2026.06.29

想定外のキャリアが、世界につながる。サントリー人事が語る、"グローバルで働く"人材戦略

想定外のキャリアが、世界につながる。サントリー人事が語る、

ジャーナリスト志望だった学生時代を経てサントリーに入社し、想定外の異動や挑戦を重ねながら、人事部門で活躍するサントリーグローバルスピリッツの大村太朗さん。営業、人事、そして海外赴任というキャリアの軌跡と、グローバルで活躍するサントリアンに求められるスキルやマインドについて伺いました。

「やりたいこと」以外でも、キャリアは動き出す

小学校時代の塾の先生に「太朗はいつかジャーナリストになる」と言われ、大学ではメディアを専攻して学んだ大村さん。しかし、東日本大震災の影響で就職環境が激変し、方向転換を余儀なくされます。

大村さん:当時震災の影響もあり、就活の方向性を軌道修正することにしました。そんななか、採用の過程で出会った社員の皆さんがとても魅力的だったことが、サントリーへの入社の決め手です。皆さんフラットな人柄で楽しそうに働かれていたことと、何より自分が手がけたものが「かたち」として残る仕事にも惹かれました。

現在はニューヨークに駐在し、グローバルタレントマネジメントを担当している大村太朗さん。

入社後は大阪に配属され、1年間のOJTを経て、サントリーフーズ株式会社 近畿支社で近畿エリアでの自販機営業を担当。「東京育ちの自分にはこれまで縁がなかった土地での4年間でした」と当時を振り返ります。

大村さん:正直、この時期は自分の仕事にあまり手応えを感じられていませんでした。自販機の市場自体が厳しい状況にあったこともそうですが、セールスとしての自分に対してどこか自信が持てず、言われたことをなんとなくこなすような「受け身」な仕事ぶりになっていたような気がします。

ただ、そうしたなかで「関西限定オリジナル缶」の開発プロジェクトにメンバーの1人として参加させてもらったことが、自身のなかでの大きな転機でした。社内の事業提案のコンテストに当時の自販機セールスチーム主導で応募し、マーケティング部門とも連携してプランを作成、担当役員に答申していきました。自販機がより身近な関西の工場やオフィスのお客様をターゲットに、アンケートやインタビューを重ねながら、大容量で甘さが際立つ「とろけるカフェオレ」という商品の提案に至りました。

現場ならではの視点を加えながら、甘さや容量にもこだわって設計した関西限定商品を発売。

大村さん:当時はあまり前例のなかったエリア限定・自販機限定商品ということで、売上は好調でした。自販機で実際に扱っていただく得意先の方々にも会社としての本気度が伝わり、喜んでもらえたことがうれしかったです。もちろん、この商品ひとつでマーケットが大きく変わるわけではありませんが、自分のなかで「能動的に動くこと」の重要さに気づくことができた経験でした。

人事の仕事は、会社の未来を描くこと

2017年には、東京の人事部門に異動。「このまま営業畑でキャリアを積んでいくのだろう」と予想していた大村さんにとっては、青天の霹靂の配属だったといいます。

大村さん:人事部門のイメージは「新卒採用」や「人事異動」ぐらいで、具体的にどんなことをやるのかもわからないなかでの異動でした。実際の担当は労務で、社員の皆さんの労働時間の管理などを行うのですが、正直、はじめは仕事の面白さを理解しきれていませんでした。

当時は日本全体で「働き方改革」の機運が高まっていた時期だったので、生産性向上のナレッジサイトの立ち上げや、削減した時間を有効活用するためのプレミアムフライデー、社員の学ぶ風土を醸成するプラットフォームサイトの推進なども行っていました。それでもやはり、はじめの半年ぐらいは「人事の面白さってなんだろう?」という疑問に、自分なりの答えを見出せずにいた気がします。

人事配属後は、「慣れないExcelの関数を覚えるところからのスタートでした」。

そんな迷いがなくなったのは、労務を担当して1年が経とうとしていたときです。人事側の担当者として春季労使交渉の場に参加したことが、人事という仕事への意識を大きく変えることになります。

大村さん:春季労使交渉は、もちろん労働条件の交渉の場ですが、同時に経営と組合が、「会社を良くするため」にどうするか、熱い想いを持って議論を交わし、未来を考える場でもあります。この、”ヒト対ヒト”の世界を見たときに、「人事が存在する意味」が初めて腹落ちできた気がします。

そんな人事の醍醐味を知り始めたタイミングで、株式会社ジャパンビバレッジへの異動の辞令を受けた大村さん。就業規則や給与体系をはじめ、4000人規模の企業の人事基盤を一から設計しなおすという大仕事でした。

大村さん:猛烈に仕事をした濃密な4年間で、私たちがつくる人事の仕組みが、社員の皆さんの生活やキャリアに直結するだけに、責任も重大でした。ジャパンビバレッジ社はサントリーの仲間になったばかりの転換期にある会社でもあり、将来のキャリアや行く末を心配する社員の方も多くいました。それに対してどう誠実に向き合い、社員と経営、双方に良いかたちをつくり出すかが、いちばん大変でした。

「人事は人と誠実に向き合い、現場と一緒に考え、双方向でコミュニケーションすることが大事です」と大村さん。

大村さん:そんななかで、「会社がすごく良くなっている」「人事のおかげで会社が前に進んでるね」という声を聞いたときは、頑張った甲斐があったととてもうれしく、大きなやりがいを感じました。だんだん「自分は人事の仕事が向いているのかもしれない」と思うようにもなりました。

その後は、人事異動・評価・昇格などに関わるタレントマネジメントを担当。キャリアを積むなかで、人事としての軸が定まっていったといいます。

大村さん:人事は、ときに経営と社員の双方から相反する要望を受けることもある仕事です。そこで問われるのが「バランス感覚」と「未来志向」で、それぞれの声を聞きながら、一歩引いてものごとを見ること、そしてその仕事が10年後や20年後にどうつながるか考えること。その軸をしっかり持っていることが何より大切で、自分も常にそういった考え方ができるようになりたいと感じています。

世界で活躍するための、"サントリアン"という専門性

人事の仕事の面白さに目覚めた大村さんに、海外赴任という新たなチャンスが訪れます。約1年間の研修を経て、 2025年4月よりニューヨークへ赴任。現在は、サントリーグローバルスピリッツのHR部門に所属しながら、グループ全体の海外駐在員のタレントマネジメントに従事しています。

海外研修制度などの成長機会を通じて、サントリアンの活躍の舞台は世界中に広がる。

大村さん:もともとは海外にはまったく興味がなく、学生時代、英語はいちばんの苦手科目だったぐらいです。しかし「自分の枠をもうひとつ飛び越えるようなことをやってみたらどうか」と当時の上司に言われたことがきっかけで、海外という選択を意識するようになりました。

サントリーには海外へのキャリアパスにつながる制度が複数あるのですが、私の場合は「未来経営塾」という選抜研修に指名いただいたことが、今回の海外赴任につながりました。自分の実体験を通じながら、現在はグローバルトレーニー制度やキャリアオーナーシップに関わる研修など、次世代のグローバル人材育成施策の企画にも携わっています。

大村さん:今の仕事で感じている課題は、海外と日本とでは雇用慣行が異なり、こちらはジョブ型という考え方が根底にあるなかで、日本の人事ローテーションを中心としたタレントマネジメントの仕組みを、現地の理解を得ながら海外の仕組みとどう融合させていけるかということです。我々としては、日本のサントリーを経験した人材が海外で働くことで、グループの成長をどう加速させていけるかを長期の視点で考えています。

なぜこの部署に、日本から来たこの人材が配属されるのか。その意図や価値を相手に伝わるように話し、現地を巻き込んでいきたいと思っています。将来的には、海外と国内、両方の目線を持てる人事として会社に貢献するのが目標です。

ニューヨーク滞在中の大村さんと、現地のチームメンバー。

海外志向の強い若手社員や就活生から、「海外に行くにはどうしたらいいですか?」と質問されることも多いという大村さん。その答えはシンプルだと語ります。

大村さん:結局のところ、いちばんの近道は目の前の仕事を頑張ることだと思います。もちろん語学力も大切ですが、それだけなら日本から社員を派遣する意味として十分ではありません。現地の社員と混じっても価値を発揮できるような仕事の軸を持っていることが重要です。

同時に、サントリーが積み上げてきた生活者起点での発想、品質へのこだわり、様々な人を巻き込む仕事のやり方といったものを体現して伝えられる「サントリアンとしての専門性」の発揮こそ、日本から社員を送り込む価値だと思っています。そして、私自身の経験からも、それらを身につけるチャンスは目の前の仕事を頑張ることでしか舞い込んでこないと感じます。

営業、人事、そして海外赴任と、想定外のキャリアを歩んできた大村さんには、そのなかで得た気づきがあります。

大村さん:どこに行ってもやりたい仕事だけできるわけではありませんし、私自身、もちろん海外に来てからも含め、大変なことや、迷ったり後ろ向きになったりすることもたくさんあります。でも、自分の仕事を面白くできるのは、自分しかいません。

最初から明確なキャリアプランがなかったとしても、さまざまな成長機会を通じて、目の前の仕事に向き合い続けることで、点がどこかで線になり、思いもよらない挑戦につながっていく。サントリーは、そんな“余白”がある会社だと思います。

※社員の所属・役職、内容は取材当時のものです。
編集:サントリーホールディングス株式会社 人財戦略部

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大村 太朗

大村 太朗 Taro Omura

サントリーグローバルスピリッツ
Global Talent & Development (サントリーホールディングス株式会社 人財戦略部 兼務)

2013年入社後、サンリーブ株式会社に配属。2014年よりサントリーフーズ株式会社 近畿支社第二支店で自動販売機営業を担当後、2017年よりサントリー食品インターナショナル管理本部で労務・働き方改革推進に従事。その後、株式会社ジャパンビバレッジ(現 サントリービバレッジソリューション株式会社)の人事基盤構築に約4年携わり、2022年からサントリー食品インターナショナル株式会社人財戦略部でタレントマネジメントを担当。2025年4月より現職にて、ニューヨークを拠点にグループ全体の海外駐在員のタレントマネジメントおよびグローバル人材育成施策の企画・推進を担う。

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