バーボンウイスキー・エッセイ アメリカの歌が聴こえる

オールドファッションド 文・達磨信

アメリカでのウイスキーづくりは不良土壌にも負けずに育つライ麦を主原料とするライウイスキーからはじまったようだ。いまアメリカンウイスキーの代表格といえばトウモロコシを主原料とするバーボンウイスキーだが、19世紀までの主役はライウイスキーであった。

20世紀に入り禁酒法時代もあってアメリカ酒類業界全体が失速する。ビーム家が1940年代にジムビームを世に出し、そこから世界市場を開拓したことでバーボン業界が活性化し興隆をみる。ところがその一方でライウイスキーは衰退していく。1960〜70年代にはライ生産から撤退するメーカーが相次いだ。

そんななかで1973年から世界販売数量No.1バーボンの座に輝きつづけているジムビームはライウイスキーをつくりつづけた。

ウイスキー評論家として名高いイギリス人の故マイケル・ジャクソンは、市場規模に関係なくトップメーカーであるビーム社がライウイスキーをつくりつづけたことは、称賛に価するとまで語っている。ジムビームのライがあったからこそ、いくつかのライウイスキーメーカーも生き残ることができ、伝統の味わいが廃れることがなかったとの見解である。


さてジムビームにはスーパープレミアムシリーズがある。ノブ クリーク、ブッカーズ、ベイカーズ、ベイゼル ヘイデンの4製品だ。そのなかでベイゼル ヘイデンはバーボンでありながらビーム家がアメリカ伝統のライウイスキーを守りつづけた心意気を物語る佳品といえるだろう。

バーボンは穀類原料にトウモロコシを51%以上使用しなくてはならない。あとはライ麦と大麦が使われる。ベイゼル ヘイデンはそのなかのライ麦比率が高い特異なバーボンである。スタンダードなジムビームの2倍以上もの量のライ麦を加えて仕込まれている。

熟成環境も他のビーム製品とは異なる。ビーム社の貯蔵庫は9段積みである。上と下では温度や湿度に若干差が生じる。ベイゼル ヘイデンは貯蔵庫の中でも温度が低く、湿度が高い最下段で、じっくりと8年超もの年月、樽熟成させたものだ。

しかもスーパープレミアムシリーズの他の3製品はアルコール度数100プルーフ(50%)以上もあるタフでパンチの効いたバーボンであるのに対して、ベイゼルは80プルーフ(40%)に抑えられている。スパイシーでやや辛口ながら飲み口は極めてスムーズ。はちみつ様の甘さや紅茶、ハーブティーの感覚があるのも印象的だ。

ストレートやオン・ザ・ロックでゆるゆると味わうのもいいが、カクテルで楽しんでも面白い。

for Bourbon Whisky Lovers