サントリー1万人の第九サントリー1万人の第九

サントリー1万人の第九のつくりかたサントリー1万人の第九のつくりかた

33回続いた奇跡

前回は、今年で34回目となる「サントリー1万人の第九」がスタートした背景やこれまでの歴史について紹介した。今回は引き続き、チーフプロデューサーの毎日放送・山川徳久さんに、本番までのレッスンや合唱団員の募集などについて聞いた。【構成・西田佐保子】

大阪城ホールに集まった1万人の合唱団=写真提供:毎日放送

全国に広がる合唱の輪

大阪城ホールで行われる本番の日まで3カ月間、参加者が受ける合唱レッスンは、1回2時間 12回(大阪市と東京都にある経験者向けクラスは6回)です。実のところ、レッスンは12回では少ない、20回欲しいくらいだとおっしゃる先生もいらっしゃいます。

「1万人の第九」スタート当初、合唱レッスンは近畿エリアに限られていましたが、人気が高まり、近年では熊本から通う参加者もいらっしゃいました。「1万人の第九」を広げていこうと、2003年から東京、11年から仙台、さらに14年から名古屋、15年から札幌、那覇、今年から福岡と、コンサートの模様などを伝える番組「1万人の第九」が放映される5局ネットのある地域にもクラスを設けました。

合唱指導の先生が本番の成功へ導く

毎年、合唱団の募集は6月ごろに行い、抽選結果を7月に発表します。募集人数は、女声がソプラノとアルト、男声がテノールとバスの4パート合わせて1万人で、合唱経験は問いません。応募の条件は、12回ある合唱レッスンのうち10回以上(6回クラスの場合は5回以上)、11月下旬の「佐渡練」(佐渡裕総監督との合同練習)、公演前日の総合リハーサル、公演日に出席可能であることです。忙しい厳しい条件ではありますが、どれだけ真剣に心を注いで練習したかで、合唱の最後の歌詞「Gotterfunken(ゲッテルフンケン)」(神々の火花)を本番で歌うときの歓(よろこ)びが違うと思います。

本番に向け、各地で行われるレッスンの合唱指導にあたられる先生には、33年間続けられている方も、年齢的に続けられないからとお辞めになった方もいらっしゃいますが、皆さん非常に熱心に指導してくださっています。本番の成功は合唱指導の先生の努力によるところが大きいでしょう。総監督・指揮の佐渡さんとはミーティングを重ねて指導方針を確認し合い、固い信頼関係で結ばれています。

先着順から抽選へ

現在、毎年約1万5000人の方にご応募いただいた中から、抽選で1万人に絞ります。近畿エリアや東京など複数のクラスがある地域もあるので、応募時に出してもらうのは第5希望までです。1万人のうち、近畿が5000人以上、東京が1200人を占め、地域別でみると、東京で競争率が年々高くなっています。東京は当初150人でスタートして人数を増やしてきましたが、もう少し増員しなくてはいけないかもしれません。

佐渡さんは、毎年7月下旬に兵庫県立芸術文化センターのオペラの公演で指揮をされるので、「サイン会の時に、『落ちました、悲しい』ってめっちゃ言われるから、当選発表の時期を変えられへんかな」とおっしゃっています。

実は、01年までは申し込み先着順で参加者を決めていました。ただ、申し込み初日に大阪中央郵便局に投函(とうかん)される方が多く、初日に1万通以上届き、先着を決められない事態になってしまい、02年からは抽選になりました。

1年目の1983年、合唱団にご応募いただいたのは7318人です。参加者が1万人に達するまでには数年かかっています。ただ、7000人だから「1万人の第九」ではなかったのではないかというと、そうではありません。「Millionen(ミリオーネン)」(100万の人々)と歌詞にあるように、多くの人の思いと声を一つにして芸術を作ることに意味があります。「1万人」は「ミリオーネン」に通じる一つの象徴的な言葉です。

毎日新聞ニュースサイト
「クラシック・ナビ」に2016年掲載
http://mainichi.jp/classic/

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