SUNTORY CHALLENGED SPORTS PROJECT

#3 「全部出し切ったという証がほしい」

#3 「全部出し切ったという証がほしい」

車椅子バスケットボール 藤井 新悟選手

サントリーチャレンジド・アスリート奨励金第1~2期対象
サントリーオフィシャルパートナーチーム「宮城MAX」所属

Q.競技との出会いは?

19歳でけがをし、病院でボールを使ったリハビリをしていると、宮城MAXの選手に声をかけられました。「バスケットボールの経験者だよね」って。新人を発掘するためによく病院に来ていたようで、練習に誘われました。
 中学校からバスケをしていて、就職してもバスケを続けたいと、バスケ部がある会社に就職しました。そのぐらいバスケが大好き。車椅子バスケの存在はそれまで知りませんでしたが、形は違えど同じバスケということで始めることにしました。

Q.困難に直面し乗り越えた経験は?

実は最初の1年間はあまり練習に行かなかったんです。ぼくはバスケ経験者。少しはできるだろうと自信はあったのに、シュートは入らないわ、車椅子で動きたいように動けないわで......。「車椅子バスケは面白くない」と決めつけてしまった。
 そんなとき、全国大会に連れて行ってもらったんです。みんな上手で何よりかっこいい。それに比べて自分はなんてかっこ悪いんだと。自分自身を見つめ直すきっかけになりました。僕もあんな風になりたい。下手でもまずは一生懸命やることが大切だとあらためて気づかされました。

Q.挑戦のなかで大切なことは?

練習はつらくてハードです。合宿をしていると思わず逃げ出したくなるくらいです。でもなぜ頑張れるかといえば、家族がいるからです。リオ・パラリンピックに向けた目標もありますが、やっぱり一番の支えは家族ですね。
 1歳6カ月になる息子の存在も大きいです。かっこ悪い父親なんてあり得ない。やっぱり僕は根っからのかっこつけなんでしょうね。子どもができてから、障がいがあろうとなかろうと1人の人間としてしっかりしていきたいと思うようになりました。

Q.夢、目標は?

まずはリオで結果を残したい。ただ、僕個人としてはメダルを取るというよりは、自分の持っているものは全部出し切ったという証しがほしいです。悔いのないプレーをし、チームに貢献できれば、順位という結果は後からついてくると思っています。
 将来的な夢は車椅子バスケの指導者になることです。プレーヤーとしての経験があるから、どんなプレーが良くて悪いのかよく分かっている。それを伝えられるのは大きいと思います。とにかく、全力を出し切る選手を育てていきたいです。

Q.読者の皆さんへメッセージをお願いします!

車椅子バスケのチームには障がいの重い人もいれば、比較的軽い人もいて、それぞれに役割があります。シュートシーンは華やかですが、一人ひとりの選手の動きや役回りまで知ってもらえると、観戦の面白みがぐっと感じられると思います。
 日本代表チームの特徴はその緻密さです。海外の選手と比べると個の力では劣っていても、チームの和を大切に勝負しています。いい部分を海外からどんどん取り入れて自分たちのものにしていく。そんな日本流の戦い方も見てほしいですね。

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藤井 新悟選手SHINGO FUJII

サントリーチャレンジド・アスリート奨励金第1~2期対象
サントリーオフィシャルパートナーチーム「宮城MAX」所属

  • ●1978年1月2日生まれ

  • ●秋田県出身/宮城県仙台市在住

  • ●中高生時代は、バスケットボール部に所属し、19歳のときにスキー事故で脊椎損傷、20歳から車椅子バスケットボールを始める(持ち点1.5点)。

  • ●2004アテネ・2008北京・2012ロンドン・2016リオパラリンピック車椅子バスケ男子日本代表

  • ●2015IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ男子日本代表

  • ●プライベートでは、4年前に車椅子バスケ女子日本代表候補の藤井郁美選手と結婚。2015年に一児をもうける。

PASSION FOR CHALLENGE
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