サントリー ワイン スクエア
1989年愛知県生まれ。同志社大学在学中、留学先のニュージーランドでワインに魅了され、2014年にソムリエ資格を取得。2017年「第8回全日本最優秀ソムリエコンクール」優勝。2018年「第4回A.S.I.アジア・オセアニア最優秀ソムリエコンクール」優勝。2023年「第17回 A.S.I.世界最優秀ソムリエコンクール」5位。2019年よりサントリーワイン・ブランドアンバサダー。京阪グループのフラッグシップホテルTHE THOUSAND KYOTOのシェフソムリエを務める。いま日本で最も注目されるソムリエの一人。
2024.03.26記事: 岩田渉(アンバサダー)
皆様、こんにちは!サントリーワイン・ブランドアンバサダーのソムリエ 岩田です。
今回のテーマはワインの「熟成」についてです。ワインという飲み物は熟成により、その味わいが変化し、より複雑味を増していくものが多くあります。もちろんその中には例外もあり、作りたてのフレッシュな状態が一番ワインの美味しさを享受できるものもあります。例えばボジョレーヌーヴォーなど挙げられます。
そんな「熟成」にテーマを置き、ワインが熟成したらどのような変化をしていくのか、改めて紹介していきたいと思います。
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まずは「外観」の変化です。ワインは熟成とともにその外観にも発展が見られます。例えば赤ワインやロゼワインの場合、そのルビー色やガーネット色だった外観が時間の経過とともに、全体的にオレンジの色調が強く現れていき、最終的にはレンガ色のような茶系の色合いが出てきます。みなさまもワインを飲む際に瓶の底の方に澱が溜まっているのも見たことがあると思いますが、あの一部はワインの液体の中にある色素成分が固まっていき、底の方に沈んでいるのです。また白ワインの場合もイエローの鮮やかな色調から少しずつ黄金色に変わっていき、最終的にオレンジ色や褐色がかった色合いに変化していきます。酸化熟成させながら作られるポルトガルの酒精強化ワインのマデイラなどがその代表的な熟成の外観を持っています。
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20万本収納可能な登美の丘ワイナリーの瓶熟成庫
そして香りにも大きな変化が見られます。ワインが若い状態の頃は、第一アロマといってぶどう品種に由来する香りが強く、シャルドネであれば桃や梨のようなフルーツのアロマ、カベルネ・ソーヴィニヨンであればブラックベリーのフルーツやハーブ系のアロマがぶどう品種由来の第一アロマとなり、それらをより強く香りの中から感じとることができます。また醗酵に由来する第二アロマも同じくワインが若い状態の際に強く感じることができるアロマです。シャルドネのマロラクティック醗酵由来の香りなどが挙げられます。そして熟成した際に出てくる香りが「第三アロマ」または「ブーケ」と言います。第一アロマで感じられたフレッシュなフルーツもドライフルーツのような香りとなり、動物的な香りを思わせるような、レザーのような、革製品のようなキャラクターやタバコの葉っぱやシガー、そして土のような香りにマッシュルームといった様々な複雑な香りが現れてきて、多層的な香りをグラスの中で醸し出していきます。
味わいにおいても酸やアルコール、フルーツフレーバー、そして赤ワインの場合であればタンニンなどのそれぞれの要素がより一体感を増していき、「円熟味」を帯びるとともに、熟成によるハーモニーが奏でられます。ワイン自体のテクスチャーがよりスムースになっていき、滑らかな口当たりになっていきます。
熟成による醍醐味のブーケやハーモニーが出てくるまでなかなか待てずに、若い状態でワインを飲む機会が割と多いかと思います。そんな皆様に朗報です!なんと、サントリー登美の丘ワイナリーより、長期熟成させたシリーズである「セラーエイジドシリーズ」に、昨年発売しているロゼに加えて新たな3種が2024年1月に発売になりました。
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今回発売になった4種
サントリー登美の丘ワイナリーでは醸造棟に隣接して、山をくり抜いて作られている、ワインの貯蔵にとって理想的な環境であるNo.4セラーと呼ばれる貯蔵庫があります。この中には樽熟成させている原酒やその他の様々な原種をブレンドし、瓶詰めされたワインが数多く眠っており、今回の新しいシリーズはその環境でゆっくりと熟成された、まさに飲み頃を迎えたとっておきのワイン達です。熟成感とフレッシュ感を楽しむことができるシャルドネから、非常に珍しい長期熟成させたロゼワイン。さらに熟成によってよりしなやかで柔らかいテクスチャーが印象的なメルロから、カベルネ・ソーヴィニヨンとブラッククイーンのブレンドワインからは日本ワインの熟成のポテンシャルの高さを体験できます。
本数もかなりの限りがある「セラーエイジドシリーズ」。この熟成によってもたらされる口当たり柔らかい円熟味と複雑なブーケが織りなす芳香を是非この機会にお楽しみください!
ソムリエ 岩田渉
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TOMI NO OKA WINERY THE CELLAR AGED CHARDONNAY 2005
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TOMI NO OKA WINERY THE CELLAR AGED MERLOT 2002
TOMI NO OKA WINERY THE CELLAR AGED CHARDONNAY 2005
全体的に黄金がかったイエロー。
ドライフルーツのマンゴーやパパイヤのような黄色いトロピカルフルーツのアロマとともに、カシューナッツやヘーゼルナッツといった香ばしい香りがグラスの底から上がってくる。
アカシアの花の蜜の要素もあり、凝縮感溢れる香りがとても印象的。
熟成による全体の一体感が味わいにも現れており、円熟味あふれるような滑らかでスムースな食感とともに、まだまだフレッシュさを思わせるようなキビキビとした酸が味わいに活力感を与える。熟成感とフレッシュさが共存する、飲みごたえあるシャルドネ。
TOMI NO OKA WINERY THE CELLAR AGED CABERNET SAUVIGNON ROSÉ 2006
やや濃い目の全体的にオレンジがかった、チェリーピンク。
ドライクランベリーのような甘美な印象を感じさせるフルーツのアロマに、紅茶やハイビスカスティーのようなニュアンス。そこへカラメルやシナモン、ナツメグといったスィートスパイスのトーンが絶妙に混じり合う。
外観の色の濃さにも通ずるように、タンニンの主張もしっかりとあり、熟成により角がとれ、丸みを帯びたようなタンニンが柔らかく噛み締めるような食感を与える。
ドライフルーツのフレーバーと共に、香ばしいナッツのトーンがさらなる深みを味わいに与えるような、非常に本格的な熟成ロゼワイン。
TOMI NO OKA WINERY THE CELLAR AGED MERLOT 2002
グラスを傾けるとエッジの部分にほんのりとオレンジのトーンが見える。
香りの第一印象は20年以上の熟成をしているとは思えないような若々しいフルーツのアロマが主体。完熟したラズベリーやマルベリー、そしてボイズンベリーといったような赤黒いフルーツのアロマに、バニラビーンズやカカオ、そして土っぽいマッシュルームのようなニュアンスを醸し出し、多層的で複雑な香りを演出している。
味わいは熟成による円熟味が綺麗に表現されていて、メルロらしい柔和な食感と、スムースなテクスチャーがとても喜ばしい。タンニンもしっかりと角がとれ、優しく包み込むような芳醇なフレーバーと食感が絶妙に絡み合う一本。
TOMI NO OKA WINERY THE CELLAR AGED CABERNET SAUVIGNON & BLACK QUEEN 13年瓶熟
全体的にオレンジのトーンが広がるガーネット。熟成感の高さが外観からも伺える。
香りにはカシスのリキュールやドライフルーツのブラックチェリー、そして食欲をそそるようなセージやタイムのドライハーブのアクセントが心地よく溶け込む。
シガーボックス、タバコの葉っぱ、レザーなど熟成したカベルネ・ソーヴィニョンから出てくるクラシカルな要素が一体となって香りで表現されている。
香り以上に味わいにはまだまだ若々しい要素が残っており、キビキビとしたフレッシュな酸と共に、熟成によって艶やかになったタンニンが見事に混じり合い、心地よいハーモニーを奏でている。黒系のドライフルーツや動物的なフレーバーやハーブが深みを与える。日本ワインの熟成のポテンシャルを見事なまでに表現している味わい深いワイン。