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これまでの社会との対話

地域との共生(東日本大震災復興支援など)

サントリーは創業者の信念である「利益三分主義」に基づき、「事業への再投資」「お得意先・お取引先へのサービス」とともに、「社会への貢献」に積極的に取り組んできました。その一環として、この分野の専門家である黒田かをり氏をお招きし、東日本大震災の復興支援や国内外でのコミュニティ支援をテーマに意見交換しました。

  • 開催日:2013年4月19日
  • 場所:サントリーワールドヘッドクォーターズ(東京都港区台場)

有識者

一般財団法人 CSOネットワーク事務局長・理事
黒田 かをり氏

民間企業を経て、コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所、米国民間非営利組織のアジア財団に勤務。2004年から現職。日本のNGOエキスパートとしてISO26000の策定に参画。NGOと企業の連携推進ネットワークのアドバイザーなどを務める。CSOネットワークは社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワークの幹事団体。

サントリー

折井 雅子
サントリーホールディングス(株) 執行役員 コーポレートコミュニケーション本部 副本部長
北桝 武次
サントリーホールディングス(株) コーポレートコミュニケーション本部 CSR推進部長
伊東 博之
サントリーホールディングス(株) コーポレートコミュニケーション本部 CSR推進部課長

東日本大震災の復興支援への継続した取り組みについて

サントリー
私どもは東日本大震災の被災地支援にグループを挙げて取り組んでいます。漁船の取得支援をはじめとした「漁業支援」、水産高校生への奨学金プログラムなど未来につながる「子ども支援」、そして文化・スポーツを通じた支援などを実施しています。義捐金に関しては2011年(43億円)、2012年(20億円)に続き、2013年にも25億円の拠出を決めました。合計88億円の義捐金を有効に活用し、被災地のニーズを踏まえた復興支援に今後とも取り組んでいきます。
黒田
非常に早い段階から迅速に支援に取り組まれただけではなく、中長期的な支援を継続しているのは素晴らしいことです。東北の復興にはかなりの時間を要しますから、サントリーが継続して、しかもかなりの規模で支援を続ける意味は大きいと思います。
サントリー
復興には中長期にわたる支援が必要と考え、被災地に何度も足を運び、タイムリーなニーズの把握に努めてきました。復興は確実に進んできてはいますが、多くの被災者が避難生活を余儀なくされ、生活の場の再建など復興にはまだ時間がかかる現状を踏まえ、支援内容を拡大すべく、本年度も新たな拠出を決定しました。
黒田
震災発生から2年以上過ぎた今、支援を打ち切る企業もある中で、規模を拡大するというのは驚きです。しかも、「漁業」「子ども」「文化・スポーツ」を中心に、身近で具体的な支援活動を自ら主体となって企画し実行している点も評価できます。
サントリー
サントリーの復興への思いを込めた被災地に直接届く支援をしたいと考え、従業員アンケートを実施しました。その声をもとに、「漁業」「子ども」「文化・スポーツ」という重点的に取り組む3分野を決定し、具体的な支援内容を考えました。ただし、一企業だけでは活動に限界があるので、県・漁連・NPOなど関連する団体と連携しながら活動を進めるようにしています。また、従業員には活動内容や被災地での反響を具体的にタイムリーに伝えるように心がけています。
黒田
そうですね。漁業の復興支援などを通じて地元の自治体とのネットワークを築いたり、ファンドを立ち上げて子ども支援NPOの活動を助成するなど、他の団体と連携して進めているのは素晴らしいと思います。それと、従業員も大事なステークホルダーですので、今後とも一体となって進めていってください。
サントリー
漁業の復興支援は、岩手県・宮城県の協力を得て、県が支援するすべての漁船の取得費用を軽減するスキームを構築したことで、より有効な支援につながりました。また、福島県の子ども支援NPOの助成を目的とした「フクシマ ススム ファンド」を設立し、2013年度は88件の応募の中から15件を助成先として選考させていただきました。この選考を通じて、福島の子ども支援の課題の広さと深さを認識するに至り、次年度からは規模を拡大して実施することを決めました。
黒田
サントリーは復興支援に限らず、未来を担う次世代への支援に力を入れていますね。
サントリー
サントリーの源流には創業者・鳥井信治郎の強い信念でもあった「利益三分主義」という精神があります。これは、事業で得た利益の一部は必ず「社会への貢献」にも役立てたいという思いですが、創業時より世代を超えて継承され、時代にあった社会の要請を踏まえ、さまざまな社会貢献活動を継続してきました。子どもたちが夢をもてる社会を実現したいという思いのもと、次世代育成支援を社会貢献活動の大きな柱の1つとして掲げ、力を入れています。復興支援に関する従業員アンケートでも子どもたちへの支援を望む声が多かったので、被災地の「子ども支援」にグループを挙げて取り組んでいます。
黒田
水産高校生を対象にした返還義務のない奨学金給付などに、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンと連携して取り組まれていますね。昨年3月にお話を伺った段階では、NPOと積極的に組んで活動したことはないということでしたが、わずか一年でNPOと素晴らしいパートナーシップを築かれていたのに感心しました。
サントリー
これまでは独自の活動が多かったのですが、パートナーとしてNPOと連携させていただく機会をもつことができ、非常に勉強になりました。彼らは「より生活者に近い目線」で活動をしています。社会貢献をしている団体ならではの熱い思いにも心を打たれました。
黒田
企業とNPOとの関係にはいくつかの段階がありますが、両者の関係は、一方的に企業が支援する段階ではなく、よりインテグレートした、協働関係が築けているようですね。
サントリー
国際的NGOは企業との連携の経験が豊富ですし、彼らのネットワークやノウハウを活かして地方自治体やNPOと協働で取り組むことで、私たちのCSRのアプローチの幅も広がったのではないかと思います。
黒田
「フクシマ ススム ファンド」を通じ、福島県外に避難された方を支援する団体にも助成されていますね。県内に残る方、県外に避難された方、ともに苦渋の選択を強いられているので、やはりどちらにも支援が行き渡らなくてはいけない。そういう意味でも、この活動は評価できると思います。
サントリー
県内避難の場合は行政の支援対象になりますが、県外避難の場合は行政の支援が受けにくいと伺いましたので、県外避難も含めて支援対象にしました。ほかにも外国籍の方や障がいをおもちの方など、多様な「被災者」に少しでも貢献できるように配慮したいと考えています。一口に「被災者」といっても置かれた状況はさまざまであり、求められる支援もさまざまであることにNPOとの協働や「フクシマ ススム ファンド」の選考を通じて、あらためて気づかされました。
黒田
県外避難者の支援に関しては市町村の中でも温度差があり、行政レベルではなかなか手が行き届かないことが多い。ですからNPOが自治体や地域の関係団体を巻き込んでいくことがとても重要です。でも、NPOだけでは資金に限界があるので、活動の幅を広げるにはスポンサー企業が必要です。さらに、サントリーのような国民全員が知っている有名企業との連携は、信頼度向上という点でも大きく貢献します。信用度が上がれば一般市民からの支援も増えますから、ネームバリューのある企業との連携は助成金以上にNPOにとって大きな意味をもつのです。
サントリー
今後は「フクシマ ススム ファンド」の活動を広げ、助成型支援だけでなく、福島の子どもたちが放課後に安心して学び遊べる環境づくりを、地元のNPOと積極的に協働して実現していきたいと考えています。
黒田
それは素晴らしいCSRモデル、社会貢献モデルになりそうですね。
サントリー
ありがとうございます。「漁業支援」「子ども支援」に加えて、被災地に笑顔と元気を届けたいと願う「文化・スポーツ」を通じた支援に関しても、サントリー美術館やサントリーホール、あるいはラグビーやバレーボールチームなどを通じた活動を継続していきます。本日いただいた貴重なご意見を、今後の復興支援活動および他のコミュニティ活動にも活かしていきたいと思います。

サントリーが取り組むべきコミュニティとの共生について

黒田
ISO26000でいう「コミュニティへの参画およびコミュニティの発展」という部分を狭義の「社会貢献」と捉えられることがありますが、本来は地域とどう関わるかということをもっと広く全体的に捉えるべきです。
サントリー
地域に対しての働きかけを「地域との共生」という広いくくりで考えたほうがいいということですね。
黒田
ISO26000では、本業であっても社会貢献であってもいいと定義していますので、「地域に根ざした貢献活動」「文化・社会貢献活動」と限定せずに、本業を通じての営業的アプローチや工場周辺のアプローチなどの幅広い活動を含めて、広義での地域との共生のあり方をCSR視点で捉えなおすことが大事なのです。「コミュニティへの参画およびコミュニティの発展」への貢献は、地域との関わりそのものですので、サントリーが行っているさまざまな活動をもっと情報発信していただきたいと思います。
サントリー
確かに、私どものビジネスは地域の理解が不可欠です。工場で地元の方々や行政とも密接な関係を築き上げ、地域と共存するためのさまざまな工夫をしています。たとえば、使用する水を最小限に抑え、農業用水に使用できるまでに廃水を浄化するなどの配慮についても、「地域との共生」という視点で捉え、もっと積極的に情報発信すべきなのですね。
黒田
工場には日頃から地元の方々とのさまざまな付き合いがあると思います。いわゆる社会貢献という限定されたプロジェクトより、地元の方々と普段どんな対話をしているのかといった身近な話題を知りたい人も多いはず。水や森林を中心に語ることが多い「天然水の森」の水源涵養(かんよう)活動や生物多様性の保全活動なども、広くコミュニティを支える活動なのですから、地域との関わりとして捉えてもいいと思います。
サントリー
「天然水の森」活動や「水育(みずいく)」などは、まさに地域と連携した活動です。環境活動に限らず、営業活動においても地域と連携した取り組みが増えてきています。これも視点を変えればコミュニティとの関わりと捉えることができるかもしれません。
黒田
地域の課題やニーズを捉え、活動を組み立てていくことはとても大事なことです。それは日本だけではなく、海外も同じです。むしろ海外の場合、貧富の格差や地域内での対立関係などがあり、文化や習慣も違うので、その地域が抱えている課題をしっかり把握する必要は、日本以上にあるでしょう。だからこそNPOなどのステークホルダーとの連携やコミュニケーションがますます大事になってきます。前述のセーブ・ザ・チルドレンなども、国連をはじめ、さまざまな現地のネットワークをもっていますから、そういった海外での知見をもった国際的NGOと連携していいプログラムを実現することもできますし、こうした活動を広く発信していくことも期待しています。
サントリー
東北の復興支援で取り組み始めたNPOとの連携という新たなスキームを、復興支援だけではなく国内外のコミュニティとの共生といったところでも活かせるわけですね。この気づきはサントリーのCSRを大きく前進させるきっかけになると思います。今後もぜひ、ご指導をよろしくお願いします。ありがとうございました。

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