2026.05.14

コレクティブインパクトの創出を目指して。「2026年サントリー次世代エンパワメント活動“君は未知数”方針説明会&NPO出向者を囲む会」を開催

コレクティブインパクトの創出を目指して。「2026年サントリー次世代エンパワメント活動“君は未知数”方針説明会&NPO出向者を囲む会」を開催

次世代エンパワメント活動「君は未知数」の柱のひとつである「NPO等との協働事業」。サントリーでは、セクターを超えた協働や連携による「コレクティブインパクト(集合的な力)」の創出を目指し、2024年より2年にわたりNPO団体に出向者を派遣しながら協働事業を推進してきました。2026年3月23日に開催された「2026年サントリー次世代エンパワメント活動“君は未知数”方針説明会&NPO出向者を囲む会」では、NPOに出向中(※)の4名の社員から、協働事業や出向の成果について報告がありました。

※2026年3月23日時点

協働や連携で社会の新しいインフラを生み出すインパクトを

会場には出向者の受け入れ先として、サントリーと共に協働事業に取り組んできた4つのNPO団体が集まり、和やかなムードでの開会となりました。第1部では、サントリーホールディングスCSR推進部長の一木典子が、サントリーのパーパスに基づく「君は未知数」活動の方針をあらためて説明。社会課題の大きさを見据えたコレクティブインパクトの必然性や、2023年からの「君は未知数」の活動で見えてきた取り組みの意義や課題感などについても共有されました。

「“君は未知数”は、最初の2年間で仲間が増え、すでにモデル化できてきたものもあります。ここからはさらにノウハウを体系化してひろげていったり、成果を可視化したりすることも大事。一企業だけでも、一NPOだけでも実現できないことを、みなさんと一緒にシナジーを生み出しながら取り組み、子ども・若者のウェルビーイングやエンパワメントにつなげていきたいです」

参加者の前で話す一木典子

一木の話を受けて、「体験格差解消の仕組みづくり」に取り組むフローレンスの代表理事である赤坂緑さんは、「さらなるインパクトを生み出す、その一員としてやらせていただいていることが本当にありがたい。いまを生きる子どもたちが、自分たちでこれからをつくっていけると思えるような社会に1ミリでも近づけていけるように頑張りたい」とあらためてその想いを語りました。

参加者の前で話す赤坂緑さん

一方、カタリバ、そしてLearning for All は、サントリーとの協働事業でそれぞれ「思春期の居場所の質・量の拡大」に取り組んでいます。カタリバの渡邊洸事務局長は、NPOと企業の本気のコラボレーションがコレクティブインパクトにつながっていく実感を語り、Learning for All コミュニティ推進事業部シニアマネージャーの高際俊介さんも、連携による課題へのアプローチのひろがりや強度について話しました。

キーパーソン21がサントリーとの協働事業で取り組むのは、「大人の参画機会の創出と子どもの自分発見・挑戦支援」です。代表理事である朝山あつこさんは、「他団体のみなさまの協働事業についてもあらためて知る機会になり、さらなるコラボレーションの可能性を感じた」とワクワクした気持ちを共有。
出向者からの報告を前に、第1部では「君は未知数」の協働の取り組みが社会を動かしていく可能性を、会場にいる全員で感じることができました。

協働が相乗効果を生み出す道筋を。「予防」と「介入」を一体化したユースセンターモデルの構築

第2部は各団体への出向者から、それぞれの協働事業についてと出向中に学んだことを報告。はじめに、2025年からLearning for All に出向している正田美紀さんが登壇しました。サントリーで酒類営業とCSR部門を経験した正田さんは、出向先ではコミュニティ推進事業部企業連携チームに所属しています。

「子どもの貧困の本質的な解決を」をミッションに掲げ、学習支援や居場所づくりなどにより、困難を抱える子どもたちに対する包括的な支援を行うLearning for All 。サントリーとの協働事業では、「予防」と「介入」を一体化させた新たなユースセンターモデルの構築と、全国への拡大に向けた政策提言に取り組んでいます。

参加者の前で話す正田美紀さん

これまでの活動を通して、「もっと早く出会えていたら」と感じる子どもがたくさんいたという同団体では、困難を抱えて孤立する前に日常のなかで出会える場の重要性を強く感じてきました。そこで予防と介入の双方の機能を備えたユースセンターの実践モデルとして立ち上げたのが、2024年8月にオープンした阪神尼崎のユースセンター「Hygge(ヒュッゲ)」です。尼崎市内の高校生らと話し合いながら準備し開設されたHyggeは、主に尼崎市内の子ども・若者世代が、誰でも安心して自由に過ごせる場であり、食やさまざまな体験の機会も提供しています。日常を過ごすなかで信頼関係を築き、困難を早期に発見して必要な支援につなげることを目指しています。常駐するソーシャルワーカーが相談対応や個別対応を実施する体制をつくり、必要に応じて行政や専門機関と連携しました。

オープンから1年半が過ぎた現在、利用者は延べ3,600人ほど。ひと月に平均150名ほどの利用者が訪れます。また個別相談など介入の対応は、これまでにおよそ310件。Hyggeでの実践をもとに、こども家庭庁に対し予防と介入の複合型支援を行うユースセンターのあり方の提案を行い、国による予算化や大規模調査の検討も進んでいます。今後はさらにHyggeでの成果の検証や、複合型ユースセンターのモデル化を確立し、子ども・若者に必要な居場所として全国に根付かせることを目指しています。

参加者の前で話す正田美紀さん

2つの組織をつなぎ協働事業に携わってきた正田さんですが、Learning for All では、協働事業のほかに助成金やファンドレイジングなど資金調達面も担当し、サポート企業との橋渡しや活動のPRなどの役割も担ってきました。

「NPOと企業の関わりが相乗効果を生み出す道筋を探して実現していく」。自らの使命について、正田さんはそんなふうに捉えていました。あと1年ある出向期間では、Hyggeが立地する商店街と連携し、地域の人たちと一緒に持続可能な取り組みにしていくことを目指すという正田さん。「Learning for All の活動をみなさんにもっと知っていただけるような企画を立て、活動の拡大を実現していきたいです」と抱負を語りました。

同団体の高際さんは、協働事業や資金調達を担ってきた正田さんについて、「協働事業では本来の企業人としての経験やスキルを活かして、商店街との橋渡し役になってくれています。また寄付型NPOの“泥臭い部分”を具体的に見ています。こうしたNPOの具体の姿も協働にとっての知見になれば」と話しました。

コメントする高際俊介さん

企業とNPOをつなぐ開かれた窓になり、10代の居場所を全国にひろげる

続いて登壇したのは、2024年からカタリバに出向し、まもなく帰任する村岡真智子さんです。サントリーでシステム部門の部署に10年以上所属していた村岡さんは、カタリバでは10代の居場所づくりを支援する「ユースセンター起業塾」のチームに所属。サントリーとの協働事業で、可能性と揺らぎを抱えた10代が安心して「未知」と出会えるユースセンターを社会のインフラにするべく、モデル化・人材育成・新規モデル開拓の3方向から、質や量の拡大に取り組んでいます。

かねてから全国各地のユースセンター運営団体の伴走支援を行ってきたカタリバ。10代の学びの機会や居場所を提供する団体に対し、3年間の助成と伴走支援を行っています。協働事業では、助成金を提供するとともに長期的な伴走で成長を促し、地域のハブとなるユースセンターの事例を複数創出してきました。また、ユースセンターを運営するユースワーカーの育成プログラムを開発しており、同団体が培ってきたノウハウの体系化やオープンソース化を進めています。

さらに10代の居場所の量的拡大に向けて、図書館や児童館、公民館などの既存施設にユースセンター機能を設ける実証実験を行ってきました。既存施設との連携推進や普及に向けたノウハウの体系化など、展開のための基盤を固めています。

参加者の前で話す村岡真智子さん

そのなかでの村岡さんの役割は、主に団体支援でした。支援の採択団体との毎月の面談や伴走支援、団体同士の意見交換、研修など、さまざまなアプローチで9団体に寄り添いました。また、杉並区の図書館や仙台市の児童館では、既存施設へのユースセンター機能の導入から現地での運営に携わった村岡さん。各地のユースセンターを訪問し現場で学び合い、オンラインでの研修でもコミュニケーションを重ね、たくさんの人や場所をつないできました。2年間のNPOでの経験を、村岡さんはこう振り返りました。

「社会課題の裏側で本当に熱量高く活動しているみなさんと、2年間でたくさん出会えたことが私の財産です。先日、出向者についてカタリバの方が、『外部との接続の窓になっていた』と表現してくれました。帰任後もNPOの活動を多くの人に伝えて、企業とNPOをつなぐ開かれた窓になっていきたいと思っています」

協働事業以外の領域でも多岐にわたる業務に携わってきた村岡さんについて、同団体でユースセンター起業塾を担当する吉田愛美さんは「外との触媒」と表現しました。

「領域をまたいで本当にいろいろなことをやっていただきました。事業だけでなく組織の枠や壁を軽々と超えて、内と外の触媒になってくれていたと思います」

コメントする吉田愛美さん

ぶつかり合い、信頼し合いながら立ち上げた「対話型地域循環キャリア教育モデル」

3人目の登壇者は、サントリーとの協働事業で大人の参画機会と子どもの自分発見・挑戦支援に取り組むキーパーソン21に出向中の宮本直人さんです。宮本さんは2024年から2年にわたって同団体に出向し、事務局スタッフとしてサントリーとの協働事業「殻をやぶれ!わくわくたまごプロジェクト(通称:わくたま)」のプロジェクトマネージャーを務めてきました。

同団体が大切にしている「わくわくエンジン®」(※)は、自らを内発的に動かす自分だけの原動力です。子どもと大人が対話を通してつながり合い、わくわくする原動力から生まれる発想や創造の可能性を共創していく。同団体ではそんな場づくりのプログラムを、地域の多様なステークホルダーと連携しながら各地の小中学校など公教育の場や地域の居場所などで実施し、25年間で7万人を超える子どもたちが参加しています。

※わくわくエンジン®はキーパーソン21の登録商標です。

協働事業である「わくたま」では、「対話型地域循環キャリア教育モデル」とし、地域のさまざまな大人たちと共に、子どもたちが自分の殻をやぶる第一歩を踏み出す場を、地域に根ざした場所で開催してきました。学校教育の枠を超え、地域の大人が子どもの「やってみたい」に全力で伴走することで、大人にも学びや変化が起こり、想いと人が循環して地域が活性化していきます。

参加者の前で話す宮本直人さん

2024年度よりスタートし、2025年度は川崎市のかながわサイエンスパークで実施した「殻をやぶれ!わくわくたまごプロジェクト」は、4日間のプログラムで子どもたちが段階的に自己理解を深め、地域の大人のサポートを得ながらやってみたいことを実現し、最後に自分の挑戦を言葉にして発表しました。こうした体験を経て、子どもたちは未来に希望を感じたり、新しいことに挑戦してみたくなったりという意識の変化があります。またサポーターとして関わった大人の熱量や満足度も高く、参加した大人が別の地域でのプログラム実施を実現させるなど、さまざまな地域に連携を生み出しました。

サントリーで長年営業職を務めていた宮本さんは、「0から1を生み出すのがとても大変だった」と、2年間の活動を振り返りました。
「大変だったけれど、とても楽しかったです。プロジェクトの企画から営業、実施、運営改善まで、マルチタスクでバリューチェーンを構築したというのは、得難い経験でした」

さらに協働事業だけでなく、組織運営や企業連携にも大きく関わり、出向期間でさまざまな学びを得たという宮本さん。社会課題に取り組む団体の内側に入ったことで、社会や企業を捉える視野がひろがったといいます。

同団体で2年間宮本さんとチームを組んだ田中かおりさんは、互いにぶつかりながら信頼関係を築いてプロジェクトを立ち上げてきたというエピソードを紹介。「私たち自身も殻をやぶって立ち上げてきたので、ここからはプロジェクトをしっかり育てていくということで応えていきたいです」と話しました。

コメントする田中かおりさん

未知の領域で全方向を見据え構築したシステム。体験格差解消とウェルビーイング向上を目指して

最後は、体験格差解消の仕組みづくりに取り組むフローレンスに出向した中島亮さんからの報告です。病児保育をはじめ、子どもや子育てに関するさまざまな支援事業から得た知見をもとに、政策提言などで社会課題に向き合い続けてきたフローレンス。サントリーとの協働事業では、子どもたちが家庭環境や経済状況に左右されず、未知と出会い挑戦する喜びを味わえる社会を目指し、「こども冒険バンク」を立ち上げました。

「こども冒険バンク」では、社会貢献を行いたい企業が自然体験や文化芸術、社会体験、スポーツなどさまざまな体験機会(冒険)を無償で提供し、プラットフォームを通じて利用会員とのマッチングを行います。2024年8月の提供開始からおよそ1年で利用会員数は3,000世帯弱、体験提供や資金的支援でこの活動に参画する企業は49社、提供した体験機会は8,235枠になりました。

サントリーでSEとして社内向けシステム関連の業務に従事してきた中島さんは、同プロジェクトでは最初の4カ月でシステムを構築し運用の改善に努めてきました。また体験格差解消支援の効果を測る実証調査についてもシステムを実装し、会員である子どもと保護者のウェルビーイングに関する調査や分析を実施。子どもと保護者の幸福度の相関関係など、複数の知見を得ることができました。さらに調査のなかで見えてきた、会員が抱える課題の解決に向けた行動変容のための企画や仕組みも構築中です。

参加者の前で話す中島亮さん

2年の出向期間で得たものについて、中島さんは「未知の領域の経験やスキル」だと話します。

「新規事業自体が初めてでしたし、専門であるシステムのことだけでなく、全方向的なスキルやマインドが必要となる環境で、さらにBtoBではなく一人ひとりの人に向き合う。事業の苦労を学ばせていただき、とても良い経験になりました。サントリーがとても重視している『お客様志向』の解像度や、本当にシステマチックにスピード感を持って運営されているソーシャルセクターへの解像度もぐっと上がったと思います」

出向者としてNPOと企業の円滑なパートナーシップのためのハブとなり、事業のあらゆる業務を完遂させるセーフティーネットの役割を担ってきた中島さん。最後に未来の出向者たちにこんなメッセージを残しました。

「出向前はSEである自分がNPOのなかで役に立てるのかという不安もありましたが、自分の持つスキルは個人のものではなく、先輩や上司から引き継がれてきたもの。先人たちが築いてきたものが社会の役に立たないわけがないので、これから組織の枠を越境する方にもこの経験を伝えていきたいです」

フローレンスでプロジェクトマネージャーを務める前田晃平さんは、出向者である中島さんと共につくり上げたパートナーシップについて触れました。

「資金的な支援だけでは超えられないものがあります。組織の内でも外でも、コミュニケーションの場で互いの言葉を翻訳したり、見ている方向性をあらためて示したりという、非常に重要な役割を出向者である中島さんが担ってくれたので、信頼し合いながら事業を成長させていくことができたと思っています」

コメントする前田晃平さん

すべての報告が終わり、サントリー常務執行役員である土田雅人は、出向者たちの成長に触れつつ、現場で社会課題に向き合い続けるNPOの活動に敬意を表しました。

「サントリーは創業以来、『やってみなはれ』の精神で社会の問題を解決しようと取り組んできました。“君は未知数”ではいまの時代の課題に最前線で取り組むNPOのみなさんと多くの対話を重ねながら、ぜひ長く一緒に取り組んでいければという思いです」

社会課題に対するコレクティブインパクトの重要性や可能性を、あらためて共有できた今回の報告会。4名の出向者がそれぞれの団体で過ごした濃密な時間だけでなく、さらなるシナジーへの希望も垣間見ることのできる時間となりました。

イベント終了後の交流会の様子
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