スペインのバレンシアで愛されているカクテルで新春の乾杯をしていただきたい。明るい光にはなやぐ、春を想わせる色と味わいを楽しめる。
カクテル名は「アグア・デ・バレンシア」(Agua de València/バレンシア語表記はAigua)。直訳すれば“バレンシアの水”ということになるが、無論、水ではない。いのちの水、酒である。
さて、バレンシアのいのちの水とはどんなものなのか。
みずみずしいバレンシア産オレンジのジュースに辛口のカヴァ(スペインのスパークリングワイン)、そしてジン、ウオツカの2種のスピリッツ。オレンジジュースの甘さの加減によっては極少量のシュガーシロップを加える、というものだ。さまざまな大きさのピッチャーにつくり、シャンパン・クープグラスに注ぎ分けて楽しむ。
スペインやポルトガルで飲まれているフレーバードワインの一種、サングリア(赤ワインにフルーツや甘味料、少量のブランデーあるいはシナモンなどのスパイスを加え、一晩以上寝かしてつくる)ほどには有名ではない。それでもバレンシアの地元の人はもちろん、ご当地カクテルとして旅行者を魅了しつづけている。人気の高さは瓶詰製品として販売されていることでもわかる。
味わいとしては、サングリアとミモザ(シャンパンとオレンジジュース)を合わせたようなフルーティーな爽やかさがある。
ただし、飲み口はとてもいいけれどジンとウオツカがしっかりと混和しているのでアルコール度数は高い。乾杯のグラスを交わしたならば、ゆったりと、じっくりと味わうこと。ペースに気をつけたほうがいい。
スペインのバレンシア州(州都バレンシア)は、フランスに接するイベリア半島北東部カタルーニャ州(州都バルセロナ)の南に位置し、地中海西部のバレアレス海に面している。
バレンシアは毎年3月に開催される火祭りで知られる。そしてこの地域はオレンジの産地としても名高い。庭園はもちろん、通りの街路樹としてオレンジの木が立ち並ぶ。しかしながらよく知られているバレンシアオレンジとは違うらしい。バレンシアオレンジの原産地はアメリカのカリフォルニア州サンタナだという。
オレンジはインドのアッサム地方で誕生し、15〜16世紀に中国からポルトガルに渡り、スペインをはじめとした地中海沿岸に広まったといわれている。バレンシアオレンジは19世紀にアメリカで品種開発がおこなわれた際に、スペインのバレンシア産のオレンジに似ていることから名付けられた、また開発に関わったスペイン出身者によってバレンシアオレンジと名付けられた、といったことが語られているが詳細は不明のようだ。
だからここでは、バレンシア産オレンジと記載する。
バレンシアでは11月頃から年が明けて3月くらいまでがオレンジの旬だという。年末年始のいまはまさに収穫期である。ユーロ圏、とくに北欧の市場に送られていくと、冬を鮮やかに彩るフルーツとして人気が高い。
では、そのフレッシュなオレンジジュースとカヴァをたっぷりと使った「アグア・デ・バレンシア」はいつ、どこで誕生したのだろうか。
















