Liqueur & Cocktail

カクテルレシピ

アグア・デ・バレンシア Recipe Agua de València

ROKU 60ml
HAKU 60ml
オレンジジュース 120ml
シュガーシロップ 20ml
フレシネ コルドン
ネグロ
240ml
ビルド/ピッチャー&クープグラス
氷を入れたピッチャーにジン、ウオツカ、オレンジジュース、シロップを順に入れてステアして材料を馴染ませ、最後にカヴァを注ぎ入れ、スライスしたオレンジを加える
ピッチャーからクープグラスに注ぎ分け、スライスしたオレンジを飾る
*シロップはフレッシュオレンジジュースの状態(味わい)によって調整する

新春をオレンジに染めよう

スペインのバレンシアで愛されているカクテルで新春の乾杯をしていただきたい。明るい光にはなやぐ、春を想わせる色と味わいを楽しめる。

カクテル名は「アグア・デ・バレンシア」(Agua de València/バレンシア語表記はAigua)。直訳すれば“バレンシアの水”ということになるが、無論、水ではない。いのちの水、酒である。

さて、バレンシアのいのちの水とはどんなものなのか。

みずみずしいバレンシア産オレンジのジュースに辛口のカヴァ(スペインのスパークリングワイン)、そしてジン、ウオツカの2種のスピリッツ。オレンジジュースの甘さの加減によっては極少量のシュガーシロップを加える、というものだ。さまざまな大きさのピッチャーにつくり、シャンパン・クープグラスに注ぎ分けて楽しむ。

スペインやポルトガルで飲まれているフレーバードワインの一種、サングリア(赤ワインにフルーツや甘味料、少量のブランデーあるいはシナモンなどのスパイスを加え、一晩以上寝かしてつくる)ほどには有名ではない。それでもバレンシアの地元の人はもちろん、ご当地カクテルとして旅行者を魅了しつづけている。人気の高さは瓶詰製品として販売されていることでもわかる。

味わいとしては、サングリアとミモザ(シャンパンとオレンジジュース)を合わせたようなフルーティーな爽やかさがある。

ただし、飲み口はとてもいいけれどジンとウオツカがしっかりと混和しているのでアルコール度数は高い。乾杯のグラスを交わしたならば、ゆったりと、じっくりと味わうこと。ペースに気をつけたほうがいい。

スペインのバレンシア州(州都バレンシア)は、フランスに接するイベリア半島北東部カタルーニャ州(州都バルセロナ)の南に位置し、地中海西部のバレアレス海に面している。

バレンシアは毎年3月に開催される火祭りで知られる。そしてこの地域はオレンジの産地としても名高い。庭園はもちろん、通りの街路樹としてオレンジの木が立ち並ぶ。しかしながらよく知られているバレンシアオレンジとは違うらしい。バレンシアオレンジの原産地はアメリカのカリフォルニア州サンタナだという。

オレンジはインドのアッサム地方で誕生し、15〜16世紀に中国からポルトガルに渡り、スペインをはじめとした地中海沿岸に広まったといわれている。バレンシアオレンジは19世紀にアメリカで品種開発がおこなわれた際に、スペインのバレンシア産のオレンジに似ていることから名付けられた、また開発に関わったスペイン出身者によってバレンシアオレンジと名付けられた、といったことが語られているが詳細は不明のようだ。

だからここでは、バレンシア産オレンジと記載する。

バレンシアでは11月頃から年が明けて3月くらいまでがオレンジの旬だという。年末年始のいまはまさに収穫期である。ユーロ圏、とくに北欧の市場に送られていくと、冬を鮮やかに彩るフルーツとして人気が高い。

では、そのフレッシュなオレンジジュースとカヴァをたっぷりと使った「アグア・デ・バレンシア」はいつ、どこで誕生したのだろうか。

バレンシアの月明かりに和のスピリッツ

作家、マリア・アンヘレス・アラソ(María Ángeles Arazo)が1978年に著した『バレンシアの夜』(Valencia Noche)には、こんな様子が書かれているらしい。

1959年春のこと、バレンシア市の旧市街シウタット・ベリャ地区にあるバー『カフェ・マドリッド』(Café Madrid )にバスク地方からの常連の旅行者がやってきた。彼らは顔をだすたびにバスク州産のカヴァ「アグア・デ・ビルバオ」(Bilbao)を飲んでいたのだが、そのときはいつものように楽しめないでいた。

マンネリ化して飽きてしまっていたようだ。サングリアにいたってはまったくこころが動かない人たちであり、新しい飲み物への欲求が高まっていた。バーテンダーのコンスタンテ・ヒル(Constante Gil)は、そんな彼らの要望に応えて「アグア・デ・バレンシア」を考案したらしい。

それからしばらくは知る人ぞ知る、といった限られた信奉者のドリンクであったらしい。1970年代になってバレンシア市のナイトライフに広まり、人気が定着していったようだ。

また『バレンシアの夜』での紹介によって、バレンシアの月明かりの下で楽しめるカクテルとして愛されるようにもなった。いまでは夜だけでなく昼間も乾杯され、親しまれている。

今回、カヴァはコクのある果実味とキレのある酸味とのバランスが心地よい辛口、世界No.1カヴァ(IWSR2023 スペインスパークリングワイン販売数量より)として知られる「フレシネ コルドン ネグロ」を選んだ。

ジンは本格ドライジンに日本の四季の恵み、6種のボタニカル(八重桜の花、大島桜の葉、煎茶、玉露、山椒の実、柚子の皮)が響き合う「ジャパニーズクラフトジンROKU」を使ってみた。「ROKU」のスパイシーさが味わいにどんな影響を与えるのか感じてみたかったのである。

ウオツカは国産米100%使用の柔らかくふくらみのある味わいが特長の「ジャパニーズクラフトウオツカHAKU」にした。バレンシアは米の産地としても知られていて、親近感から米つながりとなった。余談だが、バレンシアのパエリアの具材は魚介類ではなく、兎肉や鶏肉を使う。

結果は、とても満足のいくものだった。「HAKU」はしっかりとしたアルコール感とふくよかさで全体を支え、「ROKU」がほんのりとスパイシーさを生んでいる。おそらく和のボタニカルがオレンジジュースを刺激しているのだろう、微かな心地よい苦味をそよがせる。この感覚がとてもいいのだ。そして「フレシネ」は発泡性の、しかも上質な辛口のキレをもたらす。

爽快感のあるフルーティーさで口当たりがとてもいい。それでいて甘み、酸味、そして微かな苦味という複雑さがある。面白い味わいだった。

年末のパーティーや新春を祝うにふさわしい華やかさ、朗らかさ、幸福感がある。というよりもこの季節だけでなく、一年中、祝宴の際はこのカクテルで乾杯すればいいのだ。

イラスト・題字 大崎吉之
撮影 児玉晴希
カクテル 新橋清(サンルーカル・バー/東京・神楽坂)

ブランドサイト

ジャパニーズクラフトジン「ROKU」
ジャパニーズクラフト
ジン「ROKU」

ジャパニーズクラフトウオツカ「HAKU」
ジャパニーズクラフト
ウオツカ「HAKU」

サントリーブランデーX・O
フレシネ コルドン
ネグロ

バックナンバー

第165回
サイレント・
サード
第166回
ニューヨーク・
サワー
第167回
ゴールデン・
ドーン
第168回
スノーボール

バックナンバー・リスト

リキュール入門
カクテル入門
スピリッツ入門