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これまでの社会との対話

人権・労働慣行

サントリーグループでは、ステークホルダーの人権・労働慣行に関わる施策をCSR経営の基盤と位置づけ、組織風土として浸透するよう注力しています。そして、グローバル展開する中で、国際社会が特に重視するこの主題への理解を深めるため、専門家の熊谷謙一氏をお招きし、取り組むべき課題について話し合いました。

人権の実践課題

デューデリジェンス/人権に関する危機的状況/加担の回避/苦情解決/差別および社会的弱者/市民的および政治的権利/経済的・社会的および文化的権利/労働における基本的原則および権利

労働慣行の実践課題

雇用および雇用関係/労働条件および社会的保護/社会対話/労働における安全衛生/職場における人材育成および調練

  • 開催日:2012年3月30日 場所:サントリーワールドヘッドクォーターズ(東京都港区台場)

有識者

NPO法人日本ILO協議会 編集企画委員 元ISO/SR 国際起草委員
熊谷 謙一氏

自動車会社に入社後、旧労組ナショナルセンターで教育・組織・雇用などを担当。1989年に日本労働組合連合会(連合)本部に移り、労働法制対策局長・国際局長を歴任し、2005年に経済政策局長に就任。
2009年から公益財団法人国際労働財団副事務長。この間、日本政府の審議会・部会委員、ISO/SRの国際起草委員を務める。日本ILO協議会 編集企画委員。

サントリー

有竹 一智
サントリーホールディングス(株) 常務執行役員 人事本部長 グローバル人事部長
折井 雅子
サントリーホールディングス(株) 執行役員 CSR推進部担当
平井 弓子
サントリーホールディングス(株) 人事本部ダイバーシティ推進室長
村上 元成
サントリーホールディングス(株) グローバル人事部 部長
富田 眞人
サントリーホールディングス(株) コンプライアンス室長
北桝 武次
サントリーホールディングス(株) CSR推進部長

国内におけるサントリーの取り組みと課題

サントリー
人権については、サントリーグループでは、人権擁護や法令遵守をCSR経営の基盤の1つと位置づけており、企業倫理綱領を記した小冊子「OUR VISION」を全社員に配布し、年1回、職場教育の中で冊子巻末の宣言書への署名を義務づけています。推進体制としては、8事業会社と国内グループ会社にリスクマネジメント推進責任者を配置し、グループリスクマネジメント委員会がグループ全体を横串にして統括管理しています。また、人権や労働慣行を含むコンプライアンス違反に関わるチェック機能としては、国内を対象に内部通報制度が機能しており、通報の対象者を社員から派遣・請負会社社員、さらにお取引先の一部に広げ、約120件(2011年実績)の案件を取り扱っています。
  • 2009年4月にサントリー(株)が純粋持株会社制への移行した際にできたサントリーホールディングス(株)、サントリー食品インターナショナル(株)、サントリープロダクツ(株)、サントリーウエルネス(株)、サントリー酒類(株)、サントリービア&スピリッツ(株)、サントリーワインインターナショナル(株)、サントリービジネスエキスパート(株)の8社
熊谷
まず、評価できるのは「差別の禁止」を明文化し、「OUR VISION」の宣言書に社員が署名する手法です。倫理綱領はポケットや机の引き出しに眠らせがちですが、折に触れて再確認し、自らの手でサインすることで腹に落ちてきます。また、グループ全体を統括管理する委員会があり、2年に一度、国内グループ社員を対象にコンプライアンスの浸透度調査を行っていて、PDCAがきちんと回っている印象です。特に内部通報制度の利用件数が年間約120件あり、その内容にもよりますが、制度が健全に機能していることがうかがえます。

<以下、特に記載がない箇所は主として8事業会社に勤務するサントリーホールディングス(株)籍の社員について記載しています>

サントリー
労働慣行に関してですが、まず、ダイバーシティを重要な経営課題の1つと位置づけ、「女性の活躍推進」「障がい者雇用の促進」「定年退職者再雇用制度の拡充」「外国人の採用や海外グループ会社との人材交流」といった取り組みを精力的に進めています。また、ワークスタイルを革新し、社員のワークライフバランスと事業の成長を目指す取り組みにも注力しており、その1つとして積極的に推進しているテレワーク勤務は、東日本大震災の影響も一部あるものの、利用者が294名(2010年)から、2,079名(2011年)に拡大しています。
こうした制度の拡充に加え、定期的に労使協議会を開催し、労働課題から経営・事業課題まで労働組合と密接に話し合い、経営層も組合の指摘事項には、真摯に対応しています。
熊谷
日本の企業の多くが抱えている労働面での課題に正面から意欲的に取り組んでいる印象です。特に労使でしっかりと話し合いをしている点については、「労働条件および社会的保護」「社会対話」における企業における好事例として、もっと海外に向けて積極的に開示してはどうかと思います。
サントリー
私どもは、ややもすれば日本の制度を前提とした考え方をとりがちなのですが、海外の視点から日本を見たときに留意すべき点などをアドバイスいただけますか。
熊谷
日本には非正規社員の問題があります。たとえば、「同一価値労働同一賃金」という考え方があり、男女間や正社員・パート間といった雇用形態に関わらず、異なる仕事でも労働の「価値」が同等ならば同等の賃金を支払うというものです。日本と欧米では制度が違うので同じ対応は難しいでしょうが、それを補うものとして、賃金などの労働条件に加えて非正規社員への技能向上支援(エンプロイアビリティ)や彼らが利用できる制度の拡大なども考えられます。その観点からいえば、非正規社員向けの教育研修や福利厚生制度の利用範囲も開示してほしいですね。
ワークライフバランスについては、3月にISO26000がJIS規格化され、そこでも取り組み強化を求めています。旧サントリーから分社化した8事業会社では取り組みが進んでいるようですが、国内グループ会社ではいかがですか。
サントリー
国内グループ会社は業種・業態が多種多様なことから、一律では進められない難しさがありますが、ワークライフバランスの実現は、サントリーに集う一人ひとりが、企業人としてはもちろん、家庭人として、社会人としても「Good Person」となるために重要なものだと考えていますので、今後もより一層取り組みを進めていきます。
熊谷
その働き方に密接に関連するのがメンタルヘルスですが、日本国内の問題としては重要な課題の1つで、各企業の産業医の方々も対策強化を最重視しています。
サントリー
当社もメンタルヘルスケアは重要と考え、早期に兆候を察知するため、社員本人がストレスに気づいて対応する「セルフケア」、マネジャーによる職場環境改善や個別相談の実施などの「ラインケア」の強化を基本に、二重・三重のセーフティネットを整備しています。また、8事業会社のみならず、国内グループ会社においても、産業医の拡充など積極的に活動を進めています。人事部門では異動配置を決める際にも、個々の事情も勘案するようにしています。今後の強化策として、健康診断の一環としてのメンタルヘルス診断も計画しています。
熊谷
メンタルヘルスケアの充実は、労働者が安心して働くために不可欠な要素なので、他社の手本になるような施策をお願いします。グローバル化の進展につれ、海外赴任者のメンタルヘルスが問題になるケースが増えてきています。赴任した社員が本社の経費負担で、日本の産業医に直接電話で相談できる体制を敷いている企業もありますから、そういった事例も参考にされるといいでしょう。

グローバルに展開する上で配慮すべき人権・労働慣行の課題

サントリー
グローバル化については、たとえば海外勤務者数が2007年の2倍に達するなど、その動きが急速に進む中で、グローバル人材やリーダーの育成のために、トレーニー、キャリアチャレンジ、ビジネス留学、グローバルリーダーシップ研修などのさまざまな活動を実施しています。また、外国人や留学生の採用にも注力しています。海外にゼロから工場や事業所を立ち上げるのではなく、合弁やM&Aなどでグループ化した現地企業と連携してビジネスを進める動きが主流なのですが、特にグローバルにおける人権・労働慣行で配慮すべきは、どのような点ですか。
熊谷
やはりサプライチェーンにおける児童労働や安全衛生です。自社が人権侵害を起こさないだけでなく、加担行為を回避することが重要です。人材や労務を扱う現地の代理店にサプライチェーンのデューデリジェンスを任せてしまい発見が遅れ、問題が大きくなってしまったケースもありますので、現地に赴いて直接確かめる機会をつくることができればベストです。また、現地の法律はもちろん少数民族の尊重や文化・宗教上の慣習にも気を配る必要があります。
サントリー
現地で注意すべきことなど、どのように情報を収集すればよいでしょうか。
熊谷
現地固有の文化や労働問題に関する情報などについては、日系企業が現地で商工会を組織して、労務問題の事例や対策を研究していますし、JETRO(日本貿易振興機構)も有益な情報をもっています。サントリーグループのオランジーナ・シュウェップス社はフランスに拠点をもちCSRに熱心に取り組んでいるそうですが、フランスは日本と並んでISOに熱心な国ですし、そのような企業ならば新興国市場での経験も豊富でしょうから情報共有や協働することでシナジー効果も期待できます。
サントリー
言語・習慣も違い、日本と異なる人事制度を運用している海外グループ会社やサプライチェーン現地法人に対して、人権・労働慣行の問題点を点検する難しさも感じています。ISO26000を活用しながら取り組みを改善するということを考えたときの留意点を教えてください。
熊谷
ISO26000は認証規格ではなく、ステークホルダーの参画を重視するガイダンス規格ですので、全体を見る中から、課題を順次絞り込み、今年はこの是正に注力し、次はここを改善と次第に全体のレベルをあげていくことが重要です。そして定期的にグループ会社や調達先の工場を訪問することで、おのずと児童労働・強制労働のリスクや安全衛生の状況も確認できるはずです。
また、ISO26000の約250項目の中で、人権が危機的状況に陥っている1つの要因として、また環境の面からも、安全な水が手に入らないことを重視し、「水の危機」に関して21カ所も記述しています。サントリーは水の会社ですから、日本で蓄積した知見やノウハウをぜひアジアや世界への支援でも発揮していただきたいと思います。
サントリー
貴重なご提言をいただき、ありがとうございました。グローバルな展開については、基本スタンスを含めて、検討していきます。今後ともよろしくご指導をお願いいたします。

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