食事と飲み物の相性の理由を人間の感覚から探求

「マリアージュ」の他にも、食材や飲み物の「匂いの分子」を分析することで、新たな相性の組み合わせを探る「フードペアリング」という科学的な方法もあります。しかし、そもそも人はなぜその組み合わせを美味しいと感じるのでしょうか? 私たちは、「マリアージュ」のような経験則や「フードペアリング」といった物質的な視点による相性ではなく、人が持つ感覚の原理原則を追求することで「相性の理由」を解明しようと研究を開始しました。
美味しさを感じる口の中の感覚の変化に注目

一般的に、肉と赤ワイン、中華料理とウーロン茶のように、油脂を多く含む料理の組み合わせとしては、渋味のある飲み物が好まれる傾向にあります。本研究では、この理由について調べることを目的に、口の中の感覚に焦点を当てました。渋味のある飲み物と油脂を多く含む食品を用いた次のような試験を実施し、官能評価を行いました。
※この研究は、米国のモネル化学感覚研究所との共同研究として「カレントバイオロジー誌」(2012年10月9日発行)に掲載されました。
試験内容

20〜60代の男性6名、女性15名の合計21名を対象に、上のような食品摂取パターンを繰り返してもらい、飲料とサラミそれぞれを摂取した後の「脂っこさ」「渋味」「苦味」の3項目について、口の中の感覚の強さ(感覚強度)を21段階で評価してもらいました。
脂っこさを楽しめるからウーロン茶が選ばれた

(1)(2)(3)のパターンにおける口の中の感覚を分析したところ、飲料を飲んだ直後では、(1)の苦味溶液よりも(2)のウーロン茶をサラミと一緒に摂取した場合に、「口の中の脂っこさ」の感覚が有意に低くなることがわかりました。また、(2)(3)からウーロン茶を摂取した際は「渋味」の評価値が高い一方で、「口の中の脂っこさ」の評価値が低くなるなど、「渋味」と「脂っこさ」の感覚は逆の挙動を示すこともわかったのです。

(1)(2)(4)のパターンにおける口の中の感覚を分析したところ、サラミを食べた直後では、(1)の苦味溶液よりも(2)のウー ロン茶をサラミと一緒に摂取した場合に、「口の中の脂っこさ」の感覚が有意に低くなることがわかりました。
以上の結果から、「脂っこい食事にはウーロン茶が合う」という経験則には、「さっぱりした飲み物」としてのウーロン茶の中の「渋味」による刺激が、口の中の脂っこさをより軽減させていることがわかったのです。「一般的にどのような食事でも渋味のある飲み物が選ばれる傾向」を裏づける結果となりました。別の実験結果からは、ウーロン茶には、油脂を乳化させる特性があり、物質的にも口の中から「脂っこさ」を取り除いていたこともわかりました。
つまり、渋味のある飲み物を食事の合間に複数回摂取することで、口の中の「脂っこさ」をリセットさせることができ、ウーロン茶ならその効果がより高いのです。脂っこい料理をより楽しむには、ウーロン茶を合わせて飲むことが効果的であり、それが両者の相性の良さとなっていたことが解明できました。
食事を美味しくする飲み物との相性選びがもっと楽しくなる

食事と飲み物の相性の良さを人はどう感じるのか。私たちの「嗜好研究」とも言える視点は、美味しさの体感という食事本来の楽しさに基づいた原理原則を明確にしていくことでしょう。この料理にはこの飲み物をどうぞといった、おもてなしに最適な飲料の開発はもちろん、「相性の良い理由」がもっとわかっていけば、誰もがよりいっそう食事を美味しく楽しむことが可能になります。私たちは、研究から得られた知見を、商品を通じて、さらには食卓を演出するコツとして広く情報発信していきたいと考えています。