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研究助成

成果報告

人文科学、社会科学に関する学際的グループ研究助成

2015年度

現代政治とパブリック・インテレクチュアルの動態

同志社大学 学長
村田 晃嗣

2015年度の「現代政治とパブリック・インテレクチュアルの動態」研究会は、サントリー文化財団の人文科学、社会科学に関する学際的グループ研究助成を受けて実施された。

2015年7月6日にプレ研究会として北岡伸一国際大学学長による「戦後70年談話問題」の報告が行われた。安倍内閣総理大臣の私的諮問機関「21世紀構想懇談会」の座長代理の北岡氏から、「談話」の前提となる懇談会の内容について報告が行われ、パブリック・インテレクチュアルの一つのあり方としての政権・首相との関係という問題について議論した。

正式の第一回研究会は2015年9月14日、報告者をケビン・ドークジョージタウン大学教授・東アジア言語文化部長として「近代日本における民族的ネーションと国民的ネーション」という報告が行われた。同氏から、近代日本のナショナリズム・宗教の特質とその中で知識人の果した役割について報告があり議論を深めた。

第二回研究会は2015年11月11日、報告者を国分良成防衛大学校長として、「中国の現状と日中関係」について報告が行なわれた。現代中国の動態と日中関係の現状についての報告から、日本と中国の双方におけるパブリック・インテレクチュアルの果たしている役割と将来像について議論した。

第三回研究会は2015年12月17日、報告者を池内恵東京大学先端科学技術研究センター准教授とし、「アラブの春は何をもたらしたのか、中東はどこへ行くのか」という報告が行われ、激変を続けるアラブ世界の底流に流れ続ける宗教問題を核に据え、その中でパブリック・インテレクチュアルが果たしている役割と日本のアラブ問題の専門家知識人の孕む問題点について議論した。

第四回研究会は2016年2月16日、報告者を村田晃嗣同志社大学学長とし、「グローバル化時代の大学と政治」と題して、グローバル化の中で大学は、とりわけ日本において政治とどのような関わりを持つべきかを当事者としての同氏に話しを伺い、新たなパブリック・インテレクチュアルのあり方について模索した。

第五回研究会は2016年4月18日に、阿川尚之同志社大学教授(予定)から「日米のパブリックインテレクチュアル―比較考察」と題して、体験を踏まえた日米の外交関係に見るパブリックインテレクチュアルの比較考察が行われた。

第六回研究会は2016年5月25日に久保文明東京大学教授から「トランプ旋風―あるいはアメリカにおける知的エリートの脆弱性について」と題して、大統領選挙の過程であらわになったアメリカの知的エリートの問題点についての分析が示された。

第七回研究会は2016年7月4日、ケネス・盛・マッケルウェイン東京大学社会科学研究所准教授が「日本国憲法の国際的・歴史的比較」と題して世界各国の憲法と日本国憲法について、知的風土をも含めた幅広い比較考察を行った。

以上の研究会には、大学研究者のみならず、政治家・官僚・シンクタンク研究員・マスメディア関係者が多く参加し、現代政治とパブリック・インテレクチュアルの動態の解明と今後のあり方を検討するに相応しい研究会となっている。さらに研究会を続け、これまで日本にはないこの問題についての初めての研究成果としたい。

2016年8月


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