開発成功のための2つの技術的な課題


青いバラを咲かせるために解決しなくてはならない、技術的な課題は2つ。1つは「青い花に含まれる数万種類の遺伝子の中から青い色素(デルフィニジン)を合成するために必要な遺伝子(青色遺伝子)を取り出す」ということ。もう1つは「バラの細胞に遺伝子を入れ、その細胞から遺伝子組換えバラを作製する方法を開発する」ということです。特に第一の課題である青色遺伝子は特許権で保護できるため、ライバルよりも早く見つけ出し、特許出願する必要がありました。
不可能の象徴「青いバラ」への挑戦が始まった(田中良和上席研究員)
青いバラ研究のため、新天地オーストラリアヘーー

青いバラの開発をオーストラリアのベンチャー企業フロリジンと共同で行うという話を耳にしたのは、入社6年目の頃。私は植物に特別な興味を持っていたわけでもないので、それまで世の中に青いバラが存在しないということさえ知りませんでした。ただ、ちょうど変化が必要だと感じていた頃でしたし、海外で仕事をしてみたいという気持ちもあったので、名乗りを上げることに。
当初、私は微生物の研究グループに所属していたのですが、プロジェクト発足とともに、植物の研究グループに異動になり、そのままオーストラリアに飛びました。独特のオーストラリア英語や日々の研究の前後関係が把握できてないことから初めは苦労しましたが、明るい仲間に助けられ、すぐに慣れました。
社長から届いた直筆のクリスマスカード
遺伝子レベルになると、微生物も植物もあまり変わりがないので、技術的には大きな問題はなかったですね。よく、3万個の植物の遺伝子の中からたった2個の青色遺伝子を探すというと、気が遠くなりそうだと言われるのですが、今までカビの遺伝子などを扱ってきた私にとっては当たり前の作業だったので、そんなに苦にもなりませんでした。
クリスマスには、当時の佐治敬三社長から「青いバラを恋人のように待っています」という直筆のメッセージが書かれたクリスマスカードが届きました。お洒落なメッセージはもちろんですが、海外に送り出した社員一人ひとりを忘れずにいてくれていることが嬉しかったですね。このカードは今も大切にしています。
何千万年も前のバラの祖先は青かった!?

植物の遺伝子を調べるうちに、バラの祖先は青色遺伝子を持っていて、何千万年も前には青いバラが咲いていたかもしれない、ということがわかりました。
現在のバラ科の植物はどれも青色遺伝子を持っていませんが、それはバラの祖先にとって生き延びるのに不要だったということです。進化の過程のどこかで青色遺伝子をいらないものとして捨ててきてしまったのかもしれません。
今となっては、遠い昔に咲いていた青いバラがどんな色だったかは想像するしかありませんが、タイムマシンがあったら、ぜひ見に行ってみたいですね。おそらく今のバラとは色だけでなく形もまったく違う花だったはずです。