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サントリー学芸賞

選評

社会・風俗 1979年受賞

日下 公人(くさか きみんど)

『新・文化産業論』

(東洋経済新報社)

1930年、兵庫県生まれ。
東京大学経済学部卒業。
日本長期信用銀行入行。一時、経済企画庁総合開発局に出向。現在、日本長期信用銀行業務開発第1部長。
著書:『デベロッパー』(日本経済新聞社)、『住宅産業』(東洋経済新報社)

『新・文化産業論』

 世界各国の国際的公認を得ている文化は、フランスは18世紀ルイ王朝時代、イギリスは19世紀ヴィクトリア朝時代、アメリカは20世紀初頭の、それぞれ成金時代に形づくられた。いずれも莫大な開発費がかかっている。成金時代にそのカネをどう使ったか、後世に喜ばれるようなものを残したかどうか、ということが国家の運命をきめる。
 ひるがえって日本はいま成金国である。こんどは日本が、将来世界の人々に愛される日本文化を充分なコストをかけて開発すべきではないか、というのが著者の原点である。
 どう転んだって日本文化はマイナーなものサ、とシニカルになる読者に対しては、著者は十全な説得力をもって、現在の日本の大衆文化の世界に冠たるありさまを、情熱的に解説する。
 しかもこの問題は、そうしなければならない、というだけではなくて、そうならざるを得ない性質のものだということがよくわかるようになっている。いわゆる脱工業社会とは、産業構造の中でサービス産業、それも体を使うそれから頭、ハートを使うそれに重点が移ることであるが、同時にこのことによって、第二次産業、第一次産業も活性化されるという。
 要するにこれは日本人に自信と希望をもたせる快著であった。

田中 健五(文藝春秋第2編集局局長)評

(所属・役職等は受賞時のもの、敬称略)

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