2026.10.05

商品を売る、その先へ。20年以上の「現場」で磨いた、サントリー営業の極意

商品を売る、その先へ。20年以上の「現場」で磨いた、サントリー営業の極意

サントリー株式会社でMD推進を担当する菊池陽平さん。2004年の入社以来、山陰支店、横浜支店、グルメ開発部、市場開発本部と、一貫して業務用営業や外食の現場を歩き続けてきました。今も年間300軒ほどの飲食店に足を運ぶという菊池さんに、20年以上のキャリアで磨いてきた営業の哲学と、次の世代に伝えたい「営業の面白さ」を語ってもらいました。

売るだけではない。外食企業の経営まで支える「営業企画」

サントリー株式会社 営業統括本部でMD推進担当部長を務める菊池さん。顧客である外食企業と全国のセールスの間に立ち、営業課題の解決をサポートする役割を担っています。

菊池さん:ドリンクの注文数を分析してセールスと一緒に商談に入ることもあれば、サステナビリティの取り組みや、お酒と合う食材の提案をすることもあります。わかりやすく例えるなら、外食企業とセールスのハブとなるコンシェルジュ的な業務です。

もちろん、サントリーのお酒が売れればいいというだけではなく、相手企業が利益を出すための”武器”を提案していくことが重要です。外食企業といっても、それぞれ事情が異なり、抱える課題もまったく違います。だからこそセールスには、目の前の相手の課題をていねいに聞き出す力が重要だと考えています。

サントリー株式会社 営業統括本部 業務用営業推進部 MD推進担当部長の菊池陽平さん。

菊池さん:最近はセールス向けのヒアリング研修も担当しています。そこでは、私が相手企業の社長役となって参加者とロールプレイングをしながら、「相手の本音を聞き出す練習」を一緒に行います。一方で、自分がアドバイスしていることが本当に合っているのか、研修の場だけでは確かめられないことも事実です。

そもそも、営業には絶対の正解があるわけではなく、私のやり方がすべての営業パーソンに当てはまるわけでもありません。商談の現場でお客様と直接やり取りするのはセールス本人なので、その人のやり方を信じてやるしかないとも感じています。そこは、プレイヤー時代とはまた違う難しさがありますね。

年間300軒。「現場に何かが落ちている」が営業の原点

日々急激な変化を遂げている外食業界。そんななかで、菊池さんが最も大切にしているのが、「現場」を見ること。週4日、1日2軒ほどのペースで、今も「現場」に足繁く通っています。

菊池さん:飲食店には年間300軒ほど足を運んでいます。そこには、インターネットや雑誌ではわからない「何かが落ちている」んです。どんなお客様が来て、何を注文しているのか。この商品は儲かっているのか。自分の目で直接確かめることで、相手企業について深く知ることができますし、何を大事にしているかがわかってきます。

まだ若手の頃、担当していた飲食店のビールを、サントリーから他社製品に切り替えられてしまったことがありました。理由はシンプルで、「セールスが店に来ないから。他社はしっかり顔を出してくれた」と。お客様との接点を重ねることの大切さに、なぜもっと早く気づけなかったのか。今でも忘れられない、営業人生の転機のひとつですね。

「営業の基本は、ていねいなヒアリングで相手を深く知ること」と、菊池さん。

菊池さん:そこからは、可能な限り現場に足を運び、お客様との関係づくりを徹底してきました。信頼関係が深まるにつれて、いいことだけでなく、「あのスタッフさんの対応はよくなかったですよ」といった相手にとって耳の痛いことも伝えられるようになっていきました。率直に意見を交わせる関係性そのものが、次の提案やさらなる信頼につながります。

そんな菊池さんの営業観は、20年以上にわたるさまざまな現場経験のなかで培われてきました。

菊池さん:新卒で配属された山陰支店では、鳥取県全域を1人で担当していました。飲食店や酒販店などの得意先との距離も近くて、学生時代には出会えなかった価値観に触れられたのが楽しかったです。ちょうど奥大山にサントリーの工場ができた頃で、工事関係者や協力会社の方々などと協力しながら、地域の皆さんにサントリーの魅力を伝えていく経験ができたのも印象に残っています。

菊池さんは、サントリーから「伊右衛門」が発売された2004年に新卒入社。

菊池さん:その後、横浜支店に異動し、大手酒販店や地場のチェーンを担当しました。このときに学んだのは、組織対組織のビジネスは、個の力だけでは動かせないということでした。上司や先輩を巻き込みながら、チームの力で成果をつくることを覚えた時期ですね。

2014年からは、飲食店の盛業支援を行うグルメ開発部へ異動。そこでは、ドリンク開発やお店の業態そのものを開発する業務を担当しました。

菊池さん:外食産業の経営やレシピ、店の立ち上げ方などを、より近いところで経験したいとずっと思っていました。ただ、私たちは飲食店経営者ではないので、「飲食店ごっこ」に陥らないためにどうすればいいのか、飲食業と深く向き合うことの楽しさと難しさを改めて感じました。この頃から、あらゆる飲食店にアンテナを張るクセがつき、仕事やプライベートを問わずに年間訪問するお店の数がどんどん増えましたね。

市場開発本部のメンバーとの懇親会。「オンオフ問わず、現場を見ることは大事にしています」。

菊池さん:その後、2019年には市場開発本部で全国チェーン飲食店を担当し、向き合う壁の質も変わっていきました。組織対組織でのやりとりが多くなり、「こうしたい」と思っても自分の意見だけでは決められないハードルもありました。そのハードルをどう超えていくかを、じっくりと学べたと思います。

一方で、現場から遠くなったかというと、そういうわけではありません。現場の店を見ないと経営者と話はできませんから、50軒あるチェーン店ならその50軒すべてを回っていました。今振り返ると、こうした経験の積み重ねすべてが、現在の全国のセールスを支える仕事に生きていると実感しています。

次の世代へ、営業の「型」をつなぐ

今ではサントリー営業のトップランナーとして、経験を次世代へつなぐ菊池さん。その原点をたどると、飲食店で働きながらサントリーの営業に憧れていた学生時代に行き着きます。

菊池さん:大学時代は4年間、梅田や神戸のダイニングやBARでアルバイトをしていました。お酒そのものというより、お酒があることで生まれる外食の空間が好きで、そのまま飲食の道に進むのもいいかなと思っていたくらいです。

そんなアルバイト先にも、サントリーの営業の方がよく来ていました。オーナーとフランクに話しながら、サッと商談をまとめて帰っていく姿が「あ、なんかイケてるな」と思ったのが、サントリーで営業をやりたいと思ったきっかけですね。

学生時代、神戸のカフェバーでシェイカーを振る菊池さん。

そんな思いを胸にサントリーに入社してから、20年超。担当する仕事はかたちを変えながらも、そこで培った経験と営業の「型」を、今は若手の育成へとつないでいます。

菊池さん:セールスそれぞれに、経験や個性を活かした営業のやり方があります。ただ、それを一人ひとりの経験や勘だけにとどめてしまうのではなく、学べる部分は共有していくことも大切です。「このタイプのお客様にはこんな商談の進め方が有効だった」「こんなアプローチで関係を築けた」といったそれぞれの経験を「型」として整理し、次の世代に伝えていく。それも今の自分の役割だと思っています。

逆に今、いちばん頼もしく思っているのは、自分とは違う営業スタイルで結果を出す若手セールスの存在ですね。「こんなやり方で社長との接点をつくるのか!」「こういう伝え方が刺さるのか!」と驚かされることもよくあります。相手の価値観や時代に合わせて、営業のやり方も柔軟に変えていく必要があると思っています。

現部署のメンバーと、大阪・関西万博にて。

菊池さん:一方で、変えてはいけないものも、もちろんあります。サントリーでは「飲用時品質」という考え方を大切にしていて、お客様が実際に飲む、その瞬間の品質がいちばん重要だと考えています。その思いをどこまでお店の人に伝えられるか、その先にいるお客様にどう最高の一杯を届けるか。時代ややり方が変わっても、そこだけは変わらないと思っています。

実はこの間、東京の小さな老舗を訪れたときに、これまでの人生で最高においしいと思えるような鯨肉と枝豆をいただいたんです。お店に入った瞬間の凛とした雰囲気、一品一品へのこだわり、そして帰り際には、大将がていねいに外まで見送ってくれて。「ああ、飲食店のよさって、こういうことなんだな」と、すごく幸せな気持ちになりました。

これまでの経験を糧に、「いつか自分でも、サントリーの工場の近くでそば屋をやりたいですね(笑)」。

菊池さん:営業の手法も、外食を取り巻く環境も、この20年の間に大きく変わりました。それでも、目の前の人に興味を持ち、その店を知り、その先にいるお客様の喜びまで考えることは変わりません。そして、そのヒントを拾える場所もまた、いつも「現場」でしたね。

「現場に何かが落ちている」――菊池さんが長年持ち続けてきたその感覚は、今日もどこかの店の暖簾をくぐる原動力になっています。

※社員の所属・役職、内容は取材当時のものです。
編集:サントリーホールディングス株式会社 人財戦略部

【サントリーのトップランナーにまつわる記事はコチラ!】

菊池 陽平

菊池 陽平Yohei Kikuchi

サントリー株式会社
営業統括本部 業務用営業推進部 MD推進担当部長

2004年、サントリー株式会社入社。新卒で山陰支店に配属され、業務用営業を担当。2009年より横浜支店で業務用酒販店営業、地場チェーン営業を担当。2014年からはグルメ開発部にてドリンク開発・業態開発・営業サポートに従事し、2019年より市場開発本部にて全国チェーンの営業を担当。2024年4月より営業推進本部(現・営業統括本部)業務用営業推進部にて、全国のセールスに向けた業務用取組施策の開発やチェーン企業へのサポートなどを担う。

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