SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2008年1月23日

#134 野村 直矢 『トニー・ブラウンに勝ちたい』

◆環境の変化に弱い

スピリッツ 画像1

—— NEC戦の前、「エル(アラマ・イエレミア/元バックスコーチ)が試合を見に来るので、成長した姿を見せたい」と言っていましたが、見せられましたか?

見せられなかったです。NEC戦は練習の成果が出せなかったです。

—— どういうところが出せませんでしたか?

僕は環境の変化に弱いと思います。開幕の東芝戦もでは雨が降っていたり、NEC戦も風がめちゃくちゃ強かったり、そういう状況になると練習で出来ていたことが、上手く出来なくなってしまいます。例えば、キックも向かい風だと全然飛ばないですし、パスは風上でも風下でも、ハーフからもらうボールをキャッチするのが難しくなって、投げるのも難しいので、リスクがあるなぁと思って堅いプレーになりがちで、チャンスを潰してしまうことが多かったです。

スピリッツ 画像2

—— ニュージーランド人の選手は「風は当たり前」と言っていますが、昨年の春にニュージーランドに遠征に行った時にそういう経験をしませんでしたか?

しましたね。風が強い日もありました。でも、遠征で行っていたのはクラブチームだったので、特にミーティングとかもありせんでしたし、合同練習もあまりありませんでした。レベルの高い選手は春のクラブチームのリーグ戦が終わってから、代表やNPCとかの上のリーグでやるんです。何人かすごい選手もいたんですが、そういう練習は特にやりませんでした。

—— 風がなければもっと良いプレーが出来たと思いますか?

どうですかね。そこが問題ですね。環境が変わったとしても、視野をしっかり広く持てるプレーヤーになりたいですね。ですが、雨の開幕戦や、この前の風の強い試合に出させてもらったことで、いい経験はできましたし、自分の悪いところも分ったので、次に繋がると思います。

—— ここのところずっと10番でゲームメーカーとして試合に出ていますが、怒られてばかりだそうですね(笑)

はい。去年は試合に出てもアップアップでした。試合に出るごとに段々自信をつけていったというところでした。NEC戦もそうですが、いい経験をして、また次に繋がるというと思います。

—— NEC戦を見て、エルは何か言っていましたか?

…特に(笑)。試合が終わってからすぐでは、パッと見てのことしか分からないですからね。ビデオで見て分かってくる部分がたくさんあります。

◆キックは自分の武器

スピリッツ 画像3

—— ビデオは見ましたか?

はい。毎試合ビデオは見ています。いつも試合が終わってから4回くらい見ています。「明日ミーティングでここ言われるんだろうな」って思うところがいっぱい見つかります(笑)。良かったプレーをミーティングで誉められるということはあまりないのですが、悪かったところはやっぱり言われます。試合中プレーしている中では、「リスクを背負いたくないと思って、こういう風にやった」という部分があるんですが、やはり指摘されると、確かにそうすれば良かったと思います。

—— 良かったプレーはありましたか?

NEC戦では全然なかったですね。今までの全部の試合の中では、自分なりにここが良かったなというプレーはあったりします。

—— 今は悩んでいる状況ですか?それとものびのび出来ているという感じですか?

悩んではいないですね。NEC戦も終わってから悩んだというよりは、あぁいう環境でやって、良い経験になったと思っています。次に繋げよう、繰り返さない、今はそういう風に思っています。あまり悩んだりはしないですね。答えが明確になっているので、次に繰り返さずに繋げようと思っています。

—— キックの精度は上がりましたか?

そうですね。キッキングコーチが来ていた時から1か月か2か月くらいは、キッキングフォームを変えたりしたので調子が上がらなかったんですが、今は教わったキックでしか蹴れなくなったし、教わる前より良くなったと思います。ミスキックが少なくなりましたね。ボールにしっかり当てられるようになりました。キックはこれからも自分の武器として伸ばしていきたいです。

スピリッツ画像4 スピリッツ画像5

◆今はゲームコントロールが全て

—— パスの方はどうですか?

パスは速くて良いパスを投げたいと常々思っています。

—— いま自分のイメージに対してどれくらい出来ていますか?

一言で「こういうパス」というよりも、ゲームをマネジメントする力を身につけていきたいと思っています。自分のイメージに対しては全然届いてないです。ラグビーの試合では局面局面で必ず状況が違うので、そこに繋がるように練習から意識してやっていくようにしています。例えば、こういう時はカットパス(ライン攻撃時の飛ばしのパス)を出さない方がいいとか、フォワードが良いボール出したからここは速く外に出す、とかですね。

スピリッツ 画像6

—— それはプレーの前にいろいろなパターンを想定しておくということですか?

もちろんそうです。例えばスクラムの場面では、「ここでゴーフォワード(前進)して、良いボールが出てきたら上手くバックスを使いたい」とか、「スクラムがあまり押せなかったらこうする」とか、先を考えるようにしています。

—— 環境が変わると上手くプレー出来なくなるというのは、私生活でも同じですか?例えば普段と環境が変わると寝られないとか。

そういうところはあまり関係ないですね。単純なプレー環境です。風とか雨ですね。

—— キック、ゲームコントロールの他に課題にしていることは何ですか?

今はゲームコントロールが全てですね。チームの勝利に繋がるゲームコントロール、周りをどう活かすかの判断です。強いフォワードを活かすのも、バックスを活かすのも、僕の判断になってきますから。

スピリッツ 画像7

—— 今のチーム状態はどう思いますか?

三洋に負けたり、コカ・コーラに負けた試合もそうですけど、特に三洋の試合ではセットプレーもほとんど勝っていたのに、そのアドバンテージを活かしてゲームコントロールが出来なかったです。今はフォワードのアドバンテージを活かしつつやるというチームの方針が、だんだん出来てきています。そういう中でNEC戦は僕がネガティブなプレーばかりしてしまったので、反省しきりです。

でも、10番としては「ここでこうすれば良かった」というのは常に持っていないと、上手くなっていかないと思いますし、「今日の試合最高だった」で終わったら、それ以上レベルは上がらないと思います。

—— これからリーグ戦の残り、強豪と当たりますね

もちろんベスト4入りは当たり前ですが、個人的にはトニー・ブラウン(三洋電機)に勝ちたいです。キックのエリアマネジメントも負けたくないですし、ゲームコントロールも負けたくないです。

—— 課題は?

ゲームマネジメントに尽きます。

◆「サントリーのラグビーは面白い」と言ってもらえるように

スピリッツ 画像8

—— ゲームマネジメントをする上では、試合中にかなりコミュニケーションを取るんですか?

そうですね。フェーズのサイン、野球に例えれば、ストレートがあって、カーブがあって、変化球があって、どれを使うかです。セットプレーからの攻撃を仕掛ける時などに、僕もそれを判断しますし、9番も判断しますし、8番も判断します。そのみんなの判断がそれぞれのパートで一致した時は良い攻撃ができますし、そうでない時はダメですね。

—— それが一致する確率は上がってきてますか?

練習で、真ん中でスクラムの時はこうやって攻めるとか、こういう時はこう攻める、ということをやっていますので、ミスすることもありますが、その辺の意識はある程度共通していると思います。

—— 今の心境は?(インタビューはNEC戦の翌週に行いました)

モヤモヤとしています(笑)。先週の試合(NEC戦)のせいで…。三洋に負けた試合もそうですし、先週も勝ちましたけど悔しい思いをしました。もっとスコア出来た場面がありましたが、風が強くて長いパスは投げたくないという気持ちがありました。あれだけの風だとパスを受ける方も投げる方も難しいんです。そうやってリスクを背負わず安全に安全にやっている中で、チャンスを潰してしまうことが多かったですね。ああいう環境の中でもここはチャンスを活かさないといけなかったな、という部分がたくさんありましたね。なんか僕がこんな難しい話しても、話がぐちゃぐちゃになっちゃいますよね(笑)。

—— そんなことないですよ(笑)。ファンの方へメッセージをお願いします

とにかく試合に出られるように頑張って、出られたら強いフォワードと速いバックスを活かすゲームマネジメントをしていくのでそこを見てください。「サントリーのフォワードは強い」、「サントリーのバックスは速い」、「サントリーのラグビーは面白い」、そう言ってもらえるプレーを見せられるように、ゲームマネジメントしていきたいと思います。

スピリッツ画像9 スピリッツ画像10

(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

一覧へ