サントリー ワイン スクエア

登美の丘ワイナリー通信

ワインづくりの現場から

ワインづくり

卵白清澄のことをコラージュ(collage)と言います。

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ワイン愛好家の方ならご存知でしょうが、赤ワインの清澄化に卵白を使用することが、フランス、特にメドック地方のシャトーでは昔からのやり方で、今も実際に行なわれています。
卵白にはアルブミンという蛋白質が含まれていて、これは渋味の成分であるタンニンと結びつきやすい性質を持っています。この蛋白質が少しずつタンニンと結合して、だんだんと重くなって、樽で熟成中のワインの中でゆっくりとタンニンを纏いながら沈んでいくことで、最後には沈殿物(=オリ)として樽の底に沈んでしまいます。添加した卵の蛋白質がすべて底に沈むので、2カ月ほど経ってからオリ引きという作業によって、上澄みのワインだけを取り出し移し替えることで卵白は全て取り除かれ、美しく澄んだ赤ワインを得ることができるのです。
フランスでは17世紀くらいずっと前から知られており、卵白を入れる木でできた大きめの椀(=ボウル)は、わざわざ「ボンタン(bontemps)」という呼称があるくらいです。ボルドー・メドックには「ボンタン騎士団」と呼ばれるワイン業界の著名な団体もあり、メドック・サンテミリオンのシャトーラグランジュのオーナーになったサントリーの佐治敬三が正会員となったのは非常に栄誉なことでした。


では、2015年の年末に熟成中の「登美の丘(赤)2015」で行なった卵白清澄(=コラージュ)についてレポートします。

 

まず最初に、卵白を入れるために一旦樽の上部に空間を空けるため、入っている樽のワインを少量だけあらかじめ、抜きます。

 

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そして、卵を割って卵白だけをボンタンに入れるのですが、今では黄身だけを残す便利グッズが役に立っています。卵を割って2つの殻を使って何度か黄身を左右の殻に移動させながら白身だけを下に落すというのをテレビ番組で見たこともありますし、空のペットボトルを使って黄身だけを吸い取るという方法も紹介されたりしていますが、黄身を傷つけるリスクもあり時間もかかり、ある程度の技術も要するため、便利グッズで白身と黄身を分けるほうがスピーディで手軽で簡単にできるので、大量の際は、おすすめです。

 

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そして、使用する卵は当日調達した新鮮なものなので白身の部分がゲル状にこんもりと固まっていますから、それを泡立て器で「白身を切って」あげなければなりません。ボンタン(=ボウル)に卵白に泡立て器・・・と聞くと、もしかしたら、卵白をしっかり撹拌して、「角が立つくらいに」メレンゲをつくるように泡立てるというふうに想像される方がおられるかも知れませんが、ここはあくまでも、ボンタンの中の白身に泡立て器を叩きつけるようにして「白身を切る」レベルにとどめなければなりません。
 

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白身を切ったら、そのまま樽の中に投入です。
そして、ここで新兵器の樽に入れた卵白と中のワインを撹拌するための器具が登場します。樽の小さな口の中に差し込むことができるように通常は棒状になっているステンレス製の器具で、下を固定して上から押すと右の写真のように中央の棒の横から左右に2本の棒が出て、この状態で樽の中のワインを一定回数、回して撹拌して卵白がワインに混ざるようにしてあげるのです。
 

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最後に、卵白と撹拌した赤ワインから棒を抜いて、もともと少量取り出しておいた元の赤ワインを入れて満量にしてから、栓を再び押し込んで、これで1樽の卵白清澄(=コラージュ)の作業は完了となります。
そしてこの作業を、何十も並ぶ「登美の丘(赤)」の樽に対して、延々と樽熟庫で行なっていくのです。


さて、ここで「白身を使ったけど、残りの黄身はどうするのか?」という疑問を持たれると思います。この日だけで100個近くの卵を使いましたので、その黄身のゆくえは??
ちなみに、ボルドー名産のフランス菓子「カヌレ(もしくは、ボルドー・カヌレ)」は、コラージュで余った卵黄を使うために生まれたと言われています。日本でも10年程前に上陸して流行ったのを覚えてらっしゃる方もいるのではないでしょうか。

 

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登美の丘ワイナリーでは、レストラン「ワインテラス」のシェフが、この卵黄を使って、様々なスイーツを作ってくれました。当日は、延々と卵白清澄の作業に取り組んでくれた醸造スタッフをはじめとしたワイナリーのスタッフのために、カスタードクリーム仕立てにして、パイとのミルフィーユにして。そして翌日の12月23日が「ワインテラス」の最終日でしたので、プラムと焼いたシェフ特製のスイーツの形で、この日ご来店いただいたお客様に先着36名様限定ではありましたが、感謝の気持ちとして、食後のデザートとしてサービスで提供させていただきました。さらに他のスタッフにも焼き菓子にして、無駄なく、卵白清澄で出た卵黄を美味しくいただきました。
 

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卵白清澄(=コラージュ)は、赤ワインの清澄度・クリアさを向上させる以外にも、アロマはさらに繊細・複雑になり、タンニンからは粗さがなくなり、ボディはソフトで口当たりがまろやかになるといいます。しかしながら、コラージュで使用する卵の数は1樽に数個で、多ければ多いほどいいというわけではありません。それぞれのワインの酒質によって使用する卵白の個数は異なります。古きよき伝統の中にある先人達の知恵の詰まったノウハウを駆使して、求める味わいを考えながら、ワインごとにその酒質を見極めて、求める品質をつくり込んでいくワインづくりに登美の丘ワイナリーでは取り組んでいます。

 

サントリー登美の丘ワイナリー 

登美の丘(赤) 2012

サントリー登美の丘ワイナリー 

登美の丘(赤) 2013

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