サマーフェスティバル2014 サントリー芸術財団

サントリーホール国際作曲委嘱シリーズNo.37(監修:細川俊夫)テーマ作曲家〈パスカル・デュサパン〉

Suntory Hall International Program for Music Composition No. 37, Artistic Director: Toshio Hosokawa Theme Composer 〈Pascal Dusapin〉

「サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ」はコンサート・ホールが、鑑賞の場に止まらず創造空間となることを目指して、1986年故武満徹の提唱により始まりました。世界の第一線で活躍する作曲家へ管弦楽作品を委嘱し、世界初演を行います。 今年のテーマ作曲家、パスカル・デュサパンの新作のほかに、作曲家が強い影響を受けた作品、大きな可能性を秘めている若い作曲家の作品、および自身の室内楽の作品をご紹介いたします。

国際作曲委嘱シリーズ過去の一覧はこちら

パスカル・デュサパン

プロフィール

8/21木 管弦楽

19:00[開場18:20] 大ホール

*18:30〜 プレコンサート・トーク[パスカル・デュサパン&細川俊夫]

クリストフ・ベルトラン(1981-2010):マナ(2004-05)日本初演

パスカル・デュサパン(1955-):弦楽四重奏曲 第6番 ヒンターランド
弦楽四重奏とオーケストラのための“ハパックス”(2008-09)**日本初演

ジャン・シベリウス(1865-1957):交響詩 タピオラ Op.112(1926)

パスカル・デュサパン(1955-):風に耳をすませば
ハインリヒ・フォン・クライスト原作のオペラ《ペンテジレーア》からの3つの場面(2014)*世界初演 サントリーホール委嘱

  • 指揮=アレクサンダー・リープライヒ
  • メゾ・ソプラノ=ナターシャ・ペトリンスキー*
  • アルディッティ弦楽四重奏団**
  • 管弦楽=東京交響楽団

入場料:[指定席]
S席 4,000円/A席 3,000円/B席 2,000円/学生席 1,000円

座席表PDF(2.5MB)

8/25月 室内楽

19:00[開場18:30] ブルーローズ(小ホール)

パスカル・デュサパン(1955-):
弦楽四重奏曲 第2番 タイム・ゾーン(1988-1990)
日本初演

弦楽四重奏曲 第7番 オープン・タイム(2009)
日本初演

  • 出演=アルディッティ弦楽四重奏団

入場料:[自由席] 一般 3,000円/学生 1,000円

セット券:[管弦楽(S席)、室内楽] 5,000円
〈限定100セット〉

※東京コンサーツ(03-3226-9755)のみ取り扱い。

作曲家からのメッセージ

皆様

権威あるサントリーホールにおいて、わたしの作品を皆様に紹介していただけること、大変、光栄に存じます。
また、サントリー芸術財団のご厚意で《風に耳をすませば…》組曲を書かせていただいたこと、また、東京交響楽団の素晴らしい音楽家の方々にこの新作を演奏していただけること、とても誇らしく感じております。
日本は、決してフランスの心から遠い国ではありません。今夜、わたしは、日本の文化への大きな敬意と大きな賛嘆の念をもって、皆様とご一緒させていただきます。

パスカル・デュサパン

デュサパンについて

パスカル・デュサパンが2010年に来日した際のインタビュー記事が、下記サイトに掲載されています。(インタビュー&執筆:小沼純一)

http://tower.jp/article/feature/2010/06/11/66196
初出intoxicate vol.85(2010年4月20日発行号)

パスカル・デュサパンは、フランスを代表する私と同世代の作曲家です。オペラ、合唱曲、歌曲、オーケストラ曲、協奏曲、室内楽、独奏曲等のすべての分野で優れた作品を書き続けている総合力のある傑出した作曲家です。
私は、私のオペラ『松風』の演出をした現在ドイツで最も人気のあるコンテンポラリー・ダンスの振り付け師サッシャ・ヴァルツを通して親しくなりました。パスカルもヴァルツによって演出されたオペラによって、大きな成功を収めています。彼はフランスの他の作曲家とは異なった経歴を持つ人で、パリ音楽院やイルカムでは音楽を学んではおらず、パリ大学で哲学や文学を専攻しました。非常に高い教養を哲学、文学、建築等の分野で持っています。とはいえ、彼の音楽のメチエの確かさは定評があり、独自な思想を持った豊かな音楽を次々と発表しています。今年、サントリーホールで彼のクライストがテーマの新作オペラのなかで歌われる歌を、オーケストラ用に創りあげたオーケストラ歌曲の世界初演や、アルディッティカルテットのために書かれた弦楽四重奏とオーケストラという独自な協奏曲の日本初演が聴けることを、たいへん楽しみにしています。

細川俊夫(作曲家・サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ監修者)

演奏者から

アルディッティ弦楽四重奏団にとって、今回、サントリー芸術財団のサマーフェスティバルのために、ふたたび日本を訪れることは大きな喜びです。
このサマーフェスティバルは、日本の現代音楽を代表する作曲家、武満徹が長年にわたり関わったフェスティバルであり、1988年に私たちを初めて日本に招いてくださったのも武満氏でした。
アルディッティ弦楽四重奏団は、武満氏のみならず、細川俊夫氏とも長年にわたる交流があり、今回、2014年の招聘を呼びかけてくださったのは細川氏です。
細川氏は現在、私たちのために四重奏と管弦楽のための作品を書いてくださっているところで、これも楽しみですが、今夏のこのフェスティバルでは、フランスの作曲家、パスカル・デュサパンの作品を、日本の皆さんに聴いていただきたいと思います。私たちは、これまでにデュサパンの弦楽四重奏曲を全曲演奏しており、そのほぼすべてを初演しています。
「ヒンターランド」と題された《弦楽四重奏曲 第6番》は、オーケストラも含む編成の作品であり、今回は、アレクサンダー・リープライヒ指揮/東京交響楽団との共演で、日本の皆さんにこの作品を聴いていただけることを大変嬉しく思っています。
デュサパンの最近の音楽は、以前の作品に比べて、より伝統的な、豊かな表現に満ちたものになっています。今回、東京で演奏する三曲の大作、弦楽四重奏曲第2番、6番、7番では、そうした二つの異なる作風を楽しんでいただけることと思います。

アーヴィン・アルディッティ(アルディッティ弦楽四重奏団)

親愛なる皆さまへ

この8月、ふたたび東京を訪れる機会をいただき、光栄に思います。

今回のサントリー芸術財団「サマー・フェスティバル」では、3つの“初めて”ができることを、とても楽しみにしています。ひとつは、東京交響楽団との初共演。もうひとつは、サントリーホールへの初登場。そして、もちろん、パスカル・デュサパンの新作の世界初演です。新しいオーケストラとの初共演は、指揮者にとって、独特の体験です。私はこれまでにも、日本、そしてアジアで多くの仕事をしてきましたが、東京交響楽団のような一流のオーケストラとの、音楽を通しての出会いは、いつのときも新鮮な挑戦です。まだ駆け出しの指揮者だった頃、私に非言語的コミュニケーションと音楽に対する敬虔な姿勢というものを教えてくれたのは、私の師であり、今年残念ながら世を去った、巨匠クラウディオ・アバドです。以来、このことは、私の音楽作りの基礎であり続けています。彼のおかげで、私は3年間、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団やグスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラに同行し、その素晴らしいプロダクションを間近で体験することにより、尽きることのないインスピレーションを得ることができました。

デュサパン、ベルトラン、シベリウスというプログラムは、交響作品の演奏文化において極めて重要な、現代音楽と古典派音楽の自然なつながりを示すプログラムであり、傑出した作曲家の組み合わせです。
敬愛する作曲家、細川俊夫氏に、心より感謝を捧げます。私は長年にわたり、アジアの現代音楽文化に、とても親しみを感じてきました。8月21日のサントリーホールでは、多くの友人、素晴らしい音楽家、そして熱心な聴衆に会うことができると確信しています。

アレクサンダー・リープライヒ

プロフィール

(C)Collège de France_Editions Salabert

パスカル・デュサパン

現代フランスの作曲家、パスカル・デュサパン(1955年5月29 日, ナンシー)は、18歳のとき、エドガー・ヴァレーズの《秘法》を、当時、ヴァンセンヌにあったパリ第8大学で聴いた。その衝撃によって、彼は、以後、自分が作曲によって生きることを悟った。もちろん、それ以前にも音楽への目覚めはあり、家族でのヴァカンス中に泊まったホテルでたまたまジャズ・トリオの演奏に接し、クラリネットに魅せられたことがあった。家に戻ってみると、彼の父は、ピアノの上にクラリネットを用意していたという。また、10歳のときには、オルガンに深く心を揺り動かされ、その感動は彼の型にはまらない青年時代を貫いたという。1974年から78年にかけて、デュサパンは、彼が“現代のヴァレーズ”と考えるヤニス・クセナキスの講義を熱心に受講。クセナキスは、デュサパンにとって、数学と建築に地平を広げ、「別の視点から考えること」を教えてくれる師であった。

ロルフ・リーバーマンに促され、デュサパンは、1986年、作家、オリヴィエ・カディオとの共同作業によって、初のオペラ《ロメオとジュリエット》に取りかかる。このオペラは、1989年7月にモンペリエ・オペラとアヴィニョン音楽祭で同時期に初演され、その後、国外への上演ツアーが組まれた。以来、デュサパンは、自身の文学への情熱を音楽劇の創造と結びつけ、ハイナー・ミュラーの原作による《メディアマテリアル》(1991年初演)、ゲルトルード・スタインの原作による《トゥ・ビィ・サング》(1994年初演)、アルド・パラッツェスキの原作による《ペレラ 煙の男》(2003年初演)を生み出す。また、近年の2つのオペラ、《ファウストゥス 最後の夜》(2006年初演)と《パッション》(2008年初演)では、自ら台本執筆を行なっている。

これらのオペラ創作の間を縫うように、多様なジャンルにわたる多くの作品が生み出されている。7つの弦楽四重奏曲(第6番は、管弦楽を伴うもの)、《メランコリア》《グラヌム・シナピス》《ドナ・エイス》など声楽をともなう作品、《ピアノのための7つの練習曲》、ピアノ協奏曲《ア・キア》、そして、1991年から2009年にかけて作曲されたオーケストラのための7つのソロ(Go, Extenso, Apex, Clam, Expo, Reverso, Uncut)。この連作は、生命力と人間的・芸術的な感動とをもった、非常に大きな交響楽である。現在、《 モーニング・イン・ロング・アイランド》にはじまる管弦楽のための新しい連作が進行中である。

デュサパンは、キーノ・デル・デューカ賞(2005年)やダン・デービッド賞(2007年)をはじめとする数々の賞を受賞している。2006年には、ミュンヘンのバイエルン芸術アカデミーの会員となり、コレージュ・ド・フランスの教壇にも立つ。これによりデュサパンは、ピエール・ブーレーズに続き、この権威ある学術機関に席を得た二人目の作曲家となった。2010年と2011年には、ミュンヘン音楽大学の客員教授。

形態学、哲学(とくにドゥルーズを賞賛している)、写真、建築、ベケットの演劇、フロベールの文学作品など様々な対象に熱中し、また、サシャ・ヴァルツ(舞踊家)、ジェームズ・タレル(美術家)、ペーター・ムスバッハ(演出家)など、多様な芸術家とのコラボレーションを行なっていることもデュサパンの持ち味のひとつ。近年では、リチャード・セラの彫刻『モニュメンタ』が展示されたグラン・パレや、ドーヴィルの海岸などで、大規模なエレクトロニクスの活用の実験も行なっている。

(Irina Kaiserman作成のプロフィールより抄訳/藤田茂 訳)

アレクサンダー・リープライヒ(指揮)

ポーランド国立放送響音楽監督兼首席指揮者、ミュンヘン室内管芸術監督兼首席指揮者、統営トンヨン国際音楽祭芸術監督。エド・デ・ワールトの助手として研鑽を積み、急遽務めた彼の代役で一躍注目を集める。C.デイヴィスの助手を務めた他、アバドの招きでベルリン・フィル・オペラ・プロジェクトに参加。以来ロイヤル・コンセルトヘボウ管、ミュンヘン・フィル、ベルリン放送響、ドイツ・カンマーフィル、BBC響、N響等に登場。オーケストラに取り組む一方、小規模アンサンブルと刺激的かつ柔軟な曲目を追求する姿勢が高く評価されている。

ナターシャ・ペトリンスキー(メゾ・ソプラノ)

ウィーン生まれ。テル・アビブのニュー・イスラエル・オペラでキャリアをスタート。アムネリス(アイーダ)、アズチェーナ(イル・トロヴァトーレ)、クンドリ(パルジファル)、ヴェーヌス(タンホイザー)、ブランゲーネ(トリスタンとイゾルデ)などヴェルディ、ワーグナー・オペラに加えて、ヨカステ(エディプス王)、ミランダ(アデス作曲《テンペスト》)、ゲシュヴィッツ(ルル)など、近現代オペラでの活躍も多い。最近の活動に、ボローニャでの《エレクトラ》、ヴェネツィアでの《放蕩者のなりゆき》、香港での《サロメ》などがある。

アルディッティ弦楽四重奏団

2014年に創設40周年を迎える。現代作品、20世紀初頭の作品をレパートリーとする。この40年の間に、数百もの弦楽四重奏曲がアルディッティ弦楽四重奏団のために作曲され、バートウィスル、ケージ、カーター、ディロン、ファーニホウ、グバイドゥーリナ、ハーヴェイ、細川、カーゲル、クルターク、ラッヘンマン、リゲティ、ナンカロウ、レイノルズ、リーム、シェルシ、シュトックハウゼン、クセナキスなどの作品を世界初演。1999年シーメンス賞を受賞。2014年4月以降ロンドンで40周年記念演奏会が次々に開催されるほか北米など世界各地で演奏する。

東京交響楽団

1946年に創立。音楽監督にジョナサン・ノット、正指揮者に飯森範親、首席客演指揮者にクシシュトフ・ウルバンスキを擁する。現代音楽の初演などにより、文部大臣賞、京都音楽賞大賞、毎日芸術賞、文化庁芸術作品賞、サントリー音楽賞、川崎市文化賞等を受賞。教育面でもサントリーホールと共催で「こども定期演奏会」を続けており、「0歳からのオーケストラ」も注目を集めている。新国立劇場ではレギュラーオーケストラとして毎年オペラ・バレエ公演を担当。川崎市のフランチャイズオーケストラ、新潟市の準フランチャイズオーケストラとして、また八王子パートナーシップを結び、活動の場を拡げている。海外公演もこれまでに 53都市71公演を行った。
http://tokyosymphony.jp

クリストフ・ベルトラン
Christophe Bertrand(1981-2010)

1981年生まれ。ストラスブール音楽院でピアノと室内楽の金賞を得てから、現代音楽アンサンブルで演奏者として活動する(このとき、パスカル・デュサパンともコラボレーションしている)。1996年から、同音楽院でイヴァン・フェデレに師事して作曲を学び、2000年に音楽院の最高評価を得てディプロムを取得。その後、00-01年学期に、IRCAMの作曲・情報学コースに参加、ユレル、ミュライユ、ファーニホウ、ハーヴェイらに学んだ。受賞歴も枚挙にいとまがなく、07年にはフランス著作権協会SACEMのエルヴェ・デュグラン賞、フランス学士院芸術アカデミーのアンドレ・カプレ賞という国家的な賞を受賞した。ベルトランの作品は、名だたる演奏家によって世界各地で演奏されている。10年9月17日、わずか29歳でこの世を去った。(藤田 茂)

ジャン・シベリウス
Jean Sibelius(1865-1957)

フィンランドの作曲家。自国の民族的主題に基づいた作品を多く残す。とりわけ、ロシアの圧政下においてフィンランド人たちの独立意識と愛国心に火をつけた英雄抒情詩『カレワラ』に、彼は大きな関心を寄せ、これを題材に《クッレルヴォ交響曲》(1892)や交響詩《タピオラ》(1926)等を作曲した。こうした点から音楽史においては彼を国民楽派として位置付けてきた。しかし近年のシベリウス研究では、『カレワラ』に含まれる「不在」や「喪失」といった「嘆き悲しみ」の概念をテーマ化し、それを音楽で描写したところに、「モダニズム」が見て取れるという新しい視点が現れ、彼はむしろ国際派の作曲家とみなされるようになってきた。(池原 舞)