SUNTORY CHALLENGED SPORTS PROJECT

#5 「地元 福島に恩返しがしたい」 卓球 吉田 信一選手

#5 「地元 福島に恩返しがしたい」 卓球 吉田 信一選手

卓球 吉田 信一選手

サントリーチャレンジド・アスリート奨励金第1~2期対象

Q.競技との出会いは?

28歳のとき、車椅子業者の方から「何かスポーツをしたら」と誘われました。バスケットボールやサッカーの経験はありましたが、選んだのは未経験だった卓球。車椅子に座ったままプレーするので「あまり疲れなさそう」と浅はかな理由で選びました。
 でも、実際に初めてみると実に奥深い競技でした。相手より一つでもラリーを続けられれば勝ちです。言ってしまえば単純ですが、その1本を取るために無限の選択肢がある。体力よりもむしろ頭を使うスポーツで、そんなところにのめり込んでいます。

Q.困難に直面し乗り越えた経験は?

パラリンピックへは世界ランキングの上位から選ばれます。ただ、ランキングを上げるための国際大会は日本では開かれず、海外へ遠征する必要があります。私は欧州の選手との相性がよく年6~7回ほど、欧州の大会に参加していますが、1回の遠征で35万~40万円ほどかかり、資金を確保するのに苦労しています。
 ロンドン・パラリンピックをめざしたときには友人から借金をしましたが、リオ大会では名前を明かさず資金援助してくれる人が現れました。その気持ちに応えるためにも頑張ろうという気持ちが一層強くなっています。

Q.挑戦のなかで大切なことは?

パラリンピックへの挑戦は、東日本大震災がきっかけでした。私は福島県の出身です。地元のために何か恩返しをしなくてはならないと考えています。
 リオ・パラリンピックでの目標はメダル獲得です。自分には福島があり、日本があり、少なくとも相手選手に気力で負けるつもりはありません。卓球を通していろんな人から元気をもらっています。その元気をもらったおかげで今があるということを証明したい。リオで活躍することが感謝の気持ちを伝える一番の方法だと思っています。

Q.夢、目標は?

てっぺんの景色を見たいと思っています。これまで国際大会で優勝したことはありますが、世界ランキング1位の選手は不参加でした。上には上がいる。最高峰の大会で金メダルをとることができたら、どんな気分で、どんな景色が広がっているのか。それを味わってみたいと思っています。
 現在、50歳です。若い選手は華麗な卓球を求めますが、ミスも多い。打てる球を打つ、つなぐ球をつなぐという判断はベテランの方がたけています。まだまだ若造には負けないぞ、という気持ちですね。

Q.読者の皆さんへメッセージをお願いします!

障がいのある選手は残された機能を最大限使って最高のパフォーマンスを演じようとしています。そんな視点から競技を観戦し、一つ一つの行動を含めて応援してくれたらうれしい限りです。
 車椅子卓球はフットワークが利かない分、打ちやすい球が返ってくるように計算しながらショットを放っています。また、後に下がれず相手選手との距離が近いため、球も速くなります。車いすバスケットボールのように、健常者にも気軽に参加してもらい、車椅子卓球の魅力を知ってほしいですね。

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吉田 信一選手SHINICHI YOSHIDA

サントリーチャレンジド・アスリート奨励金第1~2期対象

  • ●1965年12月13日生まれ

  • ●福島県須賀川市出身/東京都府中市在住

  • ●「ディスタンス(東京)情報通信研究機構卓球部」所属

  • ●17歳のときに交通事故により、車椅子生活となる。28歳のときに車椅子業者の方から誘われ、車椅子卓球(クラスは3)を開始以降、数多くの国内外の大会でメダルを獲得

  • ●「サントリーチャレンジド・アスリート奨励金」第1~2期対象(奨励金は遠征費や競技用具購入費などに活用)

  • ●2016リオパラリンピック日本代表

PASSION FOR CHALLENGE
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