天然水の森 近江
「天然水の森 近江」は「サントリー(株) 近江エージングセラー」の水源涵養エリアに位置しています。この森では、さまざまな分野の専門家と共に整備を進めています。
このページでは「天然水の森 近江」の取り組みをご紹介します。
最終目標は、生物多様性豊かな針広混交林。
100年後の理想を目指して人工林の利用間伐を推進中。
この森は、全国の「天然水の森」の中でも、スギやヒノキの人工林率が高いため、整備のための作業道を高密度で開設しています(総面積約191ヘクタールに対して、約32,000メートル)。
1回目の間伐材を使って土壌流出を防ぐ土留め工は、すでに全面積で終了し、現在は、2回目の搬出間伐を進めています。
100年後の理想の森は、針葉樹の巨木と、さまざまな広葉樹が混じりあう針広混交林ですが、理想の実現のためには、まだまだ何回も搬出間伐を繰り返す必要があります。
間伐した木を森から搬出
なお、搬出した材は「育林材」としても大切に利用しています。
育林材の活用例:日野町立保育所こばと園の椅子と本棚
伐採した木の有効活用(育林材)を見るこの活動に携わる専門家
田邊 由喜男
森杜産業 代表
長谷川 尚史
京都大学 准教授
この森でも、最大の課題はシカの採食圧
2010年に、私たちがこの森の整備を始めた頃、すでにシカたちは、好みの草や低木(嗜好性植物といいます)をほぼすべて食べ尽くしていました。そのため、わずかに生き残った嗜好性植物を守るために、植生保護柵を設置、必要に応じて、柵内に植樹も行いました。
また、柵の外では、すでに丸裸になりつつあった地表からの土壌流出を防ぐために、 複数の不嗜好性植物を植栽する実験を始めました。ミツマタ、アセビ、ウリハダカエデ、オオバアサガラ、イワヒメワラビ、オオバノイノモトソウ…といった、通常ならまず食べられることのない植物群でしたが、この森ではウリハダカエデが普通に食べられてしまい、オオバノイノモトソウも枯れることはないまでも、かじられてしまっています。
地元の猟友会の皆さんも頑張ってくださっていますが、まだ道半ばです。
とはいえ、間伐が進んで明るくなった地表には、不嗜好性植物が繁茂するようになり、当面の土壌流出は、防止できています。
地表を不嗜好性植物が覆っているスギ林(左)とヒノキ林(右)
理想の森に近づけるためには、不嗜好性植物の間からさまざまな広葉樹が育ち始める必要があります。そんな日が一日も早く訪れることを願って、地元の皆さんと共に頑張り続けるつもりです。
この活動に携わる専門家
服部 保
兵庫県立大学 名誉教授
株式会社里と水辺研究所
協定地の詳細情報
- 所在地
- 滋賀県蒲生郡日野町大字蔵王/音羽
- 面積
- 約191ha
- 協定年月
- 2010年12月
- 協定期間
- 30年
綿向生産森林組合(滋賀県蒲生郡日野町)および滋賀県、滋賀県蒲生郡日野町と「琵琶湖森林づくりパートナー協定」を締結。
「天然水の森 近江」は2023年に「自然共生サイト※」に認定されました。
※環境省が認定する、民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域の名称