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研究助成

成果報告

人文科学、社会科学に関する学際的グループ研究助成

2014年度

二つの世界大戦と日本
― 対外危機と経済危機の観点から ―

関西外国語大学英語国際学部 准教授
片山 慶隆

[研究の目的]
 本研究グループの研究目的は、第一次世界大戦および第二次世界大戦と日本との関係を、主に対外危機と経済危機の観点から捉え直すことである。もちろん、日本と両大戦との関わりを扱った研究は膨大に存在するが、研究の細分化が進んでいるがゆえに明らかになっていないことも少なくない。そこで、本研究グループでは、二つの世界大戦と日本との関係を総合的に理解するために、外交史・政治史・社会史・メディア史など、さまざまな分野の専門家が共同研究を行なう。
 第一次世界大戦後の対外危機と経済危機は、なぜ克服できなかったのか。この大きな問題意識を共有しながら、日本の外交・政治・社会・メディアが戦争に至る道、あるいは戦争自体をどのように考えていたのかを、新たな角度から捉える研究を発表していきたい。


[研究の進捗状況]
 本研究グループは、2012年9月に日本政治社会史研究会を結成し、2013年度には研究助成を得て、研究会を開催してきた。今年度は、2014年10月に早稲田大学早稲田キャンパスで開催された日本政治学会研究大会分科会A-4近代日本の戦争と政治・社会・メディア―満州事変から敗戦まで―(公募企画)を、研究助成採用後第5回(通算第7回)日本政治社会史研究会として行ない、樋口秀実氏(國學院大學)、小山俊樹氏(帝京大学)を討論者に招いて、片山慶隆が「正木ひろしの国際認識―戦中期を中心に―」、手塚雄太が「昭和戦前期における代議士と利益団体の相互関係―愛知県選出代議士加藤鐐五郎と陶磁器業界を事例として―」、島田大輔が「日中戦争期における中国専門記者の認識と活動―太田宇之助を中心に―」を報告した。
 2015年1月には、第6回(通算第8回)日本政治社会史研究会を早稲田大学早稲田キャンパスで開催し、矢嶋光氏(大阪大学)を討論者に招いて、茶谷誠一が「「終戦工作」における宮中勢力の政治動向―木戸幸一内大臣を中心に―」、浜田幸絵が「永田秀次郎の国家観・国際観―建国祭と世界教育会議を中心に―」を報告した。
 3月には、第7回(通算第9回)日本政治社会史研究会を早稲田大学早稲田キャンパスで開催し、櫻井良樹氏(麗澤大学)を討論者に招き、中谷直司が「日本外務省における満蒙特殊権益論の形成」、町田祐一が「満洲事変後における日満労働移動問題について」を報告した。
 6月には、第8回(通算第10回)日本政治社会史研究会を早稲田大学早稲田キャンパスで開催し、7人のメンバー全員が論文の構想について報告を行ない、論文集刊行に向けて議論をした。この間、手塚が愛知・岐阜、町田が京都・大阪・栃木・長野・東京、茶谷が神奈川・東京、島田が神奈川・東京で史料調査を行なっている。
 本グループは、なぜ外務省が満蒙特殊権益にこだわったのか、また、なぜ宮中の終戦工作は1945年8月まで実らなかったのかといった、戦争の開始と終結に関わる重要なテーマで研究を進めている。さらに、この時期におけるメディアや政治家の活動の実態も明らかにしている。
 そして、メンバー全員による論文集『二つの世界大戦と日本(仮題)』(ミネルヴァ書房)を2016年9月に刊行する予定である。


 

2015年8月

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