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これまでの社会との対話

「環境ビジョン2050」

サントリーグループは「環境ビジョン2050」の実現に向け、「自然環境の保全・再生」と「環境負荷低減」の両軸で環境経営を推進しており、行政や業界団体、研究者、NGOなど社外のステークホルダーとも積極的に連携し、その知見やノウハウを活動に活かしています。2014年5月に、生物多様性保全活動で豊富な経験をもつ日比保史氏を、「サントリー天然水の森 奥大山」、「サントリー天然水奥大山ブナの森工場」にお招きし、今後の活動のさらなるレベルアップに向けた貴重なご意見をいただきました。「天然水の森」での水源涵養活動による自然との共生や、工場でのエネルギー使用量削減・水使用量削減などの環境負荷低減の取り組みをご覧いただくとともに、「環境ビジョン2050」をテーマに「自然環境の保全・再生」「環境負荷低減」について意見交換を行いました。

  • 開催日:2014年5月19日~20日
  • 場所:「サントリー天然水の森 奥大山」-サントリー天然水奥大山ブナの森工場(鳥取県)

有識者

コンサベーション・インターナショナル・ジャパン 代表理事
日比保史氏

(株)野村総合研究所、国連開発計画(UNDP)勤務を経て、2003年より現職。グローバルな生物多様性保全を推進している。企業とNGOの連携、気候変動と生物多様性の関連性を専門とし、植林CDM方法論の開発に携わる一方、さまざまな企業との森林カーボン事業での連携に取り組む。

サントリー

内貴 研二
サントリーホールディングス(株) コーポレートコミュニケーション本部 エコ戦略部長
山田 健
サントリーホールディングス(株) コーポレートコミュニケーション本部エコ戦略部 チーフスペシャリスト
内藤 寛
サントリーホールディングス(株) コーポレートコミュニケーション本部 エコ戦略部部長
橋本 猛
サントリープロダクツ(株) 執行役員 天然水奥大山ブナの森工場長
北桝 武次
サントリーホールディングス(株) コーポレートコミュニケーション本部 CSR推進部長

Part 1:自然環境の保全・再生

サントリー
「天然水の森」は、私どもの環境活動の象徴と言える取り組みですので、サントリーの環境経営をご理解いただくために、体感していただくのが最適だと考えました。実際に「天然水の森」を歩いていただき、専門家である日比さんの眼には、どのように映ったでしょう?まずは率直な感想をお聞かせください。
日比
「天然水の森」の整備活動は、私の専門である生物多様性保全の分野でも、企業による優れた取り組みとして良く知られています。私自身、以前から体感してみたいと思っていましたので、大変良い機会をいただけたと思っています。実際に森を歩いてみて、「天然水の森」に懸ける思いを地域の方々と一緒になって実現していこうという意気込みが森に表れていて、本当に素晴らしい取り組みをされているなと思いました。
「天然水の森」の面積の拡大や、猛禽類(もうきんるい)が営巣できる生態系の実現など、新たな挑戦的な目標を掲げておられますが、それらもきっと実現されていくと期待しています。
サントリー
「天然水の森」では、地下水涵養のためにどんな整備が必要なのかを科学的に調査・検証しながら活動を進めています。その際に、最も重要なのは、雨水が地下に浸み込む入り口である「ふかふかな森林土壌」を、いかに守り、育てるかです。畑の土とは違って、肥料を施して耕すことなど出来ませんから、我々は、森の木々や動物たち、ミミズや微生物などといった、多様な生き物たちの力を借りて土を耕し、守っています。研究を進めれば進めるほど、生物多様性と水源涵養はイコールだという確信を深めています。ただ、森林は地域ごとに個性が全く異なりますから、この森でうまくいったことが、他の森でも通じるとは限りません。一つ一つの森を十分に調査して、それぞれの課題を抽出し、ふさわしい解決策を模索していかなければなりません。それを私たちは「森の健康診断」と呼んでいます。今回、ご覧いただいた「天然水の森 奥大山」は比較的、恵まれた自然環境にありますが、なかには地元のDNAにこだわった苗木づくりから始めないといけない森や、鹿に下草を食べられないよう対策を施さないといけない森もあります。自然が相手ですので長い時間が必要ですが、一つ一つ問題を解決しながら整備すれば、必ず森は反応してくれます。いろいろな工夫を凝らして取り組んでいきたいと思います。
日比
我々のような環境NGOの取り組みも同様ですが、「天然水の森」の大きな課題の一つが、地域の方々との信頼関係づくりだと思います。サントリーにとって大切な森だからといって、その森を守ることが地域の方々の負担になっては意味がありませんし、結局は長続きしません。森林を守りつつ、地域の方々の価値にもつながるという“共存共栄”を実現していくことが重要になります。それは非常に時間を要することですし、並大抵の苦労ではないと思います。
サントリー
確かに、私たちが地域の方々に「この森を整備したい」と申し入れた当初は、なかなか信頼されませんでした。しかし、サントリーが森林整備に関わることで、鬱蒼(うっそう)としていた森が目に見えてきれいになり、森林の価値が向上して、地域の方々の利益にもつながる。それがわかっていただけて初めて信頼していただけるようになりました。そうした“目に見える成果”を生み出すまでのスピード感というものも大切にしています。
日比
「天然水の森」を歩いた際に、現地の方々にお会いしてお話を伺いましたが、会話の端々からサントリーへの信頼感が伝わってきました。そうした姿勢を徹底するなかで、築かれてきたものなのですね。
サントリー
おかげさまで、各地の「天然水の森」で実績を積んだ今では、当初よりも信頼を得やすくなっており、今回、新たに設定した12,000haという「天然水の森」の面積拡大の目標は達成できるという手応えを感じています。その一方で、広がっていく「天然水の森」の整備の担い手をどう育成するかといった課題もあります。
日比
確かに、「限界集落」などと言われているように、国内の人口が減少するうえに、都市部に人口が集中するなかで、中山間地域で森林を守っていく人々が減少しています。今、挙げられた課題は、国内林業はもちろんのこと、日本の国土管理全体の課題と言えます。
サントリー
林業の低迷は、全国的に深刻な問題ですが、一方で、我々が提携している事業体の中には、優秀な若手が育ちつつあることも事実です。また優れたノウハウをお持ちの名人たちもたくさんいらっしゃるので、そうした方々のノウハウを、地域を超えて若手に伝えていただくようなこともしています。小さな一歩かもしれませんが、こうした活動を通じて、将来日本の林業を担う人材が育っていくお手伝いができればと考えています。
日比
なるほど。日本各地の林業の方々が相互交流するようなイメージですね。具体的には、どのような交流の仕組みになっているでしょうか?
サントリー
森林整備のための道づくりや、鹿柵づくりなど、さまざまな分野の専門家に、他の地域に行っていただき、技術伝承をしていただいています。その際、大切なのは、専門家自身がつくってしまわないことです。地域の方々に自分の手を動かしていただくことで、たとえ完成度は100点でなくても、技術やノウハウが培われていきます。「自分の取り組みが森林の価値を高めている」という自信にもつながるわけで、それが人材づくりにはとても大切なことだと考えています。
日比
「天然水の森」の活動が、地域林業の振興に加え、地元で働く若者の人づくりの機会にもなっているというわけですね。これは、「Iターン」の増加や、地域起こし政策など、近年の社会的な潮流とも合致しますので、サントリーの取り組みが、社会課題の解決にも貢献していけるものと期待しています。その一方で、サントリー社内での後進の育成というのも課題ではないでしょうか?「天然水の森」に同行いただいた社員の方の知見やノウハウは、とても一朝一夕で真似できるものではないと思うのですが。
サントリー
確かに、これまで培ってきた知見やノウハウを、どうやって次代に引き継いでいくかは難しい問題です。しかし、幸いなことに、各地の「天然水の森」には、国内トップレベルの社外の研究者や専門家の皆さんに参画していただいていますので、弊社の担当者にとっては、そうした方々と一緒に活動すること自体が、レベルアップの絶好の機会になっていると考えています。また、現在、「天然水の森」ごとに詳細な調査結果に基づく、目指すべき森の姿や整備方針などをまとめたビジョンを作っています。これらをベースに、社内外の関係者が一堂に会して議論することで次代の担い手となる人材が育つ機会になると考えています。
日比
地域の方々との信頼関係づくりにしても、次代の担い手づくりにしても、長期的な取り組みが必要になります。そうした取り組みができるのは、単なる社会貢献ではなく、本業と密接した取り組みとなっているからだと思います。
サントリー
まさにその通りで、「天然水の森」は、私たちの事業の根幹である「水」を守るという意味で、本業そのものだと考えています。だからこそ、森林所有者と数十年にわたる長期間の契約を結び、50年、100年先を見据えた整備計画を立て、活動をしています。こうした環境活動の意義を社内外で理解いただき、長期的なものとするためには、事業と結びつけたストーリーづくりが重要だと考えています。
日比
事業活動と環境活動を結びつけるストーリーは、さまざまな会社が苦労しているところですが、サントリーの取り組みが、その良い例になると思います。しかし、海外に目を向けると、また違った課題が見えてきます。例えば、近年のODAなどで求められているのが、国内と海外での取り組みのコヒアランス、すなわち首尾一貫性です。サントリーが国内で実践しているハイレベルな取り組みを、今後、いかに海外に展開していくかが、グローバル企業として認識されるための命題ではないでしょうか。
  • ODA(Official Development Assistance):政府開発援助
サントリー
その通りだと思います。ただ、水源を守る取り組みは日本においても試行錯誤をしながら行っている状態であることや、水を取り巻く環境は国・地域によって異なることなどから、海外展開にまでは至っていません。まずは野鳥保護活動支援をグローバルに進めるなかで、各地の現状や課題を把握していきたいと考えています。
日比
グローバルに「自然環境の保全・再生」を進めていく最初のステップとして「野鳥」を選んだ理由や意義について、少し詳しく教えていただけますか?
サントリー
野鳥はすみかの環境が悪くなると、他の環境のいい地域にすみかを変えるので、生態系のバロメータとして最適だと言われています。また、鳥は世界中で愛されていますので、その保護はグローバルに共感を得やすいと考えています。
日比
なるほど、野鳥は生態系が健全であることの象徴ということですね。野鳥保護に関しても、地域の方々と信頼関係を築いていくことが重要だと思いますので、「天然水の森」での経験というものが、非常に有効になると思います。将来的には「天然水の森」の考え方を海外にも展開していかれることを期待しています。

Part 2:環境負荷低減

サントリー
もう1つのテーマである「環境負荷低減」については、先ほど、工場内でさまざまな設備や取り組みをご覧いただきましたが、いかがでしたでしょうか?
日比
メーカーの工場内を拝見する機会はなかなかありませんので、非常に勉強になりました。環境負荷低減についても、工夫を凝らしたさまざまな取り組みを見ることができましたが、なかでも「水」の使用削減についての取り組みは、非常に先進的なものだと感じました。
サントリー
水は私たちにとって欠かせない資源ですので、「節水型のプロセス開発」と「水のカスケード利用」の両面から、使用削減に取り組んでいます。水のカスケード利用とは、製造工程で使用する水を、冷却水や洗浄水など清浄度によってグレード分けし、高いグレードが要求される用途から次のグレードでまかなえる用途へ段階的に再利用する技術です。
日比
一方で、CO2排出削減につながる施策としては、貯蔵した雪を夏場の空調などに活用する「雪室(ゆきむろ)」が印象的でした。寒冷地ならではの自然環境を活かして省エネルギーを実現するという意味で、まさに「自然との共生」と言えます。また、バリューチェーン全体でのCO2削減を掲げておられますが、工場での取り組みとはまた違った難しさがあるのではないでしょうか?
サントリー
バリューチェーンでのCO2削減を考える上で大切なのは、どの領域で最もCO2排出が多いのか、つまり削減対策のマテリアリティを見極めることです。弊社の場合、比率が高いのは「生産」「容器包装」「自動販売機」になりますので、これらを重点領域として取り組んでいます。例えば、容器包装では、ペットボトルにおいて、軽量化による資源使用量の削減と、使用済みのペットボトルをPET樹脂に再生する「ボトルtoボトル」の循環型リサイクルに取り組んでいます。
日比
これまで、ペットボトルのリサイクル先は繊維などが一般的でしたが、繊維としての使用後のリサイクルは限定的で十分とは言えません。ペットボトルを再びペットボトルとして使用する「ボトルtoボトル」は、何度も繰り返しリサイクルできますので、本当の意味での「資源循環」につながりますね。
サントリー
その通りです。また、ペットボトルは飲料容器として世界的に使用されていますので、日本での取り組みをグローバルに展開しやすいという利点もあります。例えばオランジーナ社では、日本の技術・ノウハウを活かして軽量化を実現したという成功例があります。こうしたグローバルでの技術の水平展開をもっと進めていきたいと考えています。
日比
これまで伺ってきた取り組みは、いずれも素晴らしいものだと思いますが、あえて提言差し上げるとすれば、現在、掲げられている目標に満足するのでなく、グローバルでもトップランナーを標榜できる、さらに高い目標に挑戦していただきたいと思います。特に環境負荷総量の削減目標の設定やオフセットを取り入れるなど、サントリーには環境先進企業として、世界をリードしてもらいたいという期待があります。
サントリー
おっしゃる通りで、今回、策定したビジョンや目標は社会や会社の変化にあわせて、見直していく必要があると考えています。
日比
環境経営におけるサントリーの強みは「天然水の森」を中心とした水への取り組みだと思いますが、水を守る「森林」には「CO2」を吸収・固定するという機能もあります。「水」だけでなく「CO2」もオフセットを含めた「カーボン・ニュートラル」の考え方を取り入れていただきたいと思います。もう1つのサントリーの強みが「環境コミュニケーション力」、すなわち、サントリーの取り組みがどのように地球環境に貢献しているのかを、消費者にわかりやすく発信していく力だと思います。前半の話題で「環境活動は事業と結びつけたストーリーが重要」との話がありましたが、そうしたストーリーを、社内や関係者だけでなく、広く一般に発信することで、消費者がより複雑化する地球環境問題への理解を深めるとともに、サントリーの環境活動に参加したいと思うような状態につなげていって欲しいですね。
サントリー
ありがとうございます。確かに、私たちだけの取り組みだけでは限界がありますので、多くのステークホルダーの方々と協同して進めていければもっと可能性は広がると思います。
日比
サントリーの環境への取り組みは、これからの日本に求められるものです。ただ、世界的には、グローバル・リーディング・カンパニーとしてのレベルに達する必要があると思います。そのことを自覚して、培ってきたものを広くグローバルに展開していって欲しいですね。グループの理念として「Growing for Good」を掲げておられますが、サントリーの事業活動によって環境が良くなる、さらに言えば、サントリーの商品を買うことで社会がよくなる。それが本当の意味での「Growing for Good」になると思います。これからのサントリーの取り組みに期待しています。
サントリー
ありがとうございます。ご期待に添えるよう、今後もグループ一丸となって取り組んでいきます。

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