でも外でも、「あ、なんか今までと違うな」と思ってもらえるようにやっていきたいと思いますので、そういう変化や、1球1球に対する執着心に注目してもらえたらと思います。試合を観にきてもらった皆さんに感動してもらえるような試合をしたいと思いますし、最後の最後に皆さんと喜び合えるように戦っていきますので、温かいご声援をよろしくお願いします。