2023-24 V・ファイナルステージ ファイナル
- 開催日時
- 2024年3月31日(日) 14:09
- 会場
- 有明コロシアム

3
- 25-18
- 37-35
- 25-19
WIN
0

試合経過

V.LEAGUE DIVISION1はついにファイナルを迎えた。4年連続でこの舞台にたどり着いたサンバーズは、2年ぶりの優勝を目指し、レギュラーラウンド1位のパナソニックパンサーズと対戦した。
Vリーグ史上最多9544人もの観客が詰めかけた有明コロシアムでの頂点をかけた戦い。その立ち上がり、サンバーズはパナソニックのクイックを立て続けに拾い、ムセルスキーのツーアタックやアラインのスパイクでブレイクし3-1と先行した。追いつかれても、小野寺がショートサーブでエースを奪うなど8-5と再びリード。中盤、追い上げにあうが、ムセルスキーのブロックでラリーを制し再び引き離す。サンバーズは藤中颯、藤中謙を中心に拾って粘り、最後はムセルスキーが決めて長いラリーを制し勢いに乗ると、アラインのサーブで崩して15-11とリードを広げる。サーブレシーブが崩れても、藤中謙がきっちりとサイドアウトを取ってブレイクを許さない。終盤、アラインのスパイクやムセルスキーのブロックで引き離し、セットを先取した。
主将でセッターの大宅が、「パナソニックに先に行かれたら終わりだと思っていたので、とにかくセットのスタートを大事に入った。今日の1セット目はパーフェクトに近いくらいの組み立てができた」という快心のスタートだった。
しかし第2セットはパナソニックの堅いブロックとディグから切り返されて4-6と先行される。鬼木のクイックやアラインのスパイクなどでサイドアウトを重ねるが、中盤、パイプ攻撃がブロックに捕まり8-12と4点差をつけられた。それでも、リリーフサーバーとして入った髙橋塁がサーブで揺さぶり、ムセルスキーが得点につなげて15-16と迫った。パナソニックの勢いを押し戻すことになったこのブレイクは大きかった。
髙橋塁は決勝での出場は初だったが、「あまり緊張はなかった。あそこは狙い通りでした。自分はブレイクを取ることだけを考えていて、エースは取れたらラッキーぐらいな感覚。前衛には(小野寺)太志さん、ディマ(ムセルスキー)というすごいブロックが揃っているので、ミスせず、データで出ていた相手の嫌なところに打って、自分はディグも自信があるので、そこで貢献したいなとずっと思ってやってきた。最後の最後、形として出たのはすごく嬉しい」と振り返る。
1人1人が役割を果たし、拾うべき選手が拾い、決めるべき選手が決める。終盤、好守備からムセルスキーが豪快にカウンターアタックを決めて20-20と追いついた。さらに、堅い守備で作ったチャンスをムセルスキーが得点につなげ24-23と逆転。デュースとなり、ムセルスキーや小野寺、アラインのスパイクでサイドアウトを重ねていく。
ミスが出て28-29と逆転されたが、パナソニックの強力なサーブも藤中兄弟がしっかりと返して踏ん張り、ムセルスキー、アラインのスパイクで相手のセットポイントを幾度もしのぐと、ムセルスキーが好守備から自らスパイクを叩き込んで32-31と逆転。パナソニックも体を張ったディグで粘り白熱のラリーが続くが、サンバーズは粘り負けせず相手にブレイクを許さない。小野寺のクイックやアラインのパイプ攻撃も使って的を絞らせず、最後はパナソニックにミスが出て37-35。大激戦を制し、セットを連取した。
互いに必死にボールに食らいつき、見応えのあるラリーの連続だったが、最後の決定力でサンバーズが上回った。
第3セットはパナソニックにミスが出たり、鬼木のサーブがネットインでエースとなり4-1と好スタートを切った。パナソニックのサービスエースなどで追いつかれても、小野寺のクイックや、藤中謙がノーマークでスパイクを決めて流れを取り戻すと、大宅の好守備をムセルスキーが得点につなげて再び先行。中盤、アラインがブロックに捕まり14-13と追い上げられたが、引きずることなく、次はアラインがしっかりとブロックの指先を狙って得点を決める。ラリーをムセルスキーのスパイクで制して19-15と引き離した。終盤は鬼木、小野寺のクイックなどでサイドアウトを重ね、一歩ずつ頂点へ。最後は大黒柱・ムセルスキーが豪快にバックアタックを決めてチャンピオンシップポイントを奪い、25-19でゲームセット。
アップゾーンから身を乗り出していた選手たちがいっせいにコートになだれ込み、一瞬で真っ赤な歓喜の輪ができた。
昨季、涙を飲んだ舞台でリベンジを果たし、1年間掲げてきた"王座奪還"を果たした。
この日もサンバーズが誇る大砲・ムセルスキーが、長いラリーを制するスパイクを幾度も決めた。ブロック、ディグでも活躍し、「今季はシーズン中に世界クラブ選手権もあり、すごくタフなシーズンだったし、優勝できる力のあるチームがたくさんあるリーグの中で優勝できたのは非常に嬉しい」と喜びを噛みしめた。
昨季のファイナルで敗れてから1年間、ことあるごとに「リベンジ」という言葉を発してきたアラインは、64.0%という高いスパイク決定率を残し見事リベンジを果たした。
「昨シーズンのファイナルは最初緊張していて、結局0-3で悔しい負け方だった。その時の悔しさをずっと覚えていて、今シーズンちゃんとリベンジしたいと思って長いシーズンを戦って、本当にリベンジできたから嬉しい。今日の試合は自分の全力を出せました」
加入1年目のミドルブロッカー小野寺にとっては初のリーグ優勝となった。いつものように安心感抜群のプレーだったが、「今日は、みんなにはいつも通りちょっとおちゃらけているように見せていましたけど、緊張は少なからずしていた」と明かした。「優勝できたことはとても光栄だし、このチームに移籍して達成できたことについては、いい決断ができたなと思っています」と安堵の表情だった。
そうしたスパイカー陣を、シーズンを通して安定したトスワークで生かしたセッターの大宅が最高殊勲選手(MVP)に輝いた。
優勝へ、今季の転機となったのは2月3、4日のパナソニック戦だった。レギュラーラウンド首位の相手に、1セットも奪うことができずホームで屈辱的な2連敗。山村監督はこう振り返る。
「パナソニックさんの揺るぎない強さにストレート負けを喫し、このシーズンをどうやって戦っていかなきゃいけないか、多くのことを学ばせていただいた。そこからスイッチを入れて練習にも取り組み始めたと思う。その姿勢が今日の試合につながった」
その連敗時はパナソニックの強力なサーブに苦しめられたが、このファイナルでは藤中謙、颯兄弟を中心にしっかりと対応した。藤中謙は言う。
「相手のビッグサーバーに対しては、僕らサーブレシーブをする3人ないし4人だけじゃなく、みんなの意識が変わった。Aパスを返すという目標ではなく、ボールをコート内に残して、そこからムセルスキーだったり僕らアウトサイドがいい状況を作るという明確な目標があったので、相手がビッグサーバーでもプレッシャーにならなかったというのが、いい結果を生んだ一つの要因かなと思います。フローターサーブも、効果的なサーブを打たれるのはわかっているので、ミドルブロッカーも交えて、誰が取るのかをハッキリさせながらサーブレシーブできたかなと思います」
山村監督が「世界クラブ選手権の時もそうでしたが、選手たちがすごい集中力でやってくれた」と語ったように、ここぞという舞台で勝負強さを発揮した。
セミファイナルの後、「ファイナルはいつも通りやるのが難しい場所」と語っていた大宅は、優勝後、「チームとして本当にいいバレーボールができた。今シーズンの集大成の場で、いつも通りプレーできたと思います。この舞台で(過去に)勝つことも負けることも経験したことによって、いい意味で場慣れしているなと、今日試合をやりながら感じていました」とチームの成長を感じ取っていた。
サンバーズ創設50周年の年に10度目の優勝。来シーズンからはSVリーグがスタートするため、現行のVリーグでは最後のチャンピオンになった。4年連続でファイナルに進出し、そのうち3度の優勝というかたちでVリーグの歴史を締めくくったサンバーズ。その4シーズンを率いてきた山村監督はこう語る。
「勝てば勝つほどプレッシャーも大きくなっていくし、勝って当たり前という目で見られることになると思う。それは強くなるために選手たちが背負っていくべき最高のストレスなんじゃないか。そういうストレスを感じながら一歩一歩、いかにアップデートしていけるか。その時代にあったものを取り入れて、進化していけるかを問われていると思う」
SVリーグでも時代を築くべく、サンバーズはこれからも進化を止めない。