バーボンウイスキー・エッセイ アメリカの歌が聴こえる

ロック・アラウンド・ザ・クロック

スピークィージー(Speakeasy)。1920年から1933年まで、アメリカ国民を悩ませつづけた禁酒法下で誕生した“もぐり酒場”のことだ。「こっそりと酒を注文する」ことから派生して生まれた言葉らしい。

いまでも知られているニューヨークの名士たちが集まる「21クラブ」のように最高の料理と極上の酒でもてなす高級店もあれば、理髪店、薬局店、はたまた葬儀店までもが隠し扉の奥でスピークィージーを営業していたりもした。

一般的なスピークィージーには小さな覗き窓があり、合い言葉で入店できる仕組みになっていた。また店内入り口のドア脇に秘密ボタンがあり、当局関係者が来た際にはこれを押し、店内の客に知らせ、別のドアから逃げられるようにしていたらしい。

アルコール飲料の製造、販売、輸送、および輸出入は禁止されていたが、買ったり飲んだりすることは禁止していなかった。さらには多くの州が連邦法とは微妙に異なる法を制定したためにさまざまな矛盾が生じ、抜け穴だらけでもあった。

21世紀のいま、深みのある熟成感を湛えたジムビーム ブラックのオン・ザ・ロックを飲みながら、なんて幸せなんだろうとしみじみと感じ入る。あの時代のアメリカに生きていたならば、どう酒を飲んでいたのだろうか。意地汚く、あらゆる手段を講じて入手しようとしていただろう。

ただ、富裕層が集まる高級店にはいい酒はあった。ニューヨークの「21クラブ」もそうだが、なんと「エール・クラブ」は禁酒法施行前に14年分の酒をストックした。法律撤廃後もわずかに残っていたということになり、先見の明があったといえよう。またカナダやカリブ海ルートでの密輸も盛んで、海外の高級な酒を入手しようと思えばできたのだ。ただし、自国のバーボンウイスキーはいくらストックがあったとしても、早々に底をついていたことだろう。


禁酒法を語るのに、忘れてはいけない女性がいる。テキサス出身のテキサス・ガイナン。本名はメアリー・ルイズ・セシリア。映画『コットンクラブ』(1984年公開)では若々しいリチャード・ギアやニコラス・ケイジが観られるのだが、その中でダイアン・レイン演じるクラブの女主人ヴェラは、ガイナンがモデルになっている。

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