活動詳細
熊本県 天草市 2025年受賞
コレジヨの仲間
古楽器演奏を通じ南蛮文化が花開いた時代の音と歴史を地域内外に発信
代表:松村 文美代 氏
2025年10月更新
熊本県の天草下島南部に位置する天草市河浦町には﨑津天主堂をはじめキリシタン文化の遺産が数多く残る。天正19(1591)年にはこの地に神学校「天草コレジヨ」が開かれ、グーテンベルク印刷機で「天草本」が印刷されるなど西洋文化が花開いた。
それから400年以上の時を越え、ここで西洋古楽器の演奏をおこなっているのが「コレジヨの仲間」だ。1990年に開館した河浦町立(現天草市立)天草コレジヨ館では、天正遣欧使節団の少年たちが日本に持ち帰った古楽器を復元展示している。それらの古楽器を、現代表の松村氏ら近隣住民が有志で来館者に演奏していたのが活動の端緒である。そして2009年に福岡市で開催されたコンサートへの出演オファーを機に、コレジヨの仲間が誕生した。
現在は7人で、約10種類の楽器と歌を担当する。メンバーの多くがもともとピアノ講師などとして音楽に携わっていたものの、古楽器の演奏経験はなかった。しかし観客に喜んでもらえるよう、プロ奏者にも教わりながら地道に練習を重ねた。今では曲のレパートリーは30にのぼり、「王のパヴァーヌ」など、使節団が渡欧した16世紀に作曲された美しい曲を中心に演奏する。
普段は、熊本県内外から河浦町を訪れる人へ演奏を披露する。天草コレジヨ館で月に一度おこなっている公開練習では資料館の「展示」の一つとして、来館者が気軽に古楽器の音色を聴くことができる。﨑津天主堂でのクリスマスチャペルコンサートにも毎年出演し、地域住民をはじめ多くの人が音楽を通じて天草の歴史に思いを馳せる機会となっている。また、フランス籍のクルーズ船が﨑津に寄港した際におこなった歓迎演奏では、﨑津集落の情景に溶け込む音色が、国内外から訪れた乗客の心をつかんだ。
活躍の場は地域の外にも広がり、コレジヨの仲間は天草の歴史と魅力を発信するうえで欠かせない存在となっている。熊本市内で「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」世界文化遺産登録1周年におこなわれたシンポジウムや、熊本空港での航空便就航式にも出演した。さらには、天草コレジヨ館での演奏に感動した方からの招待を受けて、フィリピン公演も行った。
今、コレジヨの仲間が特に力を入れるのが地元の子どもたちとの楽器を通じた交流だ。「使節団の少年たちが生き抜いた時代を、当時の音色から想像してほしい」という思いで、天草市内の小中学生が校外学習で天草コレジヨ館を訪れる際には、演奏を聴き、楽器に触れてもらう活動を続けている。将来は、古楽器をより身近に感じてもらえるよう、子どもたちが演奏するリコーダーと一緒にアンサンブルをおこなうという目標もある。
天草に響く西洋古楽器の音色は、地域の歴史とともにこれからも受け継がれるだろう。




