バーボンウイスキー・エッセイ アメリカの歌が聴こえる

ブルーグラス・ステート

行きつけのバーでミントジュレップをオーダーすると、ケンタッキーダービー特製タンブラーにつくってくれる。ミントジュレップ専用グラスという訳ではないが毎年デザインや色調が異なる記念品であり、歴代優勝馬の名も記されている。わたしは第100回大会、1974年製を好み、ジムビーム ブラックラベルをベースにした一杯をよく飲む。

記念タンブラーにはバラが描かれたものが多い。優勝馬には500本以上ものバラでつくられたブランケットが掛けられ、別名"Run for the Roses"と呼ばれているらしいから、それを象徴したデザインなのだろう。


今年もケンタッキーダービーが開催される。とくに競馬ファンというわけではないが一度は観戦してみたい。毎年5月の最初の土曜日、ルイビルにあるチャーチルダウンズ競馬場でおこなわれるこのダービーの様子を観戦体験者から聞く度にその思いは強くなる。

出走馬がパドックから本馬場入場の際、観客たちは国歌斉唱の後にミントジュレップを飲みながらスティーブン・フォスター作詞・作曲の州歌"My Old Kentucky Home"(ケンタッキーの我が家)を合唱するらしい。演奏はルイビル大学マーチングバンドがおこなっているそうだ。

なんとも幸せな光景ではないか。世界中から集まった正装の紳士淑女もTシャツにジーンズ姿の地元の人たちも、皆が一斉に歌うのだ。わたしはその中に笑顔で佇んでいたい。もし頭上に天晴なまでの青空が広がっているならば、バーボンの日なたのような甘い香りとミントの爽快な緑の香りが溶け合ったグラスを手に、あっけらかんとした5月の平和なひとときを感じていたい。

さてケンタッキー州はバーボンとサラブレットの産地としてよく知られている。酒と馬。ふたつはまったく別物の名産のように思われるだろう。しかしながら歴史の流れと風土を知れば結び合っていることがよくわかる。


1720年代にイギリス国教会から追われて北米に渡ったアイリッシュ、スコティッシュたちの中で、ペンシルベニアを中心にメリーランド、バージニアに入植したものたちがウイスキーをつくりはじめる。

当初は不良土壌にも強いライ麦を主原料にしていた。その後、英仏植民地

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