2024年10月から12月にかけて、神奈川県川崎市中原区にあるサントリー研修センター夢たまごで「殻をやぶれ!わくわくたまごプロジェクト」が開催されました。次世代エンパワメント活動“君は未知数”の一環で、サントリーホールディングス株式会社のサポートにより開催された同プロジェクト。主催は、川崎市で活動する認定NPO法人「キーパーソン21」(神奈川県川崎市、代表:朝山あつこ)です。子どもたちと地域の大人たちがつながりあい、子どもたちの誰もが必ず持っている、動き出さずにいられない原動力「わくわくエンジン®」(※)。それを大切にしながら、一歩踏み出す経験を応援する「対話型キャリア教育プログラム」で、全4回の連続ワークショップとして展開されました。
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第1回(10/27開催):「おもしろい仕事人がやってくる」&「わくわくエンジン®︎発見!&やってみたい!を考えよう」
第2回(11/10開催):『やってみたい!の作戦会議』〜大人と一緒にやってみたい!の実現に向けて話し合おう〜
第3回(11/24開催):『やってみたい!をやってみる』〜地域の人の協力で「やってみたい!」にチャレンジ〜
第4回(12/1開催):『やってみたいをやってみた!の発表』〜みんながどんなやってみたい!をやったのか聞いてみよう〜
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※わくわくエンジン®はキーパーソン21の登録商標です。
今回は、第1回を中心にその様子をレポートします。
「わくわくエンジン」は誰もが持っている原動力
10/27(日)に開催された第1回には、会場近隣に住む小学4年生から中学2年生までの31名が参加。さらに地元企業の方々、同NPOの会員や高校生、サントリーグループの社員など、40名ほどの地域の多様な大人たちが「わくたまサポーター」としてボランティアで参加し、子どもたちをサポートしました。ワークショップの初日ということもあって、緊張の面持ちで会場に入ってきた子どもたち。わくたまサポーターたちも少し緊張した様子です。
プログラムは、まず同法人の代表・朝山あつこさんのお話からスタートしました。
「新しいことを始めるときってちょっとドキドキしたりするし、一歩踏み出そうとするときって勇気が必要だったりするでしょ? 『こんなことやってみたいな』って思っても、親や友だちに笑われたり、『それをやってどうするの』とか『無理でしょ?』と言われちゃうんじゃないかと思って、踏みとどまったりすることもあるよね」と朝山さん。「でも、ここではそんな『やってみたい』とか『取り組んでみたい』って思うことを思いっきり出しちゃおう。そうやって勇気を持って一歩踏み出していくことが、これからみんなが生きていく人生においてすごく大事なんだよ」と呼びかけました。
そこで紹介されたのが「わくわくエンジン」という考え方。わくわくエンジンとは、わくわくして動き出したくなる原動力のことです。「わくわくエンジンは大人も子どもも誰もが持っているもの。これがあれば勇気が出るし、自分らしく生きられるのでラクになるし、そうすると人にも優しくなれる。今回のプロジェクトでは、みんなのわくわくエンジンを一緒に考えるお手伝いをしていきます」と語りました。
「おもしろい仕事人がやってくる!」。2名のユニークな仕事人が登壇
まずは「おもしろい仕事人がやってくる!」と題した、地元、川崎市中原区で活躍する2名による講演です。多様な生き方や仕事、価値観を知り、子どもたちが自分の未来を考えるヒントを見つけるきっかけとなることを狙いとしています。

最初に登壇したのは、サントリー食品インターナショナル株式会社の山﨑望さんです。
幼いころに夢中になっていたことの話から始まり、「中学・高校時代の部活や、大学時代に参加したNPOでの活動ではさまざまな経験を得た」と話す山﨑さん。「好奇心や行動力、コミュニケーション力、洞察力、ダイバーシティ感覚などが育まれたと感じます。ただ、自分が特別ということではなく、みんなそれぞれに違う強みを持っていると思うんです」と語り、こう続けました。
「私がいま携わっている商品開発では、特定の強みに焦点を当てたり、複数の強みを組み合わせたりと、さまざまな価値の生み出し方があります。人間も同じで、ひとつのすごい強みを持っている人もいれば、いくつかの強みを組み合わせて個性を出している人もいる。どちらのタイプも個別の魅力を持ち、異なる状況で活躍することができるので、若いうちに知識や経験を増やしておくことは、将来の選択肢を増やす助けになるのではないでしょうか」
そんな山﨑さんにとってのわくわくエンジンは「仲間と共に新しい価値を創造すること」。この思いを胸に、日々商品開発の現場で頑張っているそうです。
次に登壇したのは、プロレスリング・ノアに所属する現役プロレスラー、大原はじめさんです。大原さんは生まれも育ちも川崎市中原区。まさしく地元人です。

中学1年生のときにプロレスに出会った大原さんは、周囲の大人にプロレスラーになるという夢を認めてもらうために、数々のレスリング大会に出場して優勝。中学卒業後、晴れてプロレスの世界へと飛び込むことができました。
デビューする前の練習生は“ちゃんこ番”になるので、プロレスの練習に励みながら服部栄養専門学校に通って料理の腕を磨いた大原さん。卒業後、ようやくプロレスに入門してメキシコに渡り、21歳のとき大きな大会でチャンピオンになりました。これを機に世界各国を訪れて試合をするようになり、帰国後の現在も数々の試合で活躍しています。
こうして夢を叶えた大原さんですが、いまも新たな挑戦を続けています。祖父母の介護をきっかけに介護予防に関心を持ち、介護関連の資格取得に必要な高卒資格を得るために、32歳で定時制高校に通うことにしました。高校卒業後の現在は大学に通い、教員免許を取得するために勉強を続けています。
「みんなにもあきらめないで挑戦することの大切さを伝えたい」と大原さん。そんな大原さんのわくわくエンジンは「人に喜んでもらえること。楽しんでもらえることを提供すること」だと話しました。
多様な生き方や仕事・価値観をありのままに語ってくれたおふたりに、子どもたちだけでなく、同席している保護者のみなさんやわくたまサポーターたちもさまざまなことを学んだようでした。

みんなの“わくわくエンジン”を見つける「すきなものビンゴ」
午後からは、グループに分かれて「すきなものビンゴ」を行いました。
ビンゴゲームを通じて、おしゃべりを楽しみながら、自分の好きなものや大切に思うことなどを知る。そのうえで、それぞれの原動力=わくわくエンジンを言語化し、子どもたちの主体性を引き出します。

好きなものについて話す子どもたちの目は輝いていて、生き生きとした表情が印象的。同席したわくたまサポーターも、初対面同士とは思えないくらい打ち解けた雰囲気で対話を楽しんでいました。

自分のわくわくエンジンをすらすら書ける子どもたちがいる一方で、わくたまサポーターと対話しながら進めたり、どう書けばいいのかサポーターに相談したりする子どもたちも。大人であるわくたまサポーターが悩みながら書いている様子も印象的です。
代表の朝山さんは「自分の好きなものに対してケチをつけられることもないし、文句を言われることもありません。そうやって子どもたちが解放されると自由に自分の好きなことを言えるし、エネルギーがわいてくる。そこから出てくる“やってみたい”は本物なんです」と話しました。
画用紙に「自分がやってみたいこと」を書いて発表!
ワークショップの最後は「やってみたい!を考えよう」。“自分がやってみたいこと”とその理由を画用紙に書き出して発表しました。

プログラムのスタート時と比べて、見違えるように表情や雰囲気が明るくなった子どもたち。朝山さんの元に「いつもと違う自分を発見できた」という感想を伝えにきた子もいたそうです。
「やってみたい!」をかなえ、みんなに発表。最終回まで走り切った子どもたち
11/10(日)に開催された第2回のテーマは「やってみたい!の作戦会議」。第1回で子どもたちが挙げたやってみたいことをかなえるために、わくたまサポーターたちと話し合いながら作戦を立てました。

「子どもたちが好きなものをどうやったら実行できるのか、大人たちが伴走して一緒に考えていきます。無理やり頑張らせるのではなく、子どもたちの素直な気持ちを何より大切にしてやりたいことを引き出していきたいですね」と朝山さん。子どもたちは「『ケーキをつくりたい!』カフェ・ケーキチーム」や「『電車の運転士になりたい!』鉄道チーム」、「『ブレイキンを踊りたい!』パフォーマンスチーム」など、9つのグループに分かれ、実現に向けて意見を出し合います。
大人たちも、「カフェ・ケーキチーム」には「知り合いのパティシエを紹介してあげる!」、また「油絵を描いてみたい」という声には「絵具を持ってるから貸してあげるよ」など、さまざまにサポート。好きなものに対する子どもたちの積極性や行動力に刺激を受けました。
こうして大いに盛り上がった第2回のワークショップ。どのグループからも良いアイデアが生まれ、具体的なアクションにつながりました。
11/24(日)の第3回は、前回練った作戦にもとづいて「やってみたい!をやってみる」がテーマです。元電車運転士の方やコスメとダンスの先生など、さらなるサポーターも駆けつけ、子どもたちの「やってみたい!」をみんなで応援。会場の中にとどまらず、屋外にも飛び出して活動しました。
「やってみたい!」に向かい、チャレンジする子どものパワーに、大人たちもわくわくしながら楽しんでいる姿が印象的でした。

そしていよいよ迎えた最終回。12/1(日)の第4回は、実際に「やってみたこと」を発表する日。子どもたちはみんなの前に立ち、自分の言葉で「やってみたこと」を堂々と発表しました。
パフォーマンスチームは、なんと、この日までに練習した楽器演奏やブレイキンを披露。まさしく「やってみたい!」の実演となりました。

子どもたちの充実した表情と、それを見守る大人たちの温かな目線。今回参加した子どもたちからの「いろいろなことに挑戦するのが楽しくなった」、「いつもはできないことがやれてよかった」、「何かを始めようとするときの自信が持てた」といった声に加え、サポートした大人や保護者の方たちからも「自分自身も何か新しいチャレンジをしたいと刺激をもらった」、「学校以外の世界を知ること、他者と関わることで自分の中の軸が少しずつ定まるきっかけになると感じた」、「子どもが主体的に考え、動くきっかけを作ってもらえた」、「このプロジェクトをもっともっと広めてもらいたい」などの声が集まりました。
全4回を通した「殻をやぶれ!わくわくたまごプロジェクト」は、一人ひとりが輝ける未来への第一歩になったはず。今回の経験を糧にして、子どもたちのチャレンジはこれからも続いていきます。